大臣談話・大臣記者会見要旨

山本大臣記者会見録(平成29年8月1日(火)11:01~11:31 於:環境省第1会議室)

1.発言要旨

 私の方から2点御報告をいたしたいと思います。最初は武豊火力発電所のアセスについてでございます。本日、武豊火力発電所計画について、環境影響評価法に基づく環境大臣意見を経済産業大臣に対して提出いたしました。これは、パリ協定発効後、石炭火力発電所の準備書に対して述べる初めての意見であり、本事業に対して環境大臣が意見を述べる最後の機会であることから、本年3月の蘇我石炭火力の配慮書に対する意見よりも、一層踏み込んだ内容としております。具体的には、蘇我火力と同様に、石炭火力発電に係る環境保全面からの事業リスクが極めて高いことを改めて自覚し、長期削減の道筋が描けない場合には、事業実施を再検討することを含め、事業の実施についてあらゆる選択肢を勘案して検討することが重要である旨を述べた上で、それでもなお事業を実施する場合には、事業者に対し、2030年度のベンチマーク指標の目標を確実に達成するとともに、本事業者全体として、所有する低効率の火力発電所の休廃止・稼働抑制など、2030年以降に向けて、更なるCO2削減を実施することを求めております。常々申していることでございますが、本事業者に限らず各電気事業者には、脱炭素に向かう世界の潮流の中で、地球温暖化対策の観点から、石炭火力発電事業には極めて高い事業リスクが伴うことをしっかりと自覚をしていただきたい。その上でなお、石炭火力発電所を建設・稼働するということであれば、事業者として、それ相応の覚悟を持って、所有する低効率の火力発電所の休廃止・稼働抑制などにより、更なるCO2排出削減を実施していただく必要があります。本事業者には、是非、低効率の火力発電所の休廃止・稼働抑制など、更なるCO2排出削減の見通しを示し、計画的に取り組んでいただきたい。環境省としては、本意見を受けた事業者の計画的な取組について、今後定期的にフォローしていきたいと思っております。
 次に、再エネのことについて御報告をいたします。以前、事務方に検討を指示しておりました「再生可能エネルギー活用によるCO2削減加速化戦略」について、省内横断チームで、幅広い関係者の意見を聞きながら検討してまいりましたので、中間報告として報告をいたします。基本的な考え方として、化石燃料つまりストックへの依存から、再エネつまりフロー型・循環型の経済へと転換していく必要があります。このような基本的な考え方の下、系統や環境への負荷の少ない需要側で、地域エネルギー企業の活動促進などを通じて、省エネ・蓄エネと合わせて再エネの最大限導入を図るとともに、地域が主体となって、全国に散らばる豊富な再エネ供給ポテンシャルを活用することを促してまいります。今後、中間報告をベースにして、関係省庁、自治体、企業、国民各層と幅広く連携して、戦略を仕上げてまいりたいと思っております。詳しくは、お手元の資料を御覧いただきたいと思います。

2.質疑応答

(問)毎日新聞の五十嵐です。武豊火力の件について、改めて1点お尋ねいたします。今の大臣の御発言の中でも触れておられましたが、3月の蘇我火力の件よりも踏み込んで意見を述べられたというところですけれども、これは法律上は拘束力という意味では明確にはありませんが、今回改めてこれだけ強い表現で意見を述べられたことについて、改めて大臣としてのお考えを聞かせてください。
(答)石炭火力発電につきましては、御承知のように我が国が2030年、2050年と目標を掲げております。その目標達成のために、正直申し上げて石炭火力発電が新増設されることは、その目標に対して容易ならざる結果を生み出すということを常々申し上げてまいりました。そういう意味において、今般意見を述べる機会がございましたので、踏み込んだ意見を改めて申し述べさせていただいた次第でありまして、事業者の方々に世界の潮流というのを意識をしてもらいたいということを改めて意見書を通じて申し上げたつもりであります。

(問)NHKの松田です。石炭火力についてなのですけれども、先ほど大臣は蘇我の火力よりも一層踏み込んだというようなことをお話しされていましたが、実際に経産大臣の勧告に盛り込まれていく総論以降のところでは、JERAに移行することも踏まえて、古い火力発電の休廃止や稼働抑制という、そういうことをするのであれば、本事業を実施するからにはそういう休廃止だったりだとか稼働抑制ということを求めていると思うのですけれども、これを裏返しますと、稼働抑制や休廃止を行えば石炭火力の事業を認めると、容認するというふうにも読めるのですけれども、その辺り大臣のお考えはいかがでしょうか。
(答)それは明確に否定させていただきたいと思います。全ての環境問題もそうでしょうけれども、やはり前進しなければならない。一歩ずつでも前進をしなければいけない。そういう観点から申し上げますと、石炭火力発電そのものに対して大変厳しい目が向けられている世界の潮流の中で、それを実施しようとされるならば、既にお持ちである古い設備に対して、このようなことをするのが当然ではないですかということを申し上げたわけでして、これが条件でもなんでもないということです。
(問)容認というスタンスではない。
(答)まったく違います。
(問)あと1点。今回はこういった意見をまとめられたかと思うのですけれども、今後、山口・宇部ですとか、あと神戸のほうでも石炭火力の発電所の建設計画が持ち上がっていて、これもまた環境大臣に意見を求められるかと思うのですけれども、内閣改造も間近というような話もありますが、今後、環境省として、こういった石炭火力発電所にどのように臨まれていくのか聞かせてください。
(答)内閣改造にひっかけては、なかなか話しにくいですけれども、いずれにしましても、何を目的に環境省がこの政策に取り組んでいくかということを考えていったときに、環境省としての意見は、やはり機会があれば述べるべきだと私は思っております。先ほど申し上げましたように、これは環境省のみならず政府が約束した2030年、2050年の目標に向けて何をすべきか、何をしなければいけないのかということを、環境省なりに考えてきているわけですから、それに基づいて意見を堂々と述べていくのは当然だろうと私は思っております。
(問)今後もこうしたほかの石炭火力発電所に対しても、同じような厳しいスタンスで臨むというようなお考えでしょうか。
(答)私はそう思います。

(問)共同通信の深谷です。同じく武豊の石炭火力に関してなのですけれども、今回アセスで厳しい意見を出すということなのですが、環境省としてアセスの機会でしか、こういった石炭火力に関して意見を述べる機会というか歯止めをかけるような機会がないということについて、今カーボンプライシングの検討会について進んでいますけれども、石炭火力への規制などあった方がいいのではないかという声もあるのですが、その点に関してはいかがでしょうか。
(答)石炭火力に関しては今までも申し上げてまいりましたけれども、やっぱり世界のトレンドというのを見誤ると、国策そのものを誤ってしまう可能性があるんだということを私は常々感じておりました。私らの想像以上に、ヨーロッパでは石炭に対する現実的な抑制が現れております。ダイベストメントに象徴されるような世の中の流れが来ているということだけは、やっぱり環境省の立場としては、これから事業を行っていこうとする方々に対してそういうものを根拠にして警鐘を鳴らしていくべきだろうと思っております。
(問)環境省として政策的に何かをやるというようなお考えは今のところはありますでしょうか。
(答)あくまでも経済産業省の所管事業でございまして、経済産業大臣から環境省の意見を求めてきております。であるならば、環境大臣としては環境省の意見をやっぱり堂々と述べるべきだろうと思っております。

(問)環境新聞の小峰です。今の武豊火力のアセスに対する大臣の意見について、もう1点重要な点があると思うのです。というのは、木質チップ、バイオマスですね、頂いた資料には、想定している混焼率、発熱量比17%を維持するよう燃料の調達及び設備の維持管理に努めること、さらに国内のバイオマスの利用に最大限努めること、ここの意図についてお聞かせいください。
(答)バイオマスの利用というのは、やっぱり再エネの中でも大きな地位を占めるんだろうとは、かねがね認識はいたしておりました。バイオマス発電は国内各地でもう既にやっておられるところもありますけれども、私が知る限りにおいては、バイオマス発電において、いわゆる燃料となる木材、材木といいますかチップといいますか、非常に国内では調達がしにくいということをかねがね聞いております。今回の武豊も17%の混焼だということを伺っておりますけれども、その17%を混焼するために、バイオマスの原料となる木材をどこから調達されるのか。正直なことを申し上げまして、私どもはまだ把握し切っておりません。事業者からの報告もございません。これは他の発電所でもそういうことになっておりますが、足らざる分は海外からという簡単な論法だろうと思います。やっぱり基本的には、私どもがバイオマス発電に期待をする分野の大部分は、国内の山の利用ということが裏側にはあります。したがいまして、バイオマス発電をされるのであるならば、国内で調達をしていただくということがベストだと。そういう観点からこういう書きぶりになったと御理解をいただきたいと思っております。
(問)それに関連して、一般的に海外産のバイオマス、海外産チップは、国内産よりも輸送費も含めて3分の1程度だということですけれども、一方、FITは大臣がおっしゃったように、国内のバイオマス産業を育てるために国内FITのバイオマス価格については国内産チップを前提にした価格になっていると思のです。そうすると、国内産価格のチップを前提にしたFITに基づいて海外産は、企業ですから安い方にいくのは当たり前ですけれども、そうすると今回の中部電力だけではなくて他に続く事業者もそういうことをどんどんどんどんやっていくと、FITを通じてぼろもうけすることになると思うのです。よって、このFITのバイオマス価格というのは見直す必要も今後出てくるのではないでしょうか。その辺の大臣のお考えをお聞きしたいと思うのですけれども。
(答)事業者ですから利益を出すことが最大の目標なんだろうと、それは理解できます。しかしながら、なぜバイオマス発電なのかということを考えていただいたときに、その一番大きな目的のためには、目先の利益ということではなく、大きな観点からバイオマス発電をやっていただきたいなと、私自身も思っております。したがいまして、このバイオマス発電のFITの料金等々についても、太陽光もそうであったように、やっぱり不断の見直しの検討は必要だろうと、私は認識いたしております。

(問)愛媛新聞社の山本です。ちょっと所管からはずれるのですけれども、昨日、四国電力の佐伯社長が原子力規制委員会との臨時会合で、原発の運転期間を40年としていることについて、見直しの議論が必要だというような主張をされたのですけれども。原子力防災担当相並びに地元に原発を抱えられている立場として、率直にどういうふうにこの意見を受け止めたかというのをお聞かせいただきたいのですけれども。
(答)ちょっとそのニュースが私の耳に入ってきておりませんので、直接的な佐伯社長の御発言に対するコメントはできないのですけれども、ただ一般的に申し上げますと、やっぱり、今40年という稼働期間、これを再延長するならばこうだという、一応仕組があるわけですよね。であるならば、我々も今まで経験したことのない領域に入っていくわけですから、やっぱり科学的な検証というものをやった上での、今のようなことに対する答えを出していく必要があるんだろうと思っております。いろいろな意味で、まだ経験していない領域に入っていくわけですから、当然のごとく、やっぱり科学的な知見を世界各国から集めてきて、その上で日本的な結論を出していくべきだろうと思っています。いずれにしましても、原発の運転というのは、まずは安全ということが確実になるべきだと思っておりますので、やっぱりそういう観点からやっていくべきだと思っております。

(問)エネルギーと環境の大村です。武豊の方で、いわゆる事業者に対する意見のほかに経産省に対する意見として1件入ってますね。これは大臣合意に基づく内容だと思うのですが、これがいわゆる言いっ放しではだめなわけで、しかし言いっ放しの状況が続いているわけで。ここをどうやってしっかり担保していくお考えなのか、きっちりと具体化していく考えなのか、ちょっとそこのところを確認したいと思います。
 それからもう一つの発表の再エネの中間報告の件ですが、これは取りまとめに向けた、いわゆる戦略として具体化していくプロセスといいますか、その見通しを教えてください。
(答)ちょっと今いっぱい質問があったので、よく理解しがたかったのですが。
(問)一つ目は、武豊の火力について、いわゆる経産省がすべき事項としての意見がございますよね。対経済産業省ということで、省エネ法に基づくベンチマーク指標の確実な遵守、それから道筋の検討、共同実施の評価の速やかな明確化、あるいは省エネ法、高度化法の指導・助言、勧告・命令の実施、それからCCS導入に向けた取組の推進というところあるのですが、これに関しては、どのように実際にそれを実現させていくお考えなのかということをお聞きしたいのです。別紙1の2ページ目、対経済産業省というところで意見が示されていますね。省エネ法に基づくベンチマーク指標のうんぬんのところなのですが、これはそういう仕組を作れということをもう大分前から、いわゆる合意の後からずっと言い続けられていると思うのですけれども、実際には全然実現できていない。ここをどのように、環境省としては実現を求めていくのかということをお聞きしたいと思います。
(答)今のお話については、私も1年間この場にいて感じましたことは、やっぱりこの問題というのは、経済産業省と腹を割った話をしていく必要があると思っております。今朝、経済産業大臣が、エネルギー基本計画の見直しについて記者会見をされただろうと思います。そういう経産大臣の発言内容等々を我々が側聞をしても、やっぱりこれまで以上に経産省とは連絡を密にしていく必要があると思っております。今回、経産省に云々という部分もありましたけれども、これは我々が経産省の考え方に対して、我々の考え方を述べただけでありまして、これからは経産省が、ある意味からいったら、環境省と連絡を密にしてくださいよというメッセージだと受け取っていただきたいと思っております。
(問)結局は言いっ放しみたいになってしまいますよね。その表現がいいかどうか分かりませんが、そこを何とかすべきではないかというのが意見です。
 それからもう1点、先ほどお話しさせていただいたのは、再エネの中間報告の今後の戦略まとめの見通しについて。再生可能エネルギー活用によるCO2削減加速化戦略の中間報告、これをまとめているのは承知していたのですが、中間報告としてまとまった上で、今後、これをどのように具体化されていくのかということを。
(答)再エネにつきましては、これを加速化していくことが30年目標に向かっての身近な目標だろうと、私は認識しておりまして、22から24という、今言われている目標が、果たしてこれが適当であるかどうかということも含めて、これから進んでいくんだろうと思っております。私が想像した以上に、再エネの世界というのが様々な分野で、民間レベルでも進んでおりますし、また国レベルでも実証モデル事業等々を始めとして、あらゆる可能性に、今、追求を始めております。したがいまして、今、戦略をこうだと、行程表がこうだということは、述べることは難しいのかもしれませんけれども、2030年に向かって着実に再エネという分野が広がっていると。かつてのように風力だったり、太陽光であったりのみならず、全く違う分野に向かっての追求も始まっている。したがいまして、今、行程表がこうだということはなかなか言いづらいと思いますけれども、確実に広がりつつあるということだけは、私も感じておりますので、そこに期待を寄せているわけでございます。
(事務方)事務方から、スケジュールの話だけ申し上げますと、大臣からは年末を目指して、今回、中間報告ですが、最終的に戦略として仕上げようという御指示をいただいております。
 それから、1点目の大村さんから御質問のあったフォローアップ、言いっ放しではないかということについて申し上げると、御案内のとおり、石炭火力全体については、電力のレビューというものを年1回、環境省で行っておりますので、そこで経済産業省の全体的な、御指摘のあったベンチマークですとか、それから44%の方の中間目標といいますか、マイルストーンの設定とか、そういうものについては毎年、年1回、電力レビューの中で、環境省として外部の専門家の意見も伺いながら、しっかりと言うべきことは言っていくと。考え方をまとめて発信していくということでございます。
(答)正直言いまして、経産省さんも随分と考え方に柔軟性が出てきたなということを私は感じております。

(問)共同通信の堀口です。話がちょっと変わってしまいますけれども、安倍首相は8月3日にも内閣改造を実施する見通しのため、今日の閣議後の会見が、大臣、今の第三次安倍改造内閣として最後になる見通しでございます。発足から1年を振り返った感想を、改めてになりますけれどもお願いできますでしょうか。
(答)8月3日に多分、改造があることは間違いありません。今朝、総理のお口からありましたので。この1年本当にお世話になりました。ありがとうございました。ちょうど1年で内閣改造を迎えるわけでございますけれども、随分といろいろなことをやらせていただいたなと思っております。私は就任のときにこの場でも申し上げましたが、いわゆる地球温暖化問題というのはライフワークとしてやってまいりましたが、環境省のもう一つの大きな仕事である福島の問題、この問題はやはり就任して最初に直面した新しい問題でございました。就任以来8回福島を訪問させていただきました。8回訪問してつくづく感じたことは、いまだにそう思いますけれども、福島の方々の気持ちをやっぱり皆がもっと理解すべきだということを感じました。ああいう事態に遭われた福島県民の方々、とりわけ浜通りの方々に対しては、全国民が目を向けていただきたいなということを感じました。それから御承知のように、マラケシュの会合に行ってまいりまして、私自身は、環境省も一生懸命、地球温暖化問題に対してやってきているにもかかわらず、行って何日目かにまた化石賞ですと言われたときは正直言ってショックでした。その評価は石炭火力であったと。石炭に対する非常に厳しい目が全世界から相変わらず寄せられていると。一生懸命やってきているにもかかわらず化石賞と言われると、私自身20年やってきてガクッときたのが正直な気持ちなので、そういうことでやはり、この1年石炭火力に対しては厳しい目を向けさせていただいたつもりでございます。また、通常国会も初めての経験でございました。答弁もありましたけれども、得意な分野もあれば不得意な分野もあったりいたしましたけれども、皆の協力でなんとか乗り切ることができて、法律も6本成立させることができました。いずれにしましても環境省が抱えている課題、満喫プロジェクトもそうですけれども、本当に所掌が広いということを改めて感じました。ただ私は、環境省という役所はこの霞が関の中でも、やはりものを言う役所であってもらいたいという思いを強くしたことは正直な気持ちであります。環境省が霞が関の一員であることは間違いありませんけれども、環境省が渦に巻き込まれる必要はないと。環境省は環境省なりの存在感を示すべきだというのを改めて私はこの1年で感じました。そういうのがこの1年の、正直な所感であります。