大臣談話・大臣記者会見要旨

丸川大臣記者会見録(平成28年4月28日(木)9:22~9:45 於:環境省第1会議室)

1.発言要旨

 昨日、第18回日中韓三カ国環境大臣会合に議長として参加してまいりました。韓国の尹環境部長官、中国の陳環境保護部長とは初めてお会いしましたが、極めて率直な意見交換をすることができまして、お互い三カ国間の協力関係を更に発展させていくことを確認できました。主な成果として、3点申し上げます。一つは、三カ国共同行動計画に基づく協力プロジェクトの進捗を確認して、それぞれ継続、拡大することをトップレベルでコミットできたことです。特に、環境技術の協力ネットワーク、PM2.5の改善及び海洋ごみに関する活動について、今後に繋がる形で成果をまとめられたと思います。二つ目は、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」及び「パリ協定」について、今年からの対策実施及びパリ協定の早期発効の重要性について合意ができたことです。三つ目は、災害廃棄物対策について、三カ国共通の重要な課題であるとの認識を共有することができました。日本が蓄積してきました災害廃棄物処理などのノウハウや経験を三カ国で共有する機会を設けることを提案し、合意に至ったことです。このような成果を上げることが出来たことを、大変良かったと思っております。長い歴史に基づいて、我々の協力関係というものを更に強固になっていくように今後も取り組んでまいります。
 5月1日で水俣病の公式確認から60年を迎えます。例年ですと、5月1日には水俣市において水俣病犠牲者慰霊式が行われますが、私も出席するつもりでおったのですが、今般の熊本地震の影響に鑑みて静かに祈りを捧げられる状況ではないということで延期をされたと伺っております。改めて、地震で亡くなられた皆様方のご冥福をお祈りしたいと存じます。また、被災された皆様方、まだまだ大変な思いをされております。お見舞いを申し上げます。水俣病については、これまでも申し上げてきたことですが、環境が破壊され、大変多くの方々の人生を変えてしまった、そして健康被害に苦しまれてきたことについて、我が国の環境問題の原点としてこれからも我々の胸に刻んで、この原点に立ち返って常に環境行政を考えていきたいと思います。水俣病対策は、60年前の公式確認とその後の原因究明から始まって、公健法の施行、臨時水俣病認定審査会の開催、そして平成7年の政治解決や水俣病特措法等、実に多くの方々が様々な努力をなさってきた中で、様々な対策が行われてきたわけです。行政はその時々に、できる限りの努力をしてきたつもりでございますが、今もなお、認定申請や訴訟をされている方が多くいらっしゃるという事実は重く受け止めております。地域の皆様が安心して暮らせる社会を実現する、そして世界全体で二度と同じ過ちを繰り返さない、という思いを胸に、今後も関係県と密接に連携を取りながら、公健法の丁寧な運用を積み重ねていくとともに、ご高齢になっていかれる胎児性・小児性患者の皆様の生活支援をはじめとする医療・福祉の充実、地域の再生・融和などにも、これからも環境大臣として省を挙げて責任を持って取り組んでまいります。
 G7富山環境大臣会合のパラレルセッションについてご紹介を申し上げます。パラレルセッションを5月15日に「都市の役割」というテーマで、一般公開で開催させていただきます。人やエネルギーが集積し、その多くが沿岸部に位置する都市では、環境対策及び気候変動への緩和・適応の取組が今後一層重要になります。昨年のCOP21で取り上げられた「リマ・パリ行動計画」でも都市の役割の重要性が改めて認識されたところです。このため、先進的な都市の事例の共有や、取組の推進のために中央政府が果たすべき役割について、G7各国から首長の皆様を招待し、議論することといたしました。具体的には、「交通網の近代化とコンパクトかつ強靭なまちづくり」「地域資源を活用した低炭素で強靭なエネルギー需給に係る取組」「都市の先進事例の共有と都市間連携の促進・国際機関の果たす役割」について議論する予定です。
 熊本地震について、ご報告申し上げます。今週火曜日の会見以降の主な対応について報告させていただきます。昨日、熊本市内の東区を中心とする東部区域の集積所において、歩道を含む道路に生活ごみやがれき等があふれて、人や車の往来の支障となっている状況がございましたので、自衛隊の協力をいただいて、特に優先度の高い集積所のがれき等の収集を行うこととなりました。昨日中に必要な準備が調いましたので、今朝9時半から、熊本市及び支援自治体のごみ収集車と連携して、がれき等の収集を開始いただきます。受入れ先についても、受入れ可能量を拡大させるため、できる限り多くの自治体の協力を得て、被災自治体を支援するよう事務方に指示し、新たに佐世保市内での処理を開始いたしました。ゴールデン・ウィーク中には、これまで以上にボランティアの方たちのご協力も得て、損壊家屋の片付け等が進むをいうことが見込まれますので、引き続き、本省と現地支援チームが一体となって、がれき等の収集・運搬・処理が滞りなく行われますように支援を続けてまいります。
 指定廃棄物の指定解除について、関係自治体へのご説明やパブリックコメントの手続を経まして、本日、放射性物質汚染対処特措法施行規則の一部を改正する省令を公布・施行しましたので、お知らせします。内容は、放射能濃度が8,000ベクレル/kg以下と確認された指定廃棄物について、国と一時保管者等の協議が調った場合に、指定解除を行うことができるというものです。環境省としましては、指定解除後の廃棄物の処理についても、処理の安全性の説明等の技術的支援や財政的支援を行うこととしており、今後、指定解除の制度を活用する事例があれば、ご地元と一緒になって指定解除以降の対応に国も努めてまいります。なお、本件の詳細については、後ほど事務方にお問い合わせください。

2.質疑応答

(問)毎日新聞の久野です。熊本地震の自衛隊の協力をいただいてという先ほどのご発言の件ですが、片付けごみを自衛隊が協力するのは初めてと伺っておりますが、環境大臣としてどう受け止めていますか。
(答)熊本市内の清掃工場が二つあるのですが、大きいほうが被災によって停止をしております。集積所における生活ごみや片付けがれき等を、市内の仮置き場に運び込むことをやってきていましたが、それぞれの集積所でがれき等がかなりの量が集まって、搬出することが支障になって、思うように作業が進んでいないという状況になっていました。今般、自衛隊のご協力をいただくことで、がれき等の搬出が進むと考えておりまして、集積所の運用を平時に戻すことができると期待をしております。こういう意味では大変有り難いと環境省では思っておりまして、特に環境省と防衛省の連携ということで、今後のための貴重なノウハウの蓄積にもつながるということで、意義深いものと考えております。

(問)朝日新聞の小坪です。大臣、冒頭で少し述べておられましたが、水俣病のことについて2点、お伺いします。救済のことに関してですが、以前、あたう限りの救済というような言葉がございました。その現状の受け止めと、今後、救済の進め方についてどう考えておられるのかというのが1点、それに関連して救済制度自体を締め切られたというような状況にありますが、認定の基準あるいは公健法のあり方そのものについても、様々な意見があると思いますが、改めて見直しですとか、今後のお考えがあればお聞かせいただけませんか。
(答)最終解決を目指した特措法であったわけですが、その救済措置が終わってもなお認定申請をされる、あるいは訴訟提起をされる方が多くいらっしゃるということは、環境大臣として重く受け止めております。関係県と密接に連携しながら、これからも公健法を丁寧に運用していくことで、しっかりと対応してまいりたいと思っております。
 一方で、認定基準についてですが、平成25年4月の最高裁判決について、私どもの理解としては、昭和52年判断条件というのは否定されておらず、認定補償制度そのものを否定する指摘もされてもいないと承知をしております。環境省としては、この最高裁判決においては、水俣病の認定にあたって総合的な検討を行うことが重要であるということが改めて指摘されたという理解をしておりまして、それを踏まえて現行の認定基準である昭和52年判断条件に示されている総合的検討をどう行うかと、それを具体化した通知というのを平成26年3月にいたしました。現在、臨水審、また各認定審査会において、この通知に沿った審査を行わせていただいているという理解でございますので、今後とも公健法の丁寧な運用というのを心掛けてしっかり対応してまいりたいと思います。

(問)西日本新聞の前田といいます。水俣病の関連で、原因企業であるチッソの子会社からの売却について、以前、大臣は救済の終了とは言い難い状況にあって、譲渡を承認できる環境にはないという発言をされていらっしゃいましたが、この件について今のお考えをお聞かせください。
(答)先ほども触れましたけれども、今もなお多くの方が認定を申請され、また訴訟を提起されている状況でございますので、私どもとしてはこれはまだ救済を終了していないという認識でございます。したがって、その後に続く判断というものがまだできる状況にないと考えております。

(問)千葉日報の石井です。指定廃棄物についてですが、この省令ができたことによって、自治体側からも指定解除の申請を関係者と相談できるようになると思うのですが、そうすると千葉県や千葉市なども全量指定解除してほしいと相談が入るのではないかと、さらにそれをもってして、改めて長期管理施設の選定を我が市にはもうなくなったのだから見直してほしいといったことを言い出してくる可能性があると思うのですが、今後、交渉に与える影響と、どのように交渉していくつもりなのかをお聞かせください。
(答)選定の方法については、今までにも申し上げてきたことですが、千葉県の全ての市町村長と県知事が入って、その市町村会議で議論をした結果、決まっているものですので、このプロセスというのは非常に重要なもので、尊重すべきものだと考えています。この選定に関して、選定手法に基づき選定を行う時点の指定廃棄物の保管量を用いて選定作業を行いました。選定作業はその時その時の廃棄物の量で選ぶと、いつまでも決まらないという状況が続きますので、これを選定し直すということは少なくとも考えてはおりません。あくまでも手法に基づき選定を行う時点の廃棄物の保管量を用いて選定を行うこととさせていただいております。
 その上で、千葉市がどうなのかということですが、千葉市は独自に測定をされているということですので、そうした測定結果があれば測定結果をお伺いし、また指定解除後の処理の見込みがやはり極めてご関心が高いところだと思いますので、よくお話をお伺いしたいと考えています。
(問)処理の見込みなのですが、千葉県内だと県内に処理する場所がなく、県外にということを考える自治体もあるようですが、基本的には環境省は県内で処理をと言っていますが、どうしても相談してきた場合、どう対応されますか。
(答)少なくとも県内で処理をしていただくということは、各県にお願いをしている大原則でございます。ここは変えるつもりはありません。

(問)河北新報の小木曽です。指定解除の省令の改正なのですが、改めてこの意義というのをご説明いただきたいです。今までその解除の想定がされていなかったというので、今般整理をする、これがまず1点目です。それと今週の初めに、宮城県では指定解除の作業が始まったわけですが、抜き取った試料を検査するのに一カ月くらいかかるとお聞きしているのですが、現在で大体作業を終了するのか、どれくらいで宮城県内の今ある未指定の廃棄物の測定作業が終了するのかというのが2点目です。よろしくお願いします。
(事務方)現在、未指定の廃棄物がどの程度あるのかということを県の方で調査しております。その内容について私どもと確認をさせていただいているという状態であります。ただ確認をしているから、着手しないというのではなく、確認ができたものから着手をするという方針をもってやっておりますので、その方針でもって、今週の月曜日には栗原市のほうからサンプルを取らせていただいたという状況でございます。中には、例えば6,000とか4,000と、明らかに最初の測定の時に8,000いかないものまで上げていらっしゃる、そういう調査シートを確認しておりますので、その辺をまず確認させていただきます。その上で他の市町村の調査を始めさせていただくということですので、数カ月くらいはかかるのではないかと思っております。
(答)指定解除の仕組みができたことについては、自治体からご要望を受け、減衰の状況を確認させていただいたところ、我々が思っていた、計算上思っていたより相当な量が減衰をしていた、そこを起点に考えると思いのほか早く減衰が進むものがあるという理解の上に立ったものでございます。その中で、自治体からご要望いただいたものを受けて、この仕組みを作るということをご相談申し上げた結果、他の自治体でもそれについて考えるに値するという受け止めをしていただいたということだと思います。
(問)今までこういう想定がなかったもので、省令を施行するという考え方でよろしいですか。
(事務方)汚染廃棄物の対処特措法自体は、発災後、できるだけ早くということで議員立法ですぐに作られた法律です。ですから、なるべく早く処理をするということを主目的に作られておりますので、その時点においては解除という仕組みについても、今になっては推測にはなりますけれども、こういったところまで気が回らなくて最初の時点では仕組みなしに法律として始まっているということだと思います。
 発災から5年も経って、濃度が減衰してきたという中で、当初約10,000ベクレルくらいで指定しているのが、明らかに5年経てば下がってきているのではないかということは、かなり高い確率で推測されるという状況になったということもございまして、あらためて手続がないということについて、私どもとしてきちんとした解除の手続を作るべきであるという結論に至ってこうした動きになったと、そういうことでございます。

(問)読売新聞の野崎です。2点ありまして、最初は災害廃棄物の関係で自衛隊だけではなくて、いろいろな自治体が連携して処理に当たっているところなのですが、改めていろいろな過去の災害の教訓をどのように活かして進めていくのかというのが1点と、2点目がG7の富山環境大臣会合のパラレルセッションのほうに大臣として期待されることを少し教えていただけますか。
(答)災害廃棄物についてですが、詳細は担当に聞いていただければと思いますが、一つは先手、先手を打っていくということだと思います。非常に多くの災害に対応してきた経験から法律の改正もさせていただきましたし、またD.Waste-Netという自治体を支援する専門家や事業者の皆様のネットワークも作って早く動き出せる体制というものをこれまで調えてきたところです。加えて、やはり自治体が周辺自治体も含めて一斉に協力をする体制を今回いち早く立ち上げることができたというのは、そうした体制整備のために積み重ねてきたことが、ここで発揮することができたのではないかなと思っております。
 一義的にまず仮置き場、当該自治体が対応するべきものですけれども、ここから先、福岡県であったり、大分県であったり、あるいは佐世保市であったり、北九州市であったり、自治体でかなり早く、その処理についてご対応いただいているというのは、これまでの経験の積み重ねの結果であろうと思っています。非常に多くの自治体がパッカー車を人と一緒に送ってくださいましたし、運ぶ部分、処理する部分、どちらにおいても即時に対応する状況ができたと思います。集める時にしっかり分別するということが、後に早期処理につながるということも我々の得ている重要な知恵ですので、そうした仮置き場では必ず、自治体の職員の方と立っていただいて、最初から分別する形で持って行けるようにするということでございます。
 あと、パラレルセッションについてでございますが、「リマ・パリ行動計画」のCOP21で非常に注目をして見ておりました。やはり、国に先んじて都市が様々な良い取組をしていただいているということは、あの時も確認をしたものですから、是非こうした動きをG7でも引き継いで、先進的な事例をお互いに共有して特に自治体というのは首長さんが権限が大変大きくて、その首長さんの意識次第でがらっと街やあるいは温暖化対策が変わっていくものですから、是非とも共有をし、横に展開していけるような気運を高めていければと思います。