大臣談話・大臣記者会見要旨

石原大臣記者会見録(平成25年11月15日(金)9:00 ~ 9:18  於:環境省22階第1会議室)

1.発言要旨

おはようございます。

本日は、閣議の前に地球温暖化対策推進本部が開催されました。1月の総理指示、「COP19までの間に25%削減目標のゼロベースの見直し」、「攻めの地球温暖化外交戦略の策定」等々についてですが、これまでの検討結果を踏まえ、私、外務大臣、茂木大臣が報告をし、「新目標」と「攻めの地球温暖化外交戦略」が内閣として了解されました。

まず、「25%削減目標のゼロベースの見直し」についてですが、我が国の2020年度の新たな温室効果ガス削減目標を、2005年度比で-3.8%とします。これは、2020年時点の原発の稼働の状況が見通せない中、原発による削減効果を含めずに、現時点でも世界最高レベルのエネルギー効率を更に20%改善する。最終エネルギー消費を原油換算で4,200万kL――ピンとこないと思いますが、30万tのタンカーで130隻分――を削減する世界最高水準の省エネです。さらに、再生可能エネルギーの導入拡大、フロン対策の強化、二国間クレジット制度、森林吸収源の活用などを総合的に進めることで、現政権が掲げている経済成長を遂げつつも、最大限の努力によって実現を目指す、野心的な目標となっています。2009年に当時の麻生総理は、2005年比15%を掲げました。これの前提は、原発比率42%が前提でした。仮に麻生目標を原発ゼロで再計算すると、2005年比プラス2.1%となります。ですから今回の3.8%は麻生目標に比べて6%程度の深掘りをしている目標になります。ただし、この目標は、原子力発電の活用のあり方を含めたエネルギー政策が検討中であることを踏まえて、現時点でできうる限りの目標値として策定したものです。今後、それらの検討の進展を踏まえて見直し、更なる確定的な目標を設定する運びになります。

また、2番目の話題ですが、「攻めの地球温暖化外交戦略」については、外務大臣、経済産業大臣、また農林水産大臣からもお話しがありましたが、これは、二国間クレジット制度などを活用し、我が国の低炭素技術で世界に貢献する。今、各国でこれを増やしていくところです。2013年から3年間で官民合わせて1兆6,000億円、およそ160億ドルの途上国支援を打ち出します。これが閣議に先立って開かれた会合の内容についての御報告です。

また、来週、現在ワルシャワで開かれているCOP19に、国会の状況を見定めながら、出席する予定です。本日の会議の内容を御報告し、世界に登録をしたいと思います。また、我が国の新たな目標を説明するとともに、国内であらゆる施策を実施して、対策を積極的に推進していくということ。また、攻めの地球温暖化外交戦略を受け、我が国が誇る環境技術を活用して、世界全体の排出削減に貢献していくこと。途上国援助も先進国の中ではかなりのボリュームであることを述べたいと思っています。また、COP19においては、2020年度以降の新たな国際的枠組みを2年後のCOP21、パリで合意するための基礎を固めることが重要だということも含めて、主要国との二国間会談、様々な会合の場で、今お話をしましたことを伝えていきたいと考えています。

2.質疑応答

(問)幹事社の朝日新聞の香取と申します。今回の温暖化対策の目標ですが、9月くらいの中環審とか産構審の合同会議の議論を聞いていると、数値目標が出せないのではないかというような懸念もあったのですが、その中で3.8という数値を出されて、でも一方で3.8というのは、これまでの目標からすると上辺だけ見ると、非常に後ろ向きな印象も与えますが、その点についてもう一度御説明いただけないでしょうか。
(答)麻生目標からも-6%深掘りしています。省エネ等も深掘り。25%と比べたら、それは誰が見ても25%とおよそ4%ですから、小さくなりますが、(25%は)2030年で原発比率を50%、63基。2020年麻生目標は42%。今はゼロです。誰が計算しても当然こうなるということではないかと思っています。実現可能性を欠く目標であったと言わざるを得ないと思いますし、原発事故を受けて、民主党政権の間に国際社会に対して早く目標の取り下げを行っていれば、今のような御質問が出る事態は避けられたのではないかという印象を持っています。

(問)共同通信の樋口と申します。同じく排出削減の目標についてお聞きしたいのですけれども、いろいろ原発との制約があってこの数字になったという御説明がありました。ただ一方で、昨年中央環境審議会の部会の議論の中で2020年に原発がゼロでも、最大で3ないし5%の削減が真水だけで可能だという試算が出ております。これと比べると非常に低い数値になっていると思いますが、その点についてはどのようにお考えかということが1点。もう一つお聞きしたいことが、原発のことなのですけれども、運転中は二酸化炭素を出さないということで、これまで温暖化対策に非常に使われてきた部分があるかと思うのですけれども、今回の事故を受けて、あるいは過去の地震の影響で止まったこと等を受けると、温暖化対策を原発に頼るのは非常に危ういという指摘がありますけれども、大臣としては今後、エネルギーミックスはこれからありますけれども、原発を温暖化対策の中でどういうふうに位置づけるのが良いかどういうふうにお考えでしょうか。2点、教えて下さい。
(答)真水が何を指しているのかわかりませんが、省エネ・再エネはおよそ1%、森林吸収がおよそ3%という数字によって成り立っています。来年に向けて、更なる深掘りは十分可能だと思っています。今質問のありました通り、省庁間で、目標を出さないほうが良いという意見も強く出ている中で、取りまとめることのできた数字だということもお話しました。そのように御理解いただければ、当然こういうものだということは御理解いただけると思います。
後段の話は非常に重要です。私は原発がゼロの今こそ、新たな再生可能エネルギーを中核とした、自立分散型のエネルギーシステムを進めるべきだと思います。私もかなりの箇所を見ていて、ポテンシャルがあることも実感しています。こういうことも3年の民主党政権下の中で議論が深まってはいません。また、現政権になってから私はずっとこの話をしていますが、世論の風は残念ながら吹いていないような気がします。再生可能エネルギーのポテンシャルというものは、地熱、洋上風力、バイオマスと高いわけですので、是非こういうものを2030年時点では日本としてかなり野心的なものを示す。しかし、残念ながら世論の動向等々を私もみていますが、3.11の後はどうしても、廉価な石炭を燃やせば良いじゃないかと。特に東電管内では、今古い、石油火力等をフル稼働している。これによってなんとか東電エリアの電力を供給していますが、これは非常にある意味では地球にネガティブ。環境負荷に大きい政策を、目をつぶって、とりあえず便利な生活を続けたいということで供用している。今御質問いただきましたようなものに、やはり正面から答えていくこと。また多くの方々が今のような論点に立って、議論をスタートさせること。今回の数字を低いと考える方に是非議論を始めていただきたいし、私もこれまで通り、再生可能エネルギーと自立分散を進めるという立場を閣内でも主張していきたいと思っていますので、ぜひよろしくお願いします。

(問)朝日新聞の石井と申します。麻生目標のときとか去年の原発ゼロを決めたときは国民的な議論が一応行われたかと思います。今回はそういう手続きを経ないで決められていると思います。原発と温暖化の関係をどうするのかというようなことをですね、国民的な議論に持っていくようなお考えはないのでしょうか。
(答)やはり、基幹エネルギーを何にしていくのか。系統エネルギーを何で賄うのかということが一つあるのは間違いありません。それに加えて原発が止まっている状態であるからこそ、再生可能エネルギーを導入して――もちろんコストは高くなりますが――自立分散して、それなりに効率の高いものを利用すれば、そこの地域の電力を賄うことができるわけです。そういうことと併せて今御質問いただいた議論も深まっていくことを期待しますし、それを環境省がリードしていくように問題提起を続けていかなければならないと認識しています。

(問)NHKの間嶋です。同じく目標に関して国際交渉での日本の立場についてお伺いします。中身を見れば非常に精力的な取組だと思うのですけれども、やはり見ため上の数値はかなり後退していて結果重視の交渉では、バイ会談等で批判が出てくることも予想されるかと思いますが、その辺りを石原大臣が来週行かれるなかで、どのようにかわして日本の立場を国際交渉において、どういうポジションをとっていきたいとお考えになっているかお聞かせ下さい。
(答)ただいまの点も大変重要な御指摘だと思っています。そういう批判が出るから新しい目標を出さないほうがいいという意見が現実にかなり強かったわけです。しかし、日本の省エネ、再エネに対する取組は世界の国々よりもずばぬけているわけです。私もいろいろなところを見させていただいていますが、ポテンシャルを持っているものが沢山あります。世界に貢献していくJCMもその一つの例だと思います。
あとは人間関係です。二国間協議というのは人間関係です。私も短い時間ではありますが、いろいろな国の方とお話をしていますし、私はそういうことをするのは好きなほうですから、今度も精力的にそのような場を活用して、今懸念されている批判に対して日本の立場と日本の途上国に対する支援をはっきりと伝えていきたい。このような決意です。

(問)共同通信の角です。温暖化目標の話ではないのですけれども、除染の費用の求償の問題で、今週が井上副大臣が言われていた1つの期限だと思うのですけれども、東京電力さんのほうからどういったふうにセットされていらっしゃるのかということと、また繰り返しになりますけれども、大臣の今後の求償費用に対する姿勢をお聞かせ下さい。
(答)今朝、井上副大臣と石崎副社長がお会いになっているそうです。まだ報告を受けておりませんし、いつもの通り井上副大臣からその模様については皆様方に御説明すると思います。この前、不可解という言葉を使いました。その後にもう一度法律も読みましたが、やはり払う責務が東電にはある。もちろん企業体ですので、こちらの出している伝票と整合させる、あるいは除染と関係のないものが入っていたらそれを除けるという作業を当然行うことになると思いますが、急に今まで払っていたものを払わないということは理由がわかりません。一昨日に党の部会もありまして、片山部会長からも報告を受けています。前回にも話しましたが、汚染者負担の原則を崩すと、全てが崩れることになります。やはり原則をしっかりと認識していただき、こちらの正しい請求に対してはしっかり払っていただかなければならないと考えています。