大臣談話・大臣記者会見要旨

石原大臣記者会見録(平成25年3月15日(金) 8:50 ~ 9:05  於:環境省22階第1会議室)

1.発言要旨

 おはようございます。本日の閣議において、今国会に提出する地球温暖化対策推進法の改正法案が閣議決定されました。京都議定書目標達成計画に代わる地球温暖化対策計画を策定する法的根拠となるものです。法案成立後、地球温暖化対策計画の策定に取り組むという段取りです。
 また今日は、閣議の前に、総理の指示により、安倍政権になって初めての地球温暖化対策推進本部が開催され、「当面の地球温暖化対策に関する方針」が決定されました。これは、切れ目のない地球温暖化対策という観点から、新たな計画の策定の進め方を明らかにするものです。また、新たな計画ができるまでの間においても、国民の皆様方に、あるいは事業者の皆様方に対して、省エネ・節電などについて、従来と同等以上の御協力をお願いすることを決定しました。
 さらに、これも総理が大変御関心を示されている点ですが、アジアの大気汚染問題について、総理から、関係省庁と連携を密にしつつ、関係各国や関係機関と協議を重ねて、その解決に向けた取組を開始するよう、指示がありました。
 アジアの地域において今どんなことが起こっているかというと、これも御承知の事ですが、中国やインド等々におけるPM2.5などの大気汚染。あるいはモンゴルでも石炭を燃料として多く使っており大気汚染が深刻です。さらには、ベトナムなどは工業化が著しいわけですが、アジアの主要都市における工業化の進展と自動車排気ガスによる大気汚染。様々な大気汚染問題がいろいろな地域で、いろいろな国々で、懸念されています。
 御存知のとおり、我が国は様々な公害を克服した豊富な経験と先進的な環境技術を持っています。これまでも、中国やモンゴルでの発生源対策や、東アジア酸性雨モニタリングネットワークを通じた観測網充実のための技術支援などに協力してきました。日本は、引き続きこれらの問題の解決に向けてイニシアティブを発揮するべき立場にあると私は考えています。今後、総理の指示を踏まえて具体的な取組を開始します。

2.質疑応答

(問)幹事社の時事通信・吉本です。よろしくお願いします。御説明のあった今の推進本部に関して2点お伺いします。
 当面の対策に関する方針ということが決まったのと、推進法改正案が閣議決定されたということなのですが、中身を見る限りあまりにもざっくりした行程すぎて、ちょっと目標作りの今後のスケジュール感というのがあまりよく分からないのですが、大臣これまでも、原発の問題があるのになかなか難しいという発言もあったと思うのですが、もう少し具体的に何か、いつまでにどういった進め方をするのかというのがもしあれば、それを教えていただきたいのですが。
(答)目標の作り方にもよると思います。原発が動かない、あるいは、このくらい動く、というようなものを仮定して作るということは可能ですが、それはある意味では、ケース1、ケース2、ケース3、あるいは幅の広いものになります。そういうものでいいのか。それともCOP19までにある程度かっちりした目標を出すべきなのか。これまで地球温暖化対策で世界の国々をリードしてきて、――90年比マイナス6%の目標がどうなるか、これはなんとかクリアできるのではないかと考えておりますが――、この3月31日以降、こういうものが出て、その積み重ねの中でかっちりしたものを出していかなくてはならないのではないか。漠然としているのですが、そんな頭の整理です。総理からも、11月のCOPまでに25%削減目標をゼロベースで見直せという指示が出ていますので、それまでに、行程は少しざっくりしているのですが、数値を出していきたいと考えています。

(問)もう一つ総理から同様に指示があった、PM2.5などの大気汚染問題に関することなのですけれども、PM2.5とか酸性雨もそうなのですが、特に中国との協力はこれまでも一定程度は進められてはいると思うのですが、現状では大臣もいつか言及されていたと思うのですが、尖閣諸島の問題でぎくしゃくしていて、そういう中で、5月の3か国の会合などの場面で、どういった形で更なる協力に向けた関係を築くようにもっていくのか、何か現状の受け止めをお願いしたいのですが。
(答)2月後半の課長級の会議では、かなり突っ込んだ議論がなされて、その報告を聞きまして、技術分野では、これからも共に検討していこうというような合意はなされたのだと思います。しかしながら今御質問にありましたとおり、要人の外交も止まっていますし、ましてや大臣間の会議も、野田政権以来ないわけです。ただ、これはお話したでしょうか、1988年に李鵬総理と竹下総理との間で、日中友好環境保全センターをつくることになり、1996年にそれができている。これも含め、環境分野で様々な協力を行ってきました。これらの経験を踏まえて、地域的な問題についても協力して取り組んでいきたい。中国の外交部の記者会見なども追っているのですが、「他国の先進的な経験や取組を学びたい」と、報道官の方が定例会見で述べられています。日中両国の戦略的互恵関係に基づいて、幅広い分野で協力を進めるということの中に、環境問題も入ると思います。この問題についても、日中韓三カ国環境大臣会合も予定されていますので、様々な枠組を通じて協力を強化していきたいという気持ちに変わりはありません。

(問)NHKの間嶋と申します。11月に向けての温暖化の計画の件で伺います。
 おそらく今後、新たな数値目標がどうなるかというところが一番注目を集めるところだと思います。大臣は当初、ホラは吹きたくないということを仰っていたと思うのですけれども、ただ一方で、低い数字となると、国際社会からの批判等も予想されます。今後11月に向けて数字を策定する上で、例えば野心度のレベルですとか、どのようなスタンスで、数値目標の策定に臨んでいきたいかというところをお願いします。
(答)マイナス25%というのは、全電力供給の5割を原子力発電所が担うという仮定の上に成り立っていますから、これはあり得ないと思います。そうすると、それに代わる部分を、民生部門、あるいは排出権、あるいは森林吸収、こういうところでどれだけかさ上げすることができるのか。また、国民の皆様方、事業者の皆様にも、これまでと同等の省エネ・節電をお願いするということも今日決めました。こういうもので積み増しをして、なかなかこれは難しいことだとは思いますが、野心的な数値を積み上げていかなければならないのではないか。また、もう一つ忘れてはならないのは、日本は他の国に比べて、省エネルギーが非常に進んでいます。日本と同じように各国もやるべきであるということを強く言ってきています。それに対して各国がどういうふうに対応しているのか。それもしっかりと見て、これはオール地球の問題ですから、各国もやはり引き連れて、前向きな、そして長期目標につながるものを作っていかなければならないのではないかと考えています。

(問)ブルームバーグニュースの渡辺です。先ほどの温暖化対策計画の件なのですが、これはタイミング的には、11月のCOPの前までに計画を策定するという理解でよろしいですか。その場合、何月ぐらいを目途にされているのかをお願いします。
(答)結局7月18日までに原子力規制委員会の安全基準が、――骨子という形ではもうパブリックコメントにもかかっていますが――、出てこない限り、各原発を所有する電力会社は、自らの所有する原発に対して、どういうことをすれば稼働できるのか、または稼働できないのかという判断はできません。基準が出た後に、電力会社が申請を出してくるわけです。そこでやはり時間がかかる。ですから、7月そして11月ということを考えると、夏の段階では、少し具体的なものを皆様方を示さないとならないのではないか。スケジュール感としては、そのぐらいのスケジュール感を今は持っております。冒頭の御質問にあったとおり、ケース1、2、3みたいなものでいいのか、あるいは何%から何%みたいなものでいいのか。また、そういうものが果たして野心的なのか、あるいは実現可能性について懸念を持たれないのか。その辺をいろいろ考えてつくっていく。正直申しまして、大変難しい作業になるのではないかと考えています。

(問)朝日新聞の小林と申します。改正案の事なのですけれども、温暖化で、条文に2050年に80%の数値目標を入れたらどうだという声が、公明党を始め、あと市民団体のほうなどからも出たのですけれど、これについて大臣は、今回入りませんでしたけれど、どのように考えてらっしゃいますでしょうか。
(答)先ほども話したとおり、地球全体の問題として、長期的に目指すべき姿というものがきっとあると思います。だからこそ、この法律の目的規定である1条に、大気中の温室効果ガス濃度の安定化という形で、長期的視点の考え方が含まれているわけです。ですから、長期的な地球全体の事を考えつつ、まず足下の数字を固めていくということがやはり肝要なのではないでしょうか。長期のところにいくためにも、やはりまずは足下を固める必要がある。今回はそういう形で整理したところです。