大気環境・自動車対策

微小粒子状物質等大気汚染物質に係る疫学調査について

1.調査の概要

環境省は、平成21年9月に微小粒子状物質(PM2.5)の環境基準を設定しましたが、その根拠となった答申において、我が国における知見が、米国を中心とした国外の知見と比較して少ない状況にあることから、疫学調査を実施するなど国内知見の充実を図る必要性があるとの指摘を受けました。

このような経緯を踏まえ、環境省では、PM2.5等の大気汚染物質の健康影響に関する我が国における知見を充実させることを目的として、「微小粒子状物質等大気汚染物質による肺機能発達への影響調査」と「生活環境と健康に関する疫学調査」の2つの調査・研究を実施しているところです。

「微小粒子状物質等大気汚染物質による肺機能発達への影響調査」

① 調査の内容
  • 調査開始初年度(平成23年度)に小学3年生を対象に、肺機能検査・自記式 質問票による調査を行い、その後、小学6年生になるまで計4年間、肺機能検査・自記式質問票による調査を繰り返し、肺機能発達の様子を把握しました。
  • 上記調査対象者の中学校進学後においても、追加調査を実施しました。
  • 大気汚染物質濃度は調査対象となる学校の敷地内やその周辺に設置された測定器で測定したデータを使用しています。測定する大気汚染物質は、PM2.5、光化学オキシダント(Ox)、二酸化窒素(NO2)です。
  • それらの濃度と肺機能発達を中心とした肺機能・呼吸器系疾患の関連について、解析・評価を実施しています。
② 調査の進捗等

小学生までの呼吸機能発達の影響について論文が受理されました(令和3年10月15日受理、10月21日web公開)。

Exposure to PM2.5 and Lung Function Growth in Pre- and Early Adolescent Schoolchildren(A Longitudinal Study Involving Repeated Lung Function Measurements in Japan, 2021年10月)

https://doi.org/10.1513/AnnalsATS.202104-511OC

【研究の背景】

これまでの疫学研究のエビデンスは、大気環境中のPM2.5濃度の改善が小児の肺機能発達の改善と関連することを示しているものの、比較的低濃度のPM2.5への曝露が小児の長期的な肺機能発達に影響を与えるかどうかについては明らかではありません。

【目的】

年平均10~19µg/m3の濃度範囲でのPM2.5への長期曝露が小児の肺機能発達に与える影響について、肺機能検査を繰り返し実施して検討します。

【方法】

調査には、日本国内の10都市・16小学校に通う小児1,466人が参加し、8歳から12歳まで、総計6,233回の肺機能検査を繰り返し実施しました。FEV1(努力性1秒量)、FVC(努力性肺活量)、50%肺活量位での最大呼気流量を肺機能の指標として用い、階層線形回帰モデルにより、PM2.5曝露(10µg/m3増加ごと)が肺機能発達(身長10cm増加あたりの相対的な発達率)に与える影響について検討しました。なお本研究は、環境省倫理審査委員会の承認を得て実施しています。

【結果】

研究期間全体における年平均PM2.5濃度は、全地点平均13.5 μg/m3 (範囲:10.4 ~19.0 ug/m3)でした。性別やその他の共変量による調整に関わらず、肺機能発達指標とPM2.5曝露との関連性は観察されませんでした。この結果は、共変量にO3あるいはNO2を加える2汚染物質モデルによる解析においても変わりませんでした。

【結論】

日本における縦断的研究により、前思春期・思春期初期(小学生)での年平均10.4~19.0µg/m3に相当するPM2.5曝露は、同時期の肺機能発達に影響しないことが示唆されました。

※中学生を対象とした肺機能発達への影響については、現在調査結果を解析中です。

「生活環境と健康に関する疫学調査」

① 調査の内容
  • 茨城県が実施している健康診断受診者を対象とした平成5年と平成21年に開始した2つのコホート調査データと、同じ時期における大気環境モニタリング結果や気象データとを解析・評価することによって、気象条件や大気環境の状況と循環器疾患を含む死亡との関連について調査・研究を実施しています。

  • 解析対象としている大気汚染物質は、PM2.5、SPM、光化学オキシダント(Ox)、二酸化窒素(NO2)、二酸化硫黄(SO2)です。

② 調査の進捗等

※本研究の進捗等については、今後本ページに掲載していきます。

2.本調査に関するお問合せ先

本調査に関するお問合せは、以下の窓口でお受けいたします。

微小粒子状物質等大気汚染物質に係る疫学調査 事務局

日本エヌ・ユー・エス株式会社

電話番号 03-5925-6770(代表)(受付時間 平日午前9時~17時)

FAX番号  03-5929-6745

環境省水・大気環境局総務課

電話番号 03-3581-3351(代表)内線6516、6603