大気環境・自動車対策

平成26年度 大気汚染状況について(有害大気汚染物質モニタリング調査結果報告)

大気汚染防止法第22条に基づき、地方公共団体は有害大気汚染物質の大気環境モニタリングを行っています。今般、平成26年度の調査結果について、環境省が行った大気環境モニタリングの調査結果をとりまとめました。

1. 概要

 平成8年5月に大気汚染防止法が改正され、低濃度ではあるが長期曝露によって人の健康を損なうおそれのある有害大気汚染物質の対策について制度化された。これを受け、平成8年10月の中央環境審議会答申(第二次答申)において、「有害大気汚染物質に該当する可能性がある物質」として234物質、その中でも有害性の程度や大気環境の状況等に鑑み健康リスクがある程度高いと考えられる物質として22の「優先取組物質」がリスト化され、平成10年度から、大気汚染防止法に基づき地方公共団体(都道府県及び大気汚染防止法の政令市)において優先取組物質のモニタリングが本格的に行われている。
 また、上記リストについては、平成22年10月の中央環境審議会答申(第九次答申)において、「有害大気汚染物質に該当する可能性がある物質」が248物質、「優先取組物質」が23物質に見直された。
 今般、地方公共団体が平成25年度に行った有害大気汚染物質の大気環境モニタリング調査結果を、環境省の調査結果と併せて公表することとした。23物質のうちダイオキシン類については、ダイオキシン類対策特別措置法に基づき別途モニタリングが行われていること、「六価クロム化合物」及び「クロム及び三価クロム化合物」については、形態別分析方法が確立されていないことから「クロム及びその化合物」として測定していることを踏まえ、最終的に21物質の調査結果を取りまとめている。
 なお、調査地点によっては、測定頻度が少なく、年平均値を算出し環境基準等との比較評価ができない結果もあるが、有害大気汚染物質の大気環境中の濃度を把握する上で貴重な情報となるため、これらの調査結果についても併せて示している。

2. 調査方法、対象物質及び測定地点数

(1)調査方法

 「大気汚染防止法第22条の規定に基づく大気の汚染の状況の常時監視に関する事務の処理基準」(平成13年5月21日環境省策定、平成25年8月30日最終改正。以下「処理基準」という。)及び「有害大気汚染物質測定方法マニュアル」(平成9年2月12日環境庁(当時)策定、平成23年3月最終改正)に準拠して調査を行った。

(2)対象物質(21物質)

 ①環境基準が設定されている物質(4物質)

   ベンゼン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロメタン

②環境中の有害大気汚染物質による健康リスクの低減を図るための指針となる数値(以下「指針値」という。)が設定されている物質(9物質)

   アクリロニトリル、塩化ビニルモノマー、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、水銀及びその化合物、    

  ニッケル化合物、ヒ素及びその化合物、1,3-ブタジエン、マンガン及びその化合物

 ③環境基準等が設定されていないその他の有害大気汚染物質(8物質)

   アセトアルデヒド、塩化メチル、クロム及びその化合物、酸化エチレン、トルエン、

  ベリリウム及びその化合物、ベンゾ[a]ピレン、ホルムアルデヒド

(3)測定地点

 測定地点の属性は、処理基準に基づき「一般環境」、「固定発生源周辺」及び「沿道」の3種類に区分されており、「固定発生源周辺」と「沿道」の両方に該当する地点を「沿道かつ固定発生源周辺」としている。測定値点の属性は、物質ごとに発生源からの排出の状況等を考慮しつつ、地域の実情に応じて決定している。

 このため、測定地点数及び4種類の区分の割合は物質によって異なり、測定地点数については、最小227地点(酸化エチレン)、最大404地点(ベンゼン)である。

3. 測定値の評価

 長期曝露による健康リスクが懸念されている物質であるため、月1回以上の頻度で1年間測定した地点に限って環境基準及び指針値の達成の評価をしている。

 環境基準とは、環境基本法に基づき設定される、人の健康を保護し、及び生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準であり、以下のように設定されている。

物質 環境上の条件
ベンゼン 1年平均値が3 μg/m3以下であること。
トリクロロエチレン 1年平均値が200 μg/m3以下であること。
テトラクロロエチレン 1年平均値が200 μg/m3以下であること。
ジクロロメタン 1年平均値が150 μg/m3以下であること。

 指針値とは、有害性評価に係るデータの科学的信頼性において制約がある場合も含めて検討された、環境中の有害大気汚染物質による健康リスクの低減を図るための指針となる数値であり、現に行われている大気モニタリングの評価にあたっての指標や事業者による排出抑制努力の指標としての機能を果たすことが期待されるものであり、以下のように設定されている。

物質 環境上の条件
アクリロニトリル 1年平均値が2 μg/m3以下であること。
塩化ビニルモノマー 1年平均値が10 μg/m3以下であること。
クロロホルム 1年平均値が18 μg/m3以下であること。
1.2-ジクロロエタン 1年平均値が1.6 μg/m3以下であること。
水銀 1年平均値が40 ng Hg/m3以下であること。
ニッケル化合物 1年平均値が25 ng Ni/m3以下であること。
ヒ素及びその化合物 1年平均値が6 ng As/m3以下であること。
1.3-ブタジエン 1年平均値が2.5 μg/m3以下であること。
マンガン及びその化合物 1年平均値が140 ng Mn/m3以下であること。

 なお、取りまとめた集計結果の一部については、環境基準等の達成の評価に必要とされる頻度で測定していない調査地点(以下「参考地点」という。)の結果も含めている。

4.調査結果の概要

 対象21物質の平成26年度調査結果は以下のとおり。([]は平成25年度実績)

 なお、各物質の環境基準超過地点数及び年平均値の推移は、「(参考資料1)モニタリング調査結果の概要(優先取組物質21物質)を参照のこと。

(1)環境基準が設定されている物質(4物質)

 全ての物質において全ての地点で環境基準を達成していた。

<ベンゼン>

<トリクロロエチレン>

<テトラクロロエチレン>

<ジクロロメタン>

   

(2)指針値が設定されている物質(9物質)

 1,2-ジクロロエタンは固定発生源周辺の2地点、ニッケル化合物は固定発生源周辺の1地点、ヒ素及びその化合物は一般環境の1地点と固定発生源周辺の5地点で指針値を超過した。これらの超過地点については、地方公共団体において発生源の調査、排出抑制の指導等の措置が講じられている。その他の6物質は、全ての地点で指針値を達成していた。

<アクリロニトリル>

<塩化ビニルモノマー>

<クロロホルム>

<1,2-ジクロロエタン>

<水銀及びその化合物>

<ニッケル化合物>

<ヒ素及びその化合物>

<1,3-ブタジエン>

<マンガン及びその化合物>

(3)環境基準等が設定されていないその他の有害大気汚染物質(8物質)

 調査対象21物質のうち8物質については、環境基準や指針値が設定されていないが、アセトアルデヒド、クロム及びその化合物、ベリリウム及びその化合物、ベンゾ[a]ピレン、ホルムアルデヒドはゆるやかな低下傾向、塩化メチル、酸化エチレン、トルエンはほぼ横ばいであった。

5.今後の対応

 改正処理基準の適用により測定地点数や各測定地点の測定項目数が大幅に変動する場合にあっては、平成26年度から3年を目途に測定地点や測定項目の見直しを行う。

 今後とも、化学物質排出移動量届出制度(PRTR)による排出量データ及び有害大気汚染物質モニタリング調査結果等により、排出量や大気環境濃度等を継続的に検証・評価し、地方公共団体及び関係団体等との連携の下、有害大気汚染物質対策を推進していくこととしている。

参考資料

資料編

平成26年度 大気汚染状況について(有害大気汚染物質モニタリング調査結果)