大気環境・自動車対策

平成29年度 大気汚染状況について

1.調査の概要

 大気汚染防止法(以下「大防法」という。)第22条に基づき、都道府県及び大防法上の政令市において大気汚染状況の常時監視が行われており、環境省においても大気環境モニタリングを行っています。今般、平成29年度における常時監視測定結果を取りまとめました

 対象物質は、環境基準が設定されている6物質です。平成29年度末時点の測定局数は全国で1,873局であり、内訳は一般環境大気測定局(以下「一般局」という。)が1,464局(国設局を含む。)、自動車排出ガス測定局(以下「自排局」という。)が409局(国設局を含む。)です。

2.測定結果の概要

(1) 微小粒子状物質(PM2.5)

 環境基準達成率は、一般局で89.9%、自排局で86.2%(平成28年度 一般局:88.7%、自排局:88.3%)であり、平成28年度に比べて、一般局は僅かに改善しましたが、自排局はやや低下しました。地域別の環境基準達成率の傾向をみると、関東地方、関西地方の主に都市部で環境基準を達成していない地域が見られる他、中国・四国地方の瀬戸内海に面する地域、九州地方では依然として環境基準達成率の低い地域があります。

 全測定局の年平均値は、一般局で11.6μg/m3、自排局で12.5μg/m3であり、平成25年度以降緩やかな改善傾向が続いています。

 季節別の傾向をみると、平成29年度は夏季の濃度が低く、平成29年10月の月平均値が最も低くなった一方、平成29年5月の西日本、平成29年11~12月の関東地方、平成30年3月の全国において、日平均値が35μg/m3を超過した日数が多くなりました。平成29年度の夏季は、平成28年度の夏季と同様に冷夏となったため、光化学反応による二次生成粒子の生成が抑制されたこと、平成29年10月は、秋雨前線や超大型台風の影響で降水量が多かったことが低濃度の要因として考えられます。一方、平成29年5月と平成30年3月は、移動性高気圧の周回流により大陸起源の大気汚染物質が飛来するとともに、晴れの日が多く、日照時間が長かったため、国内において二次生成粒子の生成が促進され、各地方で高濃度となる日が多くなったと考えられます。また、平成29年度の冬季は、平成28年度の冬季に比べて、特に関東地方で晴れの日が多く、風速が弱かったため、夜間の接地逆転層により国内起源の大気汚染物質が下層に蓄積され、高濃度となる日が多くなったと考えられます。

(2) 光化学オキシダント(Ox

 環境基準達成率は、一般局、自排局ともに0%(平成28年度 一般局:0.1%、自排局:0%)であり、達成状況は依然として極めて低い水準となっています。

 また、昼間の日最高1時間値の年平均値については、近年、一般局、自排局ともにほぼ横ばいで推移しています。

 光化学オキシダント濃度の長期的な改善傾向を評価するための指標を用いて、注意報発令レベルの超過割合が多い地域である関東地域や阪神地域などの域内最高値の経年変化をみると、平成18~20年度頃から域内最高値は減少傾向であったが、近年ではほぼ横ばい傾向となっています。

 ※光化学オキシダント濃度8時間値の日最高値の年間99パーセンタイル値の3年平均値

(3) その他の大気汚染物質

 二酸化窒素(NO2)の環境基準達成率は、一般局で100%、自排局で99.7%(平成28年度 一般局:100%、自排局:99.7%)でした。

 浮遊粒子状物質(SPM)の環境基準達成率は、一般局で99.8%、自排局で100%(平成28年度 一般局:100%、自排局:100%)でした。

 二酸化硫黄(SO2)の環境基準達成率は、一般局で99.8%、自排局で100%(平成28年度 一般局:100%、自排局:100%)でした。

 一酸化炭素(CO)の環境基準達成率は、一般局、自排局とも100%でした。

 なお、いずれの大気汚染物質においても、年平均値については、近年、一般局、自排局ともに緩やかな低下傾向がみられます。

3.今後の対応

 環境省においては、引き続き環境基準の達成・維持に向けて、工場・事業場からの排出抑制対策、自動車排出ガス対策、低公害車の普及等を総合的に推進していきます。

 PM2.5については、中央環境審議会の微小粒子状物質等専門委員会の中間取りまとめ(平成27年3月)を踏まえ、PM2.5の原因物質である各種の大気汚染物質について、排出抑制対策の強化を検討・実施するとともに、総合的な対策に取り組む上で基礎となる現象解明、情報整備等に取り組み、その進捗状況に応じて追加的な対策を検討していきます。

 光化学オキシダントについては、「光化学オキシダント調査検討会」が平成29年3月に取りまとめた報告書において、原因物質である窒素酸化物と揮発性有機化合物の排出量比を十分に考慮して両者を削減する必要性が示唆されたことなどを踏まえ、引き続き、原因物質の排出抑制対策を進めます。