大気環境・自動車対策

平成28年度 大気汚染状況について

1.測定局の概要

 大気汚染防止法(以下「大防法」という。)第22条に基づき、都道府県及び大防法上の政令市において、大気汚染状況の常時監視が行われています。今般、平成28年度における主な大気汚染物質の濃度測定結果の概要を取りまとめました。このうち、微小粒子状物質(PM2.5)の環境基準達成率は、一般環境大気測定局で88.7%、自動車排出ガス測定局で88.3%となり、いずれも前年度に比べて改善しました。

 平成28 年度末現在の測定局数は、全国で1,872 局であり、内訳は一般環境大気測定局(以下「一般局」という。)が1,463 局(国設局を含む。)、自動車排出ガス測定局(以下「自排局」という。)が409 局(国設局を含む。)となっています。

2.主な大気汚染物質の濃度測定結果の概要

(1)二酸化窒素(NO₂)

 環境基準達成率は、一般局で100%、自排局で99.7%(平成27 年度 一般局:100%、自排局:99.8%)であり、一般局では全ての局で達成し、自排局ではほぼ横ばいでした。

 自動車NOx・PM法の対策地域における環境基準達成率についても、一般局では平成18年以降100%、自排局では99.5%で平成27 年度(99.5%)と同水準でした。

 また、年平均値の推移については、一般局、自排局で緩やかな低下傾向がみられます。

(2) 浮遊粒子状物質(SPM)

 環境基準達成率は、一般局、自排局とも100%(平成27 年度 一般局:99.6%、自排局:99.7%)であり、昭和49 年以降で初めて全ての測定局で環境基準を達成しました。

 自動車NOx・PM法の対策地域についても同様に、一般局、自排局ともに100%(平成27 年度 一般局:100%、自排局:99.5%)の達成率でした。

 また、年平均値については、一般局、自排局で緩やかな低下傾向がみられます。

(3) 光化学オキシダント(Ox

 環境基準達成率は、一般局で0.1%、自排局で0%(平成27 年度 一般局:0%、自排局:0%)であり、達成状況は依然として極めて低い水準となっています。

 また、昼間の日最高1時間値の年平均値については、近年ほぼ横ばいで推移しています。

 光化学オキシダント濃度の長期的な改善傾向を評価するための指標※を用いて、注意報
発令レベルの超過割合が多い地域である関東地域や阪神地域などの域内最高値の経年変化をみると、近年、域内最高値は横ばい傾向にありましたが、平成26~28 年度では関東地域において減少傾向となりました。

 ※光化学オキシダント濃度8時間値の日最高値の年間99 パーセンタイル値の3年平均値

(4) 二酸化硫黄(SO₂)

 環境基準達成率は、一般局、自排局とも100%(平成27 年度 一般局:99.9%、自排局:100%)であり、近年ほとんど全ての測定局で環境基準を達成しています。

(5) 一酸化炭素(CO)

 環境基準達成率は、一般局、自排局とも100%(平成27 年度 一般局:100%、自排局:100%)であり、昭和58 年以降全ての測定局で環境基準を達成しています。

(6) 微小粒子状物質(PM2.5)

 環境基準達成率は、一般局で88.7%、自排局で88.3%(平成27年度 一般局:74.5%、自排局:58.4%)であり、一般局、自排局ともに改善しました。一方、北部九州地域や四国地方の瀬戸内海に面する地域においては、依然として環境基準達成率(県別)が一般局で30%から60%程度の低い地域があります。

 PM2.5については、長期基準(年平均値15μg/m3以下)と短期基準(1日平均値35μg/m3以下)の両者を達成した場合に、環境基準を達成したと評価しています。

 長期基準の達成率は、一般局で89.2%、自排局で89.7%(平成27年度 一般局80.7%、自排局:68.5%)であり、平成27年度に比べ改善しました。短期基準の達成率は、一般局で97.2%、自排局で96.0%(平成27年度 一般局:78.3%、自排局:71.2%)であり、平成27年度に比べ改善しました。

 全測定局の年平均値は一般局(11.9μg/m3)、自排局(12.6μg/m3)ともに、平成22年度以降で最も低くなっており、平成25年度以降緩やかな改善傾向が続いています。

 また、一般局、自排局のPM2.5濃度の年平均値のヒストグラムを比較すると、自排局のPM2.5濃度分布は一般局に比べて高い濃度域にあることが確認できます。

 季節別の傾向をみると、平成28年度は夏季と冬季の濃度が低下しており、日平均値が35 μg/m3を超過した延べ日数も大幅に減少しました。平成28年の夏季は梅雨や台風の影響による降水量が多く、光化学反応により生成した二次粒子が数日~数週間にわたり広域に蓄積することで濃度が上がり続ける高濃度現象が発生しませんでした。また、冬季は寒気の南下が弱く、全国的な暖冬となり、接地逆転層や弱風等の局地的な気象条件による高濃度現象が発生しにくい気象状況となりました。これらの気象要因により短期基準の超過日が減少し、環境基準達成率が改善した可能性が考えられます。

 PM2.5の成分分析は、全国190地点で実施されました。このうち、通年(四季)で質量濃度と炭素成分及びイオン成分が測定された地点は167地点であり、その内訳は一般環境116地点、道路沿道32地点、バックグラウンド19地点でした。

 成分組成については、道路沿道では、元素状炭素の割合が他の地点よりやや高いほか、バックグラウンドでは、硝酸イオン、元素状炭素の割合が低く、硫酸イオンの割合がやや高くなっていました。

3.今後の対応

 環境省においては、引き続き環境基準の達成・維持に向けて、工場・事業場からのばい煙排出対策、自動車排出ガス対策、低公害車の普及等を総合的に推進していきます。

 PM2.5 については、中央環境審議会の微小粒子状物質等専門委員会の中間取りまとめ(平成27 年3月)を踏まえPM2.5 の原因物質である各種の大気汚染物質について、排出抑制対策の強化を検討・実施するとともに、総合的な対策に取り組む上で基礎となる現象解明、情報整備等に取り組み、その進捗状況に応じて追加的な対策を検討することとしています。

 光化学オキシダントについては、「光化学オキシダント調査検討会」が平成29 年3月に取りまとめた報告書において、原因物質である窒素酸化物と揮発性有機化合物の排出量比を十分に考慮して両者を削減する必要性が示唆されたことなどの調査結果を踏まえ、対策の更なる推進について具体的に検討する必要があるとされています。これを踏まえ、引き続き、原因物質の排出抑制対策を進めることとしています。

 国際的には、平成26 年から、中国大気環境改善のための日中都市間連携協力におけるPM2.5 原因物質の排出削減技術のモデル実証事業及びPM2.5 発生源解析に関する共同研究、大気汚染に関する日中韓3カ国政策対話及び国連環境計画(UNEP)と連携したアジア太平洋クリーン・エア・パートナーシップの活動における政策等の情報共有、クリーン・エア・アジア(CAA)と連携した大気環境改善のための統合プログラム(IBAQ)における能力向上活動等を進めており、引き続き、アジア各国及び国際機関と連携してこれらの取組を効率的に進めることとしています。