大気環境・自動車対策

平成27年度 大気汚染状況について

1.測定局の概要

 大気汚染防止法に基づき、都道府県等は大気汚染状況の常時監視を行っています。主な大気汚染物質の測定結果は、「大気汚染物質広域監視システム(愛称:そらまめくん)」においてインターネット上で随時、速報値として公表されています。1年間のデータの確定値については、環境省では毎年度、都道府県等から報告していただき、それらを集計した上で、専門家の助言を踏まえ、全国の環境基準の達成状況等を評価し、公表しています。今回の報告は、平成27年度の測定結果の確定値を取りまとめたものです。

 なお、平成27年度末現在の測定局数は、全国で1,884局であり、内訳は一般環境大気測定局(以下「一般局」という)が1,471局(国設局を含む)、自動車排出ガス測定局(以下「自排局」という)が413局(国設局を含む)となっています。

2.主な大気汚染物質の濃度測定結果の概要

(1)二酸化窒素(NO

 環境基準達成率は、一般局で100%、自排局で99.8%(平成26年度 一般局:100%、自排局:99.5%)であり、一般局ではすべての局で達成し、自排局ではほぼ横ばいでした。

 自動車NO・PM法の対策地域における環境基準達成率についても、一般局では10年連続で100%、自排局では99.5%で平成26年度(99.1%)とほぼ同水準でした。

 また、年平均値の推移については、一般局、自排局でゆるやかな低下傾向がみられます。

(2) 浮遊粒子状物質(SPM)

 環境基準達成率は、一般局で99.6%、自排局で99.7%(平成26年度 一般局:99.7%、自排局:100%)であり、一般局、自排局ともにほぼ横ばいでした。

 自動車NO・PM法の対策地域については、一般局で100%、自排局で99.5%(平成26年度 一般局:99.8%、自排局:100%)の達成率であり、一般局、自排局ともほぼ横ばいでした。

 また、年平均値については、一般局、自排局とも近年ほぼ横ばいで推移しています。

(3) 光化学オキシダント(O

 環境基準達成率は、一般局、自排局ともに0%(平成26年度 一般局:0%、自排局:3.6%)であり、達成状況は依然として極めて低い水準となっています。

 また、昼間の日最高1時間値の年平均値については、近年ほぼ横ばいで推移しています。

 光化学オキシダント濃度の長期的な改善傾向を評価するための指標※を用いて、注意報発令レベルの超過割合が多い地域である関東地域や阪神地域などの域内最高値の経年変化をみると、近年、域内最高値が低下傾向にありましたが、平成25~27年度では関東地域、東海地域、阪神地域においてやや上昇しました。

 ※光化学オキシダント濃度8時間値の日最高値の年間99パーセンタイル値の3年平均値

(4) 二酸化硫黄(SO

 環境基準達成率は、一般局で99.9%、自排局で100%(平成26年度 一般局:99.6%、自排局:100%)であり、近年ほとんどすべての測定局で環境基準を達成しています。

(5) 一酸化炭素(CO)

 環境基準達成率は、一般局、自排局とも100%(平成26年度 一般局:100%、自排局:100%)であり、昭和58年以降すべての測定局で環境基準を達成しています。

(6)微小粒子状物質(PM2.5)

 環境基準達成率は、一般局で74.5%、自排局で58.4%(平成26年度 一般局:37.8%、自排局:25.8%)であり、一般局、自排局ともに改善しました。

 PM2.5については、長期基準(年平均値15μg/m3以下)と短期基準(1日平均値35μg/m3以下)の両者を達成した場合に、環境基準を達成したと評価しています。

 長期基準の達成率は、一般局で80.6%、自排局で68.5%(平成26年度 一般局:60.3%、自排局:44.4%)であり、平成26年度に比べ改善しました。短期基準の達成率は、一般局で78.3%、自排局で71.2%(平成26年度 一般局:40.6%、自排局:28.8%)であり、平成26年度に比べ改善しました。

 全測定局の年平均値は一般局、自排局ともに平成26年度まで横ばいで推移していましたが、平成27年度は一般局(13.1μg/m3)、自排局(13.9μg/m3)ともに、平成22年度以降で初めて年平均値が長期基準の基準値を下回りました。

 平成27年の4~5月頃は、太平洋高気圧の張り出しが平年より強く、低気圧が日本の北を通り、全国的に南からの暖かい空気が入りやすくなりました。これにより、大陸からの越境汚染による高濃度日が発生しにくい気象状況となったと考えられます。さらに、6~7月頃は西日本を中心に前線や台風、湿った気流の影響を受けやすく多雨・寡照となり、光化学反応による二次的な粒子が生成されにくい気象状況となりました。これらの要因により日平均値、年平均値が低下し、環境基準の達成率が改善したと考えられます。また、中国のPM2.5年平均値は低下傾向にあり、高濃度のPM2.5越境汚染の生じる頻度が減少したと考えられることや、国内のPM2.5の原因物質(NOx、VOCなど)の排出量が減少傾向にあることも平成27年度のPM2.5濃度の低下傾向に影響を及ぼした可能性がありますが、今後の傾向については引き続き注視していく必要があります。

 PM2.5の成分分析は、全国192地点で実施されました。このうち、通年(四季)で質量濃度と炭素成分及びイオン成分が測定された地点は163地点であり、その内訳は一般環境110地点(年平均濃度:16.1μg/m3)、道路沿道33地点(年平均濃度:17.0μg/m3)、バックグラウンド20地点(年平均濃度:11.6μg/m3)でした。

 成分組成については、道路沿道では、元素状炭素の割合が他の地点よりやや高いほか、バックグラウンドでは、硝酸イオン、元素状炭素の割合が低く、硫酸イオンの割合がやや高くなっていました。

3.今後の対応

 環境省においては、本調査結果を踏まえ、環境基準の達成・維持に向けて、工場・事業場からのばい煙排出対策、自動車排出ガス対策、低公害車の普及等を引き続き総合的に推進していきます。

 PM2.5については、中央環境審議会の微小粒子状物質等専門委員会の中間取りまとめ(平成27年3月)を踏まえ、PM2.5の原因物質である各種の大気汚染物質について、排出抑制対策の強化を検討・実施するとともに、総合的な対策に取り組む上で基礎となる現象解明、情報整備等に取り組み、その進捗状況に応じて追加的な対策を検討することとしています。

 光化学オキシダントについては、原因物質である窒素酸化物や揮発性有機化合物の排出抑制対策を進めてきています。光化学オキシダント濃度の経年変化の要因や原因物質の削減対策の効果について、環境省の「光化学オキシダント調査検討会」が取りまとめる報告書も踏まえ、原因物質の排出抑制対策について検討を進めることとしています。

 国際的には、平成27年11月に韓国・ソウルで開催された日中韓サミットで採択された共同宣言に基づき、大気汚染に関する日中韓三カ国政策対話を通じた協力を推進することとしています。本年2月23日、24日には、中国・杭州で第4回となる政策対話を開催し、三ヵ国の最近の大気汚染に関する政策及び技術について情報共有・意見交換を行い、ワーキンググループにおいて今後議論すべき具体的事項等について合意したところです。引き続き、日中韓の三ヵ国による協力を強化するとともに、特に日中の地方自治体間で協力を進める都市間連携協力事業について、一層協力を進めることとしています。