大気環境・自動車対策

平成16年度騒音規制法施行状況調査について

平成17年11月29日(火)
環境省水・大気環境局大気生活環境室
 室長  瀬川 俊郎(内線6540)
 補佐  藤本 正典(内線6543)
 担当  齋藤,迫越(内線6546)


平成16年度の集計結果については、平成17年11月29日に報道発表を行ったところですが、報道発表後に一部地方公共団体において苦情件数の繰り越し分を平成16年度年度受付分として計上していることが明らかになりました。このため、苦情に係る部分(網掛け部分)を修正しました。


参考:騒音規制法、振動規制法施行状況調査の「苦情件数」は、報告年度中に都道府県又は市区町村が騒音及び振動に係る苦情を受けた件数(前年度以前から繰り越しているものは含まない。他機関から移送されたものは含む。)を集計しています。

 環境省は,全国の都道府県等の報告に基づき,平成16年度における騒音苦情の状況及び騒音規制法の施行状況を取りまとめた。その概要は次のとおりである。

(1)騒音に係る環境基準の現状
 騒音に係る環境基準が平成11年4月1日から施行され(平成10年環境庁告示第64号)6カ年が経過した。地域類型のあてはめ地域を有する市区町村は、平成16年末現在、全国の市町村数の約63.4%に当たる1,614市区町村であった。
 平成16年度に環境騒音の測定を実施した地方公共団体数は672であった。
(2)騒音苦情の状況
 騒音に係る苦情の件数は,平成16年度は16,215件(前年度15,928件)で,前年度に比べて287件(約1.8%)増加した。
 苦情の主な発生源別内訳を見ると,工場・事業場騒音が最も多く5,650件(全体の約34.8%),次いで建設作業騒音が4,653件(約28.7%),営業騒音が1,775件(約11.0%)であった。
 前年度と比較すると,工場・事業場に係る苦情が309件,建設作業騒音に係る苦情が351件増加し,営業騒音に係る苦情が388件減少した。
(3)騒音規制法の施行状況
 騒音規制法に基づく規制地域を有する市区町村は,平成16年度末現在,全国の市区町村の約69.3%に当たる1,763市区町村であった。
 同法に基づき届出された規制対象の工場・事業場(特定工場等)の総数は,平成16年度末現在で,全国で207,494件(前年度207,950件)となっている。特定工場等に対する法に基づく立入検査は937件(前年度889件),改善勧告は4件(前年度6件)行われ,改善命令は行われなかった(前年度0件)。この他,行政指導が1,189件(前年度924件)行われた。
 また,同法に基づき届出された建設作業(特定建設作業)の総数は67,942件(前年度68,333件)となっている。特定建設作業に対する法に基づく立入検査は1,176件(前年度1,271件),改善勧告及び改善命令は行われなかった(前年度1件、0件)。この他,行政指導が1,510件(前年度1,352件)行われた。

1.目的

 環境省では,騒音防止行政の一層の推進を図るため,毎年度,全国の都道府県,指定都市,中核市,特例市及び特別区を通じ,騒音に係る苦情の状況,騒音規制法に基づく各種措置の施行状況等について調査を行い,その結果を取りまとめている。

2.調査結果

(1)騒音に係る環境基準の類型当てはめ状況

 環境基本法に基づく環境基準の類型当てはめ地域を有する市区町村数は,平成16年度末現在1,614で,全国の市区町村数の約63.4%(平成15年度57.3%)に相当した。(表1参照)

(2)騒音規制法に係る地域指定の状況

 騒音規制法に基づき地域指定が行われている市区町村数は,平成16年度末現在1,763で,全国の市区町村数の約69.3%(平成15年度66.2%)に相当した。(表1参照)

表1 環境基準類型当てはめ状況及び騒音規制法地域指定状況(平成16年度末現在) 表:表1 環境基準類型当てはめ状況及び騒音規制法地域指定状況(平成16年度末現在)

(3)一般地域における環境基準の適合状況

 全国の一般地域(道路に面する地域以外の地域)における環境騒音の状況を把握するため,地方公共団体により測定された環境騒音の環境基準の適合状況について調査した。(表2参照)

[1] 環境騒音の測定実施状況

 平成16年度に環境騒音の測定を実施した地方公共団体数は672(平成15年度261)で,環境基準の類型当てはめがなされている1,614市区町村数の約41.6%であった。
 測定地点の総数は4,129地点(同4,493地点)であり,そのうち定点測定地点数(毎年度実施しているものとは限らない)は2,999地点(同3,007地点)で,全体の約72.6%となった。

[2] 環境基準の適合状況

 地域の騒音状況をマクロに把握するために必要な地点を選定している場合と,騒音に係る問題を生じやすい地点等を選定している場合とに分けて集計を行っている。

ア 地域の騒音状況をマクロに把握するために必要な地点を選定している場合
 全測定地点3,579地点(同3,721地点)のうち約74.2%の地点で環境基準に適合(同72.9%)した。
 地域類型別にみた場合,A類型及びB類型地域(住居系地域)では2,649地点(同2,919地点)のうち約73.4%の地点で適合(同71.6%)し,C類型地域(住居・商工業混在地域)では905地点(同794地点)のうち約76.8%の地点で適合(同77.5%)した。
イ 騒音に係る問題を生じやすい地点等を選定している場合
 全測定地点550地点(同772地点)のうち約71.6%の地点で適合(同70.9%)した。
 地域類型別にみると,A類型及びB類型地域では370地点(同563地点)のうち約67.8%の地点で適合(同67.0%)し,C類型地域では155地点(同207地点)のうち76.1%の地点で適合(同81.6%)した。
(注)この集計における環境基準の適合・不適合の判定については,原則として測定した全ての時間帯において環境基準を満たした場合を「適合」とした。

表2 一般地域における環境基準の測定及び適合状況(道路に面する地域を除く)
表:表2 一般地域における環境基準の測定及び適合状況(道路に面する地域を除く)

AA :
特に静穏を要する地域
A :
専ら住居の用に供される地域
B :
主として住居の用に供される地域
C :
相当数の住居と併せて商業,工業等の用に供される地域

[3] 環境基準の適合状況の経年変化

平成12年度から平成16年度までの過去5カ年の適合状況(図1参照)を示した。

図:図1 過去5カ年の一般地域における環境基準適合状況
図1 過去5カ年の一般地域における環境基準適合状況

(4)騒音苦情の状況

[1] 平成16年度に全国の地方公共団体が受理した騒音苦情の件数は,16,215件であった。これは,平成15年度(15,928件)と比べて287件,約1.8%の増加となる。(図2参照)

図:図2 騒音苦情件数の推移
図2 騒音苦情件数の推移

[2] 苦情件数を都道府県別に見ると,東京都の3,310件が最も多く,次いで愛知県1,660件,大阪府1,401件,埼玉県1,270件,神奈川県1,224件の順となっており,この5都府県で全国の騒音苦情件数の5割以上を占めた。(表3参照)

[3] 苦情件数を発生源別に見ると,工場・事業場騒音が5,650件(34.8%)で最も多く,次いで建設作業騒音が4,653件(28.7%),営業騒音が1,775件(11.0%),家庭生活騒音が1,015件(6.3%)の順となった。
 これを平成15年度と比較すると,工場・事業場に係る苦情が309件,建設作業騒音に係る苦情が351件増加し,飲食店,興行場,娯楽施設等の営業騒音に係る苦情が388件減少した。 (図3,4参照)

表3 都道府県別苦情件数(上位5都道府県)
表:表3 都道府県別苦情件数(上位5都道府県)

※人口は平成16年10月1日現在の総務省統計局現在推計人口による

表4 苦情件数の都道府県別対前年度増減状況
表:表4 苦情件数の都道府県別対前年度増減状況

△は減を示す

図:図3 騒音に係る苦情の内訳
図3 騒音に係る苦情の内訳

図:図4 過去3か年の苦情件数の発生源別内訳
図4 過去3か年の苦情件数の発生源別内訳
 

[4] 規制対象とそれ以外の苦情件数との比較

 工場・事業場に対する苦情総数5,650件のうち,法の規制対象となる指定地域内の特定工場等に対するものは,約22.4%の1,267件であり,建設作業に対する苦情総数4,653件のうち,同指定地域内の特定建設作業に対する苦情は約34.5%の1,605件となった。(表5参照)

 

表5 規制対象・非対象別苦情件数 (工場等、建設作業)
表:表5 規制対象・非対象別苦情件数 (工場等、建設作業)

(5)規制の状況

(5)-1工場・事業場に対する規制の状況

[1] 特定工場等総数及び特定施設の届出数

 騒音規制法に基づき届出された特定工場等の総数は,平成16年度末現在で207,494(平成15年度末現在207,950)で,前年度より456件減少した。(表6参照)
 また,特定施設の総数は1,515,306(同1,520,455)となった。
 特定工場等の内訳を見ると,空気圧縮機等を設置しているものが約37.7%と最も多く,以下,金属加工機械を設置しているものが約21.5%,織機を設置しているものが約11.8%の順となった。
 特定施設の内訳を見ると,空気圧縮機等が約40.1%と最も多く,以下,織機が約25.2%,金属加工機械が約18.4%の順となった。(表7参照)

表6 特定工場等数及び特定建設作業件数の最近の推移
表:表6 特定工場等数及び特定建設作業件数の最近の推移

表7 法に基づく届出件数(平成16年度末現在)
表:表7 法に基づく届出件数(平成16年度末現在)

注)特定工場等とは,特定施設を有し,法の規制対象となる工場・事業場をいう。

[2] 法に基づく措置等の状況

 指定地域内の特定工場等に係る苦情1,267件(平成15年度1,077件)に対して,平成16年度に行われた騒音規制法に基づく措置の件数は,報告の徴収213件(同223件),立入検査937件(同889件),騒音の測定464件(同460件)であった。騒音測定の結果,規制基準を超えていたものは302件(同288件)であり,改善勧告は4件(同6件)行われ,改善命令は行われなかった(同0件)。 また,これらの措置のほか,騒音防止に関する行政指導が1,189件(同924件)行われた。(表8参照)
 

表8 指定地域内の特定工場等騒音に係る措置等の状況
表:表8 指定地域内の特定工場等騒音に係る措置等の状況

(4)-2特定建設作業に対する規制の状況

[1] 特定建設作業の実施届出件数

 平成16年度中の特定建設作業実施届出件数は67,942件(平成15年度68,333件)であり,その内訳を見ると,削岩機を使用する作業が32,215件(同32,594件)と最も多く,次いでバックホウを使用する作業が20,146件(同19,991件)の順になっており,これらで全体の約77.1%を占めた。(表6・表9参照)

表9 特定建設作業の届出件数
表:表9 特定建設作業の届出件数

[2] 法に基づく措置等の状況>

 指定地域内の特定建設作業に対する苦情1,605件(平成15年度1,466件)に対し,平成16年度に行われた騒音規制法に基づく措置の件数は,報告の徴収169件(同235件),立入検査1,176件(同1,271件),騒音の測定354件(同355件)であった。騒音測定の結果,基準を超えていたものは91件(同77件)であった。改善勧告及び改善命令は行われなかった(同1件、0件)。
 また,騒音防止に関する行政指導が1,510件(同1,352件)行われた。(表10参照)

表10 指定地域内の特定建設作業騒音に係る苦情件数及び措置等の状況
表:表10 指定地域内の特定建設作業騒音に係る苦情件数及び措置等の状況

(6)道路交通騒音に対する措置等の状況

 指定地域内の道路交通騒音の苦情331件(平成15年度355件)に対して,騒音の測定は111件(同195件)行われており,要請限度を超えていたものは26件(同32件)であった。また,道路管理者に対する道路の構造改善等の意見陳述が2件(同23件)行われた。都道府県公安委員会に対する交通規制等の要請は行われなかった。(同1件)。なお,これらの騒音規制法に基づく措置のほか,道路管理者に対する協力依頼等の措置が144件(同93件)行われ,都道府県公安委員会に対する同様の措置は6件行われた(同11件)。(表11参照)

表11 指定地域内の道路交通騒音に係る措置等の状況
表:表11 指定地域内の道路交通騒音に係る措置等の状況

(7)低周波音に係る苦情の状況

平成16年度に地方公共団体が受けた低周波音に係る苦情の件数は144件(平成15年度94件)であった。(図5,表12参照)
内訳を見ると,工場・事業場に係るものが49件(同45件)と最も多く約34.0%を占めた。

図:図5 低周波音に係る苦情件数の年次推移
図5 低周波音に係る苦情件数の年次推移

表12 低周波音に係る苦情件数の内訳
表:表12 低周波音に係る苦情件数の内訳

3.おわりに

 騒音に係る苦情の件数は前年度より増加しており、平成11年度以降の増加傾向が続いている。また、平成16年度の騒音苦情件数は依然として都市圏に集中している。
 低周波音苦情については前年度に比べて増加しており,高い状態にあることから引き続き防止事例等の知見の充実と対策・評価方法の周知が必要と考えている。
 今後,引き続き適切な法の運用のみならず,良好な音環境の創造を一層推進していく必要がある。

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