報道発表資料

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2014年10月16日
  • 自然環境

モニタリングサイト1000ウミガメ調査2004-2012年度とりまとめ報告書の公表について(お知らせ)

 環境省生物多様性センターでは、モニタリングサイト1000事業の中で、全国のウミガメ類の産卵状況などについて、約10年間の調査結果のとりまとめを初めて実施しました。本調査は全国のウミガメ類を対象とした調査で、ウミガメ類が産卵に訪れる全国の主な砂浜41サイトにおいて、主に地元のボランティアの方々に協力いただきアオウミガメ、アカウミガメ、タイマイの3種の上陸数及び産卵回数の調査等を実施しており、NPO法人日本ウミガメ協議会にとりまとめを協力していただいています。
 調査結果のとりまとめから、3種すべてのウミガメ類において、調査開始当初にくらべ近年は産卵回数が増加傾向にあることがわかりました。一方で、調査を実施している複数のサイトから、イノシシ、タヌキなどの哺乳類によるウミガメ卵の捕食被害が報告されています。今後は3種のウミガメの上陸・産卵回数を引き続きモニタリングして長期的な傾向を把握していくとともに、問題が顕在化しつつある哺乳類によるウミガメの卵の捕食状況についても詳しく調べる予定です。

1.モニタリングサイト1000ウミガメ調査

モニタリングサイト1000(重要生態系監視地域調査)は、わが国を代表する様々な生態系の変化状況を把握し、生物多様性保全施策への活用に資することを目的とした調査で、全国約1,000箇所のモニタリングサイトにおいて、2003(平成15)年度から継続的に実施しています。

ウミガメ調査は、砂浜生態系における調査対象として2004(平成16)年度から調査を開始しました。本調査は、全国のウミガメ類を対象とした調査で、ウミガメ類が産卵に訪れる全国の主な砂浜41サイト(図1)において、主に地元のボランティアの方々に協力いただき、アオウミガメ、アカウミガメ、タイマイの3種のウミガメ(図2)の上陸や産卵状況に関する調査を実施しており、NPO法人日本ウミガメ協議会にとりまとめを協力していただいています。その他、データロガーを用いた1時間毎の砂浜の温度測定や過去と現在の航空写真を比較し、砂浜や海岸の経時的な変化状況の把握も行っています。

2.とりまとめの方法

モニタリングサイト1000は、5年に1度を節目として、生態系毎にそれまでの調査成果をとりまとめることとしています。ウミガメ調査では、2013(平成25)年度に調査開始10年目を迎えましたが、2012年度までの9年分の結果について、今回初めてとりまとめを実施しました。

今回のとりまとめでは、2012年度調査までのデータを用いて、3種のウミガメ類の上陸や産卵の状況と産卵場となる砂浜の環境要因データ、また、調査を通じて明らかになってきた問題等についてまとめました。

3.とりまとめの結果

ウミガメ調査のとりまとめで明らかになった結果を以下に抜粋して示します。

 (1)ウミガメ3種の産卵回数の推移

 アカウミガメは日本の広い地域で見られるウミガメであり、北は茨城県から南は沖縄県八重山諸島までで恒常的な上陸や産卵が確認されています。 アカウミガメの産卵回数は2004年度の調査開始以降、一時減少が認められましたが、2008年度から増加に転じ、2012年度調査では、今までの調査を通して最大数である9661回の産卵が確認されました(図3)。

 アオウミガメは、日本列島よりも南の地域に主要な産卵地があるため、日本では小笠原諸島と南西諸島の2地域のみで上陸・産卵が確認されるウミガメです。そのため、アカウミガメにくらべると産卵回数は少ないですが、アカウミガメに次いで産卵に多く訪れるウミガメです。南西諸島における産卵回数の推移を見ると、2004年度の調査開始以降は大きな変化は見られませんでしたが、2010年度以降は増加が見られています(図4)。

 タイマイは、サンゴ礁を主な生息場所とするため、アオウミガメと同様に日本列島よりも南の地域を主要な産卵地としています。わが国での上陸・産卵は極めてまれなウミガメであり、南西諸島の一部でわずかに確認される程度です。調査開始当初の2004年度から2006年度までの3年間は合わせて1回の産卵しか確認されていませんでしたが、2007年以降は継続的に毎年数回の産卵が確認されるようになりました。また、2011年度の調査では今まででもっとも多い9回の産卵が確認されています(図5)。

 以上のように調査対象である3種すべてのウミガメ類の結果を見ると、調査開始当初にくらべ近年は産卵回数が増加している傾向にあることがわかりました。

 (2)哺乳類によるウミガメ卵の捕食被害

2008年度以降、現地調査に協力いただいている各地の団体等から、ウミガメ卵の捕食被害に関する情報が多く寄せられるようになったことから、ウミガメ卵の哺乳類による捕食被害が明らかになってきました。

例えば、西表島の2箇所の調査サイトでは、リュウキュウイノシシにより産卵巣の食害が確認されており(図6)、多い年には全体の約60%の産卵巣で被害が確認されています。このリュウキュウイノシシによる同様の被害は、奄美大島においても確認されています。また、和歌山県のサイトでは、タヌキによるウミガメ卵の捕食が頻発しており、地元では防護柵を設けるなど捕食被害を防ぐ対策もとられています(図7)。

そのほかにも宮崎県や愛知県のいくつかのサイトでも哺乳類による卵の捕食に関する情報が寄せられており、捕食被害の実体を把握するため、今後はモニタリングサイト1000の事業において、全国的な調査を進めて行く予定です。

添付資料

連絡先
環境省自然環境局生物多様性センター
直通:0555-72-6033
センター長:中山 隆治
生態系監視科長:佐藤 直人
主任技術専門員:高久 宏佑

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