報道発表資料

平成25年7月29日
地球環境
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「低炭素社会国際研究ネットワーク(LCS-RNet)」第5回年次会合及び「低炭素アジア研究ネットワーク(LoCARNet)」第2回年次会合の開催結果について(お知らせ)

 長期的な気候安定化のためには、今のエネルギー高依存型社会からの脱却が不可欠であり、各国は2020年からの新たな枠組み作りに向けて長期的な戦略を立てつつあります。こうした政策形成に直接参加している研究者たちのコミュニティが日本の主導で作られ、これまで活動を行ってきました。一つは先進国同士の知識交換を進める「低炭素社会国際研究ネットワーク(LCS-RNet)」、もう一つは成長著しいアジア諸国が低炭素発展に向かう道筋を一緒になって考えていく「低炭素アジア研究ネットワーク(LCS-RNet)」です。これら二つのネットワークでは、各国低炭素・グリーン経済政策過程に密着して科学的な政策構築を支援する研究者・政策担当者・実務者が共通の課題について論議し、共同作業を行っています。
 今回、低炭素社会国際研究ネットワーク(LCS-RNet)第5回年次会合が7月22-23日に、また、低炭素アジア研究ネットワーク(LoCARNet)第2回年次会合が7月24-25日にパシフィコ横浜(神奈川県横浜市)で開催されました。前者については、18か国2国際機関から81名が、後者については15か国2国際機関から90名が出席しました。
 それぞれの会合の成果は統合報告書にまとめられ、本年11月末から開催される気候変動枠組条約第19回締約国会議(COP19)のサイドイベント等で発表・報告される予定です。また、上記のほかにも低炭素社会・低炭素成長に関連した様々な会合、機会に向け積極的に発信されます。

1.概要

【低炭素社会国際研究ネットワーク(LCS-RNet)】

(1)経緯

 LCS-RNetは、2008年5月のG8環境大臣会合(於神戸)において我が国の提案により設立が合意されたものである。それぞれ自国の低炭素社会を実現するための研究を行っている、各国を代表する研究機関により2009年4月に正式に立ち上げられた。我が国からは国立環境研究所(NIES)及び地球環境戦略研究機関(IGES)が参加。同月に開催されたG8環境大臣会合において、今後LCS-RNetの活動成果をG8環境大臣会合に定期的に報告していくよう求められた。2009年に第1回年次会合をボローニャ(イタリア)で開催し、その後2010年ベルリン(ドイツ)、2011年パリ(フランス)、2012年オックスフォード(英国)にてそれぞれ開催。

(2)目的

 LCS-RNetは、G8や気候変動枠組条約締約国会議などの気候政策の意思決定プロセスへ科学的知見を提供していくこと、低炭素社会研究や、こうした研究に関する情報交換を進めていくこと、さらに、政策決定者を含む関連のステークホルダーと研究者との対話を進めていくことを主たる目的としている。

【LoCARNet】

(1)経緯

 アジアの低炭素発展に資する研究、及びその実現に向けた人材育成は、日本に大きな蓄積がある。NIESが主導する研究チームは、アジア太平洋統合評価モデル(Asia-Pacific Integrated Assessment Model: AIM)を用いて各国の低炭素成長の可能性を現地の研究者とともに研究してきた。上述のLCS-RNetは、アジア数か国において研究者・政策担当者の対話の促進、研究者間の連携を支援するワークショップを開催してきた。こうした活動の結果、アジアにおける低炭素知識を地域で共有すべきとの必要性が浮かび上がってきた。
 2011年10月、カンボジア・プノンペンで開催されたASEAN+3環境大臣会合で、環境省・LCS-RNet事務局は当地域の低炭素発展政策形成の基礎的持続的対応能力を高めることを目的としたアジアにおける低炭素開発分野の研究ネットワークの設立を提案し、2012年4月には、「東アジア低炭素成長パートナーシップ対話」に際して環境大臣により、その立ち上げが報告された。LoCARNetは低炭素社会づくりの知識中核として機能することが期待されている。同年10月にはバンコク(タイ王国)にて第一回年次会合が開催された。

(2)目的

 LoCARNetは、アジア地域の科学に基づく低炭素成長のための政策形成と実行に貢献する研究者・研究機関のネットワークである。LoCARNetは、科学者間、また科学者と政策決定者との対話を通じて、低炭素成長政策に向けた研究を進めていくこと、研究能力・知識がしっかりと国に根づいた(ownershipを持った)国内研究者間の協力を進めていくこと、さらに、ネットワークでの知識の共有を通じて、域内の地域協力のもとでの自立した研究者の自主的ネットワークとなることを支援する目的を有する。

2.会合の概要

【LCS-RNet第5回年次会合】

共催:
環境省、独立行政法人国立環境研究所、公益財団法人地球環境戦略研究機関
日程:
平成25年7月22日(月)−23日(火)
開催場所:
パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)
プログラム概要:
(初日)
開会式、全体セッション1(低炭素社会に向けた転換)、討論セッション1(低炭素社会に向けた全球的な課題)、全体セッション2(低炭素発展の実現に向けて)、分科会1-1(低炭素社会における資源管理の意義)、分科会1-2(低炭素未来に向けたエネルギー市場のありかた)分科会2-1(低炭素社会を実現するファイナンス)、分科会2-2(低炭素未来都市)
(二日目)
ISAP-LCS-RNet合同セッション(低炭素社会構築に向けて「知恵の結集」を世界でどう進めるか)、全体セッション3(グリーン成長での産業のありかた)、討論セッション2(低炭素社会に向けた全球的な課題)

【LoCARNet第2回年次会合】

共催:
環境省、独立行政法人国立環境研究所、公益財団法人地球環境戦略研究機関
日程:
平成25年7月24日(水)−25日(木)
開催場所:
パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)
プログラム概要:
(初日)
開会式・全体セッション1、分科会1(2020 年体制を担う人材育成の重要性)、分科会2(2℃目標に向けたアジア各国の削減ポテンシャル)
(二日目)
全体セッション2、分科会3(低炭素社会実現の尖兵:都市の役割)、分科会4(アジア地域に共通の喫緊の研究課題)、分科会5(グリーン成長ベストプラクティス(Green Growth Best Practices: GGBP)、分科会6(アジアが必要とする低炭素技術)、分科会7(アジアの課題:農業・林業・土地利用セクターでの排出削減)、全体セッション2、閉会式

3.主な成果

(1)LCS-RNetについて

[1]
LCS-RNetの年次会合において、科学(研究)が、低炭素社会の実現に向けた政策立案に重要な役割を果たしてきたことが強調された。また、科学(研究)が各々の国の政策にどのように反映されるかは国毎に異なるものの、研究者が一堂に会して各々の専門分野の科学的知識を共有することにより、科学に基づく低炭素化政策が大きく推進される。故に、低炭素社会に向けた知識共有の場としてのネットワークの重要性が改めて強調された。こうしたネットワークでの活動を通じて、低炭素成長に関する優良事例や経験、比較分析を共有していくことが重要であるとの認識が共有された。
[2]
温暖化防止は、科学的論議を経て温室効果ガス排出の削減に向けた実行の段階に移ってきている。従来のエネルギー多消費型技術社会を数十年の間に大転換させねばならず、これにはあらゆるステークホルダーが参加した、あらゆる分野での取り組みが必要であり、低炭素社会構築に向けた知識の共有化(Knowledge Sharing)を一層進めていくべきとの認識が共有された。なお、従来年次会合やその他の機会を捉えて研究者と政策担当者の間での対話を促進する試みを行ってきたところ、こうした成果段階での対話に加えて、今後は、政策担当者間・研究者・専門家と政策担当者間で中核優先課題を抽出していく重要性について指摘があった。
[3]
LCS-RNetは、今年度(2014年3月)で第一フェーズを終了し、2014年4月から第二フェーズでの活動を開始する予定である。第二フェーズにおける活動について活発な意見交換が行われ、気候変動緩和策と適応策の両方を包含する総合的気候変動対応を対象とすべきとの意見、気候変動の喫緊性に鑑み、世界・各国政策に集中して専門家の知恵を集約するための機能を強化すべきとの意見、先進国のみならず、新興経済国や途上国についてもネットワークに含めるべきとの意見、現在行われているような年次会合の開催だけでなく、分野ごとの議論を深めていくためにLCS-RNetのもとに小さな分科会を作るべきとの意見、また提言を広めるためのアウトリーチ機能を強化すべきとの意見などが紹介された。

(2)LoCARNet について

[1]
LoCARNetについては、昨年立ち上げられたのち、アジア地域の低炭素発展政策を支える研究者の協力を得て順調に発展してきていることが共有された。なお、本地域においては低炭素発展政策立案を支える研究コミュニティがまだ十分に育っていないとの課題がある。温室効果ガス削減における本地域の重要性にかんがみ、本地域での特色を踏まえた研究コミュニティの育成・強化が必要であること、また、そのために能力構築を進めていくことが不可欠であるとの認識が共有された。
[2]
「2℃目標に向けたアジア主要国の温室効果ガス削減可能性比較」のセッションでは、2℃目標に準拠した2050年の温室効果ガス排出量を1990年比半減させるためには、アジアの2050年の排出量を現状以下に抑える必要性が示され、続いて各国から、AIMモデルを使った分析の結果や各国における削減目標の評価、削減を実施していくために必要な施策についての報告が行われた。フロアからは、森林吸収源の取り扱い、各国の対策と2℃目標の関係等を含む活発な質疑応答がなされた。
[3]
「アジア地域に共通の喫緊の研究課題」のセッションでは、アジア太平洋地球変動研究ネットワーク(APN)の「低炭素イニシアティブ」に選ばれたいくつかのプロジェクトの概要や進捗状況が紹介された。アジアの低炭素化を進捗させるために研究が果たす重要な役割が指摘され、本イニシアティブがアジアにおける低炭素研究を後押ししていることが共有された。一方で、こうした研究成果を如何に政策決定者に届けていくかが課題として示された。

4.今後の予定

 本会合の成果は統合報告書としてまとめられ、本日11月下旬から開催されるCOP19のサイドイベントやLCS-RNet/LoCARNetのウェブサイト(以下参照)等で公表される予定。
 LoCARNetの次回年次会合(第3回)は、インドネシアにて開催予定。なお、LCS-RNetの次年度会合は、LCS-RNetの第一フェーズが今年度を以て終了することから、今後次年度以降の活動計画を協議する中で決定していくこととなった。

連絡先
環境省地球環境局総務課研究調査室
直通:03-5521-8247
代表:03-3581-3351
 室長  :辻原 浩  (内線 6730)
 専門官:星野ゆう子(内線6745)
 担当  :林 優里  (内線 6733)

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