報道発表資料

令和2年8月21日
地球環境
この記事を印刷

新型コロナウイルス感染症対策における市民の自発的な行動変容を促す取組(ナッジ等)の募集について(結果)

環境省では、産学政官民連携・関係府省等連携のオールジャパンの体制による日本版ナッジ・ユニットBEST(Behavioral Sciences Team)の事務局として、ナッジ(英語nudge:そっと後押しする)やブースト(英語boost:ぐっと後押しする)を含む行動科学の知見に基づく取組が早期に社会実装され、自立的に普及することを推進しています。
このたび、行動変容に資する啓発を基本的対処方針の重要事項に掲げる新型コロナウイルス感染症対策に関して、ナッジ等による市民の自発的な行動変容を促す取組を募集し、行動経済学や社会心理学等の行動科学の有識者による審査を実施した結果、優良事例を1件選定しましたので、お知らせします。

1. 審査の結果

以下の(1)のフィジカル・ディスタンシングに係る取組が優良事例として選定されました。

(1)実施主体:東かがわ市立引田小中学校

引田小学校画像

(写真左から「わたし・ぶり・ぶり・あなた」の合い言葉、廊下の掲示、階段の掲示)

・ 取組内容:地元名産「引田ぶり」を用いたソーシャルディスタンス啓発

・ 実施場所:東かがわ市立引田小中学校(香川県東かがわ市)

・ 自薦・他薦の別:自薦

・ 取組概要

  • 人と人との距離の目安(2m)を特産の「引田ぶり」2尾分で表して低学年の児童にもわかりやすくしている。
  • 人の往来が多く、目につきやすい場所に設置している。
  • 「引田ぶり」養殖発祥の地であり、毎年の初出荷式には小学3年生が参加するなど、普段から地元の住民の愛着や親しみがあって、ふるさとを感じることのできる魚を用いることで、新型コロナウイルス対策に対して必要となる行動への理解や意識の醸成を図っている。
  • 「わたし・ぶり・ぶり・あなた」を合い言葉として印象付けをしたところ、取組を始めた日から「ぶり、ぶり」や「ぶり間隔」といった言葉が児童・生徒や教職員から出るようになった。
  • コミュニティの特性に配慮しながら、コミュニティの構成員に受け入れられやすいナッジになるように改良が加えられている。
  • 他の地方公共団体にとっても、自らの地域の特産品等で代替することにより同様の取組を行うことができ、波及効果や他地域への展開可能性の高い取組である。

なお、以下の(2)については、募集時にすでに多くの事業者が同様の取組を実施していたため、取組内容のみ記します。また、地方公共団体等が実施している取組についても応募がありましたが、すでに類似の取組が他の地方公共団体等で実施されているため、参考として以下のリンク先の資料に整理しています。

<http://www.env.go.jp/earth/ondanka/nudge/COVID-19_r.pdf>

(2)実施主体:Eコマース事業者や飲食店等

・ 取組内容:宅配や出前で置き配を選択できるようにし、わかりやすく提示すること

2.応募全般に対する主な有識者のコメント

  • オリジナリティ溢れるものが多く、何よりも社会実装したという点で素晴らしい
  • 目指す意識変革や行動変容が何であるのかを明確にする必要がある
  • 良いと思うのでやってみた、ではなく、なぜ良いと思ったのか、なぜそれで人を動かすことができると考えたのか、背後にある行動科学の知見やメカニズムを明確にすること
  • 特に評価の高かった(上記の)取組は、既存のナッジをそのまま活用するのではなく、地域等のコミュニティの特性を配慮しながら、コミュニティの方々に受け入れられやすいナッジになるように改良が加えられている、という特徴があった
  • ナッジの効果には文化差があり、ある地域で効果が確認されたナッジを別の地域に適用しても、必ずしも同様の効果が確認されるわけではないことが知られており、既存のナッジの知見を活用する際に、それぞれの現場の特性に即するように調整を加えることが重要である
  • 現場の特性に即したナッジの実践事例が増え、その結果として、現場に深く根付くナッジが増えることを期待する

3.取組の効果について

募集に当たっては、効果の測定は必須としませんでしたが、日本版ナッジ・ユニット連絡会議では、新型コロナウイルス感染症予防に対するナッジ等の効果について議論をしています。例えば石鹸手洗いを促進するナッジについては、感染予防に加え、エネルギー起源CO2排出削減にも貢献し、その削減量は、「ナッジにより感染を回避する人が感染した場合の医療行為に伴うCO2排出量(主に換気等に伴うエネルギー増加分相当)」と「感染を回避する人が日常生活を送る際に発生するCO2排出量」の差分に近似されます。上記の事例のうち(3)については、再配達により発生するCO2排出量や労働時間の削減に寄与するものです。また、上記の取組を含め、実施に要する費用がわずかであることが多く、感染した場合に発生する医療費の削減分も考慮すれば、費用対効果の高い取組であるとの指摘もなされています。詳細については、今後の日本版ナッジ・ユニット連絡会議での議論を経て、紹介することとしています。

(参考1)募集及び審査の方法

以下の(1)から(3)の全ての条件を満たす取組を、令和2年5月から6月にかけて、自薦または他薦により募集しました。

(1)新型コロナウイルス感染症に関連する行動変容を促進するものであること

(2)社会や行政の課題の解決に向けたものであること

(3)実社会で実際に実施した実績のあること

応募のあった14件を対象に、行動経済学や社会心理学等の行動科学の有識者が以下の(観点を踏まえ総合的に評価するとともに、他薦については環境省により追加で聴き取り調査等を実施した結果を踏まえ、優良事例を選定しました。なお、選定結果の公表を通じて公衆衛生や感染症の観点で何らかの見解を示すものではありません。

(1)新規性

(2)社会的意義

(3)用いた行動科学の理論・知見の適切性

(4)効果測定の手法の適切性(実施している場合)

(5)他の地域・分野への波及可能性

(6)倫理的配慮

(参考2)「ナッジ」とは?

英語nudgeは、「ひじ等でそっと押して注意を引いたり前に進めたりすること」や「特定の決断や行動をするようにそっと説得・奨励すること」を意味しますが、行政や民間の現場では、直接物理的につついたりするわけではないため、「そっと後押しする」という訳が用いられています。

公共政策においては、人々が選択し、意思決定する際の環境を行動科学の知見を用いてデザインすることを通じて、人々が自分自身にとってより良い選択を自発的に取れるように手助けする政策手法のことを指します。ナッジは、単独で用いられることもありますが、国際的には、法律等の規制的手法、税や補助金等の経済的手法、そして普及啓発や情報提供等の情報的手法といった伝統的な政策手法を補完して、それらの実効性・効率性 を高めること等に用いられています。

ナッジの活用は他の政策アプローチと同様、人々の生活に介入し、行動様式に影響を及ぼすことがあります。このため、ナッジの活用に携わる人は、法令の定めるところに加え、高い倫理性が求められるものです。まずは相手の立場になって、自分自身が対象となったときのことを考えてみることが重要です。そして、政策の現場においてナッジをデザインするに当たっては、効果をきちんと評価し、科学的根拠に基づく政策立案を実施して透明性を高め、説明責任を果たすことが重要であるとの指摘が日本版ナッジ・ユニットにおいてなされています。

<http://www.env.go.jp/earth/ondanka/nudge/nudge_is.pdf>

(参考3)ナッジ等を活用した新型コロナウイルス感染症対策の事例について

新型コロナウイルス感染症専門家会議の提言に記載のある、新型コロナウイルス対策の基本戦略3本柱のうちの1つが「市民の行動変容」です。具体的には、

•「三つの密」など感染リスクの高い場面、高い環境を避ける

•手洗い、咳エチケット等の基本的な感染対策を徹底

•バランスのとれた食事、適度な運動、休養、睡眠などで抵抗力を高める

等を実施することが挙げられています。環境省や地方公共団体等においてナッジ等を活用した事例については以下のリンク先の後半を御参照ください。

<http://www.env.go.jp/earth/ondanka/nudge/COVID-19_r.pdf>

(参考4)令和2年度の「ベストナッジ賞」コンテストについて

行動経済学会との連携により、平成30年度より、ベストナッジ賞コンテストを実施し、幅広い分野の社会・行政の課題の解決に向けて、地方公共団体等においてナッジ等の行動インサイトの活用により行動変容を促進し、効果を測定した実績のある取組を募集しています。

令和2年度におきましては、新型コロナウイルス感染症の情勢等に鑑みて、実施を見合わせることとしております。

(参考5)日本版ナッジ・ユニットBESTについて

日本版ナッジ・ユニットBEST(Behavioral Sciences Team)は、関係府省庁や地方公共団体、産業界や有識者等から成る産学政官民連携のオールジャパンの取組です(事務局:環境省)。ナッジ(英語nudge:そっと後押しする)やブースト(英語boost:ぐっと後押しする)をはじめとする行動科学の知見(行動インサイト)に基づく取組が政策として、また、民間に早期に社会実装され、自立的に普及することを目的に、環境省のイニシアチブの下、2017年4月に発足しました。諸外国のナッジ・ユニットと同様に、ナッジに限らず行動インサイト全般を対象としています。その後、同年10月のノーベル経済学賞の受賞分野が行動経済学であったことの後押しもあり、取組が深化し、連携体制が次第に強化されています。どのような取組も、地域に根付くものとするためには、関係するあらゆるステークホルダーを巻き込んでいくことが必要不可欠です。このため、行政内に限った取組ではなく、参加者が同じ立場で自由に議論のできるオールジャパンの実施体制としています。

○日本版ナッジ・ユニットBESTのウェブサイト(会議資料、報道発表等)

<http://www.env.go.jp/earth/ondanka/nudge.html>

○平成29・30年度年次報告書(日本版ナッジ・ユニットBEST活動報告書)

<http://www.env.go.jp/earth/ondanka/nudge/report1.pdf>

○我が国におけるナッジ・ブースト等の行動インサイトの活用の広がりについて

<http://www.env.go.jp/earth/ondanka/nudge/hirogari.pdf>

○ナッジ等の行動インサイトの活用に関わる倫理チェックリスト ①調査・研究編

<http://www.env.go.jp/earth/ondanka/nudge/renrakukai16/mat_01.pdf>

連絡先

環境省地球環境局地球温暖化対策課脱炭素ライフスタイル推進室

  • 代表03-3581-3351
  • 直通03-5521-8341
  • 室長菊池 圭一(内線 6725)
  • 室長補佐池本 忠弘(内線 6731)
  • 担当舛田 梓静(内線 6793)

Adobe Readerのダウンロード

PDF形式のファイルをご覧いただくためには、Adobe Readerが必要です。Adobe Reader(無償)をダウンロードしてご利用ください。

ページ先頭へ