報道発表資料

平成30年4月24日
地球環境
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平成29年度低炭素型の行動変容を促す情報発信(ナッジ)による家庭等の自発的対策推進事業の結果について(速報)

 環境省では、低炭素型の行動変容を促し、ライフスタイルの自発的な変革・イノベーションを創出する、対象者にとって自由度のある新たな政策手法を検証しています。このたび「平成29年度低炭素型の行動変容を促す情報発信(ナッジ)による家庭等の自発的対策推進事業」の結果(速報)について公表します。
 また、ナッジを含む行動科学の知見に基づく取組が早期に社会実装され、自立的に普及することを目標に、我が国では平成29年4月より環境省のイニシアチブの下、プロジェクトチームとして産学官連携・関係府省等連携による日本版ナッジ・ユニット「BEST」を発足しています。昨年度に開催した日本版ナッジ・ユニット連絡会議の開催状況についてもお知らせします。

1.主な取組とその結果(速報)の概要

 家庭部門の取組では、行動科学の知見に基づく省エネアドバイス等を記載したレポートを一般世帯に送付して、その後の電気やガスの使用量にどのような効果が表れるかを検証しました。平成29年度では、比較対象を含め全国50万強の一般世帯に協力いただき、ランダム化比較試験により統計学的に効果を測定しました。

 その結果、紙媒体のレポートの送付開始後2か月間で、地域によって1%から2%強の省エネ・省CO2効果が統計的に有意に確認されました。また、スマートフォンのアプリケーションを通じて使用量の見える化をしたり、使用量の変化に関するアラートメッセージを送ったりする等により、3%強の省エネ・省CO2効果が統計的に有意に確認されました。

 運輸部門の取組では、特に燃費の改善やエコドライブの観点から、加速度、速度、燃料消費量等の実運転データを点数化し、運転終了後にスマートフォンのアプリケーションを通じてドライバーにフィードバックを送ることにより、その後の運転でどのような効果が表れるかを検証しました。国際的にも類を見ない取組であったため、平成29年度では、公道で小規模の予備的な実証を行いました。

 その結果、行動の面では、急ブレーキや急発進が抑制され、燃費の面では1割程度改善する傾向が見られました。平成30年度では、大規模な実証を行い、統計学的に効果を明らかにしていきます。

 レポートの送付状況については、添付資料1を参照ください。

2.結果に対する考察

 ナッジを含む行動科学の知見に基づく省エネアドバイス等を記載したレポートについては、米国の事例(※1)では1.4%から3.3%程度の省エネ効果が報告されています。こうした省エネ効果は、レポートの送付開始後に徐々に表れて、一定期間経過後に安定し、持続することが知られており、平成29年度に得られた環境省ナッジ事業の結果は、諸外国の事例におけるレポート送付開始後早期の段階と比べても同等以上の高い効果となっていますが、レポートの効果が安定するには一定期間が必要と見込まれることから、得られた結果は慎重に解釈する必要があります。我が国におけるレポートの効果を結論づけるに当たっては、平成29年度のみの結果から判断するのは時期尚早であり、平成30年度以降の継続的な実証に基づく効果の検証が必要です。

 民間の研究機関による試算(※2)では、仮に日本全体で2%の省エネ効果が得られた場合、年間約47億kWhのエネルギー削減ポテンシャルに相当し、冷蔵庫2,600万台分の買換効果(投資金額3兆円)や住宅用太陽光発電80万件分の発電量(投資金額1.4兆円)と同等の省エネ・省CO2効果が得られるとしています。レポートを送付するだけでこのような高い費用対効果が得られること等を背景に、諸外国ではナッジを含む行動科学の知見に基づく取組が着目され、採用されています。

 また、アンケート調査の結果から、意識の面では、レポートを送付した世帯において「住まいを省エネにすることは大切だ」、「もっと省エネ上手になりたい」と答える割合が、レポートを送付していない世帯と比較して統計的に有意に高くなりました。こうした意識の変化が、実際にどのようにして行動の面での変化に繋がり、その効果が省エネ・省CO2という形で表れたかについては、さらなる検証が必要です。

 さらに、レポートを送付した世帯においては、「エネルギー事業者が削減可能なエネルギー量を教えてくれる」、「これからも契約を継続したい」と答える割合も有意に高くなりました。電力・ガスの小売りの全面自由化という局面を迎え、顧客満足度の向上という観点から、省エネアドバイス等のサービスの提供がエネルギー事業者にとってメリットとなり得ることが示唆されました。

(※1)Allcott, H. (2011). Social Norms and Energy Conservation. Journal of Public Economics, 95(9), 1082―1095.

(※2)株式会社住環境計画研究所ウェブサイト <http://www.jyuri.co.jp/81/>

3.今後の予定

 平成30年度も引き続き実証を継続しています。とりわけ、ナッジを含む行動科学の知見に基づく取組の効果が複数年にわたりリバウンドなく持続するか、効果を持続させ、また、さらに高めるにはどのようにすれば良いか等、中長期的に実証し、一人ひとりに配慮した無理のない、コスト効率的な行動変容のモデルの確立を目指します。より詳細な結果や今後の成果については、日本版ナッジ・ユニット連絡会議等において議論し、公表していくこととしています。

4.日本版ナッジ・ユニット連絡会議の開催状況

 平成29年度は 11月及び1月の計2回開催し、行動科学に関する環境省及び地方公共団体の取組や環境省ナッジ事業を題材としたエビデンス(科学的根拠)に基づく政策立案(Evidence-based policymaking, EBPM)等について議論しました。次回は5月頃の開催を予定しています。

 これまでの出席者、検討事項、目標及び論点等については、添付資料2を参照ください。

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(参考1)環境省ナッジ事業について

 技術革新を通じて環境性能の高い技術や機器が社会に広く普及し実装されつつありますが、技術や機器の利用方法は個々の利用者の行動様式によって大きく異なり得るものであり、効率的に使われて高い環境性能が最大限に発揮されているとは必ずしも言えない状況です。

 近年欧米では、ナッジ(英語nudge:そっと後押しする)等の行動科学の理論に基づくアプローチにより、国民一人ひとりの行動変容を直接促し、ライフスタイルの変革を創出する取組が「ナッジ・ユニット」等と呼ばれる政府関連機関の下で行われ、費用対効果が高く、対象者にとって自由度のある新たな政策手法として着目されています。こうした取組が我が国においても、とりわけ持続的・中長期的に、適用可能であるかは検証が必要です。

 このため、環境省では、平成29年4月に産学官連携・関係府省等連携の取組として日本版ナッジ・ユニット「BEST」を発足しました。そして、「低炭素型の行動変容を促す情報発信(ナッジ)による家庭等の自発的対策推進事業」(環境省ナッジ事業)により、家庭・業務・運輸部門等のCO2排出実態に係るデータを収集、解析し、個別の実態を踏まえた形で個々に情報をフィードバックして低炭素型の行動変容を促すといったCO2排出削減に資する行動変容のモデルを構築するとともに、地方公共団体や米国エネルギー省、ハーバード大学等との連携の下、当該モデルの我が国への持続的適用可能性の実証や我が国国民特有のパラメータの検証を実地にて行っています。

(参考2)日本版ナッジ・ユニット(BEST)について

 日本版ナッジ・ユニット(BEST:Behavioral Sciences Team)は、関係府省等や地方公共団体、環境省ナッジ事業の採択事業者、産業界や有識者等から成る産学官連携の取組であり、ナッジを含む行動科学の知見に基づく取組が早期に社会実装され、自立的に普及することを目標に、環境省のイニシアチブの下、平成29年4月に発足しました。地域に根付く取組とするには、関係するあらゆるステークホルダーを巻き込んでいくことが必要不可欠ですが、ナッジ・ユニット自体が産学官連携の実施体制であることは世界に類を見ない取組です。私たちが自らの判断でより良い選択を選択できるよう、自身の行動・習慣を見つめるきっかけや気づきを与え、リテラシーを高められるようになっているか等について検討を進めています。

 環境省ナッジ事業をはじめ、行動科学を活用した取組に関する方法論や課題、対応方策等を共有するとともに、環境・エネルギー分野はもとより、幅広い分野における課題の解決に向けた行動科学の活用について検討を進めています。また、欧米等先行する諸外国の政府関連機関、実務者、有識者等とも、情報共有や連携をしています。

○日本版ナッジ・ユニット(BEST)について

http://www.env.go.jp/earth/ondanka/nudge.html

添付資料

連絡先
環境省地球環境局地球温暖化対策課地球温暖化対策事業室
直通 03-5521-8339     
代表 03-3581-3351
室長   水谷好洋 (内線6771)
室長補佐 池本忠弘 (内線6791)
室長補佐 高橋和也 (内線7778)
担当   大塚智明 (内線7777)

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