報道発表資料

平成28年9月1日
地球環境
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いぶき(GOSAT)観測データによる大都市等の人為起源二酸化炭素濃度の推定結果について

 温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)は、環境省、国立環境研究所 (NIES)及び宇宙航空研究開発機構(JAXA)が共同で開発した、世界初の温室効果ガス観測専用の衛星であり、平成21年1月の打上げ以降、現在も観測を続けています。
 今般、平成21年6月から平成26年12月までの5年半に大都市等とその周辺で取得された「いぶき」データの解析を進め、世界の大都市等に加え、東京都市域において初めて人為起源二酸化炭素(CO2)濃度の推計を行いました。
 さらに、日本における人為起源CO2濃度について、「いぶき」データからの推計結果と統計データ等から算出した排出量データ(インベントリ)からの推定結果を比較したところ、両者が概ね一致することを初めて確認できました。国レベルで概ね一致することが確認できたことにより、今後世界各国が「パリ協定」に基づき作成・公表するCO2排出量の監視・検証を衛星観測により実現できる可能性が示されました。
 今後はデータの蓄積及び解析方法の改善をさらに進め、「いぶき」及び現在開発中の後継機の観測データとインベントリの比較を行う予定です。

1.衛星による人為起源二酸化炭素監視の重要性

 二酸化炭素(CO2)は温室効果ガスの一つであり、最も温室効果の寄与が大きい気体です。発生源は植物の呼吸や、森林火災、海洋による排出等の「自然起源」のものに加え、産業革命以降は大規模な火力発電所や大都市における化石燃料消費に起因する「人為起源」のものが増加しています。CO2の大気中濃度は、1万年前より産業革命前まではほぼ一定で280ppmであったものの、現在では400ppmを突破しています。

 このような状況のもと、2015年12月の気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)において「パリ協定」が採択され、世界各国でCO2を始めとする温室効果ガスの排出削減に取り組むことになりました。排出削減のためには温室効果ガス排出量の監視が必要であり、人為起源発生源におけるCO2排出量を精度良く評価することが求められています。そして、今後各国が「パリ協定」に基づき透明性の高い排出量報告を行うためには、多面的な観測が可能となる衛星を活用した監視・検証が有効となります。

2.前回発表からの変更点

 前回の発表[1]では全球、北米、南〜東アジアといった非常に広い範囲の人為起源CO2濃度について3.5年分の「いぶき」データとインベントリの比較を行い、衛星によるCO2濃度観測が、インベントリの監視ツールとして有効利用できる可能性があることを示しました。今回はより長期間(5.5年)の「いぶき」データを改良された手法で解析しました。

[1]温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)による大都市等における二酸化炭素観測データと人為起源排出量との関係について(平成26年12月4日)

3.「いぶき」による人為起源CO2濃度の推定結果

1)「いぶき」による人為起源CO2濃度の全球分布

 今回算出した「いぶき」による人為起源CO2濃度の全球及び地域分布を図1、図2に示します。また図1、2において特に人為起源CO2濃度の高かった領域について表1にまとめます。 人口が密集した、または火力発電、油・ガス田開発を含めた産業活動が盛んな北米、欧州、中東、インド、中国等において人為起源CO2の濃度が高いことが分かります。

 さらに、日本についても前回はデータ数が少なく、人為起源CO2の濃度を算出できませんでしたが、今回の解析ではデータの蓄積により、東京都市域で人為起源CO2濃度が高いことを確認できました。

図1「いぶき」により高濃度(平成21年6月~平成26年12月の平均)の人為起源CO2が観測された領域(1度グリッド。赤道で100kmグリッドに相当。25 個以上の「いぶき」データがあるグリッドのみ表示。)。色は「いぶき」による人為起源CO2濃度を示す。

図2 図1の拡大図。左)北米、右)南〜東南アジア

表1 図1、2中に示された「いぶき」により高濃度の人為起源CO2が観測された領域とそこでの人為起源CO2濃度(平成21年6月〜平成26年12月までの間で25個以上「いぶき」データがあり、かつ人為起源CO2濃度が平均1ppm以上となるグリッドが複数近接している領域。)

※日本については1度グリッド当りのデータ数が5〜14と少ないため、他の都市と異なる手法で最大値を算出している。

2)人為起源CO2濃度増分についての「いぶき」とインベントリ等の比較

 次に、図1、2に示す3つの領域及び日本におけるインベントリ等による人為起源CO2濃度と「いぶき」による人為起源CO2濃度との関係(過去5年半の平均値)を図3に示します。また表2に前回の結果との比較を示します。

 図3、表2より以下のようなことが言えます。

・データ使用期間が長くなりデータ数が増えたこととデータ処理手法の改善により、前回と比べて「いぶき」と「インベントリ」の間の相関が向上し、絶対値の差も小さくなった。

・「全球」「北米」「南~東アジア」において、「いぶき」による人為起源CO2濃度とインベントリ等による人為起源CO2濃度の相関は高く、その差は「いぶき」の誤差の範囲程度である。

・前回、相関関係が見られなかった「日本」においてもデータの蓄積により1対1の相関関係が見られるようになった。ただし、まだ不確実性は大きく、国レベルの解析を行うためには、さらなる手法の改善、データの蓄積、衛星観測の高精度化が必要。

図3 3つの領域及び日本におけるインベントリ等による人為起源CO2濃度と「いぶき」による人為起源CO2濃度との関係。(上左)全球、(上右)北米、(下左)南~東アジア、(下右)日本。インベントリ等による人為起源CO2濃度を0.2 ppm毎に階級分けし、各階級における「いぶき」による人為起源CO2濃度の平均値とバラツキ(「いぶき」データの誤差)を示した。太点線は1:1ライン(GOSATとインベントリの結果が一致する場合に対応。)。なおインベントリ等による人為起源CO2濃度が1.4 ppm(日本については1.0 ppm)を超えるデータは数が少ないため、本解析の対象外とした。

表2 3つの領域及び日本における前回と今回の解析結果の比較

4.今後について

 今回の結果より、「いぶき」や現在開発中の「いぶき」後継機を含む将来の衛星によるCO2濃度データを用いることで、今後世界各国が「パリ協定」に基づき作成・公表する人為起源CO2排出量 (インベントリ)の監視に利用できる可能性を示しました。今後は衛星による人為起源CO2濃度の推定精度をさらに高めるために、高頻度・多数の衛星CO2濃度データの取得方法を検討するとともに、大規模排出源周辺での地上観測を行うなど人為起源排出量を衛星CO2濃度データから推定する手法の開発及び推定結果の実証に取り組む予定です。

添付資料

連絡先
環境省地球環境局総務課研究調査室
直通 03-5521-8247
代表 03-3581-3351
室長  :竹本 明生(内線 6730)
室長補佐:小沼 信之(内線 6731)
担当  :千々松 聡(内線 6733)
     瓜田 真司(内線 7718)

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