報道発表資料

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2016年04月22日
  • 自然環境

(お知らせ)全国の野外におけるアカミミガメの生息個体数等の推定について

 環境省では、昨年7月にアカミミガメ対策推進プロジェクトを公表し、アカミミガメ対策に向けた取組を強化しています。このたび、全国の野外に生息するアカミミガメの個体数及び生息好適地について、現在の生息情報及び環境条件を活用した統計モデルを用いて推定を実施しましたので、公表いたします。

1.結果概要

 当該推定は、神戸市立須磨海浜水族園、千葉県野生生物研究会等によるデータ提供を受け、東邦大学理学部 長谷川雅美教授らの研究グループの協力により行われました。

(1)アカミミガメ生息個体数の推定

 全国(北海道、南西諸島等を除く。)の野外に現在生息しているアカミミガメの個体数の推定値(以下、「推定生息個体数」という。)は、約800万匹(中央値)となりました。

  推定生息個体数:中央値790.9万匹(95%信用区間:374.8万匹-1767.2万匹)

※1 95%信用区間

 95%の確率で真の値が含まれる区間。図1の場合、1,800回の各推定値の頻度分布をヒストグラムに表したとき、1,710回(1800×0.95)の値が含まれる範囲の個体数の範囲となる。

図1 全国の野外におけるアカミミガメ推定生息個体数の頻度分布

(2)生息好適地の推定

 関東平野、濃尾平野、大阪平野、瀬戸内、有明海周辺などで生息に適した地域が多いと推定されています(以下、「推定生息好適地」という。)。

図2 アカミミガメ推定生息好適地図

【(1)及び(2)の留意点】

● 主に以下の理由から、推定生息個体数又は推定生息好適地の推定結果は幅が広くなっており、過小または過大評価となっている可能性があります。

    • 推定の元となったデータは、主にワナで捕獲した背甲長10cm以上の個体であるため、小さなカメは推定に考慮できていないこと。

    • 基礎的な情報が不足している地域があること。

    • 現在も個体数が増加している地域があること。

    • 捕獲効率の推定値が、千葉県内のある特定の局所個体群について、特定の季節に実施した密度推定に依拠していること。

    • 関東地方以北での捕獲調査の不足や、環境要因などのデータ整備の不足のため、北海道、南西諸島等は含まれていないこと。

    • カメ類の生息環境評価において、人為的な環境改変としての河川改修事業などの影響が組み入れられていないこと。

    • アカミミガメにとって好適な生息地にはすべてアカミミガメが生息していると仮定していること。

● 現在得られている生息情報を元に推定しています。「アカミミガメ推定生息好適地図」において赤色で示されていない地域においても生息が可能であるため、赤色の地域以外においても、アカミミガメを放さないようにしてください。

● 今後更なるデータの蓄積等により推定結果が変動する可能性があります。

2.結果の解説

● 日本全国(北海道、南西諸島等を除く。)に生息するアカミミガメは、アカミミガメの体重1.5kg とすると、推定値の中央値では約12,000トン(800万×1.5kg)になります。

● これは、アフリカゾウ約2,400頭分に相当します(アフリカゾウの体重を5トンと仮定)。

● 仮にアカミミガメが水草のみを食べたと仮定すると、毎週約320トンの水草が食害され、消失していると推計されます。

※飼育実験では、アカミミガメ1個体が1週間で平均約40gの水草を食べたという調査データがある(環境省が行った実験による。)。

● これは、アフリカゾウ約450頭が食べる餌の量に相当します(アフリカゾウが1日に食べる餌の量を100kgと仮定)。アカミミガメが生息している場所、食べている生物等によりその影響は異なりますが、我が国の自然資源を大きく損失している可能性が高いと考えられます。

3.解析方法の概要

 実際のアカミミガメの捕獲データとその環境条件を調べ、環境条件毎の生息密度を予測するモデルを構築し、それを未調査の地域の環境条件に当てはめることで全国に生息する個体数を推定する解析方法を用いています。

 詳細は、別紙を参照ください。

【解析手順】

 ①生息可能面積の集計

 既存のアカミミガメ分布情報を元にその環境条件からアカミミガメの生息好適地となる地域を抽出し、推定生息好適地図を作成する(図2)。その地域のうち、河川、ため池等の条件から生息可能面積を集計する。

 ②環境別生息密度の推計

 ある1地域におけるワナで捕獲される捕獲数データから、実際に生息しているアカミミガメの個体数密度を推計する係数推定のモデルを構築する(捕獲効率モデル)。また、ワナで捕獲される捕獲数データと各環境条件(年間降水量、最高気温、農用地の面積等)の関係を分析する(密度指標推定モデル)。それらの2つを重ね合わせることで、アカミミガメの環境別生息密度を推計する(捕獲効率はどの地域でも一定を仮定)。

※全国のアカミミガメの密度分布調査データを活用(第3次地域区画(第3次メッシュ)667カ所から1,164回分のデータ)。

 ③推定生息個体数の計算

 全国(北海道と南西諸島等を除く。)の各メッシュ(約1km四方)について、「①生息可能面積」及び「②環境別生息密度」を重ね合わせて計算することによりアカミミガメの推定生息個体数を計算する。

図3 解析方法の概要図

【解析及びデータ提供者】

 <解析>

  長谷川 雅美(東邦大学理学部教授)

  加賀山 翔一(東邦大学大学院理学研究科博士後期課程)

  栗山 武夫(東邦大学理学部・ルンド大学博士研究員)

 <データ提供>

  神戸市立須磨海浜水族園

  千葉県野生生物研究会

  公益財団法人 日本自然保護協会

4.その他

 平成27年7月に公表した「アカミミガメ対策推進プロジェクト」については、次のWEBサイトをご覧ください。

https://www.env.go.jp/press/101292.html

添付資料

連絡先
環境省
環境省自然環境局野生生物課外来生物対策室
(代表:03-3581-3351)
(直通:03-5521-8344)
室  長:曽宮 和夫   (内:6680)
室長補佐:立田 理一郎  (内:6681)
担  当:森川 政人   (内:6688)

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