「環境税」は、環境資源の消費、利用に対して課税し、市場のルールに環境利用コストを織り込むことで、そうでない場合に比べ、環境資源の浪費を防ぐことを意図したものであり、税制のグリーン化を徹底したものと言えます。
ここでは、特に二酸化炭素の排出量または化石燃料の消費量に応じて課税するものを環境税と呼んで紹介します。(なお、前者は、いわゆる炭素税と呼ばれています。)
環境税は、地球温暖化防止のための有力な手法の1つとして議論されている税金で、ガソリンや石炭、電気、ガスなどに課税することにより、二酸化炭素の排出量または化石燃料の消費量に応じた負担を求める仕組みです。
導入されると、化石燃料や化石燃料によって作られた電気などの値段が高くなることにより、
と考えられます。
一方で、導入されると、家計や企業に負担となり、国民経済や産業の国際競争力に影響を与えるといった指摘もあり、現在、議論が進められているところです。
環境税には、次のような効果があると考えられます。
国民の皆様が環境税の導入を認識することにより、ライフスタイル・ワークスタイルの変革が望めます。
このほか、環境税は、排出量取引制度等の対象とすることが難しい事業者や部門に対しても、幅広く対象にすることができるという優れた点もあります。
「環境税等のグリーン税制に係るこれまでの議論の整理」(平成20年11月17日 中央環境審議会 総合政策・地球環境合同部会 グリーン税制とその経済分析等に関する専門委員会)では、2009年から炭素1トンあたり2,400円の環境税を導入した場合、2020年には、何も対策を取らなかった場合に比べて、約5%の二酸化炭素の排出削減効果(価格効果と財源効果)があるとされています。
環境税を直接払う人は、課税の仕組みをどのようにするかによって異なり、以下の図で示すように、
[1]最上流課税(化石燃料の輸入時点又は採取場からの採取時点での課税)、
[2]上流課税(化石燃料の製造場からの出荷時点での課税)、
[3]下流課税(化石燃料の消費者への供給時点での課税)
が考えられます。
しかし、直接環境税を支払う人と最終的に負担をする人が一緒になるとは限りません。例えば、石油精製会社から出荷される段階で税をかけたとしても(上流課税)、石油からできる製品の価格に税額が上乗せされて(これを“価格転嫁”と言います。)製品が消費者まで届けば、環境税は、国民の皆様に負担していただくことになります。つまり、エネルギーの最終消費者である皆様に、二酸化炭素の排出量に応じて環境税を負担していただくことになります。
平成21年11月に環境省が発表した地球温暖化対策税の具体案においては、
によることとしています。
図:
| 最上流課税 | 上流課税 | 下流課税 |
|---|---|---|
| 化石燃料の輸入時点又は採取場からの採取時点での課税 | 化石燃料の製造場からの出荷時点での課税 | 化石燃料の消費者への供給時点での課税 |
二酸化炭素を排出する人が費用の負担をし、排出しない努力をする人の負担が軽くなる社会、つまり、排出者が負担の責任を負い、排出しない努力をした人が報われる社会、をつくることができます。
現在、企業による自主的な環境保全の取組が進んでいますが、あくまでも“自主的な”取組であり、確実に二酸化炭素が削減されるとは限りません。
環境税が導入されれば、取組をする企業と取組をしない企業とのエネルギーコストの差が大きくなりますから、温暖化対策に取り組んだ企業は、それだけ経済的に報われるわけです。家庭についても同じことが言えます。このような経済的な動機付けは、企業や家庭の取組をより確実に、より効率的に進めることに繋がります。
こうして、環境と経済の好循環を生むことにより、低炭素社会の実現に向けて、大きく踏み出すことができます。
平成21年11月に環境省が発表した地球温暖化対策税の具体案においては、税率を次のとおり設定しました。
このうち、家庭部門で使用する灯油、ガス、電力、ガソリン、軽油についての一世帯当たりの直接負担額(試算) [PDF 141KB]は、年間1,127円(月額94円)の増になります。
ただし、この試算は、課税後におけるエネルギー使用量の変化を考慮していないため、各家庭で少しずつライフスタイルを変化させれば、CO2削減を図りつつ、家計負担を減らすことができます。
例えば、次のような取組みを1つ行うだけで、課税による負担(年間1,127円)を超える節約ができます。
(参考)身近な地球温暖化対策 〜家庭でできる10の取り組み〜 [PDF 3,062KB]
また、課税により得られる税収の一部を、太陽光発電や省エネルギー家電の購入補助等に充てることで、CO2削減と併せて、家計に対して好影響を与えることもできます。
平成21年11月に環境省が発表した地球温暖化対策税の具体案においては、「「チャレンジ25」(※)実現に向けた政策パッケージに盛り込まれる地球温暖化対策の歳出・減税に優先的に充てることとするが、特定財源とはしない。」こととしています。
※政府は、地球と日本の環境を守り、未来の子どもたちに引き継いでいくための行動を「チャレンジ25」と名付け、温室効果ガスを、1990年比で25%削減するとの目標の達成のため、あらゆる政策を総動員して、国民の皆様と一緒に取り組みを進めています。
→ 「チャレンジ25」のページへ
平成21年11月に環境省が発表した地球温暖化対策税の具体案においては、次の3つの考え方で税率を決定しました。
具体的には、以下のとおりになります。
環境税は、二酸化炭素の排出量等に応じて課税するものであるため、エネルギーを多く利用する方には、税を多く負担いただくことになりますが、平成21年11月に環境省が発表した地球温暖化対策税の具体案においては、現行の石油石炭税で免税とされている、製品原料としての化石燃料(ナフサ)や、鉄鋼製造用の石炭・コークス、セメントの製造に使用する石炭、農林漁業用A重油などは免税とするとともに、「その他、国際競争力強化等の観点からの特定産業分野への配慮・・・については、使途となる歳出・減税で対応」することとしています。
これにより、経済影響を緩和しつつ、地球温暖化対策を促進することができるものと考えています。
一般に、炭素リーケージは、国内のエネルギー価格が上昇することにより、相対的にエネルギー価格の安い海外へ生産拠点が移転したり、または、国内製品の価格が海外製品の価格より割高になって海外製品の需要が高まり、海外での生産量が増大し、そこでの二酸化炭素排出量が増加することを言います。
環境税の課税によって炭素リーケージが起こるのではないかとの指摘もありますが、企業が海外に生産拠点を移転する要因としては、為替レート、賃金、市場近接性などがあると言われており、これまでの海外直接投資の動向を見てみると、とりわけ、労働コスト要因が大きいと考えられます。
このため、環境税の課税によるエネルギーコストの上昇だけによって、企業にとって重要である立地に大きな影響が生じるとは考えにくいと言われています。
炭素リーケージについては、様々な分析が行われています。例えば、IPCC(※1)第4次報告書においては、いわゆる炭素リーケージ率(※2)について、不確定な幅として5%から15%又は6%から17%に過ぎないと紹介されています。つまり、全世界を通じて見れば、先進国のみによる対策であっても、世界全体の排出量は有意に削減されることとなります。さらに、同報告書によれば、炭素リーケージは先進国による途上国向けの技術移転を促し、途上国の排出削減に寄与する側面もあり、このようなリーケージの有益な効果は、エネルギー多消費型産業において特に重要であるとも指摘されています。
※1「気候変動に関する政府間パネル」の略。二酸化炭素等の温室効果ガスの増加に伴う地球温暖化の科学的・技術的(及び、社会・経済的)評価を行い、得られた知見を、政策決定者を始め、広く一般に利用してもらうことを任務とする。2007年ノーベル平和賞が授与された。
※2京都議定書削減目標を持たない国の排出量増加分を、削減目標を持つ国の排出量減量分で除した率。仮に削減目標を持つ国で1,000万CO2トン削減されたものの、削減目標を持たない国で200万CO2トン増加した場合、20%となる。
平成21年度第1回税制調査会における総理からの諮問(平成21年10月8日府企第241号) [PDF 108KB]において、次のように諮問されました。
(4) 間接諸税について、環境・・・等への影響を考慮した課税の考え方を踏まえ、エネルギー課税等については温暖化ガスの削減目標達成に資する観点から、環境負荷に応じた課税・・・に必要な事項について検討すること。
これを受け、環境省は、地球温暖化対策税の具体案(平成21年11月) [PDF 203KB]を提案し、政府の税制調査会において複数回にわたり議論された結果、平成22年度税制改正大綱(平成21年12月22日閣議決定) [PDF 852KB]において、次のように決定されました。
第3章 各主要課題の改革の方向性
7.個別間接税
(3)暫定税率、地球温暖化対策のための税等
- [2]地球温暖化対策のための税
- 地球温暖化対策の観点から、1990年以降、欧州各国を中心として、諸外国において、エネルギー課税や自動車関連税制などを含む、環境税制の見直し・強化が進んできています。
我が国における環境関連税制による税収の対GDP比は、欧州諸国に比べれば低いといえますが、今後、地球温暖化対策の取組を進める上で、地球温暖化対策のための税について、今回、当分の間として措置される税率の見直しを含め、平成23年度実施に向けて成案を得るべく更に検討を進めます。
第4章 平成22年度税制改正
11.検討事項
〔国税・地方税共通〕(2)地球温暖化対策のための税については、今回、当分の間として措置される税率の見直しも含め、平成23年度実施に向けた成案を得るべく、更に検討を進めます。
車体課税については、エコカー減税の期限到来時までに、地球温暖対策の観点や国及び地方の財政の状況も踏まえつつ、今回、当分の間として適用される税率の取扱いを含め、簡素化、グリーン化、負担の軽減等を行う方向で抜本的な見直しを検討します。
これらを法律において規定することとします。
これを受け、政府は、第174回国会に、この趣旨を盛り込んだ所得税法等の一部を改正する法律案を提出しました。
- (参考)所得税法等の一部を改正する法律案
- 附則
(地球温暖化対策のための税についての検討)- 第百四十九条 政府は、地球温暖化対策のための税について、新租税特別措置法第八十八条の八第一項及び地方税法等改正法第一条による改正後の地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)附則第十二条の二の八の規定により当分の間規定する税率の取扱いを含め、平成二十三年度の実施に向けた成案を得るよう、検討を行うものとする。
環境省としては、より多くの国民の皆様にご理解いただける成案を得るよう、平成23年度実施に向けて、更に検討を進めてまいります。
温室効果ガスを削減するという観点から、化石燃料やエネルギーに課税する環境税は、欧州を中心に導入が進められています。
1990年には、世界で初めて、フィンランドにおいて、いわゆる炭素税が導入され、その後、スウェーデン、ノルウェー、デンマークといった北欧諸国やオランダで導入されました。現在では、ドイツ、イタリア、イギリス、フランス、スイスやカナダの一部の州でも課税されています。これらの国々では、それぞれの国の実情に応じた様々な方法(※)で導入に至っています。
※[1]既存のエネルギー税に加え新たに環境税を導入、[2]既存のエネルギー税で対象となっていなかったエネルギーに新たに環境税を導入、[3]既存のエネルギー税の増税と課税対象の追加、など