環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成26年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第1部第1章>第3節 資源がもっと活きる未来へ

第3節 資源がもっと活きる未来へ

1 循環型社会形成に向けた現状と課題

 循環型社会形成をめぐる国内外の情勢は日々変化しています。世界においては、経済成長と人口増加に伴い廃棄物の発生量が増大しており、平成23年に発行された「世界の廃棄物発生量の推計と将来予測2011改訂版」によると、2050年(平成62年)には、2010年(平成22年)の2倍以上となる見通しとなっております。また、リサイクルを目的とした循環資源の国際移動も活発化しており、廃棄物などの不適正な輸出入が懸念されています。これを未然に防止するために、国内の関係機関や各国の政府機関と連携して対策を行っているところです。

 国内においては、我が国の少子高齢化とそれに伴う人口減少や経済構造の変化、リサイクルの推進等により、今後、廃棄物発生量は減少の方向に推移すると考えられています。平成23年度の我が国における物質フロー全体を平成12年度と比較してみると、我が国の産業又は生活のために新たに投入される天然資源などの量は、19億2,500万トンから13億3,300万トンへとおよそ3分の2に減少しています。最終的に処分が必要となるごみの量は、5,600万トンから1,700万トンへとおよそ3分の1に減少しました。循環利用される物質の量は、2億1,300万トンから2億3,800万トンへと2,500万トン増加しており、循環型社会に向けて進みつつあります。

 また、廃棄された家電製品などに含まれるレアメタル(希少金属)などの金属鉱物は資源として循環的に利用される可能性を有していることから、いわゆる「都市鉱山」と呼ばれることがあります。世界の埋蔵量に比べると、我が国の都市鉱山の比率は、たとえば銅では8.06%、レアメタルといわれるリチウムでは3.83%です(図1-3-1)。他方、平成21年に再生利用されずに処分場に埋め立てられた金属系廃棄物の量は、一般廃棄物で約53万トン(発生量の約34%)、産業廃棄物で約23万トン(発生量の約3%)となっています。このほか、使われないまま家庭で保管されている製品も相当数に上るといわれています。

図1-3-1 都市鉱山比率及び地上資源と地下資源の推定量

 また、これまで世界全体で採掘した資源の量(地上資源)と、現時点で確認されている今後採掘可能な鉱山の埋蔵量(地下資源)を比較すると、すでに金や銀については、地下資源よりも地上資源の方が多くなってきています。

 さらに、いったん物を廃棄すると資源として循環的な利用を行う場合であっても、少なからず環境負荷を生じさせます。そのため、循環型社会形成推進基本法(平成12年法律第110号。以下「循環基本法」という。)では、リサイクルよりも2R(リデュース・リユース)の優先順位が原則として高くなっていますが、これらの取組が遅れているほか、廃棄物などから有用資源を回収する取組も十分に行われているとはいえず、それらを的確に把握する指標も十分に整備されていない状況です。

 加えて、東日本大震災で発生した大量の災害廃棄物の処理が大きな社会問題となり、大規模災害発生時においても円滑に廃棄物を処理できる体制を平素から築いておくことの重要性が改めて浮き彫りとなりました。東京電力福島第一原子力発電所の事故により、これまで予想していなかった事態が生じ、環境保全と国民の安全・安心をしっかりと確保した上で循環資源の利用を行うことが今まで以上に求められています。また、廃棄物の処理が大きくクローズアップされたことで、ものを大事に扱うとともに、廃棄物の排出を減らそうとする意識に高まりがみられました。

 このような現状と課題を踏まえ、我が国における循環型社会の形成に向けた取組については、廃棄物等の発生抑制と循環利用などを通じた埋立量の削減に加え、天然資源の投入量の継続的な抑制に伴う環境負荷の 低減、有用金属のリサイクルによる資源確保、循環資源・バイオマス資源のエネルギー利用、安全・安心の確保など、循環の質にも着目した取組を進めるべき段階に来ているといえます。

循環型社会とは

 自然界では水が川から海に流れ、蒸発した後、雨となって川に戻るなど物質のさまざまな循環の中にありますが、これから目指すべき「循環型社会」とは、自然界から新たに採取する資源をできるだけ少なくし、製品の長期間の利用や再生資源の投入などにより最終的に自然界へ廃棄するものをできるだけ少なくするというものです。

 循環型社会とは、単に「資源が循環する社会」のことをを表しているように聞こえますが、資源が循環するときには、物理的にエネルギーがかかり、CO2が排出されるとともに、そこで生活する人々も動きます。例えば、使わなくなった古紙を資源として活用しようとするとき、古紙を収集する車にはガソリンが使われ、CO2が排出されることに加え、そこには古紙を出す人、収集する人、再利用するために資源化する人などが関係するといったように、紙(資源)だけが単独で循環するということはありません。

循環型社会づくりのイメージ

 「循環型社会」とは、このように、資源、物質の循環を中心に据えながらも、社会の中で巡っているそのほかのエネルギー、CO2などの課題とも深い関係をもつ考え方です。天然資源等の消費の抑制とごみの排出抑制などにおいて理想的な状態である循環型社会は、低炭素社会、自然共生社会と統合的に達成することにより、我が国において持続可能な社会が実現していくこととなります。

岩手県紫波町―一歩先を行く循環型社会づくり―

 紫波町は、盛岡市と花巻市の中間に位置する人口3万4,000人の町で、町の約57%が森林でおおわれています。

 同町の取組の特徴は、「循環型まちづくり」で、循環するものをごみや資源に限定せず、政府が掲げる「低炭素型で、自然とも共生できる、資源循環する社会」の考え方を包括した「人・動植物のいのちの循環」を条例(平成13年6月制定の「紫波町循環型まちづくり条例」)で謳っていることです。また、条例の理念を具体化するために、「資源循環」のまちづくり、「環境創造」のまちづくり、「環境学習」のまちづくり、「交流」によるまちづくりの4つの方針を掲げた「紫波町環境・循環基本計画」を策定しています。

環境・循環PRセンター(循環型まちづくり)

 例えば、資源を有効活用する「資源循環」のまちづくりとしては、森林資源や生ごみ、家畜排泄物などの有機資源の町内での100%循環活用を目指しています。また、町内の森林を保全・活用するために小学校や保育園などの公共施設に町産木材を使用し、町内業者や町民が施設整備に直接携わっています。

 このように、循環型社会づくりを持続可能な社会の一つの側面として真正面から捉え、町づくりの一環として進めていく取組が地方発でも進んでいます。

2 国際的な取組

(1)アジア太平洋3R推進フォーラム

 国際的な循環型社会の形成の一環として、我が国が設立を提唱した「アジア太平洋3R推進フォーラム」や短寿命気候汚染物質削減のための気候と大気浄化のコアリション(CCAC)、経済協力開発機構(OECD)の廃棄物・資源生産性作業部会(WPRPW)などにおいて、我が国の経験を積極的に発信しています。特に、アジア太平洋各国における3Rの推進に向け、各国政府、地方公共団体、国際機関、民間セクター、専門家、NGOなどを含む幅広い関係者の協力の基盤となるアジア太平洋3R推進フォーラムでは、3Rに関するハイレベルの政策対話の促進、各国における3Rプロジェクト実施への支援の促進、3R推進に役立つ情報の共有などを推進しています。

 2014年(平成26年)2月にインドネシアのスラバヤにて開催された本フォーラムの第5回会合には、アジア諸国及び太平洋島しょ国の33か国の政府、自治体、国際機関などから約500名が参加しました。その成果として、官民連携や都市間等の協力関係の推進を記載した「スラバヤ宣言」を採択しました。

写真1-3-1 アジア太平洋3R推進フォーラム第5回会合の様子

 日本は過去の歴史において、廃棄物の適正処理や3Rへの取組を通じ、政府・自治体・民間企業などの関係者が各々の経験・技術・ノウハウを蓄積してきました。この結果、日本では各種リサイクル法や焼却施設におけるダイオキシン対策施策、水銀・PCBに代表される有害廃棄物処理に関する厳しい規制などが整備され、これらに対応した先進的な処理技術を有しています。そのため、海外諸国における廃棄物問題の解決に向けて、日本は貢献することができる条件が整っています。今後も引き続き各国政府や国際機関などとの協力を発展させ、国際的な循環型社会の形成を目指していきます。

(2)諸外国における使い捨て容器包装などの削減に係る実態及び政策動向

 使い捨て容器包装などの削減に関し、欧州においては、レジ袋の削減に先進的に取り組んでいる国がある一方で、多量に消費している国もありました。こうした中、欧州委員会は、2013年(平成25年)11月にレジ袋の消費量の削減に関する指令の提案を発表しました。本提案では加盟国に対しレジ袋使用量の削減を求めており、その手段については課金、削減目標、一定の条件の下での使用禁止など、各国が最も適切と考える措置を選択できるものとしています。また、レジ袋削減に関し大きな成果を得ている国々と同様に各国が取り組めば、EU全体でレジ袋の消費量は80%削減できるとされています。

図1-3-2 EU加盟国における2010年もしくは直近年のレジ袋使用量

3 循環型社会の形成に向けた国内の取組

(1)第三次循環型社会形成推進基本計画の策定と数値目標

 「資源がもっと活きる未来へ」。

 これは、平成25年5月、第三次循環型社会形成推進基本計画を策定したときのパンフレットで使用したメッセージです。

 循環型社会形成推進基本計画(以下「循環基本計画」という。)とは、バブル崩壊後、増え続けるごみとごみをめぐるさまざまな問題を解決するため、資源をできる限りごみにしない社会、天然資源をなるべく使わない社会をつくっていこう、という考えのもとに作成された循環基本法に基づいて政府が策定する計画です。

 この計画は平成15年に初めて策定され、平成20年と平成25年に見直されており、計画としては3番目のものに当たるので、「第三次循環基本計画」とされました。

 第三次循環基本計画に記載された取組の進捗と課題については、それぞれの取組を実施している関係省庁のほか、それぞれの取組についての専門家が不断に点検・評価を行った上で、次期循環基本計画を策定する2年ほど前から、具体的に循環型社会づくりに向けた課題を検討する作業をし、計画に書き込むべき中長期的な課題を確定していきます。

 また、循環基本計画は、ごみと資源という、量・数字で表しやすい行政分野を対象にしています。そこで、循環型社会づくりの達成度合いをみるために、計画に記載された取組が成果を上げているのかを数値で把握することによって、より的確に計画を実施し、また、見直すための指標を設定しています。

 この循環型社会づくりの達成度合いを測るための指標は、2つの類型に分けられます。


 [1]物質フロー指標:我が国におけるものの流れを表すため、資源の投入量、廃棄物の発生量などの統計データから作成する「物質フロー」に含まれる項目を利用して作成する指標。

 [2]取組指標:物質フロー指標からだけではとらえることのできない、国、事業者、国民などによる取組の進展度合いを測定・評価し、さらなる取組を促すために掲げる指標。


 これらの指標は、指標ごとに数値目標を定める方が適切だと思われるものには数値目標を設定し、そうでないものについては目標を定めない、という異なる扱いがされています。また、達成することが求められる目標を設定するしないにかかわらず、指標として掲げた項目については、毎年度、その進捗状況の点検と評価が行われています。この点検・評価によって、基本計画に定められた取組の達成度合いと、次に取るべき施策が検討されることになります。

 なお、これらの指標の中には、循環基本法を支える法体系に含まれる各種リサイクル法など、ほかの法律・制度の達成目標であるものも含まれます。そして、循環基本計画に掲げられた取組以外にも、個別の法律・制度で取り組むこととされた取組の成果が、個別の法律・制度の基本を成す循環基本計画の成果としても反映される仕組みになっています。

ア 物質フロー指標

 物質フローとは、我が国の経済社会におけるものの流れ全体を把握する目的で作成しているもので、「総物質投入量」、「天然資源等投入量」、「廃棄物等の発生量」などの項目から成り立っています。この物質フローから、次の3つの指標を策定し、各次の基本計画において計画達成度を図る数値目標を設定しています(図1-3-3)。

図1-3-3 物質フローに関する3つの指標

 平成12年に循環基本法を制定し、平成15年に第一次循環基本計画を策定した後、平成25年の第三次循環基本計画の策定まで、この物質フローは一貫して作成されてきました。

 そして、循環基本計画を見直す場合に、前年度の物質フローの状況と比較しながら、物質フローに現れた変化の理由を分析し、短期的に、また、中長期的に何が課題なのかが検討・検証されてきました。

 平成12年に作成された物質フロー図と、平成23年に作成された物質フロー図を比較してみると改善の状況が、物質フロー図からも読みとれます(図1-3-4)。

図1-3-4 我が国における物質フロー(平成12年度と平成23年度)

 物質フロー図から取組の進展状況を簡単に読み取るポイントは、3つあります。

 1つ目は、帯の縦の幅、つまり、「総物質投入量」が狭くなっているかどうかになります。この帯の幅は、消費される天然資源の量を表しています。この幅が狭くなっているときは、「資源生産性」が向上し、循環基本計画に掲げた目標の達成に向けて好ましい状況にある、ということができます。資源生産性が向上していくことは、少ない資源で生産効率が高まるということであり、グリーン経済の推進という視点からも好ましい状況といえます。第三次循環基本計画では、この部分を「入口」と呼んでいます。

 2つ目は、右下部分に出ている「最終処分」が細くなっているかどうかになります。この部分は、焼却等が為されるごみの量を表しています。この部分が狭くなっているときは、「最終処分量」が減少し、好ましい状況にあるということができます。第三次循環基本計画では、「出口」と呼ぶ部分に属します。

 3つ目は、帯の下に出ている輪の部分の幅、つまり、「循環利用量」が太くなっているかどうかになります。この輪の部分の幅は、3Rのうちリユース、リサイクルされる物質の量を表しています。この幅が太くなっているときは、「循環利用率」が向上し、好ましい状況にあるということができます。第三次循環基本計画では、この部分を「循環」と呼んでいます。

 しかしながら、物質フローも万全なものではありません。我が国における天然資源の利用状況を正確に知るためには、「もののフロー」すなわち「動いているもの」や「流動しているもの」だけでなく、例えば各家庭に据え置かれて使用されている家電製品など、一定の場所に留まっているものや資源についても把握する必要があります。

 また、金属資源を利用するときには、例えば金を採掘するために使われたり捨てられたりするそのほかの資源の動きについても把握する必要があります。

 物質フローは循環基本計画の達成度合いを測り、見直すために必要不可欠な仕組みです。しかしながら、我が国における物質循環を正確に把握したものであるか、また、循環基本計画の内容を正確に反映したものであるかとの観点から見ると物質フローも万全ではないので、循環基本計画の点検・評価を行うときは、物質フローの改善についても不断に検討をしています。

 また、これらの統計データを分析するだけでなく、計画を実施する主体のうち国の取組に重点を当てて、毎年、その進展状況を点検・評価することも行っています。さらに、各種リサイクル法の取組状況については、専門の検討委員会などを開催し、課題の検討を行っています。

イ 取組指標

 国、地方公共団体、事業者、国民などの取組の進展状況又は課題は、数字で表せるものだけではありません。そこで、物質フローで把握できるものの流れを補足するものとして、取組指標を設定しています。

 この指標は、第三次循環基本計画においては30項目ほど設定されており、物質フローについての重要な3つの指標(ものの「入口」部分に関する資源生産性、ものの「循環」部分に関する循環利用率、ものの「出口」部分に関する最終処分量)のそれぞれに関係するものと、循環基本計画を実施する各主体(国民、事業者等及び国)に関係するものとに大別されています。

 例えば、取組指標の一つとして国民の「循環型社会に関する意識・行動」を掲げています。この取組指標には目標値が設定されており、循環型社会づくりの進展度合いを測るための一つの項目とされています。意識については「廃棄物の減量化や循環利用、グリーン購入の意識」を、行動については「具体的な行動の実施率」を、それぞれアンケート調査で測っています。より正確に国民の意識・行動を把握するため、3年から4年に一度、内閣府政府広報室が行う世論調査も活用し、やや異なった視点からの設問を入れるなどの工夫をしています(図1-3-5)。

図1-3-5 循環型社会の形成に関する意識調査

(2)第三次循環基本計画に基づいた国内的な取組

ア 資源の有効利用に向けた取組~小型家電リサイクル制度~

 循環型社会という考え方は、もともと、天然資源をなるべく使わない社会、資源をなるべくごみにしない社会をつくっていこう、という考えから打ち出されたものです。理念的には資源に重点が置かれているように見えますが、実際には、ごみ処理問題を解決するための取組が行われることが多くありました。

 政府、地方公共団体、事業者、そして私たち国民の取組の成果によって、当初緊急の課題だと考えられていた問題は、その後、着実に改善を見せています。第三次循環基本計画においては、今までの取組に加えて、新たに注目されるようになってきた天然資源、特にレアメタルにも着目しています。

 使用済製品のうち、事業者によるリサイクルが積極的に行われている大型家電、自動車などの再資源化率は7~9割と高水準ですが、それら以外の廃棄物は一部の金属を除き埋立処分されています。

 加えて、我が国の地上資源をより一層活用していく必要性が高まってきたことなどを受け、平成25年4月1日に、使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律(平成24年法律第57号)が施行されました。この法律に基づき平成25年度から新たに始まった小型家電リサイクル制度は、一般家庭から排出される小型の電化製品(小型家電)を市区町村が回収し、国が認定した事業者や、その他小型家電を適正に再資源化することが可能である者に引き渡し、小型家電の中に含まれる貴金属やベースメタルなどを取り出してリサイクルするという仕組みです。小型家電の回収形態には、役場や家電量販店などに回収ボックスを設置して消費者に投入してもらう方式や、粗大ごみとしてほかのごみと一緒に集めた後、粗大ごみステーションで使用済小型家電のみをピックアップして集める方式、地元主催のイベント等で集める方式など、その地域特性にあわせてさまざまです。ただし、いずれの回収形態をとる場合においても、個人情報漏えい対策を施して適切に保管しています。

 本制度に基づく使用済小型家電のリサイクルを一層促進するためには、できる限り多くの市町村による制度参加が必要不可欠となっています。平成25年5月に実施したアンケートでは多くの市町村が本制度への参加を前向きに検討しているという結果が出ましたが、一方で回収方法や品目が未定など、制度に対する関心は高いものの具体的な制度参加のイメージを描けていないという状況が判明しました。そこで、政府では同制度への参加・回収率の向上を目指し、地方公共団体などへの説明会を実施しました。また、市町村における小型家電の効率的な回収体制の構築を支援することなどを目的に、平成24年度から「使用済小型電気電子機器リサイクルシステム構築実証事業」を実施しており、平成25年度は計161市町村が参加しました。さらに、普及啓発や各主体の連携促進を実施するなど、レアメタル等の回収量の確保や、リサイクルの効率性の向上に向けた取組についても引き続き進めていきます。

写真1-3-2 ボックス回収(株式会社ベスト電器)、ピックアップ回収(秋田県)及びイベント回収(相模原市)の様子

我が国の家電リサイクル制度と温室効果ガスの削減効果

 我が国では家庭用エアコン、ブラウン管テレビ、冷蔵庫・冷凍庫及び洗濯機の4品目については、家電リサイクル法に基づきリサイクルが行われています。廃家電から回収される資源は天然資源を代替し、資源効率を上げることとなりますが、一方で資源回収に伴ってエネルギーが消費され、温室効果ガスが排出されます。

 環境省では「平成25年度環境経済の政策研究 物質利用に伴うライフサイクル影響評価手法の開発及び国際資源循環の推進に関する研究(小嶋公史 財団法人地球環境戦略研究機関ディレクターほか)」において、ライフサイクルアセスメント(LCA)手法を用いて、福岡県でリサイクル制度の下(収集・運搬、解体・リサイクル、製錬)での温室効果ガス発生量と、資源回収と再生による天然資源の代替による温室効果ガス削減量を推計し、比較しました。

 それによると4品目すべてにおいて、リサイクル過程における温室効果ガス発生量を、資源回収による天然資源代替が行われることによる温室効果ガス削減量が上回りました。

 この結果はあくまで特定の地域における推計にすぎませんが、廃家電のリサイクル制度が資源の有効利用という意味で循環型社会構築に向けた取組となると同時に、温室効果ガスの削減という低炭素社会構築に向けたものともなっているということがいえます。

イ リサイクルとともに「2R」の取組

 「2R」とは「3R(リデュース、リユース、リサイクル)」のうち、リサイクルに比べて原則として優先順位が高いにもかかわらず取組が遅れているリデュース、リユースを特に抜き出したもので、第三次循環基本計画で新たに打ち出された言葉です。

 現在、3Rの言葉の認知度は30%程度です(平成24年度内閣府政府広報室実施の世論調査結果)が、敢えて2Rを前に出すことによって、すでに一般的な用語として定着しているリサイクルよりも、リデュース(発生抑制)とリユース(再使用)の方が原則として環境に与える影響は低いという意味で優先度が高いことを強調したものです。

 2Rという言葉自体は新しく聞こえるかと思われますが、リデュース・リユースで指しているものは、これまで3Rと呼んでいたときのリデュース・リユースの内容から変わったわけではありません。

 これら2Rの取組は身近すぎてなかなか進まない、という側面があります。しかし、国はもとより、地方公共団体、事業者、市民団体そして何より私たち一人ひとりが意識をもって、毎日一つ一つの行動を積み重ね、少しずつ着実に社会全体の方向性を変えていくことが大切です。

 環境省としては、第三次循環基本計画で2Rを明記すること自体を皮切りに、地道な普及啓発活動から、市民団体、事業者を対象とする実証事業の実施等まで、2Rの各分野における取組の対象、参画主体、取組の進展状況にそれぞれ応じた支援活動を行っていくこととしています。


(ア)レジ袋の削減

 2Rには、レジ袋を辞退する、詰替商品を買う、“ワン・ウェイ”商品ではなくリユースできるものを使う、といったような行動が当てはまります。

 例えばレジ袋は、消費者の日常の暮らしに非常に身近な存在であるとともに、特に消費者の主体的な行動によりその使用を選択し削減を図ることができます。レジ袋などに係る配布・使用の抑制対策は、容器包装廃棄物の発生抑制などに関する消費者をはじめとする関係者の意識の向上につながるきっかけとなる取組として期待されています。

 平成25年2月に行ったレジ袋削減に係る全国の取組状況に関する調査によると、全国47都道府県及び政令市・中核市・特別区の9割近くにおいて何らかの方法でレジ袋の削減の取組が行われたことが明らかとなりました(図1-3-6)。また、協定締結によるレジ袋有料化については、都道府県では24件、政令市・中核市・特別区では34件の実績となりました。

図1-3-6 都道府県、政令市、中核市、特別区における協定締結によるレジ袋有料化実施状況

 同調査においては、レジ袋の有料化についても調査を行っており、都道府県においてはレジ袋辞退率が27%から74%(8件平均)に、マイバッグ持参率が17%から85%(3件平均)に向上し、また、政令市・中核市・特別区においてはレジ袋辞退率が16%から88%(4件平均)に、マイバッグ持参率が30%から62%(11件平均)に向上しました。これらの自治体において有料化の実施がレジ袋の使用の抑制に大きな効果をもたらしたということが考えられます。


(イ)びんのリユース

 洗浄し、繰り返し利用されるリユースびんは、ごみとして排出されることなく再び地域を循環することから、環境省ではリユースを実践できる身近な容器として重要な役割を担うものと考えています。

写真1-3-3 リユースびんを使用した会議の状況

 こうした考えのもと、これまで環境省ではびんリユースシステムの構築を目的とした地域実証事業を実施してきました。地域実証事業では、地域循環のシステム構築を支援するとともに、びんリユースに関係する主体(びん商、飲料メーカー、小売業、流通業、自治体など)が連携することによる自立的、継続的な展開に向けた取組がなされています。

 また、地域においては、びんリユースシステム構築を目的とした推進協議会設立の動きが加速し、関係者間のネットワークの形成が進んでいます。地元産品を用いた飲料を地域で販売・循環させる地産地消の取組や、公共施設においてリユースびんを導入するなど、地域コミュニティの醸成やまちづくりの観点を取り入れた取組も見られ、リユース推進の新たなアプローチとして期待されているところです。

 このようにびんリユースの取組は、資源を繰り返し有効に利用するという環境配慮の観点にとどまらず、地域の振興や関係主体の協働の取組へと広がりを見せています。今後においてもびんを通じてリユースがより身近なものとなるよう、環境省ではびんリユース推進の施策を進めていきます。


(ウ)2Rの普及啓発活動

 平成25年度には、普及啓発活動の一環として、リデュース・リユース取組事例集を作成しました。この事例集では、レジ袋の削減やリユース食器の利用など2Rの取組について先進的な事例を紹介するだけでなく、環境省がこれまでに作成したマニュアルなどの情報も掲載しています。また、リサイクルも含めて事業者や消費者が実際に取り組むことができる3R行動と、その効果を数値化してわかりやすく情報提供するためのツール「3R行動見える化ツール」を開発しました。改良を加えて情報を更新し、環境省ホームページで公開しているところです。

株式会社日本栄養給食協会による食品ループを軸にした環境問題への取組

 食品廃棄物の減量化を目指すため、いかにして多くの人々に食と農業との関わりや食の大切さを理解してもらい、大量に廃棄されている未利用の食品廃棄物(食品ロス)の発生を抑制していくかが、大きな課題になっています。

 栃木県下野市の株式会社日本栄養給食協会は、給食や外食産業から排出された食品残渣で液体肥料を製造し、それを自社で立ち上げた農業生産法人「育くんファーム」で使って野菜や穀物を作っています。また、それを下野市内の給食や自社が運営する道の駅のパン工房などに提供し、地産地消の推進と地域ブランドの確立に取り組んでいます。

 さらに、食育の推進にもかかわっており、「とちぎ健康21協力店」「とちぎ食育応援団」に登録し、食育イベントへの参加、幼稚園・保育園での食育活動などを積極的に行っています。

やさいくる活動(食循環システム)

栃木県茂木町におけるバイオマス循環資源

 バイオマス(再生可能な生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの)の堆肥化は、最も多く用いられているバイオマスの活用方法の1つです。

 栃木県茂木町の「有機物リサイクルセンター美土里館」は、生ごみ、家畜ふん尿、おがくず、落ち葉、もみ殻の5種類の地域資源を合わせた堆肥生産を行い、化学肥料や農薬の使用を抑えた「環境保全型農業」、「ごみのリサイクル」、「森林保全」、そして「農産物の地産地消」を総合的に推進する地域の要です。

 平成16年に家畜ふん尿を町で一括処理しようしたことがきっかけとなり、13戸の酪農家、飼育頭数500頭の内260頭分のふん尿を収集するとともに、茂木町5,000世帯のうち、都市部の1,800世帯を対象とした住宅からトウモロコシを主原料にした生分解性の袋で生ごみを収集し、袋ごと堆肥にしています。各家庭には、水切りを徹底するための専用のバケツとひと搾り器(押す棒)を無料配布しています。

 また、山林の清掃を兼ねて町が400円/袋で落ち葉を買い取っているため、多くのお年寄りがこれに参加し、お年寄りの健康増進にも貢献しています。

茂木町バイオマス循環システム概要

WWFジャパンのパンダ・ブラック リウエア

 服は、その人の好みがもっとも反映されやすいもの。誰でもお気に入りの服はあります。そんな服が、食べこぼしなどでついた汚れが落ちなくなってしまったら、捨てるしかなかったかもしれません。そんな大切な服を、おしゃれに黒く染め直して、もう一度着ることができるようにしようという試みが始まっています。

 「ちょっと汚れたり、ちょっと古くなったり、ちょっと傷ついたり。それだけで捨ててしまうのは、やっぱりとてもモッタイナイ。」との思いで、WWFジャパンが提唱し始めたのが、「PANDA BLACK REWEAR PROJECT 2013」です。

 実際に黒く染めるのは京都紋付という黒染め専門の染め物屋さんです。京都紋付がお客からいただいた染物の代金の一部をWWFに寄付し、自然保護に役立てるという取組です。WWFのトレードマークのパンダの黒と、服を黒く染めることをあわせて「パンダ・ブラック リウエア・プロジェクト」としています。

パンダ・ブラック

 大切にしている服をおしゃれな黒に染め直してさらに長く着ることで、ものを大切にする心を育むとともに、自然保護にも役立てようというねらいがあります。

株式会社伊藤園による茶殻のリサイクルシステム
(茶殻を身近な有用資源として活用する取組)

 茶殻は、水分を含んでいるため、リサイクルをするためには一度乾燥させることが必要でした。

 株式会社伊藤園では、そのように利用しにくかった茶殻を身近な日用品の原料として活用できるように、水分を含んだままで運搬できる技術を開発し、さまざまな製品の原材料として利用できる道を開きました。

 茶飲料の生産拡大とともに、国内における茶殻の排出量も年々増加しています(平成24年度の年間排出量:約49,000トン)。株式会社伊藤園では、「茶殻がもつさまざまな“効果”をもっと有効活用させたい」と、茶殻に含まれているカテキンの抗菌・消臭効果を活かして畳床、靴の中敷、枕、空容器回収ボックスに配合するなど、新たなリサイクルに取り組んでいます。また、全社員の名刺に配合することで紙原料の使用量削減にもつなげています。

茶殻の活用事例

 以上のように、循環型社会づくりに向けた取組は、より一層各主体が連携して取り組むことが求められています。国はもとより、地方公共団体、事業者、市民団体、そして私たち国民一人ひとりの主体的・自主的な取組がこれまで以上に期待されています。