環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成26年版 環境・循環型社会・生物多様性白書>平成26年度 環境の状況  平成26年度 循環型社会の形成の状況  平成26年度 生物の多様性の状況>第1部 総合的な施策等に関する報告>はじめに

平成25年度 環境の状況

平成25年度 循環型社会の形成の状況

平成25年度 生物の多様性の状況

第1部 総合的な施策等に関する報告

はじめに

 昨年9月に「気候変動に関する政府間パネル」(以下「IPCC」という。)の第1作業部会報告書がIPCC総会で採択されました。報告書では、人間による影響が20世紀半ば以降に観測された温暖化の支配的な原因であった可能性が極めて高いと指摘されています。また、気候変動を抑制するには、温室効果ガス排出量の大幅かつ持続的な削減が必要であるとの指摘もされています。さらに、世界の平均地上気温の上昇に伴って、今世紀末までに一部の地域で極端な降雨がより強く、頻繁となる可能性が非常に高いとの指摘もされています。我が国では昨年多くの異常気象が発生し、夏季には記録的な猛暑と度重なる集中豪雨を経験しています。フィリピンでは11月に発生した台風第30号が猛烈な勢力を保ったまま上陸し、多くの尊い人命を奪っています。

 一方、生物多様性条約事務局が2010年にまとめた「地球規模生物多様性概況第3版」では、生物多様性の主要構成要素である生態系、種、遺伝子のすべてにおいて生物多様性の損失が継続していることが報告されました。このまま損失が継続すれば、生物多様性の劇的な損失と広範な生態系サービス(自然の恵み)の低下が生じる危険性が高いとしており、人類が過去1万年にわたって依存してきた比較的安定した環境条件が来世紀以降は続かなくなるおそれもあることを指摘しています。

 物質循環の面に着目すれば、世界の経済成長と人口増加に伴い、資源の消費量や廃棄物の発生量が増加しています。特に近年急速に工業化が進んでいる国々においては、有害な廃棄物が適正に処理されていないことなどにより、我が国がかつて経験した公害の問題も発生しており、効率的な資源の利用と適正な廃棄物処理が課題となっています。

 私たち人類は地球という一つの惑星の上に暮らしています。どのような国の人々にとっても日常生活や経済活動はこの地球上の自然環境の中で営まれており、経済・社会の活動はその基盤となる環境を持続可能に利用できることが前提になっていることを忘れてはいけません。そのような意味で、私たち人類が目指すべき社会は、温室効果ガスの発生を極力抑制した低炭素社会であり、地球上の生物多様性が保全された自然共生社会、また健全な物質循環の確保された循環型社会でなければなりません。またその実現のためには、私たち一人ひとりが地球環境の現状を認識し、さまざまな場面で環境問題について主体的に考え、行動を起こしていくことが必要であり、そのための環境教育を引き続き推進していく必要があります。我が国はそれぞれの分野について、主導的な役割を担っていく必要があります。

 我が国が3年前に経験したマグニチュード9.0という観測史上最大級の地震と津波、そしてこの震災により発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故により大量の放射性物質が環境中に放出されたことは、我が国における最大の環境問題としてとらえることができます。現在国を挙げてそこからの回復の取組が続けられていますが、被災地では、復興の中で社会の課題を解決し、我が国や世界のモデルとなる取組も始まっています。自立・分散型のエネルギーの導入や自然と共生した観光、一次産業の復興支援などにより、地域資源に民間資金を活用するもの、地域産業の活性化を行おうとするものなどがそのような取組の例であり、それらを加速させる必要があります。

 現在、我が国では最近の景気回復に向けた動きを持続的な経済成長につなげていくことが最大の政策課題の一つですが、同時に、先に述べてきたような様々な環境問題への対応も喫緊の課題となっています。これらの課題を解決するためには、環境問題への対応と経済成長を両立する必要があり、持続可能な環境と経済を目指す「グリーン経済」を実現していくことが重要です。

 我が国では過去の悲惨な公害や自然環境破壊をはじめとして多くの環境問題に対応してきた経験から、各種の環境規制を実施してきましたが、同時に先進的な環境技術を開発し、事業化して環境負荷の低減に資するような製品・サービスの提供を行ってきました。特に、地球温暖化防止をはじめとする分野では、持続可能な社会を構築するために多くの投資が必要とされていますが、これらの分野は経済波及効果の面で優れたものもあり、成長が期待されるものでもあります。今後とも技術開発とその事業化による普及を加速していくためには、環境負荷の低減に資するような事業や、自然環境の持続的利用に資するような事業に対して、民間の資金をうまく活用することが必要です。こうした事業に円滑に資金が投融資されることで、環境負荷の低減や自然環境の保全にもつながり、またそのような事業の発展で、我が国の経済成長にも資することになります。

 このような観点から、この白書ではグリーン経済を実現しようとする取組、中でも環境技術と環境金融に着目し、取り上げています。また、環境の価値を可視化し、経済活動に内部化したり、投資活動に反映させていこうという動きについても取り上げました。

 これらを踏まえ、平成26年版環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書では、「我が国が歩むグリーン経済の道」のテーマの下、第1部の第1章では地球環境の現状と持続可能な社会の構築に向けた取組を、第2章では東日本大震災からの復旧・復興に向けた取組を、第3章ではグリーン経済の構築に向けた取組の現状を記述しています。