環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成26年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第1部第1章>第4節 持続可能な社会の基盤となる環境教育の取組

第4節 持続可能な社会の基盤となる環境教育の取組

 これまで環境の現状をさまざまな側面から見てきましたが、このような現状に対応していくためには、まず私達一人ひとりが環境の現状を正しく認識する必要があります。

 私達人類は、18世紀半ばに始まった産業革命以降、さまざまな天然資源をエネルギーを使って採取し、製品に加工するという生産活動を行うとともに、各種のサービスを提供して、高い経済成長を成し遂げました。しかしながら、このような経済・社会のあり方は、環境の問題が適切に考慮されておらず、地球環境に負荷を与え続けるものであることが認識され始め、環境のみならずそれを前提とした経済・社会についても持続可能性が問題となっています。

 環境問題の解決のためには、環境の現状と環境保全について私達一人ひとりが理解を深め、さまざまな場面において環境問題について主体的に考え、行動を起こしていくことがまず第一歩となります。

 ここでは、持続可能な開発のための教育(Education for Sustainable Development、以下「ESD」という。)と、その考え方を踏まえた環境教育について記載します。

1 「国連ESDの10年」と環境教育

 2002年(平成14年)のヨハネスブルグ・サミットにおける我が国の提案をきっかけに、2005年(平成17年)からの10年を「国連持続可能な開発のための教育の10年」(以下「国連ESDの10年」という。)と定めることが、2002年(平成14年)の第57回国連総会本会議で採択されました。現在、世界中がESDに取り組んでいます。

 「持続可能な開発」とは、「将来の世代のニーズを満たす能力を損なうことなく、現在の世代のニーズを満たすような社会づくり」のことを意味しています。これを実現するためには、私達一人ひとりが日常生活や経済活動の場で、世界の人々や将来世代、環境との関係性の中で生きていることを認識し、行動を変革する必要があります。そのための教育がESDです(図1-4-1)。また、「持続可能な開発のための教育」の中の「教育」は、「学校などの公的教育のみならず、社会教育、文化活動、企業内研修、地域活動などあらゆる教育や学び」という意味を含みます。そのため、学校や企業、地域住民、行政、NPOなど多様な立場や世代の人々が対象となります。また、対象分野も狭い意味の環境教育のみならず、防災・人権など多岐にわたります。

図1-4-1 ESDの考え方

 「国連ESDの10年」の最終年となる2014年(平成26年)11月には、提唱国である我が国で、最終年を締めくくる「持続可能な開発のための教育(ESD)に関するユネスコ世界会議」(以下「ESDに関するユネスコ世界会議」という。)が開催されます。我が国をはじめ世界各国における「国連ESDの10年」の活動を振り返るとともに、2015年(平成27年)以降のESD推進方策について議論し、ESDのさらなる発展を目指すものです。岡山県岡山市で、国連機関、研究者、学校関係者などの各種ステークホルダーの会合が開催され、その議論の結果は愛知県名古屋市での会合に反映されます。愛知県名古屋市では、閣僚級会合、全体会議の取りまとめ会合などが開催されます。環境省では、「ESDに関するユネスコ世界会議」の開催を控え、「国連ESDの10年」後の環境教育をはじめ関連する国内のESDの取組の推進方策を検討するため、平成26年1月から有識者の参画を得て「国連『ESDの10年』後の環境教育推進方策懇談会」を開催しています。

2 ESDを担う主体のつながり ~+ESDプロジェクト~

 我が国では、平成18年3月に決定した「我が国における『国連持続可能な開発のための教育の10年』実施計画」(以下「国内実施計画」という。)に基づき、これまでESDを進めてきました。そして、平成21年までの前半5年間の我が国の取組を振り返り、平成23年6月に国内実施計画を改訂しました。改訂では、より一層ESDを推進するために、ESDの「見える化」、「つながる化」を推進することなどが盛り込まれ、環境省でも平成22年度末から、関係省庁やESDを推進する多くの民間団体などさまざまな主体と連携し、ESD活動の見える化・つながる化を図る「+ESDプロジェクト」をスタートさせました。

図1-4-2 +ESDのロゴマーク

 このプロジェクトは、各地域において実践されているESDの趣旨に合致した活動を掘り起こし、ESD活動としてこれらの活動の登録を促してデータベース化し、「+ESDプロジェクト」ウェブサイトにおいて発信する、というものなどです。ウェブサイトでは、活動分野や団体名別に活動内容を検索することが可能であるとともに、登録されている団体と連絡を取ることもできます。

 「+ESDのホームページ」 http://www.p-esd.go.jp/(別ウィンドウ)

日本の環境を守る若武者育成塾

 +ESDプロジェクトに登録されている活動の一つに、アサヒビール株式会社が平成18年度から毎年実施している(平成22年度から公益社団法人日本環境教育フォーラムと共催)「日本の環境を守る若武者育成塾」があります。この塾では、次世代を担う高校生達が森や川での自然体験や企業訪問を通じて環境問題を肌で感じ、その解決法を自ら考え、実践していきます。この取組を通じて、社会の課題に向き合って解決していく力を身につけた、志の高いたくましい「若武者」を育成することを目的としています。

「日本の環境を守る若武者育成塾」の運営体制

 若武者として選考された高校生は合宿に参加し、五感を使った体験学習や工場見学、環境の現場に携わっている方々から話を聞くことなどにより地域に根ざした環境保全に関する多様な取組を知ることを通じて、環境問題を肌で感じる機会を得ます。そして、各自の地元に戻り、合宿で得られた学びを環境保全活動として実践することによって社会に還元します。

 平成25年度には7校17名の高校生が若武者として選ばれ、外来種の駆除や酸性化した湖の中性化、地域の絶滅危惧種の保護などさまざまな環境保全活動に取り組みました。

3 地域づくりを担う人達への環境教育

 環境省では、文部科学省とも協力しつつ、ESDの視点を取り入れた環境教育プログラムを全国各地で実施し、持続可能な人材づくりの先進地域を形成して周辺への波及、広域化を図っていく取組を実施しています。その一環として、学校や企業、NPOなどが実践してきた環境教育プログラムをもとに、エネルギー・地球温暖化、ごみ・資源及び自然・生命などのさまざまな分野に渡る問題について、全国のモデルとなる小中学生向けの環境教育プログラムを作成しました。各都道府県においては、このモデルプログラムの中のいくつかを選定し、それをもとにして、学校での実証をしつつ、地域の自然、風土、文化などの特性を盛り込んだその地域ならではの環境教育プログラムを作成します。作成したプログラムは、都道府県内の各学校等に普及し、実施を促進しています。

 北海道では、モデルプログラムの一つである「地球温暖化を学び学校の省エネを考える『フィフティ・フィフティ』プロジェクト」を選びました。このプログラムは、地球温暖化やエネルギー問題の背景を学び、具体的な省エネルギーの方法を考えて実行し、その効果・課題を検証した上で成果を発表するものです。北海道では、大学教員やNPO法人の代表、小学校の教諭などからなる委員会を設置し、このモデルプログラムと地域特性の検討を行いました。委員会では、冬季に暖房や給湯などに電気以外のエネルギーを大量に消費することを北海道の地域特性ととらえ、それらを節減するという独自の要素を加えました。

 石狩市立生振小学校で行われた実証では、児童が世界の環境問題やエネルギー問題は自らの生活に直接的・間接的にかかわっていることを学んだ上で、問題の背景や解決方法を調べました。そして、使用していない電気機器をこまめに消す、電気代をグラフ化して壁に貼ることで使用量を意識する、といった自分達にできる解決方法を壁新聞にしてまとめました(写真1-4-1)。このようにして、北海道独自のプログラム「北国の暮らしから省エネを考える『フィフティ・フィフティ』プロジェクト」が作成されました。

写真1-4-1 作成された壁新聞

 ※「フィフティ・フィフティ」は、省エネルギーの活動によって校内で節減した光熱水費のすべてを管轄の自治体に戻すのではなく、削減できた半分の費用をその学校に還元するというドイツ発祥の仕組みです。

4 次世代を担う子供達への環境教育

(1)ユネスコスクールにおける環境教育

 ユネスコスクールとは、ユネスコ憲章に示された「正義・自由・平和のための教育」、「国際平和と人類の共通の福祉」などの理想を実践するとしてユネスコに承認された既存の学校です。世界180か国で約9,700校の学校が指定されている中、我が国では平成26年3月末時点で675校の幼稚園、小学校・中学校、高等学校、大学などがユネスコスクールとして承認されています。ユネスコスクールとして承認されるには、それぞれの学校が自校の特色ある取組などを記述した申請書をユネスコ本部に提出する必要があります。

 我が国では、ユネスコスクールをESDの推進拠点と位置付けています。ユネスコスクールでは、ESDの研究・実践に取り組み、その成果を積極的に発信することを通じてESDの理念の普及を進めています。そのために、ESDを通じて育てたい資質や能力を明確にし、総合的な学習の時間を中心とした教科横断的な学習計画を立てるなどの取組を行っています。

 NPO法人日本持続発展教育推進フォーラムでは、平成22年度からESDに関する実践事例を全国の学校から募集し、優秀な事例を表彰する「ESD大賞」を実施しています。第4回に当たる平成25年度に小学校賞を受賞したのは、ユネスコスクールである東京都の多摩市立多摩第一小学校です。この小学校では、学校のすぐ近くの多摩川の自然環境や地域の特性を生かした活動に全校で取り組んでいます。低学年では笹舟づくりなどの自然体験を通じて自然に親しみ、中学年では地域の伝統行事への理解を深めるとともに多摩川の調査を通じて他校と交流し、高学年では生活や環境・エネルギーについて学んだことを交流のあるスウェーデンの小学校に発信します(写真1-4-2)。全学年を通じて組織的・計画的に実施されている点に加え、児童の発達段階に応じて地域、国内、世界へと視点を広げさせ、課題発見・予想や計画・調査・まとめ・発表のサイクルを毎年繰り返して、問題解決力が定着するよう工夫して指導している点が評価されました。

写真1-4-2 多摩川で生き物調査をする子供達

(2)地域の過去の経験に学ぶ環境教育 ~公害教育~

 我が国は、戦後の高度経済成長の結果、飛躍的な発展を遂げましたが、重化学工業化によって工場から排出された汚染物質によって環境汚染が進み、公害とそれに伴う深刻な健康被害を引き起こしました。このような背景から、子供達を公害から守り、子供達の公害問題に対する認識を高めることなどを目的として公害教育が始まり、現在でも各地で行われています。

ア 四日市公害についての教育

 四大公害病の一つとして挙げられる「四日市ぜんそく」が発生した三重県四日市市では、子供達への公害の歴史についての教育を充実させるため、平成23年4月から「『四日市公害』語り部講師派遣支援事業」を行っています。この事業は、四日市市環境学習センターの「四日市公害」解説ボランティア語り部養成講座の講師や「四日市公害」を直接体験した地域住民の方を、公害の恐ろしさや歴史を語る語り部として市内の小中学校に派遣することを支援するものです。四日市市では、語り部の方に直接語っていただくことが子供達の心に響くと考え、この事業を実施しています。

写真1-4-3 語り部の話に聞き入る子供達

 平成25年度は、市内20校の小中学校で語り部の方が招かれました。語り部の方は当時の大気汚染のひどさやぜんそくの苦しさなどを小中学生に話し、同じような歴史を繰り返さないように、と訴えかけました。

イ 水俣病についての教育

 四大公害病の一つでもあり、世界に類例のない被害をもたらした水俣病についての教育も行われています。熊本県では、水俣病の正しい理解を広め、差別や偏見を許さない心情や態度を育み、環境問題への関心を高め、その解決に意欲的にかかわろうとする態度や能力を育成するため、平成23年4月から「水俣に学ぶ肥後っ子教室」を実施しています。この教室では、小学5年生が、水俣病や環境モデル都市である水俣市について事前学習を行い、水俣市立水俣病資料館などの現地を訪問した後にその学習成果をまとめ、保護者や地域に発信するなどの事後学習を行うものです。熊本県内すべての公立小学校で実施されており、現地での語り部の方の講話や環境学習を通じて、水俣病に対する正しい理解を深めるとともに、公害被害から環境再生へと立ち上がる水俣の姿を体験的に学んでいます。

 さらに水俣市では、平成23年3月に「水俣市環境学習資料集」(図1-4-3)を作成し、この資料を用いて小学校から中学校まで水俣病についての学習を系統的に行っています。例えば、中学3年生では、「『水俣病の教訓を活かす』生き方について考えよう」という学習を行っています。この学習では、生徒それぞれが水俣病に関する学習を振り返り、「水俣病の教訓を生かす」とはどういうことかを自分で考えた後、環境に配慮したものづくりや地域再生の最前線で活躍している「環境マイスター」などの「ゲストティーチャー」のお話を聞きます。最後に、生徒が自ら考えたことにゲストティーチャーの思いを加え、自分なりの「水俣病の教訓を生かす」生き方についてまとめ、発表します。このような学習によって、子供達がふるさとの水俣を誇りに思い、持続可能な社会を構成する一人として、豊かな人生を歩むきっかけの一つとなることを目指しています。

図1-4-3 水俣市環境学習資料集

(3)体験を通じた環境教育

 環境教育の目的は、持続可能な社会の実現に向けて具体的な行動に結び付けることです。そのためには、単なる知識の修得だけではなく、自然体験、社会体験、生活体験などの実体験を通じた経験が重要です。そのため、体験を通じたさまざまな環境教育が進められています。

ア 学校施設を利用した環境教育

 我が国では、平成9年度から「エコスクールパイロット・モデル事業」を実施しています。「エコスクール」とは、太陽光発電設備等の再生可能エネルギー設備の導入や校舎の断熱性の向上、内装などに地域の木材を利用するなど、環境を考慮した学校施設のことです。この事業では、公立学校を対象に、エコスクールとして整備する学校をモデル校として認定し、財政面での支援を行っています。

 平成26年3月までに1,484校が認定されています。ある小学校では、環境教育の教材として太陽光発電設備を活用しており、児童達が校舎に設置された太陽光発電設備が稼働しているのを間近に目にしながらその仕組みを学んでいます(写真1-4-4)。

写真1-4-4 太陽光発電について学ぶ子供達

イ こどもホタレンジャー

 夜、点々と光りながら飛ぶホタルの風景は、古くから我が国の原風景として大切にされてきました。こうした風景が多くの地域で失われてきた一方で、失われたホタルを呼び戻そうとする活動や残されたホタルを守り、ホタルが代表するきれいな水環境や豊かな自然環境を保全しようとする活動も広がってきています。

 環境省では、ホタルをはじめとする水辺の生きものが生息する水環境の保全活動に取り組む子供達を「こどもホタレンジャー」と名付け、全国から活動報告を募集し、優秀な活動については、環境大臣が表彰する事業を平成16年度から実施しています。

 平成25年度に環境大臣賞を受賞したのは、学校の部で和歌山県広川町立津木中学校、団体の部で長野県千曲市のあんず保育園で、平成26年3月に表彰式を行いました(写真1-4-5)。広川町立津木中学校では、全校生徒が21人という少人数でありながら、総合学習ゲンジボタル研究班を結成してホタルの保護を中心とした地域の川の水環境保全活動を継続的に実施し、特にホタル、水質、カワニナなどそれぞれの経年変化について、しっかりと数値をまとめていることなどが高く評価されました。あんず保育園は、幼い時から自然と密接にふれあう貴重な体験を継続的に行っていることなどが高く評価されました。

写真1-4-5 「こどもホタレンジャー」表彰式の様子

ウ 子ども農山漁村交流プロジェクト

 最近の子供達の自然体験活動が減少していることを受け、我が国では、小学生が農山漁村に宿泊して農林水産業を体験することを支援し、自然環境の大切さを実感させることなどを目指した「子ども農山漁村交流プロジェクト」を平成20年度から実施しています。

 このプロジェクトでは、現地の自治体や企業、農林漁業者などからなる受入地域協議会と、参加を希望する小学校との間の調整により、参加校と受入先を決めます。参加が決まった小学生は、受入れ先の農林水産業を営んでいる方々のお宅に宿泊し、田植えなどの作業の手伝いや、ハイキングなどを通じて豊かな自然や農林水産業を体験します(写真1-4-6)。また、宿泊先の家族と一緒に食事をともにするなど、地域の方々と交流することで、田舎の生活や文化を学びます。平成21年に公表されたアンケート結果によると、この事業を通じて、「命の大切さが高まった」、「環境保全意識が向上した」などの成果が挙げられています。平成24年12月末までに、延べ約12万4千人の小学生がこのプロジェクトに参加しています。

写真1-4-6 田植えをする子供達

東京都荒川区における廃棄物対策・リサイクルに関する学校教育

 東京都荒川区では、子供のうちから環境に関心を持ち家庭での取組につなげてもらおうと、小学生を対象にした廃棄物対策やリサイクルに関する学校教育に力を入れています。具体的には、教科書と図書館の資料等を活用し、自分達の暮らしから出るごみがどのように処理・再利用されているかを調べ、自分達の生活とのかかわりについての学習を進めています。また、児童向けに作成した環境学習用テキスト「はじめよう!わたしたちにもできること」を活用し、区内のごみ処理の現状や3Rの必要性、リサイクルの仕組みなどについての学習も実施しています。さらに、区職員による出張授業も実施しており、ごみ処理の流れや3Rの重要性についての講義のほか、ごみの分別ゲームや積載部分が透けて見えるスケルトン清掃車へのごみの積み込み体験などの体験学習も行っています。このほかにも、ごみの減量と資源の有効活用の観点から、マイバッグを持参してレジ袋を辞退することを推奨するため、小学生とその保護者に普及啓発用のリーフレットを配布しました。

スケルトン清掃車を用いたごみの積み込み体験

 また、平成26年度には食べられるにもかかわらず廃棄される食品にも新たに焦点を当て、発生源の約半分を占める家庭からの食品ロス削減を目的とした「もったいない事業」を展開することとしています。事業の一環として小学生とその保護者を対象に、日頃の生活を見直し、食べ物を無駄にしないことの重要性を普及・啓発するリーフレットを配布することを予定しています。

松本市における食品ロス削減に向けた環境教育の取組

 長野県松本市では、「もったいない」をキーワードに3Rの取組を推進しており、特に食品ロス削減に向けた園児対象の参加型環境教育に力を入れています。

参加型環境教育に参加する園児

 本事業では、松本市内の公立の全保育園・幼稚園の年長児を対象に、食べ物を作ってくれた人への感謝や資源の大切さを忘れない心を育むことを目指しています。具体的な取組として、ごみとして捨てられたものはどうなるのか、分別したものが新たな資源として生まれ変わること、食べ残した食品残渣は焼却場で燃やされて処分されることなどについて、クイズ形式で説明しています。また、ごみ箱に入っているごみを実際に園児に分別させる取組も行っています。年中児には、食品ロス削減やごみ削減などの取組例を紹介したパンフレットを通じて啓発活動を行っています。

 この事業を通じた教育の効果を全保育園・幼稚園にアンケート調査を行ったところ、「食べ物を残さず食べようと努めるようになった」「それまで以上に容器包装プラスチックを分別するようになった」などの変化が園児に認められたことが明らかとなっています。

5 環境教育を担う人達への環境教育

 環境教育を効果的に行っていくためには環境教育を担う人達の資質の向上が欠かせません。このような観点の下、平成24年度から、学校教職員や地域で環境保全活動を実践している方々を対象に、ESDの要素を含めた環境教育についての実務研修を実施しています(写真1-4-7)。両者が一緒に研修を受けることで、質の高い効果的な環境教育、環境保全活動を実践できる担い手を育成することを目的としています。

写真1-4-7 研修におけるグループワークの様子

 平成25年度は平成26年2月に東京都と兵庫県において実施し、126名の方が参加しました。研修ではESDの視点を踏まえた環境教育の指導方法などを取り上げ、グループワークを通じて相互にネットワークの構築や情報共有を図ることができました。

6 東日本大震災により被災した東北地域でのESDの取組

 平成23年3月に発生した東日本大震災によって大きな被害を受けた東北地域では、この経験を機に新たな環境教育の取組も始まっています。このような環境保全活動や環境教育の取組などを調査し、平成24年度にその調査結果をもとにした10種類のプログラム「チャレンジプログラム」を作成しました。平成25年度には、東北6県(青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県)の企業、NPO、学校、児童・生徒グループなどにプログラムを実践してもらい、優秀な取組には環境大臣賞や知事賞などが授与されました(写真1-4-8)。

写真1-4-8 環境大臣賞等の授与の様子

気候変動キャンペーン Fun to Share

 環境問題の一つとして地球全体の気候変動問題があることはすでに述べたとおりですが、一人ひとりがこの問題を正しく認識し、行動に移していくため、我が国では、気候変動問題をテーマとした「気候変動キャンペーン」を平成26年3月に立ち上げました。

 気候変動キャンペーンでは、企業、団体、地域社会、国民一人ひとりが連携してライフスタイル・イノベーションに繋がる情報・技術・知恵を共有し、連鎖的に拡げていくことで我が国全体として豊かな低炭素社会を実現していくことを目指しています。

 具体的な取組として、公式ホームページやソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の活用などにより、各主体の取組情報を共有する場を設けることとしています。また、説明力と発信力のある専門家などによりIPCC報告書をベースに気候変動についての分かりやすい情報発信を行う「IPCCリポート コミュニケーター」事業を展開していくこととしています。

気候変動キャンペーンのロゴマーク

 気候変動キャンペーンの取組によって、環境問題に対する私達一人ひとりの理解が深まり、具体的な行動へと繋がるきっかけをつくるという意味で、本文で述べた環境教育の第一歩となることが期待されます。