自然環境・生物多様性

第65次南極地域観測隊同行日記3

第3回:自然保護官(レンジャー)、氷山に会う

2023年12月26日(火)

みなさんこんにちは。お元気にしていますか?
私は今、氷山を望んでいます。



南緯55度線を越えてすぐ、南極観測隊は初氷山を観測しました。
私は以前、北海道の知床で自然保護官(レンジャー)をやっておりましたので、流氷は何度か見たことがありました。同じ海の上の氷、氷山も同じようなものだろうと考えておりました。
・・・が、違いました。
 
氷山、デカいです。
 
氷山、えらくデカいです。



                   <初観測された氷山>


まず厚みが違います。流氷が生姜焼きだとしたら氷山は骨付きステーキくらいには違いがあります。
そして流氷のようにたくさんの氷が押し寄せるのではなく、デンと一つだけで流れてきます。
それもそのはず、日本のオホーツク海の流氷はアムール川河口の海が凍って流れてくるものであり、今回観測した氷山は南極氷床の棚氷から分離して流れてきたもの。それぞれ成り立ちが違うのです。
もちろん南極でも大陸に近づくと流氷はありますし、また流氷と氷山それぞれの役割があるので、どちらが優れているかといった比較は意味がありません。
 
 
そういえば、本日記の当初から私は自分を自然保護官(レンジャー)と呼んでおりましたが、ここで少し自然保護官の説明をしようと思います。
自然保護官とは国立公園や鳥獣保護区などの現場で、自然環境保全に関連する業務を行う環境省職員です。そして国立公園制度の元祖であるアメリカにおける国立公園職員(パークレンジャー)に倣って、日本でも「レンジャー」と呼ばれています。
そんな自然保護官(レンジャー)、日本では北は北海道の稚内から南は沖縄県の西表島まで、国立公園や鳥獣保護区など希少な自然環境がある様々な場所で、それぞれの自然を守るために活動しています。
 
 
さて話を戻して、そんな氷山ですが、初氷山を目撃して以降、ずっと海を観察していると次々と流れてきます。もっとも、実際には氷山が流れてくるというよりは、私たちの船が氷山の多い場所を進んでいるのでしょう。事実、氷河の近くでは毎日のように観察できましたし、多い日には数時間ごとに大きな氷山が流れてきました。
白く大きい台形のモノが列をなして流れてくる姿はまるで回転寿司のお皿のようです。
こうなってくると人間贅沢なもので、今度は氷山の上に何か乗っていないかと探し始めてしまいます。
しかしさすがに巨大な氷山。生き物も登るのが困難なのか、『お皿』の上で動く何かはなかなか見つかりません。
 
果たして氷の上にネタが乗ったのは初氷山から九日後、流氷域に入ってからだったのでした。



                     <流氷上のペンギン> 

                         

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