自然環境・生物多様性

第65次南極地域観測隊同行日記4

第4回:自然保護官(レンジャー)、昭和基地へ飛ぶ

2023年12月26日(火)

みなさんこんにちは。お元気にしていますか?
私は今、昭和基地へ向かうヘリコプターの中にいます。





南極観測船しらせがごうごうと音を立てて氷を砕き進めて数日。いよいよ昭和基地が目前となってきました。




         <南極大陸とだいたらポジー> ※昭和基地は写真の場所よりもっと左側とのこと

         参考:ネイチャーポジティブキャラクター「だいだらポジー」 | 環境省 (env.go.jp)

ここまで来ると、観測隊の移動はヘリコプターを使います。南極では、しらせと昭和基地そしてそれぞれのチームの調査地点の間をヘリコプターで移動することになります。移動に使うことができるヘリコプターは観測隊がチャーターして運用する1機と、しらせが運用する2機。この計3機をやりくりしながらそれぞれの調査を進めて行くのです。
 
そして、ヘリコプターの役割は人間のみでなく物資を運ぶことにもあります。しらせが昭和基地に接岸すれば、積み荷は雪上車などで地上から運ぶことができます。しかし夏の間に必要なものなど早く運ぶ必要がある荷物はヘリコプターで接岸より先に運び入れるのです。
昭和基地にとってヘリコプターの到着は今次の観測隊到着を、そして物資の到着を意味します。そのため冬の間昭和基地を守ってきた越冬隊にとっては、待望の瞬間なのだそうです。


 
                    <小さくなる南極観測船しらせ>

さて、これから環境省の南極活動も本格化してまいりますが、ここで改めて今回の南極観測隊同行における環境省の業務を説明しようと思います。
出発の際の報道発表でも一部記載しておりますが、環境省は南極観測隊の中でも夏隊と呼ばれる、12月後半から2月までの南半球における夏期間に作業を行う隊に同行しています。そのため越冬は行いません。
(参考:
第65次南極地域観測隊への環境省職員の同行及び環境省ホームページでの現地活動の広報について | 報道発表資料 | 環境省 (env.go.jp)
このおよそ二か月の間に、概ね以下のような8種類の調査・作業を行う予定です。
 
その1:南極地域活動実態把握調査
その2:南極環境構成要素の現状確認
その3:南極特別保護地区(ラングホブデの雪鳥沢)の確認
その4:南極史跡記念物(福島ケルン)の確認
その5:日常的に行われている活動による環境への影響をモニタリング
その6:過去に行われた活動の影響をモニタリング
その7:南極大陸における鳥インフルエンザ発生を想定した対応検討の事前調査
その8:南極における環境省活動の普及啓発
 
それぞれの詳細はその活動を行う際に説明しようと思いますが、概ね「南極地域の環境の保護に関する法律(南極環境保護法)」の内容に関係した事柄を行うものです。
 
もちろん南極の過酷な環境と限られた装備の中、調査・作業が予定通り進むとは限りません。例えばブリザードが吹き荒れればヘリコプターは飛ぶことができませんし、外での作業もほとんどが中止となるでしょう。タイミングによっては、今期は断念せざるを得ないような調査が出てくるかもしれません。
それでも、この氷の大陸ではどんな景色が待っているのか、どんな体験が待っているのか。高揚を抑えることはできません。
期待と不安を胸に、昭和基地に降り立つ瞬間を待っています。
 
氷の向こうに昭和基地が見えてきました。これから短い南極の夏が始まります。
忙しくなりますが、できるだけこの日記も更新していきたいと思います。

                  
                     <遠くに見える昭和基地> 

                         

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