環境省
VOLUME.67
2018年10・11月号

特集 もったいないを楽しもう! 3R NEWS

これからの循環型社会づくりのために

「第四次循環型社会形成推進基本計画」※1 閣議決定

限りある資源を無駄なく活用し、持続可能性の高い循環型社会づくりに向けて、
基本的な方針や政府の施策を示す「第四次循環型社会形成推進基本計画」が、6月19日に閣議決定されました。
今回新たに策定された計画の特徴や、私たちに何が求められるのかについて、
環境問題に詳しいジャーナリストの崎田裕子さんに聞きました。

崎田裕子さん/YUKO SAKITA

(教えてくれたのは)
崎田裕子さん - YUKO SAKITA

ジャーナリスト・環境カウンセラー「持続可能な社会・循環型社会づくり」を中心テーマに取り組み、環境省の「中央環境審議会」「東京2020組織委員会」等の委員も務める。NPO法人持続可能な社会をつくる元気ネット理事長。

キーワードは「地域循環共生圏づくり」

 今回策定された第四次計画のポイントは、「環境」「経済」「社会」が抱える課題を個別ではなく統合的に考える重要性を打ち出した点にあります。持続可能な社会を目指す国際的な動き、国内の人口減少や少子高齢化、ビッグデータやAIなどの新技術を活用する「Society5.0」※2、SDGs※3など、社会全体の大きな流れの中で環境問題を捉え、さまざまな課題に対応しながら循環型社会をつくる方向性が示されたことが、今回の計画の大きな特徴です。また、課題に対する具体的な指標や数値目標が数多く示され、何に取り組むべきかが分かりやすい構成になっています。

 その私たちが取り組むべき社会課題の解決策として、計画では「地域循環共生圏づくり」を大きく掲げています。これは、循環可能な資源はできるだけ地域内で循環させ、その資源を上手に活用して個性豊かな地域づくりを目指すというもの。自然豊かな地域ではバイオマスエネルギーを利用して産業を興す、都市部では資源回収を徹底して新しいリサイクルの仕組みをつくるなど、それぞれの特性を活かした地域活性化の取り組みに繋げることが求められていると思います。

身近なモノの一生を見直そう

 これからの循環型社会をつくるために、私がみなさんに目を向けてほしいのは、プラスチック、食品、小型家電です。この3つは、計画でも資源の一生を視野に効率的な活用や資源循環に取り組む対象に挙げられ、特に食品ロス削減には数値目標も示されました。今使い捨てにしているプラスチック容器包装や製品をリユース・リサイクルできるものに替える。残さずにおいしく食べきることを意識し、必要な量だけ食品を購入する。小型家電の金属を東京オリンピック・パラリンピックのメダルの材料にする「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」に協力する。こうしたことを通じて、私たちがライフスタイルを見直すことがとても大切だと思います。

意識を持って、暮らしを変える

 日本ではこれまで、「環境意識は高いが行動に現れない」という傾向がありました。私たちのライフスタイルが変われば、企業のビジネススタイルが変わり、社会が変わります。今回の計画が示した「環境問題を解決しながら社会課題も解決する」という意識を持って、私たちが暮らしを変え、経済や社会の仕組みが変わるきっかけをつくることが、これからの循環型社会づくりに欠かせないことなのではないでしょうか。

(用語解説)

(※1)「循環型社会形成推進基本計画」

循環型社会形成推進基本法に基づき、循環型社会の形成に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るために定めるもの。概ね5年ごとに見直しを行うものとされ、2018年6月19日に第四次計画が閣議決定されました。

(※2)「Society 5.0」

①狩猟社会、②農耕社会、③工業社会、④情報社会に続く、人類史上5番目の新しい社会。AIなどの先端技術をあらゆる産業や社会生活に取り入れ、「必要なモノ・サービスを、必要な人に、必要な時に、必要なだけ提供する」ことにより、様々な社会課題を解決する試み。

(※3)「SDGs」

17の持続可能な開発のための目標(Sustainable Development Goals)と169のターゲット:2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030 アジェンダ」にて記載された2016年から2030年までの国際目標。

「第四次循環型社会形成推進基本計画」で新たに定められた主な指標・目標

家庭系食品ロス量の削減目標

最終処分場の残余年数

都道府県、市区町村の災害廃棄物処理計画策定率

これらの他に、廃棄物等種類別の出口側の循環利用率、不適正処理の発生件数、資源循環分野を含む環境協力に関する覚書締結等を行った国の数に関する指標が新たに定められています。

都道府県、市区町村の災害廃棄物処理計画策定率

2013年度以前は市町村の策定率のみ調査を実施 出展:環境省

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