ビルは“ゼロ・エネルギー”の時代へ

ZEBリーディングテナント行動方針

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リーディングテナント行動方針とは

テナントビルにおける脱炭素化の必要性

2050年にカーボンニュートラル実現を目指すという我が国の長期的な温室効果ガス削減目標の実現に向けて、業務部門における脱炭素化を進めることは不可欠であり(詳細はこちら)、なかでも排出量に占める比率が高い事務所ビルの脱炭素化が求められています。特に、テナントビルにおいては、建物の開発・運用者と使用者が異なることが、脱炭素化の取組を加速させる上での課題となっており、テナントビルに本社を構える企業が多い一方で、テナントビルにおけるZEBの事例はまだ少ないのが現状です。

東京23区内にある上場企業の本社の
自社/テナントビル比率

東京23区内の上場企業本社の自社ビルとテナントビルの比率のグラフ

出所)CBREウェブサイト <cbre-propertysearch.jp/article/office_buy_or_rent-vol1/>を基に作成。
注釈)東京23区内の上場企業1720社を対象とした2013年9月時点のデータ。

ZEB採択事業における
自社ビル/テナントビル比率

ZEB採択事業における自社ビルとテナントビルの比率のグラフ

出所)一般社団法人 環境共創イニシアチブ「ZEBリーディング・オーナー登録票」を基に作成。
注釈)2020年8月時点で登録されている「事務所等」用途の91件のデータ。

リーディングテナント行動方針の目的と概要

上記の現状を踏まえ、環境省では、テナント企業等による脱炭素化への取組を取りまとめた「リーディングテナント行動方針」(以下、行動方針)を策定し、本行動方針に賛同する企業・自治体等を募集・公表することで、テナント企業等のニーズを建物オーナーに伝え、テナントビル等の脱炭素化を促進することとしています。

具体的には、ZEB等をはじめとした脱炭素化に資する建物へのニーズ、入居後の建物オーナーと協力した脱炭素化への取組に対するニーズを広く発信します。こうしたテナント企業等の『具体的な』ニーズを『まとまって』建物オーナーへ発信することで、建物オーナーによる脱炭素なビルの供給を後押しすることに繋がることが期待されます。

リーディングテナント行動方針の概要の画像

オーナー等向けの行動方針の目的と概要

本行動方針の運営を行う中で、既賛同者から行動方針の取組を進めるうえでオーナー側の協力が不可欠であるというご意見や、建物オーナーからオーナーとして本行動方針に賛同したいというご意見が寄せられました。これらのご意見を本施策に反映することは、テナントとオーナーが協働してテナントビルの脱炭素化を進めるという行動方針の目的と合致しており、新たにオーナー等向けの行動方針を策定し、テナントとオーナーの協働した取組を一層促進することとしています。

具体的には、ZEBの実現や再生可能エネルギーの活用、入居テナントとの協働による脱炭素化への取組などを広く発信します。テナントのニーズに応える姿勢を示し、ニーズがあった際には積極的に協力することで、リーディングテナントを含む各テナントが設定した目標等の実現をサポートし、脱炭素なビルの普及拡大に繋がることが期待されます。

行動方針にかかる参考資料

ZEBとは

経済産業省資源エネルギー庁「ZEBロードマップ検討委員会とりまとめ」(平成27年12月)では、ZEBを「先進的な建築設計によるエネルギー負荷の抑制やパッシブ技術の採用による自然エネルギーの積極的な活用、高効率な設備システムの導入等により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギー化を実現した上で、再生可能エネルギーを導入することにより、エネルギー自立度を極力高め、年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロとすることを目指した建築物」と定義しています。現在、ZEBの実現・普及に向けて、4段階のZEBを定義しています。(詳細はこちら)

ゼロエネルギーの達成状況に応じて定義される4段階のZEBシリーズの画像
建築物の各種評価・認証制度

建築物における環境性能やエネルギー消費性能を示す指標として、国内には主に以下のような評価・認証制度が存在します。独自の目標設定を行う際には、これらの制度において各建物が取得しているラベル等に基づき「③具体的な行動内容」を設定することが可能です。

ただし、評価・認証の取得は任意であり、どの制度の評価・認証も受けていない建物も多く存在します。そのため、行動方針への賛同者は、少なくとも何らかの制度における評価・認証を取得している物件を入居先の選定対象として検討することが必要となります。

どの制度における評価・認証を入居先選定の基準とするかについては、各制度の特徴などを考慮したうえで検討してください。

評価・認証
制度名
特徴 物件概数 物件情報の参考URL
BELS 建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律に基づいて、建物のエネルギー性能を表示する仕組みであり、新築、既存を問わず、全ての建築物を対象とした制度である。 1978件(2020年7月末時点) ※非住宅用途の件数 https://www3.hyoukakyoukai.or.jp/cases
CASBEE 建築物の環境性能を総合的に評価する仕組みであり、エネルギー性能に限らず、資源循環、地域環境、室内環境なども評価の対象となっている。一部の地方自治体では、建築物を建てる際にCASBEEによる自己評価書の添付を義務付けている。 483件(2021年8月27日時点) ※CASBEE建築評価認証物件数 28,227件(2020年3月末時点)
※自治体への届出件数の合計
https://www.ibec.or.jp/CASBEE/certified_buld/CASBEE_certified_buld_list.htm
https://www.ibec.or.jp/CASBEE/local_cas.htm#todokede
LEED 米国の非営利団体USGBCによって開発された、建築物の総合的な環境性能を評価するシステムであり、評価基準を満たすことで得られるポイントの合計値によって、CERTIFIED(標準認証)、SILVER、GOLD、PLATINUMの4段階で評価が行われている。 184件(2021年8月17日現在) https://www.gbj.or.jp/leed/about_leed/certified-projetcts/
DBJ Green Building認証 不動産のサステナビリティを環境性能、危機に対する対応力、ステークホルダーとの協働、多様性・周辺環境への配慮、テナント利用者の快適性といった5つの視点から評価する仕組みであり、不動産とその所有・運営者を支援する取組である。 413件(2021年6月末時点) ※オフィス版 111件(2021年6月末時点) ※ロジスティクス版 157件(2021年6月末時点) ※リテール版 http://igb.jp/list.html
東京都カーボンレポート 中小テナントビルオーナーが東京都に報告する「地球温暖化対策報告書」に基づき、低炭素ビルベンチマーク(CO2排出量(年間)の実績値をビルの延床面積で割り算した、延床面積あたりのCO2排出量(kg-CO2/m2))や温暖化対策の実施状況を示す仕組みであり、テナントや入居希望者に省エネ性能をアピールするための制度である。 4000件
※地球温暖化対策報告書の件数
https://www8.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/ondanka/ad135gcce/index.php
東京都トップレベル事業所認定制度 温室効果ガス排出総量削減義務と排出量取引制度において、「地球温暖化の対策の推進の程度が特に優れた事業所」として、東京都知事が定める基準への適合を認定する制度であり、その程度に応じて「トップレベル事業所」又は「準トップレベル事業所」に認定される。 令和2年度:27件、令和元年度:6件
平成30年度:2件、平成29年度:7件
平成28年度:17件、平成27年度:30件
平成26年度:5件、平成25年度:4件
※テナントビルを含む区分Ⅰの件数
※トップレベル、準トップレベルの合計件数
https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/climate/large_scale/toplevel/cat8317.html
東京都建築物環境計画書制度 一定規模以上(2000m2以上)の建物の新築、増築、改築する際に、建築主による環境配慮の取組を示した建築物環境計画書の東京都への提出を義務付けた制度であり、その概要をとのホームページにて公表している。 400件
※都内全域の事務所用途の件数
https://www7.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/building/area_select.html
BOMA360 最も高いレベルの運用管理がなされているビルを認証する制度であり、ビルの運営管理、生命の安全・セキュリティ・リスク管理、訓練・教育、エネルギー管理、環境・サステナビリティ、テナントリレーション・地域社会への貢献といった6分野での最高水準のパフォーマンスが求められている。 6件(2021年8月末時点) https://www.boma.org/BOMA/Recognition-Awards/BOMA_360_Performance_Program/BOMA_360_Buildings/BOMA/Recognition-Awards/BOMA_360_Buildings.aspx?hkey=651693fa-b5df-4923-b091-0b3a9987e937
GRESB 不動産業における企業、ファンド単位での環境・社会・ガバナンス(ESG)への配慮を評価するグローバルな仕組みであり、日本の参加者の内訳としては、J-REITが全体の6割弱を占めている。 85者(2020年時点) http://www.csr-design-gia.com/info/pdf/2020_GRESB-Japan-Results-Announcement-Press-Release_rev.pdf
グリーンリース、エコチューニングとは

グリーンリースとは、国土交通省において次のとおり定義されています。このグリーンリースの活用により、テナントとオーナーの双方がメリットを享受することが可能となります。

ビルオーナーとテナントが協働し、不動産の省エネなどの環境負荷の低減や執務環境の改善について契約や覚書等によって自主的に取り決め、その取り決め内容を実践することをいいます。この取組により、ビルオーナー・テナント双方が光熱費削減等の恩恵を受け、Win-Winの関係を実現します。

グリーンリースの定義とメリットの画像

出所)国土交通省、グリーンリースリーフレット(概要版)

エコチューニングとは、環境省において次のとおり定義されています。このエコチューニングはオーナーがエコチューニングを実施する事業者とともに実施する取組ではありますが、実践される運用改善に対してテナントとして協力を行うことで、より効果的なエネルギー消費量・CO2排出量の削減を図ることが可能となります。

「エコチューニング」とは、低炭素社会の実現に向けて、業務用等の建築物から排出される温室効果ガスを削減するため、建築物の快適性や生産性を確保しつつ、設備機器・システムの適切な運用改善等を行うことをいいます。

「エコチューニングにおける運用改善」とは、エネルギーの使用状況等を詳細に分析し、軽微な投資で可能となる削減対策も含め、設備機器・システムを適切に運用することにより温室効果ガスの排出削減等を行うことをいいます。

再生可能エネルギーの調達方法

ZEBの評価にあたっては、創エネとしての再生可能エネルギーは敷地内に設置されているエネルギー源に限定(自家消費分に加え、売電分も対象に含む)されています。

一方で、敷地内のエネルギー源のみで建物のエネルギー需要の大半を賄うことは容易ではなく、テナントが再生可能エネルギーの供給を要望したとしても、オーナーが敷地内のエネルギー源からのみでその要望に応えることは困難です。

そのため、本行動方針における再生可能エネルギーの扱いとしては、ZEBの定義に従ったオンサイト(敷地内)の再生可能エネルギーの活用だけでなく、オフサイト(敷地外)のエネルギー源からオーナーが再生可能エネルギーを調達し、テナントに供給することも対象とします。

具体的にオーナーが再生可能エネルギーを調達し、テナントがその供給を受ける方法として、本行動方針では、近年加盟企業が増加しているRE100における考え方に基づき、以下の方法を想定します。より詳細な情報はこちらをご参照ください。
https://www.env.go.jp/earth/earth/re100_1/RE100guidebook.pdf

① 専用線で接続された再エネ電源からの直接調達
専用線で接続された再エネ電源からの直接調達の画像
② 電力系統(送配電網)を介した再エネ電力メニューの購入
電力系統(送配電網)を介した再エネ電力メニューの購入の画像
③ 再エネ電力証書の購入(電源の特定(トラッキング)が可能な証書)
再エネ電力証書の購入(電源の特定(トラッキング)が可能な証書)の画像
テナント向けはこちら

環境省ではリーディングテナント行動方針(テナント事業者向け)の賛同者を募集しています

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