地球環境・国際環境協力

新地方公共団体実行計画策定マニュアル等改訂検討会 第1回検討会 議事要旨

日時

2008年10月8日(火) 13:30~15:30

場所

経済産業省別館1020号会議室

出席委員

大西委員(座長)、杉江委員、瀬田委員、善養寺委員、高橋委員、中口委員、長谷川委員、秦委員、藤田委員、牧委員、松橋委員、室田委員、森本委員、山田委員

小林総合環境政策局長挨拶、本検討会の趣旨

 今回の法改正で、従来まで任意であった地域の温暖化対策推進の計画策定が、都道府県、政令市、中核市、特例市等については義務化された。更に、都市計画、農業振興地域整備計画に関わる事項も盛り込まれ、温暖化対策と都市計画、関連する計画との接点を持つことが求められたことで、非常に意義のある改正がなされたといえる。
 他方、政府は、低炭素社会づくり行動計画として、2050年をターゲットに、現状から2050年に60~80%の温室効果ガスの削減をうたっている。これに向けて、足下である地域で、都市の構造等のインフラに及ぶ取組を行っていくことが重要になり、地方公共団体のイニシアティブが重要になってくると予想される。
 これらの動向を踏まえ、マニュアルの改訂に係わる検討会を開催するに至った次第である。各分野の権威の方々に、新しい時代の温暖化対策推進の計画に知恵を絞っていただきたい。

委員紹介、座長選任

 資料1にそって、事務局(住環境計画研究所)が委員紹介、互選により座長選任

大西座長挨拶

 都市計画では地域冷暖房など、地域的に効率的なエネルギーを使う方法等の議論が進んできた。一方で、温暖化対策としての個人の努力、狭い地域の努力が、全体の温室効果ガス排出量の削減にどう効果をもたらしているのか見えにくい状況となっている。
 個人の努力、例えば環境家計簿を通じて家計を節約しつつ、CO2の排出を抑えるという行動が積み重なることにより、日本の目標が達成できるのか、そういったところがなかなか見えにくい。我が国の目標達成が、ひいては地球全体での温室効果ガスの排出抑制に結びつけていくには、もう少しステップを踏んだ体系的な取り組みが行われていく必要がある。この様な意味から、今回、比較的大規模な自治体が、地域全体についての計画策定を行い、温室効果ガスの排出削減に取り組んでいくことは、非常に重要なこと、或いは喫緊の課題でもある。これは、国内の自治体に直接的な影響を与えるだけでなく、諸外国にも大きなインパクトを与えと予想される。各委員の皆様は、それぞれ良い意見を出していただき、良い結果が生み出せるように進行役を努めたいと考えている。

「地方公共団体実行計画策定マニュアル」改訂の背景について

 資料3にそって、事務局(環境省)が説明

現行マニュアル及び地方公共団体の施策の現状について

 資料4、5にそって、事務局(住環境計画研究所)が説明

今後検討すべき方向性について

 資料6にそって、事務局(住環境計画研究所)が説明

委員から頂いた意見等

(1)ガイドライン全般について

  • ガイドラインの内容を、国、中核・政令市等、その他の市町村など、自治体規模を三段階程度に分けて策定してほしい。(秦委員)
  • 市民にもわかりやすいマニュアル整備を望む。そのポイントを以下に示す。
    [1]地域の自然エネルギーの潜在量の推計方法の記載を望む(「こうすれば、こんなポテンシャルがある」ことが記載されている)。
    [2]現状、ごみ処理、汚泥処理などは単一の市町村だけでは完結しない事業がある。これらに複数自治体にわたる事業に対する対策をどう盛り込んでいくのか。
    [3]自治体や市民のモチベーションが上がり、実効性を確保する観点から、将来世代のためにも温室効果ガス削減のための取り組みを奨励する分かりやすい資料を入れる必要があるのではないか。(高橋委員)
  • 小規模の市町村の計画策定の促進策について、検討する必要がある。(中口委員)
  • 環境と経済の両立という視点が、非常に重要である。(長谷川委員)

(2)温室効果ガスの現況推計

  • 人口3万人以下の市町村で、計画策定が進まないのは、人手が足りないこと、温室効果ガス排出量の集計に手間がかかることである。温室効果ガス排出量の集計の簡易化が必要である。(秦委員)(杉江委員)
  • 全国データの按分を用いていることから、個人の努力、地域の努力が結果に反映されづらいという問題がある。取組努力の結果が、削減効果の数値としてわかるようなものにならないか。総量だけではない新たな指標があってもよい。(秦委員)(杉江委員)
  • 川崎市は東京都と横浜市の間に位置しているため、市内の交通量といっても両者間の通過交通が主体で、川崎市(の経済活動)に直接影響しない交通である。この様な交通量については、川崎市でコントロールできる部分は少ない。
    川崎市の温室効果ガス排出量は、ガイドライン(第3版)の手法を踏まえつつも、市独自の手法を採用している。(牧委員)
  • 現状では、電気のみ需要サイドで温室効果ガス排出量を算定している。これに対し、市内に鉄鋼業を擁しており、鉄鋼業の温室効果ガス排出量は膨大でかつ市域の排出としてカウントしているが、市内で製造された鉄は他の地域で使用されており、電気の排出量の算定の考え方と矛盾している。これについては、国際的な比較でも課題になっている。
     電力の排出係数は、柏崎原子力発電所が停止していることで増加しているが、これに伴う、市域の温室効果ガス排出量が増加していることについて、市民への説明は難しい。
    地域での努力をどう評価するのか、産業部門の取り扱いをどうするかの検討が必要である。(牧委員)
  • 温室効果ガス排出量算定を、供給側で評価するのか、需要側で評価するかが課題である。
     また、基準年はできるだけ統一すべきではないか。(山田委員)
  • 地域での努力をどう評価するのかが課題である。(牧委員)
  • 算定方法の標準化を望む。以前の計画での温室効果ガス排出量推計との整合性が必要である。また、排出量のダブルカウントを避ける必要がある。(牧委員)
  • 温室効果ガス排出量を把握するために、今後は、既存の統計データだけではなく、実測調査等の実施も必要ではないか。(山田委員)
  • 電力会社は、個人情報の保護という理由で、対象地域の家庭用電力消費量についても開示してくれないケースが多く、ベースとなるデータ自体が入手できない状況にある。
     公益情報の開示義務など、推定ではない正しい情報の把握ができなければ、現況推計は難しい。(善養寺委員)

2)温室効果ガスの将来推計

  • 滋賀県では、論点案にある地域経済マクロモデルをはじめとする各種推計ツールを作成し、目指すべき社会像を描きながら、2030年50%削減の低炭素社の実現を目指した持続可能な社会ビジョンを策定した。
    2030年頃に想定される技術や環境配慮行動、コンパクトシティなどの考え方も盛り込んだ温暖化対策を想定し、その積み上げた結果として50%の目標設定ではなく、将来的に50%削減目標を達成するためには、どのような対策を打たなければならないかという視点でまとめた。
    また、環境省として、国としての中長期目標値を出していただければ、地域で議論する際の目安になる。(杉江委員)
  • 都道府県は、域内の雇用と所得を確保しつつ温暖化対策を実施していくことが求められている。地域別エネルギー消費量の推計精度の問題を指摘されている委員の方が複数おられるが、地域間での整合をとった形で、共通の推計手法を用いて、都道府県別エネルギー消費量の推計を行っている。(室田委員)

(3)計画目標のあり方

  • 地方自治体が、個別に独自に目標設定を行うというのではなく、国の目標設定に対し、都道府県の間で各々の分担目標を定め、各都道府県が域内の市町村の配分を決めるべきである。また、キャップをかける場合でも、県それぞれ話し合い配分を決めるなどしなければ、国がキャップをかけて事業者の取組に期待するだけでは、実効性があがらない。(善養寺委員)
  • 温室効果ガス排出量を50%削減するといった場合でも、そもそも温室効果ガス排出量の水準が低い自治体など、削減の必要のない自治体もある。温室効果ガスを大量に排出している自治体が、削減分を負担することが必要である。この様な自治体では、キャップを課し、これを守れなかったらクレジットを買ってくるなどが必要ではないか。キャップをかけていないため、努力がインセンティブになっていない。(善養寺委員)
  • 環境モデル都市では、長期目標について野心的な目標をかかげている。しかし、全ての都市がトップランナーの必要はなく、ファイストランナー、サステナルブランナーなどがあってもよいのではないか。
    まず、現況の調査を行い、環境資源を調査することにより、地域がどの様な構造になっているかを分析し、戦略計画論の考え方にのっとり全体方針を定めることをマニュアルに書き込んでほしい。
    将来推計については、地域だけの議論ではなく、周辺地域への効果(場合によっては海外まで)を考慮する必要がある。(藤田委員)
  • 長期を考えた場合、対策効果の積み上げでは、温室効果ガス排出量がなかなか減少しない可能性も考えられる。政策のグリーン化(やれるものは何でもやるというスタンス)をしないと、長期での大幅な削減は難しいと思われる。政策のグリーン化の必要性や、グリーン化するための方法が、マニュアルに盛り込まれるといい。(松橋委員)

(4)温室効果ガスの排出抑制等の対策・施策

  • 国、中核市・政令市等、その他の市町村と三段階程度にステップをふんで、地域の特性を考慮して対策をたてていきたい。(秦委員)
  • 国、都道府県、市区町村で、行政権限が異なる。特に企業に対しては、国であれば命令できるが、市町村ではお願いベースとなるなどスタンスが異なる。(秦委員)
  • 意識啓発については、市民に近い自治体が担うべきものである。(秦委員)
  • 算定公表制度の温室効果ガス排出量試算結果は、市には報告されていない。市にも報告されるように条例作りを行っているところである。(牧委員)
  • 自治体で住宅の太陽光の補助制度を設けているが、都市部のため集合住宅の比率が増加しており、補助制度を設けたものの、太陽光発電の対象である戸建住宅数が減少しているという問題が生じている(牧委員)
  • 実施することにより炭素Leakage(事業者が市から出て行ってしまう)となる温暖化対策ではなく、産業振興となる温暖化対策を実施すべきと考える。(牧委員)
  • 温暖化対策に対する市のスタンスとしては、規制を厳しくすることにより企業を追い出すことが主旨ではない。これでは政策がゆがんでしまう。温暖化対策に積極的に取り組んでいる等のトップランナー企業の取組を推奨するという立場である。(秦委員)
  • トップランナー企業の取組を推奨し政策を歪めないという観点からは、原単位、エネルギー効率の視点が重要である。現在省エネ法の枠組の下で、効率性のベンチマークの議論が行なわれており、地方公共団体の施策にもこのような視点が盛り込まれることが望ましい。(長谷川委員)
  • 自治体に盛り込む対策メニューは、一般的な対策をあげる必要はなく、地域ならではの取組、例えば「里山と都市の連携」、「産業と都市の連携」等を、事業施策として盛り込むことが望ましい。地域の環境資本を活用した取組が、地方に期待される事項であり、これが低炭素社会へのメッセージとなる。(藤田委員)
  • 義務的記載事項について、組み合わせメニューの施行例を示すことが必要ではないか。例えば、これがインターネットでダウンロードできる等が望ましい。(藤田委員)

(5)関連する施策との連携について

  • 都市計画は、都市計画審議会、環境計画は環境審議会で議論されている。審議会相互の関係を整理することは難しいことから、両者よりも高いレベルでのマニュアルだと、両者の調整はやりやすい。(牧委員)
  • 都市のマスタープランと、政策の関係がしっかりしているかは疑問である。都市計画への働きかけだけではなく、計画間の関係も重要で、両者を考慮した制度設計自体が重要である。
     「コンパクトシティ」化することによりどの程度温室効果ガスの削減できるのか、可能な範囲で整理してほしい。効果があったとしても、その手段と方法をどうするか考える必要がある。(瀬田委員)
  • 大都市と小都市では議論が異なる可能性があるので考慮する必要がある。(瀬田委員)
  • 一般的に都市マスタープランでは、環境についての記載はなされており、施行状況調査結果を見た限りでは、自治体担当者がこれについて正しく回答していないこと(都市マスタープランを環境計画の一つとして認識していないこと)が問題である。
     また温暖化対策の中で、運輸の取組が少ないと回答されているが、自転車専用道路の整備、都市居住の推進は、公共交通利用の促進なので、温暖化対策の一つであり、担当者の認識不足がある。今後、自治体の取組状況を把握する際には、自治体の施策のうち、温暖化対策の対象になる施策メニューを整理し、自治体側に提供する必要があるのではないか。(森本委員)

(6)計画推進体制等について

  • 当初温暖化対策行動計画を策定済みで、地域推進計画策定が法律で定まった際に、行動計画を推進計画に読み替えている。これに合わせて、行動計画に係わる地域協議会を地域計画に係わる協議会に変更している。今回の改正で新たな計画策定を行う際には、既存協議会はすでに活動実績を持ち、市民が関わっているものなので、マニュアルでは柔軟に対応できるようにしてほしい。(牧委員)
  • 計画の進捗状況を把握(含む温室効果ガス排出量の把握)していくための研修のしくみについても検討する必要がある。(山田委員)

(7)その他全般

  • 誰がこのマニュアルを使うことになるかを考える必要がある。環境以外の部局も本マニュアルを使うと想定した場合、異なったものとなる。(松橋委員)

(8)質疑

  • マニュアルの位置づけは。 → 自治法上の技術的助言である。
  • 今回は実行計画策定マニュアルを改訂するのか。 → 地域推進計画策定ガイドラインを改訂し、事務事業について定めた実行計画策定マニュアルを取り込むことを想定。
  • 義務的記載事項4項目はandかorか。 → andである。
  • 義務的記載事項に基づいて実施される地方公共団体の施策について、国による財源の手当はあるのか。 → 計画策定費については、既に地方交付税措置がなされているが、施策の推進については直接的な手当はないため、エネルギー特別会計による補助事業等を組み合わせていただくことになる。

オブザーバーコメント

【農林水産省】農林水産省が実施しているバイオマスタウン計画策定などの取組があるが、今回の計画の中で協力できるところは協力していきたい。
【国土交通省】都市行政の分野でも、集約型都市構造の実現など環境にも貢献するような形で施策を進めている。今回、折角マニュアルを策定されるので、実際に計画を作る自治体の方が、できるだけ円滑に調整等が進められ、計画が作りやすくなるようなマニュアルを作っていただきたい。国土交通省としても協力させていただきたい。
【内閣官房】環境モデル都市を推進しており、アクションプランをどう策定するかが目下の課題。アクションプランと本検討会でご議論される実行計画との関係に関心があり、参加させていただいた。

小林局長

  • 本日の議論で、環境省側としても考えなければならない指摘事項がいくつかあった。例えば、中期目標の目安設定をどうするのか、排出目標をどの様に作るのか、地理的バウンダリーのみで排出量を算定するのか等である。
     地域で計画を策定する理由として、地域での取組努力の結果の把握があげられる。取組努力の結果が見える計画ではないと、対策を実施するインセンティブは働かない。
    例えば、地域でコントロールできる温室効果ガス排出量と、コントロールできない排出量を切り分け、それぞれ毎に対策の導入効果を分析すれば、地域での取組効果が把握できる。この様な事項がマニュアルに盛り込めたら面白い。

閉会宣言(大西座長)

  • 長期目標をバックキャストの手法で立てる上では、そこに至る道筋が見えないと実効性が低くなる。将来の都市の姿、生活の姿、また、その道筋を戦略性を持って丁寧に作りこんでいくことが重要である。
     マニュアルには、これから数十年先の戦略を組み込むという発想で、現状のものよりも一歩前進させる必要がある。今回のマニュアル改訂では、現状の懸案をできるだけ解決して、新しい方向が見えてくる様なガイドラインを策定していきたいと考えている。