地球環境・国際環境協力

日本版ナッジ・ユニット(BEST:Behavioral Sciences Team)について

1.概要

  • 日本版ナッジ・ユニット(BESTBehavioral Sciences Team)は、関係府省庁や地方公共団体、産業界や有識者等から成る産学政官民連携のオールジャパンの取組です(事務局:環境省)。
  • ナッジ(英語nudge:そっと後押しする)を含む行動科学の知見(行動インサイト)に基づく取組が政策として、また、民間に早期に社会実装され、自立的に普及することを目的に、環境省のイニシアチブの下、2017年4月に発足しました。その後、同年10月のノーベル経済学賞の受賞分野が行動経済学であったことの後押しもあり、取組が深化し、連携体制が次第に強化されています。
  • どのような取組も、地域に根付くものとするためには、関係するあらゆるステークホルダーを巻き込んでいくことが必要不可欠です。このため、行政内に限った取組ではなく、参加者が同じ立場で自由に議論のできるオールジャパンの実施体制としています。
  • 我が国におけるナッジ・ブースト等の行動インサイトの活用の広がりについて

2.事務局

  • 日本版ナッジ・ユニットBESTの事務局は、次のような経験や体制を踏まえて環境省が務めています。
  • 環境省では、「定着した行動変容」として国際的に評価され、取り上げられることの多いクールビズを2005年に開始し、2015年にはナッジに関する複数年の実証事業や地球温暖化対策のためのクールチョイス(賢い選択)の取組を開始しました。クールチョイスの取組は総理の指示の下、政府を代表して環境省が旗振り役を担っています。2017年度からは50万を超える世帯に協力いただいて、エビデンス(根拠)に基づく政策立案(EBPM:Evidence-based policymaking)の実践のために世界最大規模の実証(環境省ナッジ事業)をする等、私たちのライフスタイルや行動変容に関する取組を一貫して実施しています。
  • こうした取組は、行動科学や統計学、政策形成、ビジネスモデル、コミュニティー・オーガナイジング等の必要な学問領域について修士課程や博士課程で訓練の積んだスタッフや外部有識者等の協力の下、実施しています。
  • とりわけ人事院長期在外研究員制度により米国の政策や民間の現場で行動インサイトが浸透しているのを目の当たりにしたスタッフが2015年に帰国した際に研究の成果の社会への還元と人々のより良い決断を後押しすることを企図し、各府省庁に先駆けて府省庁版ナッジ・ユニットとして専門のプロジェクトチーム(環境省ナッジPT「プラチナ」)を設立しました。その後、関係者との調整・予算要求等を経て、日本版ナッジ・ユニットBESTの発足及び環境省ナッジ事業の開始に繋がっています。

3.日本版ナッジ・ユニット連絡会議

  • 日本版ナッジ・ユニットBESTでは、連絡会議を開催し、各回のテーマに合ったメンバー構成で議論を重ねています。
  • 例えば、「どのようなナッジをどのようにデザインすべきか」。この問い掛けに対しては、「私たち一人ひとりが自らの判断でより良い選択ができるよう、自身の行動・習慣を見つめるきっかけや気づきを与え、リテラシーを高められるようなナッジにすべき」、「効果をきちんと評価し、EBPMとEBP(Evidence-based practice:エビデンスに基づく実践)により透明性を高め、説明責任を果たすことが重要」というように様々な検討を進めています。そして議論のイロハとして、for a better choice(より良い選択のために)、to help autonomous behavior changes(自発的な行動変容の支援)の2つのABCをモットーにしています。

4.行動インサイトに関する世界的な潮流と日本の評価

  • 行動インサイトは、環境・エネルギー、健康・医療、教育、徴税、行政の効率改善、働き方改革、差別撤廃、SDGs(国連持続可能な開発目標)等の様々な社会課題の解決に適用し得るものとして、英国や米国をはじめ、地球規模で着目されています。
  • とりわけ行動インサイトは、規制的手法(法律等)、財政的手法(補助金等)、そして情報的手法(普及啓発・情報提供等)といった伝統的な政策手法を補完する位置付けでとらえられるようになっています。
  • OECD(経済協力開発機構)によれば、欧州・米国・豪州を中心に、世界で200を超える組織・機関が公共政策に行動インサイトを活用しており、日本版ナッジ・ユニットBESTや環境省ナッジPT「プラチナ」についてもそれぞれその1つとして位置付けられるとともに、国内及び海外から講演や会議の依頼を受ける等、国際的にその取組が認知され、評価されています。

5.行動インサイトの活用に向けて

  • 行動インサイトについては、海外で効果のあった事例が、文化や習慣等の異なる日本でも同様に効果があるとは限りません。また、国内のある条件で効果の見られた行動インサイトが、別の条件で同様の効果を発揮するとは限りません。
  • 成功事例の裏側で、思うような効果が得られなかった事例も少なからずあるといった指摘もあります。
  • 行動インサイトの活用に当たっては、行動インサイトが必ずしも万能なものではないと考え、どのようなときに効果があり、また、効果が見られないのかを事例を重ねながら一つひとつ明らかにすることが重要です。
  • 日本では、ようやく産学政官民のそれぞれの立場でナッジが浸透し始めてきたところですが、原著『Nudge』の発刊(2008年)から10年を経て、国際的にはこうした指摘を克服するため、「ナッジの先(Beyond Nudge)」が検討され始めています。
  • 例えばナッジに次ぐ新しい行動インサイトの活用アプローチとしては「ブースト(英語boost:ぐっと後押しする)」等があります。ブーストは、「行為主体性」をキーワードとしており、人々が行動を習慣化し、維持するためには本人の主体的な関与が欠かせないとする考えの下、「技能と知識(コンピテンシーやリテラシー)を向上させ、人々が自分自身で主体的に選択する能力を育成すること」を意味する政策アプローチです。環境省では、ブーストを用いた実証事業も実施しており、ナッジやブーストを伝統的な政策手法にいかに調和させるかについて検討しています。
  • 日本版ナッジ・ユニットBESTでは、行動インサイトを活用した取組に関する方法論や課題、対応方策等を広く共有するとともに、幅広い分野における課題の解決に向けた行動科学の活用について検討を進めています。また、欧米等先行する諸外国の政府関連機関、実務者、有識者等とも、情報共有や連携をしています。

Adobe Readerのダウンロード

PDF形式のファイルをご覧いただくためには、Adobe Readerが必要です。Adobe Reader(無償)をダウンロードしてご利用ください。

ページ先頭へ