中央環境審議会地球環境部会(第5回懇談会)議事録

日時

平成19年10月24日 9:30~12:30

場所

三田共用会議所3階会議室(B-E)

出席委員

(部会長)   鈴木 基之
(委員)    浅岡 美恵 浅野 直人
        佐和 隆光
(臨時委員)
        青木 保之  石坂 匡身
        浦野 紘平  及川 武久
        鹿島 茂   川上 隆朗
        木下 寛之  小林 悦夫
        塩田 澄夫  須藤 隆一
        大聖 泰弘  高橋 一生
        高村 ゆかり 中上 英俊
        永里 善彦  長辻 象平
        西岡 秀三  三橋 規宏
        森嶌 昭夫  横山 裕道
        渡辺 正孝

議事次第

低炭素社会の検討について

 ○渡邉 浩之 トヨタ自動車株式会社技監
 ○林  良博 東京大学大学院農学生命科学研究科教授
 ○安田 喜憲 国際日本文化研究センター教授

配付資料

資料1    持続可能なモビリティ社会の実現に向けて (トヨタ自動車株式会社技監 渡邉浩之
資料2    中央環境審議会地球環境部会(低炭素社会検討)の開催日程

議事録

9時30分 開会

○鈴木部会長 それでは、定刻となりましたので、まだご出席のご予定の方もいらっしゃるようですが、ただいまから中央環境審議会地球環境部会第5回の懇談会を開催させていただきます。
 本日の審議は公開となっておりますことをまずご報告させていただきます。
 それでは、資料の確認を事務局の方からお願いいたします。

○市場メカニズム室長 資料の確認をいたします。
 まず座席表の次に議事次第がございます。それから、資料1といたしまして、持続可能なモビリティ社会の実現に向けて、今日ご講演いただきますトヨタ自動車の渡邉様からの資料がございます。それから、資料2といたしまして、当地球環境部会の開催日程がございます。それから、メインテーブルの皆様だけでございますが、CO2削減に取り組む自動車産業、日本自動車工業会様からの資料がございます。
 以上でございます。

○鈴木部会長 よろしいでしょうか。
 それでは、早速議事に入らせていただきたいと思います。
 本日は、これまでの4回に引き続きまして、低炭素社会に関する有識者ヒアリングということで、3名の方のお話をお伺いすることになっております。
 最初の有識者の方といたしまして、トヨタ自動車の渡邉浩之様、技監をしていらっしゃいます。時間は約40分ということで、よろしくお願いいたします。

○渡邉技監 トヨタ自動車の渡邉でございます。よろしくお願いします。
 それでは、座って話をさせていただきます。
 私の方からは運輸部門の将来のCO2並びにエネルギーについて、どういうふうに考えていくかということについてお話ししてまいります。話はこの順番でお話をしていきたいと思います。
 まず、現状の認識ですが、これはWBCSD、World Business Council for Sustainable Development、世界の大手産業界約200社が入った世界的な集まりです。そこで2年ほど前に発表されたデータですが、横軸に1人当たりのGDP、それから縦軸に1人の移動距離となっております。
 一番上のブルーの線がアメリカですが、アメリカの社会はやはり大きな国土を前提にしておりますので、ほかの国とは違っているわけですが、アメリカ以外の国は下にありますように、ピンク色が西ヨーロッパ、それからバツ印が太平洋のOECDで、左隅の方に南アジアだとかラテンアメリカだとか中近東だとかインドとかいろいろな線になっていますが、とにかく大体1つの線に乗っていると。ここは私、興味のあるところでありまして、GDPを増やすためには移動距離を延ばさなければならない。あるいは移動距離が延びることによってGDPが増えていく。要するに、生活の豊かさと移動距離というのは1つの関係が得られる。多分アメリカは少しコンパクトさが足らない国のつくり方がこの図表には反映されていると思うんですが、通常の環境の中で街づくり、国づくりというのをやっていくと、大体一つの線に乗るということではないかなと思います。
 それから、これは皆様にご説明するまでもない図でございますが、運輸部門のCO2の排出量は全体の23%で、これをどのようにしてさらに減らしていくことが、我々自動車会社を初め運輸セクターの者にとっては大きな責務でございます。日本の運輸部門のCO2は20%を切っております。これは後でお話ししますが少し減少傾向にあります。自動車の保有台数は、世界で2000年に7億6,000万台ですが、この図にありますように、アジアを中心にして近年、急激に伸びております  それから、これはよく最近使われている図でございますが、アメリカの鉱山局の発表で、今後の石油消費とオイルピークがいつごろなのかというグラフでございますが、この図でありますように予測の中心で大体2037年、最悪の場合は2026年にオイルピークを迎えるという図でありまして、大変ショッキングなデータでございます。
 こういう中にあって、日本の運輸部門のCO2の排出量の変化ですが、トップランナーの燃費基準を導入し始めた1998年以来、このようにCO2の排出量の伸びがとまりまして、2002年ぐらいからわずかながら減少しております。2010年度の目標値、これを達成するということを自動車工業会はコミットメントしております。
 その先の自動車の燃費ですが、2015年の基準値が決められておりまして、この図にありますように、たゆまざる改善を図っていくということが我々の目標値になっています。大変厳しい目標値とは思いますが、達成していく必要があるというふうに思っております。  交通問題全体から私の話を進めます。車単体の省エネ化は当然でありますが、仮に運輸でも2050年に半減をするとした等々のためにこれからのいろいろな施策を入れていくときに、考えなければならない要因がいろいろありますが、ここに示しましたのは、交通流の円滑化が効くという例でございまして、これは自動車研究所のデータにありますように、例えば大体東京の平均速度が18キロから20キロだと思いますが、それを30キロに変えると20%近いCO2の低減が図れる。左側に各国の燃費試験モードの平均速度が書いてございます。日本が22.7キロですが、ロスは31キロぐらい、ヨーロッパは33キロぐらいと。やはり街のつくり方、道路のつくり方をもう少し工夫して交通量をスムーズにすればCO2の削減が図れるということでございます。
 それでは、具体的に課題対応についてお話をしていきたいと思います
 これも、先生方には大変失礼な図になるかもわかりませんが、エネルギーの流れを一番左側に1次エネルギー、石油、天然ガス、石炭、バイオ、ASR、シュレッダーダストですね。その右側に車の燃料、ガソリンだとかエタノールだとかGTL、CTL、BTL、ATLあるいは天然ガス、水素などエネルギーキャリアを示します。一番右側が駆動パワーです。車の単体の熱効率は燃料フローのF1と駆動パワーPdの比になります。Well to Wheelであらわしますと、1次エネルギーから拾ってきまして、F0とPdの比になるということでございます。一番右のパワープラント技術のところにSIというのはガソリンエンジン、CIというのはディーゼルエンジン、FCはフューエルセルでございます。略字で申しわけございません。これらいろいろなエネルギー変換技術エンジンにハイブリッドを使って効率を向上していくと、こういう図式が確立されているわけであります。
 エンジン・トランスミッションの進化を図ることによって、車単体の熱効率を上げていくためには、ガソリンエンジンで言えばVVT―iだとかバルブマチックだとか、ディーゼルで言えばコモンレール、ピエゾインジェクター、それからトランスミッションでは8段の変速のATだとかCVTだと、こういうものがいろいろと技術開発されております。  最近の車を横軸にイナーシャウエイトを置き、縦軸にCO2排出量で見ますとこういうふうにガソリンとディーゼルの差がはっきりわかってきます。今走っておりますプリウスは104グラムですから、ハイブリッドの性能のよさもこれでわかっていただけると思います。
 ハイブリッドがなぜいいかということですが、これももう一度おさらいしますと、車を走らせますと赤い線のようなエネルギーが必要になりますグリーンの線はエンジンからのエネルギーです。横軸は時間軸ですが。加速をするときには大きなエネルギーが要ります。ハイブリッド車の場合、低速でエンジンが効率の悪い低回転のときはエンジンをとめておきまし一定の速度になると始動します。つまり、このグリーンの線で動いていくわけで、エンジンを一番効率のいい運転状況におきます。そうするとオレンジ色の部分のエネルギーが足らないわけですから、ここはバッテリーで補給する。定常走行になりますと、少しエンジン側に余裕を持たせてエネルギーを余分につくっておいて、それをバッテリーにためる。さらにブレーキをかけたときは、今までは運動エネルギーを熱エネルギーに変えて大気中に拡散していたわけですが、これを発電に回してバッテリーに返してやると、こういう仕組みになっているわけですから、エンジンを一番効率のいい状態で運転するということと、制動エネルギー回収ができる、大きくはこの2つでハイブリッドの熱効率がよくなっているということでございます。  そういう意味で、ガソリンエンジンであれ、ディーゼルエンジンであれ、いろいろなエンジン、燃料電池においてでも、いろいろな負荷においてエンジンや電池の効率が変わってくるわけですから、効率の悪いところを電気エネルギーで、バッテリーで補ってやるということですから、究極のエコカーを横串で刺す技術がハイブリッド技術だというふうに思っております。ガソリンからハイブリッドに変わって水素燃料の車になるというのではなくて、どのエンジンもハイブリッドになると、究極はハイブリッドになると、こういうふうにトヨタ自動車は考えているわけです。
 そこで、2番目のチャレンジはハイブリッドのさらなる発展でございます。
 一つはコストがありますが、コストダウンの努力はずっと続けております。もう一つは、プラグインハイブリッドでございます。この絵にありますように家庭用の電源を使って車を動かしていくと。実はこれは車という乗り物が、エネルギー源の一部を発電所からの電気に変えることができるという、大変画期的なことだと私は考えております。これによって、右側にWell to Wheelで見た場合のCO2の排出量を示しておりますが、グリーンの右図のプリウスと書いたものを1としまして、プラグインハイブリッドで23キロ走行して、そのうち13キロを純粋の電気自動車として走行できるような車をつくったとすると、日本の場合ですと13%ぐらい、ブルーの線ですけれども、CO2が下がるということでございます。
 アメリカでやりますと、電力会社の発電時の二酸化炭素排出が多いため余り効果がありません。数%しか下がらないのです。逆にフランスのような原子力をやっている国はドラスティックに下がります。あるいはバイオを使ったE85のような燃料を使いますとかなり下がる。そういうことで、発電ミックスがどうなっているかということと、バイオ等の併用が効果が大きいということがわかります。  次は、燃料電池ですが、燃料電池にはここにありますように3つの問題があります。コストはまだまだ大変難しゅうございますが、よく車両価格は1億円台というふうに言われていますが、それを通常の車並みに下げるには相当技術のイノベーションが必要でございます。
 しかし、下の2つについてはいろいろ進歩しておりまして、現在ではマイナス37度ぐらいの環境下で大体始動実用化できるというレベルまで達しております。
 また、航続距離も―下の方にちょっと書いてございますが、'05モデル比燃費約25%改良だとか、あるいは700気圧のボンベに変えて、水素の搭載量を増やしております。それによってトヨタのFCHVは、下の方にグリーンで書いていますが、航続距離が300キロちょっとのところにあったわけですが、それを実際には780キロぐらい走れるぐらいの実力までレベルアップしております。中ほどにありますダイヤモンドの青い点は、通常今市販されているガソリン車のレベルですから、まずまずのところまで行っているというふうに思います。
 次のチャレンジは、この1次エネルギーから車の燃料にする製造工程において、脱カーボン化とCO2の固定を図るということでございます。
 次のページですが、これはWell to WheelでCO2の排出量をいろいろなエンジンで見てみますと、ガソリン車を1とした場合、このガソリン車のブルーのところがWell to Tank、石油の井戸から自動車のタンクに入れるまでのCO2の排出量、オレンジのところが自動車のタンクに入れて車輪までということですから走るときに出るCO2の排出量、これを示しています。
 これを、例えばガソリンハイブリッドに変えたとしますと、ちょうど上から3つ目にございますが、0.5をちょっと超えたところになりますと。ですから、これが現在のプリウスの実力でございます。
 今開発しております燃料電池、その目標値が達成されたとすると、下の方の赤い字で書いてございますが、大体0.3ぐらいのところに行きます。この水素は天然ガスから水素をつくるという過程でこのグラフはできておりますが、その水素製造時のCO2を分離固定できたとすると、薄い水色の線になって、1割強のところまでCO2の排出量が下がるということでございます。ということで、CO2のCCSですね、カーボンキャプチャー・アンド・ストレージ、これをしっかりやる必要があるということでございます。  次は、糖化・アルコール化の生産効率の向上という問題です。
 バイオの資源量は、左の図にありますように、世界中の資源量はこういうふうになります。食料確保と競合しなく一番安全に使えるものは、上の方にあります農業廃棄物だとか畜産廃棄物だとか木質廃棄物だとかこういうものでして、これから液体燃料をつくったとすると19ヘクトジュールのポテンシャルがある。それに食物ではなくて、セルロース系の森林・草木から2%ぐらいは使えるかなと少し楽観的に考えたとして、そこから得られるエネルギーが19ヘクトジュールで、両方足しますと38になります。2002年のデータで消費エネルギーが大体58です。将来、これが150ぐらいには上がるだろうと言われていますので、バイオがある限定された量の中にとどめないと―そのぐらいの能力しかないということと、とどめないと環境破壊につながるということでございます。
 これは私も大変ショッキングなデータなんですが、スマトラのパームプランテーションの増大によって、2010年にはこの地域の森林が消滅するというような話もございます。そういう意味でバイオには限度があるというふうに思っております。
 将来の自動車エネルギーがどうなるのかというのを、大変複雑なようですが、私は大変単純に説明できると思います。この三角形で説明しますと、一番下が化石燃料で、化石燃料100%ですから、我々は今ここにいるわけです。それが将来脱化石燃料化して、一番上の線にへばりつくということになります。すなわち電気あるいは電気でつくった水素、それとバイオ、ここに来るのではないかなと。  経済産業省は、2030年に20%の脱化石燃料化を目標としています。ここでは赤い線で示しております。それからシェルが2050年に40%脱化石化、スウェーデンは2030年に100%脱化石化と言っております。経済産業省もいろいろなオプションの中で検討しておりまして、いろいろな答えがありますが、私が先ほどのバイオの容量の限度から言って10%から30%、30%はちょっと楽観的だと思いますが、限りなく左に近いんではないかというふうに個人的には思っております。
 そこで、車の将来を考えた場合も何かしらの新しい原子力発電を含めた発電技術によって、水素をつくるかあるいはその電気自体で車を動かしていく、そういう図式が将来メインストリームになっていくのではないかなというふうに思います。
 さて、ここでもう1つの違う観点からお話ししたいんですが、横軸にエネルギー消費率、1人の人を運ぶのにどのぐらいのエネルギーがいるかということをまとめたものでございます。そして縦軸に車の移動平均速度を示しております。中央に赤丸がございまして、これは東京都内をカローラで1名乗車で走った場合ですが、ちょうど東京の平均速度は20キロぐらいです。これを1としますとロサンゼルスをピックアップのタンドラ、大変重い車ですが、これで1名で走ったとしますと、単体のエネルギー効率は半分にはいきませんが、それに近い値になるんですけれども、ロサンゼルスの街は30キロから35キロぐらいで走れますので、このグリーンのポイントになります。
 モビリティの性能を少ないエネルギーで、1人当たりの消費エネルギーが少なくて、しかも早く移動できるというふうに定義しますと、これの左上の方が性能は高いということになりますので、東京のカローラとロサンゼルスのピックアップを比べた場合に、多少東京がいいんですけれども、ほとんど差がないと。東京1に対してロスの値は0.86です。我々はああいう大きなピックアップというのは環境によくないと言っているんですけれども、実は街のつくり方自体も、これにかかわっているということをこの図は示しているというふうに思います。
 そこで、我々の提案といいますか、夢ですけれども、これを7倍の世界に持っていってはどうかと。それはどういう世界かといいますと、郊外の渋滞のないところを走る場合のところを、ファミリーカーで2ないし4名で走る。そして市街地を走る場合は1人乗りのコミューター、ここは300キロと書いてありますが、そういう車にする。あるいは電車に乗る、それから自転車や歩く、こういうものを全部組み合わせた、快適に組み合わせるような交通社会をつくっていけば7倍は達成できるのではないかなと。  これをまとめますと、この図のようになります。1つは原単位のエネルギー消費量の低減です。これは移動体及びエネルギー変換技術、エンジンの革新でございまして、移動体の小型化、軽量化、それから自動運転、自動隊列走行、プラグインハイブリッド、電気自動車、燃料電池自動車、こういう技術が今検討されております。
 それから、2番目が交通流の円滑化で、街づくりと一体となった都市交通の革新と。これは都市・道路インフラの整備、それからITS、新しい技術の導入、それからトラフィックディマンドマネージメント、TDMの活動です。
 3番目は、先ほど言いました多様な交通手段の最適・快適組み合わせということで、ここにITの技術がいろいろ入ってくると思います。要するにユビキタス技術、快適に乗り物を乗り継いでいくことができる通信技術、それから自動駐車で乗りかえの手間を円滑にするという技術が必要だということでございます。
 そうしますと、この駆動パワーの先に人にとってあるいは人類、世界にとって交通の一番アウトプットしてほしいものは、これをモビリティーエフェクティブパワーと言っておりますけれども、ある重量のものをできるだけ早く運ぶことだと。それを達成するためには1つは車両の革新があります。それからインフラの革新、車の使い方、それからそういう交通社会に対して、積極的に参加していくという市民の意識改革が必要だということであります。
 1つ例をお話ししたいと思います。ご存じの方は多いと思いますが、ヨーロッパのナントですが、ナントの勅令のナントであります。この街は40万人から60万人ぐらいの街ですが、ここにありますように人口は56万6,500人で増えております。トリップ数も増えています。自動車も増えています。しかし公共交通機関が、きちっと整備されているということで、この街はこの市の担当者にダイレクトに会って話を聞いたんですが、都心に入る時間が半減していると、渋滞がなくなっていると言われております。  何をやったかですが、この図にありますように囲んでいるのが高速道路です。周辺の街から、中心部が都心になるわけですが、そこに入ってくるときに、このリングのところまでは車で来ます。そこからトラムで、この赤い線だとかブルーの線だとかいろいろな線が、街の中央に走っていますが、これはトラムで、高速道路とトラムの結節点を中心にしてたくさんの駐車場ができていて、あるところから市民は電車で街の中に入っていくという仕組みになっています。
 1990年のナントの街はこういうふうでありまして、ちょっと見にくいんですが、道路は片側3車線でしっかりしたインフラができていたんですが、これが渋滞でどうしようもないということで、どう変えたかというと、先ほどのトラムの整備と同時に自動車の車線を1車線にして、残ったところは芝生を張ったんです。ここは実は下をトラムが通っているというふうに聞きましたけれども、確認はしておりませんが。例えば上から見ますとこういう美しい街になっています。バスが走っている、この車線と左側の点線から分かれた左上は自転車道です。それからバスが走っている路線のグリーンベルトがあって、その下はトラムの道路で、街の中心街に入っていくと、ゾーンサーティーと言って30キロ制限で信号機がありません。人や自転車と車が共存している街です。
 こういう成功している例がヨーロッパにも幾つかできてきていますので、我々がよく考えなければならないのではないかなと思います。
 それから、豊田市でやっておりますトランスポートデマンドマネージメントのお話を少ししたいと思います。
 トヨタ自動車に通っているマイカー2,000台を電車、バスそれから自転車、歩くというふうに変えてもらったんです。それに時差出勤だとか、当然パーク&ライドをやると。それから道路の拡幅をやりました。それからITSの技術をいろいろ入れました。結果ですが、社員がこういうふうにバスで通うようになったんです。朝の出勤時の8時のピークを見ていただきたいんですが、たった4キロメートルを走るのに45分かかっていました。TDMをやることによって32分、道路を整備しITSを入れることによって19分まで下がっております。上にその結果を書いてございますが、最終的にCO2の排出量は17%を低減できたということでございます。  そこで、最後に、産業競争力懇談会が提案しております交通物流ルネッサンスについてお話をしたいと思います。産業競争力懇談会は、三菱電機の野間口会長が会長をやられておりまして、22社の日本の代表的な企業と東工大が一緒になって今やっておりますが、この活動は渋滞解消によるCO2排出量半減と交通事故死者を限りなくゼロにしようということで、都市交通の革新と次世代物流システムの実現です。これをやるためには、下に書いてございますような交通物流インフラの整備と次世代ITSの技術の導入と、それから次世代技術の移動体の普及、市民及び企業の自主活動、政策の立案あるいは法律の改正、こういう5点セットを同時進行させる必要があると。
 そのために、特区指定のモデル都市やモデル路線で、制度改革を含めて大規模実証実験を行い、実用化が可能と判断されたものは普及を加速していくと。それを推し進めるのが下の図にありますように、特区指定されたモデル都市あるいはモデル路線で、それが参画した産業界タスクフォース、白抜きのところでございますが、こういう産業界のタスクフォースをつくろうではないかと。ここが先導的にイニシアチブをとって、行政と一体となって実現していくということでございます。  現実には既に、ITSジャパンという自動車メーカーと電気通信メーカーが一つになった産業界の集まりがございますが、この中に交通物流特別委員会というのができておりまして、それは今までのITSジャパンの枠組みを超えて、この白抜きのところに書いてございますように、運輸業者だとか、高速道路会社だとか、鉄道会社あるいはモデル都市リーダー、こういう人たちを入れていろいろな提言をまとめていこうと。それを政府と一緒になって推進していこうと。中央環境審議会等にもご説明していこうというように思っているわけでございます。
 交通物流の渋滞をなくしてCO2を減らすということだけではなくて、日本の街、特に地方都市の中心は寂れていますし、クオリティーオブライフをもっとレベルアップする必要があります。快適な市民生活を復活させるというようなことも可能かと思います。  実際のロードマップは各モデル都市あるいはモデル路線でつくっていくわけですが、例えばこういうものだろうというふうに出しておりますが、1、2、3というふうにフェーズ分けして、最終的にはその街のCO2排出量を50%ぐらい減らす、そういう仕組みまでこの実証実験のフェーズごとにレベルアップしていく。あるいは実証実験に参加する都市の数を増やしながらやっていくと。実証実験の1と2の間でPDCAを回して、法整備を行い実用化効果が確認されたものは本格実施普及で普及を早めていくというふうに考えてございます。
 以上で私の説明を終わりますが、先ほどお話ししました都市内交通の新しいモビリティという意味では、ちょっと宣伝っぽくて申しわけないんですけれども、週末からの東京モーターショーでここにありますiQ CONCEPTだとかi-REALだとか、こういう夢の車が出てきますので。
 どうもご静聴ありがとうございました。

○鈴木部会長 ありがとうございました。
 大変魅力的な新しいサステイナブルモビリティというんでしょうか、将来像等に向けたお話をいただきました。いろいろ委員の方々からご質問あるいはコメントがあろうかと思いますので、ご質問をお持ちの方は名札を立てていただきたいと思います。
 では、10名の方にお立ていただいておりますので、横山委員の方から順番に。一通りご質問をお聞きいただきまして、後でまとめてお答えいただければと思います。

○横山委員 ありがとうございました。3点簡単に質問したいと思います。
 一番最初のGDPに絡んで、生活の豊かさと移動距離が関係しているというようなことで、今後も生活の豊かさを求めて移動距離というのが増えていくんだというようにとったんですけれども、今後の持続可能な社会とか低炭素社会というようなことになると、移動距離は余り延ばさなくてもいいんではないかというような気がするんですけれども、その辺はいかがでしょうか。  それから、2点目はどのエンジンも、究極的にはハイブリッドになるというのがトヨタの考え方だということでした。ただ、24ページの下の表のCO2発生量への―これは製造時ですか。ごめんなさい、製造時発生ということで私ちょっと誤解していましたけれども、ただ燃料電池車がもしコストダウンになった場合は、ハイブリッドなんかよりもかなり効率がいいんではないかという意見もあると思いますが、その辺はいかがでしょうか。
 3点目は、交通社会に積極的に参加してほしいと、市民の意識改革が必要だということですけれども、具体的に市民の意識改革というのは、どういうふうにお考えになっているのかお教えいただければと思います。  以上です。

○鈴木部会長 三橋委員。

○三橋委員 どうもありがとうございました。
 6ページに世界の自動車の保有台数が書いてあります。それで、2000年のときに7.6億台が今12.2億台になっているという報告を受けたわけですけれども、これは将来例えば2050年に向けてさらにどんどんどんどん増えていくんでしょうか。どこか今の人口の増え方等々、あるいは所得水準の増加等々を含めて、どこかでピークに達するようなことはあるんですか。2050年に向けて、さらにこのペースでどんどん自動車が増えていくというようなことをお考えになっているのかどうかというのが一つです。
 それから、8ページの運輸部門のCO2の排出量が、2002年ぐらいから減っていますということで、非常に喜ばしいことなんですけれども、これは日本の場合には車の普及台数というものがかなりピークに来ていることに加えて、したがって車の増加率がどんどん増えている状態ではないところで、さまざまな努力によって、CO2の排出量が落ちてきているんだろうというような解釈もできると思うんです。そうしますと、やはり台数が頭打ちになるということと、さまざまな技術革新あるいは制度改革によってCO2の排出量を減らしていくということが合わさると、日本のような一つの新しい傾向が出てくるのかなと思うわけで、世界全体で普及台数が何台ぐらいでとまるのかというようなこと、これはいろいろな技術革新があり、ハイブリッド等々によるCO2の削減ができても、やはり自動車が増え続ければその効果は限定されてしまうような感じがするんで、世界の自動車のピークアウトというか、頂点に達するのはいつごろなのか、その辺についてもしお話しいただければお願いしたいと思います。

○鈴木部会長 あと8名の方がいらっしゃいますので、なるべく1.5分ぐらいでお進めいただければと思います。

○長辻委員 一番最初のページのGDP1人当たりの移動距離、これ大変おもしろいなと思ったんですけれども、一直線の上にアメリカも西欧社会もOECDも乗っていると。IT化が進めば物の流れというのは変わらないでしょうけれども、人の流れというのが減るんではないかと思うんですが、この辺、そのIT化の影響がこの直線の法則に影響を与える可能性が将来あるかどうかということをお尋ねしたい。
 それとあと、燃料電池車ですけれども、よく聞くことには白金属の電極を使うこと、これが白金属の供給に限界があるので、これが一つの制限要素になるんではないかということを言われているんですが、そのあたり見通しはどうかということ。  あともう一つ、最後に豊田市のTDMですが、これはどれぐらいの問い合わせが国内自治体あるいは海外からあったかということと、今もこれは続けていらっしゃるんでしょうかということをお尋ねしたいと思います。  以上です。

○鈴木部会長 永里委員。

○永里委員 ありがとうございます。
 28ページの将来の自動車エネルギーに関しまして、それに関連して質問したいと思います。
 究極の自動車について、実はトヨタ自動車ということを離れてお答え願いたいんですが、まず自動車は存在するものと考えて、究極の自動車というのは一体どういうものなんだろうかと。一つは、ボディーが非常に軽量化されているので、今のような鉄の塊からどんどんいろいろなふうに変わっていくんだろうと思うし、それから燃料の方ではガソリンから変わっていきますので、本当にタンクみたいなものが必要なのか、モーターだけで動くような自動車ができるのかどうか、その辺のことを、夢みたいは話ですが教えてください。

○鈴木部会長 中上委員。

○中上委員 先般、エモリー・ロビンスが、ここでやはり同じようにレクチャーしていただいたんですが、そのときに車の軽量化というお話がございまして、400キログラムぐらいで十分走れるような車をつくるんだとおっしゃったんですが、親しい友人に聞きましたら、余り軽くすると風が吹くと横風が吹いたりして、安全性に問題があるんではないかという話がありましたので、軽量化の可能性と安全性というのは、どんなふうにお考えかちょっとお聞かせ願いたいと思います。よろしくお願いします。

○鈴木部会長 高村委員。

○高村委員 ありがとうございました。
 3点ほど質問なんですけれども、ご報告を伺いまして、全体、基調流れている長期のビジョンというものをお持ちのように伺いました。例えば、エネルギーのあり方ですとか街のあり方、インフラのあり方等々、何か具体的な長期の社会像といったようなものを、この展望の中でお持ちなのかどうかという点。重ねて、もしお持ちであれば、それをどういう形で会社の中でおつくりになったのかという点が1つ目でございます。
 2つ目は、非常に長期のビジョンとあって、事業の展望を見据えていらっしゃるように思うわけですけれども、こういう形の長期のビジョンを背景に、戦略をつくろうと思われるようになったモチーフといいますか、動機というものがもしおありでしたらお伺いできればということが2点目でございます。
 3点目は、政策あるいはこうした方向性を探る上で、政策なりあるいは制度として、このようなことが期待されるという点があればご示唆いただければという点です。  以上です。

○鈴木部会長 大聖委員。

○大聖委員 ITSに関してお尋ねしたいと思うんですけれども、確かに平均車速が上がるとか渋滞の解消というのがあるんですけれども、これは個人的にはハッピーなんですけれども、それによって日本全体あるいは大都市全体でどれぐらいのCO2の削減につながったかという証拠は見出されていないんですね。これは1メーカーがやることではないかもしれませんけれども、いろいろなデータをお持ちでしょうから、中立の立場でもそういうITSのマクロなCO2削減のモデルのようなものがあって、それによって将来のCO2削減を図るべきだと思いますが、そのような点についてお考えをお聞かせいただきたいということ。
 もう一つは、私ども2050年で半分と言っているわけですけれども、自動車の分野では75%ぐらいは私は減らせると思っております。それは電気自動車にもう少し力を入れるのと、ハイブリッドカーを極限的にやるということと今申し上げたITS、こういったもの。それから、中上委員が車の軽量化ということをおっしゃったわけですが、安全性に問題があるというよりも、私は安全技術にかかわる革新的な技術を挑戦的に課題として与えるまたとないチャンスではないかなと思っていますので、その点についてもお聞かせください。  以上です。

○鈴木部会長 須藤委員。

○須藤委員 ありがとうございました。
 ずっと将来はともかくとして、当面は私はバイオに期待ができるというふうに承ったような気がいたしますが、バイオには限界があると当然おっしゃっているとおりと思いますが、どのぐらいまでが我が国として限界でしょうかということと、それから特に我が国に残っているのは木質バイオなんですけれども、この木質バイオはメタノールの方がつくりやすいように思うんですが、それも燃料として可能なんでしょうか。  以上です。

○鈴木部会長 塩田委員。

○塩田委員 これからの地球温暖対策を2050年に向けて途中の目標年次を2015年、2025年、2035年と例えば3段階に分けたとして、平均燃費の改善というのはどのぐらいに見込んで今自動車に関する対策を考えたらいいのかを教えていただければありがたいと思います。  それから、豊田市の今の新しい交通システムの効果というのも、当面、短期、中期、長期に分けてどのぐらいの効果があるというふうに見ておられるか、それを教えていただきたいと思います。

○鈴木部会長 鹿島委員。

○鹿島委員 ありがとうございます。
 2点ほどお伺いしたいと思います。
 自動車が出てきて100年、それから現代的な都市ができて100年で、基本的に例えば先ほど出たアメリカの都市なんていうのは車を中心で、こういうふうにすると、1人当たりのパーキャピタに対する移動量というのは大きくなるというようなことが出ているんだろうと思うんです。
 こういうことを考えたときに、先ほどのような街づくりというようなところまでコミットされたときに、なかなかロードマップで見せていただいたように、10年ぐらいで50%削減できるというところまで、街を変えていくというのはなかなか難しいんではないか。これは何を言いたいかというと、時間軸にいろいろな対策を並べたときに整合性があるんでしょうかというのが1点でございます。例えば、お話の中のTDMのようなお話というのは即効性があるのかもしれませんけれども、持続性は一方ではないという面もあります。そういうことで一つお話いただけないかということが1点でございます。
 2点目は、先の問題も一つあるかと思いますけれども、今、既に日本の場合なんかですとたくさんの車があって、それが廃棄されているというか使用済みになっていると。こういう中でのリサイクルを含めた問題について、きょうはコメントがなかったんですが、お話をいただけたら。特に、私としては、今難しいと言われている自動車のガラスの問題と海外へ流出した場合の問題、この2点についてお話をいただけたらというふうに思います。
 以上でございます。ありがとうございます。

○鈴木部会長 佐和委員。

○佐和委員 この7ページのところに石油の話が出ていますけれども、今よく言われているのは可採年数が41年と。可採年数というのは、余り真っ当に信じるべき数字ではないわけですけれども、いずれにせよ、価格が2050年ごろまでは今の3倍ぐらいまで上がっても不思議ではないと思うんです。そのときにガソリン1リッターが300円だ、500円だということになったら、ガソリンエンジンで走る車というのはやはり姿を消すと思うんです。そうすると、さっきの話ではないですけれども、やはり電力かバイオということになるわけですけれども、実は飛行機とか船舶というのは液体燃料でないとだめなわけですね。ですから、船舶や飛行機にいわゆるバイオ燃料というのはあるだろうと。そしたら自動車は電力で走るしかないわけですね。そうするとそのときに問題は、それはもちろん例の燃料電池車も含めてですけれども、いわゆるエレクトリック・ビークルかあるいはフューエルセルか、いずれにせよ電力です。
 そうしますと、やはり4つのシナリオが考えられると。1つは、CCSで要するにゼロエミッションの石炭火力、それからもう1つが原子力です。それから3つ目が、例えばゴビの砂漠とかサハラ砂漠なんかで薄膜の太陽電池を置いて、大量に電力をつくってそれを水素に変えて持ってきてというようなシナリオですね。それから、4番目は自動車にもう乗らないという選択肢もあると思うんです。  それぞれの関連でお伺いしたいんですが、仮に今走っている自動車が全部エレクトリック・ビークルに置きかわったとします。そうしたら電力消費というのは現状の何割ぐらい増えるんでしょうかということです。
 それから、エレクトリック・ビークルの電池の開発状況です。例えば、今まで6時間ぐらい充電して200キロ走る。それを15分ぐらいで充電すれば、200キロ走れるようになるような開発が行われているというように聞きますが、その辺の可能性。
 以上です。

○鈴木部会長 浅岡委員。

○浅岡委員 ありがとうございます。
 最近、自動車離れが若い人などにも起こっている。それが少し自動車の販売台数にも影響しているような報道も見ますが、今、余り台数が増えなくなっているということの要因の中に、そうした要素というのはどのように反映しているとお考えでしょうか。  それから、一方で確かに大型車の比率が多くなっていますし、販売台数の中にも大型車が増えていると、年間販売台数の中に占める割合は大きくなってきていると思いますけれども、大型車対策というのをどのようにこれからお考えでいらっしゃいますか。どういう制度が必要であろうと考えていらっしゃるでしょうか。
 豊田市のケースはとてもおもしろくて、こういうのを進めていただいているのは、ほかの都市にも参考になると思うんですが、バスで社員さんを移動させているということのようですね。おたくだけではない。このバスはだれが運行して、バスの運行の費用負担というか責任はどなたが負っていられるか。このときに豊田で自転車専用道を一緒に設けようとか、そういう議論というのは出なかったでしょうか。
 28ページのロードマップを見せていただきましたが、30%とか50%がありますが、基準年は何年ということでしたでしょうか。

○鈴木部会長 よろしいでしょうか。いろいろ多様なご質問がございました。

○渡邉技監 どうもありがとうございました。大変たくさんのご意見をいただきました。
 まず、横山先生の移動距離と生活の豊かさですか、これは事実を物語っているわけでして、多分よく言われているコンパクトシティー的なものをつくっていけば、それはそれで移動距離はなくとも豊かな生活ができると思うんですが、しかしその豊かな生活をやるためにやはり郊外には工場が必要でしょうし、あるいは休みにはどこかに遊びに行きたいと。常に人間の行動というのは好奇心にあふれていますから、その好奇心によって世の中が進歩しているんだと思うんです。ですから、効果はあるでしょうけれども、トータルが減るかというとそうではないんではないかなと。
 だから予想しているよりは、少し少な目に抑えるというような抑制効果はあるような気がします。ちょうどデジタル化によって紙が減ると言われていて、紙は減らないんですけれども、人間の好奇心というのは尽きるものがないと。これは私の私見ですから間違っているかもわかりませんが、そういうふうに思っています。
 それから、ハイブリッドよりはFCではないのかということですが、当然将来はFCに変わると思いますが、FCも今の我々が700キロぐらい走りますと言っているFCの実力は、実はハイブリッド効果が入っているわけです。FCも負荷が小さいときは効率がいいんですが、負荷を高めて電流をたくさん流してやりますと効率が下がります。それを、バッテリーを持っていて、そのバッテリーで補って運転させているわけです。ですから、これもやはりハイブリッド効果が入っているということです。
 横山先生の市民の意識というのは、問題はどこ、ご質問は……。

○横山委員 具体的にどういうことを意識改革というようなことで考えられているのということです。

○渡邉技監 私が申し上げたいのは、これはむしろ我々がそういうシチュエーションをつくらなければならないんですが、公共交通機関に乗りなさいと言ってもほとんど乗りませんよね。欧州のLRTが何でそんなに成功しているかというと、あの電車は大変快適なんです。美しいですし、レールのところは、先ほどありましたように、あるところは芝生を張ってグリーン化しています。あの電車に乗っていくと気持ちがいいんです。それから利便性が高い。乗り継ぎに駐車場がきちんと完備されていて利便性が高い。ですから、快適で、乗ってみたいというようなそういう公共交通機関とパーソナルカーのつなぎ目を含めて我々は技術革新をしないとだめだと。そうすると、市民がおのずと意識改革をしてしまうと。窮屈な満員電車に乗っていきなさいというような、一方的なものではなかなかうまくいかないというふうに思います。
 それから、三橋先生の話ですが、2050年にどこまで伸びるんだと。私も相当伸びると思います。中国やインドの次には南米やアフリカの諸国、中近東がありますので伸びていくと思います。台数を抑えるというよりは、台数よりは僕はトリップ数が増えていくんだと。トリップ数が増えていったときに、CO2の排出量を増やさないようなやり方というのを考えなければいかんと。
 実は、WBCSDでこういう発展途上国の交通問題を今取り上げて、どうやればいいのかというのをその地方の人たちと議論を重ねています。私もバンガロールに行きましたが、やはり混沌としていて、ちょうど日本の混乱時期の中に突入しようとしているんですね。バンガロールというのはインドの高原にあって研究都市なんですが、昔は郊外につくった工場や研究所が街の中に飲み込まれていって、街全体が混然としてしまっているというような状態です。先進国の二の轍を踏まないように、我々が今やろうとしていることを彼らに紹介しています。
 彼らの言い分は何かというと、バスは汚いから乗らないと。金持ちは車で行く。金持ちになった人たちは全部車で中心部に殺到するわけです。中心街がスラム化して、そこから外に移動しなければいかんとこういう図式ができているわけですから、ある種のコンパクトシティーのような考えで地方に、郊外に核をつくって、その間を高速道路でつないで、放射状に電車を通してというようなことを今いろいろ議論していますけれども、そういうことが必要ではないかなとそういうふうに思います。
 それから、日本の運輸部門のエネルギー消費量が下がってきているのは台数減ではないかと言われていますが、これは当然台数減も入っております。しかし、後で見ていただきたいんですが、自工会のパンフレットの、先生の方に後でご説明しますが、この中に燃費の改善率と少し相関が出ているというデータもありますので両方だというふうに思います。
 それから、長辻先生のIT化の影響ですが、先生のご質問の趣旨はIT化したらトリップ距離が減るんではないかと言われる話なんでしょうか。私も減ると思います。しかし、それは減るんですが、人間の好奇心がそれを上回ってもっと活動したいと、あるいはいろいろな人と会いたいと、そういうことが人類の進歩ではないかなというふうに思っております。
 それから燃料電池用の触媒で白金にかわるものを見つけることは、これは我々の大きな命題でして、違った金属を使った触媒作用のものの研究が進んでいますので、まだ見通しは立っておりませんが、これは実現しなければならないと思っています。  それから、TDMは今でも続けております。今でもバスを運行しております。
 それから、永里先生の究極は軽量化ではないか、それから将来どうなるんだというご質問ですが、本当は私の夢を言えば、車なんていうのは、人間の体重というのは60キロ、70キロぐらいですから、それを運ぶのに1トンは重いのではないのかなと。そうすると、先ほどの中上先生の安全性とも絡みますが、今400キロぐらいの車で街中あるいは高速道路を走らせている実績はあるわけです。ですから、300から400ぐらいのところまではうまく安全性と両立させながら持っていけるんではないのかなと。しかし、ITの技術だとか筋肉を自在にコントロールすることができると、これは私の夢ですから本気にしないでくださいよ、ローラースケートみたいなもので、しかも姿勢制御もちゃんとできるというようなものが将来できてくれば、ちょっとした移動だったらそれでできてしまうというようなこともあるんではないかというふうに思っていますけれども。
 高村先生の長期ビジョンについてはどうもありがとうございます。どうやってつくったのかというのは、これは企業秘密ですのでお許しください。動機は、株主総会で市民株主、特に豊田市に住んでいてトヨタの株を持っている女性の方から、日本を代表する自動車会社のこの街の渋滞はどうなっているんですかと、トヨタ自動車は何をやっているんですかというおしかりを受けて、こういう動きが始まったというふうに思っております。
 大聖先生のITSの効果、これはマクロモデルをつくれ、私もそう考えているんです。このITSをやったときにマクロにどのぐらいの効果があったのかと。これは走行しているクルマの車速をモニターしておけば確実にフォローできると思うんですが、こういうことをしっかりやっていく必要があると思います。先生の言われるとおり、50%以上のところをねらわなければいかんだろうなと思いますが、そのときには私が申し上げたような5点セットをやっていく必要があると。当然電気をたくさん使う、そういう車の社会になっていくだろうなというふうに思っております。
 安全技術ですが、今の車は自分の周辺がどうなっているのかということを認識して、例えばぶつかりそうになったらプリクラッシュシステムといいまして、シートベルトを巻き取って、ブレーキ油圧が急激に上がるようにするだとか、いろいろな仕組みがもう入っております。
 それから、前の車に自動的に追従していって、前の車がブレーキをかけたらこちら側もブレーキをかけるということもできます。それから、レーンキーピングといいまして、レーンを外れそうになると、これは白線を認識しているわけですが、左に外れそうになると電気モーターでハンドルを右にちょっと切ってもとに戻してしまうということもできるんです。ということは、もう少しこれらを高度にし、例えば車車間通信だとかGPSの機能を高めてやると、ある程度の自動運転は可能になるというふうに思います。
 安全の技術はかなり上がると思うんです。その技術は安全だけではなくて、このCO2削減につながる。例えばトラックを今単独で走っているわけですが、隊列走行をさせてあげる。そうすると、空気抵抗の影響が後続車はありませんから、一番大きな大型車のCO2をどうやって下げるかというときに、隊列走行というのは大きなメリットだと思うんです。そういう技術も、これは難易度が非常に高いですけれどもやれないことはないというふうに思います。
 須藤先生のバイオの限界はどのぐらいかですが、私は安全サイドに言ったら10%ぐらいではないかなと思っているんですけれども、ちょっとこれはよく勉強しておりません。メタノールは使おうと思ったら使えます。毒性の問題が少しありますが。  それから、塩田先生の豊田市の効果、ちょっとこれ、先生のご質問を私、失念してしまったんですが、豊田市での効果がどのくらいかということでしょうか。これは先ほどお示ししましたように、17%のCO2というのはわかっているんですけれども、よろしゅうございますか。
 それから、平均速度20キロメーターアワーの東京の状況ですか、これについて先生のご質問はこれが将来どうなるかということですか。多分、新宿線の首都高の整備があります。それから圏央道の整備があります。そういうことで東京はかなり交通事情がよくなるのではないかなと期待されています。もっとやるには、もう一度東京内の道路網とITSの導入、これを関係省庁を初め関係者がいろいろ案を練っていますけれども、それを煮詰めていく必要があるのではないかなと思います。
 それから、鹿島先生の話、自動車の歴史100年で、10年でということについて実現の整合性がないんではないかと言われました。私もこのプロジェクトを動かし始めたときに、最初は絵空言だなと思いました。しかし、やらなければだれがやるんだろうなと感じております。申しわけないんですけれども、お役人に任せておいても10年の計が本当にできるかなと。大変失礼なことを申し上げて、局長には申しわけないですけれども。政権がかわったら変わるでしょうし、担当の方がかわったら変わります。持続性が担保できるのは、その行政を行っている小さな単位の地方自治体と産業界しかないんではないのかなと。ただ、国の力がないとこれはできませんので、そこでつくったものを国にご提案し、実行はPDCAを回すだとかそういうところは地方自治体と産業界が頑張らないとできないんではないのかなと。そうすると、これは10年で実証実験をやったそのモデル路線あるいは限定されたところが、こういう状態にするということですから、これで日本全体を50%下げるのに10年間でできますということを言っているわけではないんです。地方自治体の中には、もう既にこういうことに意欲的にいろいろな施策を考えているところもあるんです。だから、そういうところとタイアップして、成功例を市民、国民に見える形にして広げていく、こういう必要をあるのではないかなというふうに思っております。
 それからリサイクル、リサイクルはLCAで評価しないとだめです。例えば、アルミやCFRP、カーボンファイバーですね、こういうものをたくさん使っていくときに、しょせんは電気をたくさん使っているわけです。その電気の塊をリサイクルしないというのも大変もったいないですから、リサイクルの仕組みはきちっと入れていく必要があると思います。もちろんガラスもですね。  それから、私も佐和先生と全く問題意識は同じで、先ほどのファンデルフィアのシェルの会長の話も一緒ですが、彼は価格が高騰するということを言いたいんです。2025年までに世界のエネルギー需要は確実に倍増すると。だけど、イージーオイルはなくなるとこう言っている。だから、先生の言われるように価格高騰の時代になると思うんです。そうすると、これはもう電気しかないと。電気にするかCCSをうまく使って限られた化石燃料から液体燃料をつくると。液体燃料は多分、これどなたかが言われていました、先生が言われたんですかね、飛行機。船はまだ液体燃料の可能性があるかもわかりませんが、飛行機は液体燃料でないと飛びませんから。だからそういうことのために、この化石燃料をうまく残しておく必要があると思います。
 どのぐらいの原子力発電が必要か、これは先生にぜひ教えていただきたいと思うんですけれども。
 それから、砂漠の中に太陽熱。太陽電池の、これもLCA的にきちっとペイする技術の開発が必要だというふうに思います。
 電池で200キロメーター走れる、これは大変難題なんですが、だけどプラグインハイブリッドのあの技術があれば、例えば日野自動車や日産自動車がつくっていますけれども、非接触で充電するというシステムがあります。それを使えば、例えばバスがバス停にとまっているときに、インダクティブで充電して走っていくと。そうすると、バッテリー量をそんなに多くしなくても走ると……。

○鈴木部会長 すみません時間を……。

○渡邉技監 そういう車ができるということです。
 ちょっとご回答できなかった分があるかと思いますが、一応全部お話をしたつもりでございますが、よろしゅうございますか。

○鈴木部会長 どうも短い時間で、まだまだいろいろお聞きしたいこともあろうかと思いますが、どうもお忙しいところをおいでいただきましてありがとうございました。今日は大変有益なお話を伺いました。
 それでは、次は東京大学農学生命科学研究科の林先生に今日はおいでいただいております。林先生は獣医の立場からまた新しい視点で低炭素社会というようなものについてお話いただけると思います。どうぞよろしく。

○林教授 鈴木先生、ご紹介ありがとうございました。
 私、今日は東京大学農学生命科学研究科教授という立場ではなくて、食料・農業・農村政策審議会の会長という立場でお話ししたいと思います。したがいまして、このパワーポイントのほとんどすべては農林水産省でつくっていただきました。
 前の話題提供者の渡邉さんが「行政というのはどのくらい先をちゃんと担保できるか」と危惧されておられましたが、この審議会も含めて国の行政の継続性は担保されているのではないかと思っています。私が食・農審議会の会長になったのは今年の7月からですけれども、食料・農業・農村と非常に大きな分野を抱えているものですから、勉強することばかりです。
たまたま、今日こういう機会を与えて頂くことになったこととは無関係ですが、先週は2日間長崎と佐賀にいました。残りの4日間はタイにおりました。後から申し上げますが、長崎の諫早にはバイオマスからエタノールでなくてメタノールを生産する農林3号機というのができたばかりで、それを視察に行ったわけです。もう一つの視察の目的は、農林水産業を考えますともう温暖化による被害は避けられない。そうなりますと、それで食糧生産がだめになることは大問題ですから、温暖化に対して適応策が必要になる。すでに九州は問題が生じておりますので、新しく「にこまる」という品種の生産が始まっています。しかし、この品種は温暖化に対応させるために作出したものではなく、その前から別の目的で作出したものが、温暖化対策としては役立つという、この話も後からいたします。  2日間かけて長崎と佐賀に行きましたが、その翌日からタイに行きました。タイのコンケンというところで、学生18名を連れて農業実習を行っています。びっくりしたのは、実習は去年からやっているんですが、去年と比べて今年は彼らなりの温暖化対策をほとんどの集落で始めていたことです。ほとんどの集落で、これは日本の東北から行った人が教えたんだそうですけれども、炭を焼いています。それから有畜農業も、これは全部ではありませんが少しずつ始まって、家畜の排せつ物を肥料として扱うというのも前に比べてより組織的に動いている印象を受けました。タイの農村部でも我々とは違うローテクではありますけれども、システム化された温暖化対策をやっているということがよくわかりました。
 それでは、今日お話するお話は、ちょっと見にくいかもしれませんが、9つに分かれておりまして、これが目次になっております。最初に農林水産業と環境という全般の話をし、2番目にあります農林水産省の地球温暖化対策総合戦略、これは今年の6月に決定いたしました。今日は、主にこの戦略がどういう戦略なのかということをここでお話ししたいと思います。
 それから、京都議定書に基づいて対策を進めなければならないわけですけれども、今ますます炭素吸収源としての森林に対する期待が高まっている中で、何ができるのかということについてお話ししたいと思います。
 また先ほどもお話ししましたけれども、国産バイオ燃料の大幅な生産拡大の可能性についてお話します。現時点で何リッターつくっているんだと言われたら、30キロリッターぐらいしかつくっていない。だけど、もう3つのプラントが完成しまして30万キロリッターになります。問題はどうやって600万キロリッターに持っていけるかという、それは後でお話しいたします。それから食品産業、これは商品が売れなくなったら業界が困るんですが、いろいろな自主行動をお願いしております。
 6番目は省エネの話です。施設園芸と農業機械というのは、これはご存じの方は多いかもしれませんが、これまで省エネが進んでいなかった分野です。農業で何とかして地球温暖化防止をと言っているときに、施設園芸で大量にエネルギーを使ったり、農業機械のエネルギー効率が悪いというのは具合がよくありません。トヨタさんのような効率のいいものではなくて、かなり効率の悪いものをどうしていくかという問題です。バイオ燃料を使うことと、それから農業機械そのもののエネルギー効率を高めるという研究課題を農研機構というところが中心になって進めてきました。私はそこの評価委員長を3年やってきましたが、この2、3年でかなり進んできています。それから、漁船もエネルギーを大量に消費していますので、漁船の省エネをどうするかという問題があります。
 あとは、先ほど言いました地球温暖化が日本の農林水産業に及ぼす影響、つまり暖かくなっていくとよく例に出されるのは温州ミカンがどうなるか、リンゴはどうなるかという、そういう話ですけれども、それだけでなくてほかの問題も含めて話します。  先ほどお話しした「にこまる」という温暖化しても大丈夫というお米についてです。日本の食料安全保障を考えると、温暖化してもやっていけるという農業をやらざるを得ないわけですから、そのことについて最後にお話します。
 農業は食料生産、それから自然環境保全などの大きな分野を担っているわけですけれども、上の方の円グラフにありますように、国土面積のうち森林が67%、それから農用地として現在使われているものが13%、合わせて80%が陸上を対象にした営みであるということです。
 漁場はもっと広くて、日本の排他的経済水域と言われているものは447万平方キロメートルありますので、世界で第6位の広さになります。国土は狭いですけれども、排他的経済水域は広いということで、これまでは主として農林水産業、食糧生産だけを考えてまいりましたが、この10年、20年の間に環境問題も随分考えるようになり、なおかつ現在急ピッチでエネルギーについて考えるようになってきているということであります。
 これは当然ながら、農林水産業そのものが従来どおりの環境負荷を与えているようではまずいということで、これをどうやって減らすかということです。それからもう一つは、農林水産業を利用して環境負荷を減らすということが、むしろこちらの方が強く意識されるようになってきたということであります。
 次のスライドは、これはご存じのことばかりですからあれですけれども、大問題は6%削減約束が非常に難しくなってきている。実際、2005年は基準年比で7.8%増加していますから。ではどうしたらいいのかということですが、ここでやはり先ほども申しましたけれども、森林の役割を最大限活用するということが、果たして可能なのかどうかということであります。
 それから、バイオマス資源について先ほど言いましたように、現在30キロリッターしかつくっていないのが、もう3万キロリッターになり、20万キロリッターはもう見えていますけれども、600万キロリッターといったようなものを本当に実現するにはどうしたらいいかといったような具体的な問題があります。
 それで、一番下に書かれた3つの課題。第一は地球温暖化防止策として農林水産業をどうするかということです。二つ目は、地球温暖化適応策をどう考えるかという現実の問題。三つ目は日本のことだけ考えても地球温暖化は防げないわけで、農林水産分野の国際協力、例えば先ほどタイのコンケンの話をしましたけれども、ローテクといえども、そこの地域に適していれば貢献します。どのように使うかはその国の人が考えればいいことですけれども、結構日本から、主にNGO活動を通じていろいろな知恵が各国に行っていますし、もう少し大きなレベルで言えば、国レベルでの国際協力というのがあります。これが3番目のことであります。
 今年の6月に策定された農林水産省の地球温暖化対策総合戦略というのは、この3つの柱からなっています。地球温暖化防止策と温暖化適応策、それから日本以外の国、特に開発途上国に対してどのような国際的な協力ができるかということになっております。  まず森林の炭素吸収対策の問題でありますけれども、森林でどのくらいやれるのかということですが、毎年20万ヘクタール、6年間で120万ヘクタールの追加的な間伐を行うことが、京都議定書による吸収を達成する一つの道であろうということであります。この間伐というのは、右の下の林がたくさんありますけれども、植林後に20年から40年間までの間に3回ああいう形で行うということであります。
 それで、どのくらい吸収できるのかということですが、育成林で森林経営を行っているところで、675万ヘクタールを対象にして910万炭素トンの吸収を図るということであります。
 それからここで、うまくこの天然林を保安林として最大限活用した場合、ここではやはりほとんど育成林と同じぐらいの660万ヘクタールを対象にして、しかしこれは天然林として保安用に残しますので、ここは育成林の910万炭素トンに比べて少ないわけですけれども、280万炭素トンの吸収を図るということです。
 しかし、森林吸収3.8%の部分を担うためには、1,300万炭素トンを何とかしなければならない。この育成林の910万炭素トンと天然林の280万炭素トンを引きますと、110万トンの追加が必要になります。これは2007年から2012年までの6年間で毎年20万ヘクタールずつ追加的な間伐を行うということで、この110万トンは可能だということであります。
 そうなりますと、これをだれがやるんだということになるわけで、現在非常に難しいのは間伐をやった場合の間伐材の利用です。先ほどバイオマスの話をちょっとしましたけれども、その後でもやはり木質バイオマスのエネルギー変換ということが一番大きなねらいではありますけれども、現時点で間伐したものを今年から始めているわけですけれども、売れないわけですから、それをどうするかということで国が支援するということです。
 そこで、平成18年の補正予算と平成19年度の当初予算で、何とか今年の目標は達成しています。平成20年以降どうするかと、引き続き毎年20万ヘクタールの追加整備をやらなければいけない。それをやるための財源をどうするかという問題が残っています。やらないと京都議定書の約束は守れないということになります。
 毎年20万トンの追加整備のための費用をどうするか。私は内閣府の「立ち上がる農山漁村有識者会議」という、これ本部長は総理でおられるんですけれども、その座長をやっていまして、毎年30件から50件のいろいろなアイデアを表彰しているわけですけれども、そこで見ますと、結構あちこちで間伐材を利用したものの販売しているんですけれども、やはりほんの一部でしかない。国民の皆さんが間伐材、日本の木材を使ったものを高くても買うという決意をしてくださると、この辺は相当解決するということがあります。  それについては、やはり国民の皆さんの意識向上というのが必要なものですから、ここにありますように、美しい森林づくり推進国民運動というのが去年の7月以降ずっと進められてきて、今年の10月2日には地球温暖化対策推進本部で、美しい森林づくり推進国民運動の展開を決定していただきましたので、これがやはりかなり大きな力になると考えています。政財界の方も含めて多くの方々に美しい森林づくりへの運動に参加していただいているということであります。
 問題は、国産バイオ燃料の導入をどういうふうに図っていくかですが、現状と今後というのがこのスライドに示されています。これは何を言っているかといいますと、農耕地が減少して、耕作放棄地が増えている。耕作放棄地は去年の段階で9.7%に達しています。38万ヘクタールを超えたわけですけれども、耕地面積のほぼ10%になったということです。穀物は、人間の食料と家畜の飼料というこれまでの使い方であったわけですが、ご存じのように総人口は減り続けます。人口が減る、しかも高齢化しますので、日本人の食べる食料はこれから減ることはあっても増えることはない。一方、中国やインドを初めとする―まだインドはいいんですけれども、開発途上国の肉食率が急激に高まっているため飼料としての穀物の需要が世界的に高まっています。肉食率の高いアメリカなどの先進国も問題ですが、開発途上国に関して言えば、肉食率を高めるから穀物需要が増えるわけで、肉食率を高めなければいいんです。しかし、「おまえのところだけ肉を食うな」という話は成立しませんので、これからますます穀物需要は世界的に高まると予想されます。 私の理解では、日本ではこれ以上肉食率は高まらないだろうと思っていますので、トータルで日本人が必要とする穀物換算での食料というのはどんどん減っていく。そう考えると今耕作放棄地が増えているというのは納得できるわけですけれども、しかし、家畜の飼料は大半を輸入に頼っているという現状があります。また、せっかくのこれだけの耕地があり、バイオ燃料のもとになる資源がつくれるわけですから、エネルギーあるいは新しくバイオマテリアルとしての原料生産も考えながら農業活動を活発にさせるという中で、耕作放棄地を解消していくということが非常に重要なのではないかということです。
 今日詳しくはお話できませんが、問題は先ほどもご質問がありましたけれども、木質系バイオマスの問題は、微生物利用がまだうまくいっていないことです。やはりアメリカでやっている小麦、それからトウモロコシといったような穀物系のバイオマス利用が現実的です。沖縄ではサトウキビを使っています。サトウキビはエネルギー効率がいいんですけれども、量的にほんのわずかしか日本では生産していませんから、日本の燃料のほんの一部しか賄えない。先ほどのご質問の中にもバイオ燃料でどこまで賄えるのかということは、トータルの中でお話しくださると思うんですが、私たちからすれば、バイオ燃料が確かな存在感を持つまでにいくためには、これから耕作放棄地でつくられる稲、日本は稲づくりは非常に上手ですから、これをも燃料にしていくということも含めながら考えていく必要があるということです。
 それで2030年頃には、農林水産省で試算している600万キロリッターのバイオ燃料をつくるためには先ほど申し上げましたサトウキビの糖蜜を使ったり、でんぷん質を使ったりするだけではなくて、ソフトセルロース系の稲わらと硬いセルロース系の間伐材といったものが、どこまで効率よく燃料としてエタノールに転換できるかが課題です。現時点で、農林3号機はメタノールの段階では非常に小規模でもできますし、かなり効率がいいんではないかというふうに思っています。ガス化学反応炉に入れるのは紛状にしたバイオマスで、高熱で水と反応させる。その高熱を発生させるのは、紛状にならないチップ状のバイオマスを用います。その結果、水素が44.9%、それから一酸化炭素が28.2%、この2つが大きなエネルギー源になって、これをメタノールに持っていっているわけです。 現在、世界中で研究が進められていますが、セルロース系の有効なバイオ燃料への転換ということが非常に重要であるということです。しかし、技術的な進展がなくても600万キロリッターにもっていくためには、エタノールだけではなく、メタノールを含めて検討する必要があるように思います。
 それから食品産業、ここに自主行動を呼びかけていまして、幸いなことに精糖工業会なんかはもう目標を達成して、目標を今度は引き上げているというようなレベルに来ています。

○地球環境局長 すみません、この部分、実は先生は皆ご存じです。

○林教授 そうですか。それでは、これはいいですね。
 先ほど言いましたように、施設園芸と農業機械の省エネルギーがこれまで余り進んでいなかった。対策としては非常にローテクでありますけれども、二重カーテンをするとか、細かい既存の技術をうまく使うだけでも随分省エネになる。これは施設園芸のところです。それから、当然ながら施設園芸でも木質バイオマスを燃料として使えるような、そういうことをどんどん進めていく、これが一つの考えです。
 それから、農業機械については、先ほども言いましたように、効率をよくする。特に温室効果ガスの排出削減を考えたそういう農業機械にしていくという、これは過去4、5年で技術的に急速に進んできていますので、それを普及させるということが大切です。これは始まったばかりですけれども、バイオ燃料の利用を特に農業機械に行うということです。
 皆さんご存じですが、畑から出やすいものは亜酸化窒素であり、水田から出やすいのはメタンといったような、こういう温室効果ガスであるということで、これは炭酸ガスとは別の問題でありますので、今日ここではお話しいたしません。
 それから、漁船の省エネも今かなり図られてきまして、発光ダイオードを使ったものがかなり省エネになっております。
 それから、魚群を探索するためにエネルギーをかなり使っていますので、現在の技術に加えて、人工衛星による観測から3種類のセンサーで非常に的確に漁場を特定して、エネルギーのロスを図るといったことも現在進められています。
 地球温暖化が日本の農林水産業に及ぼす影響としては、水が不足することが九州で考えられます。それから、米の適地が北の方に行って、北海道では13%増加するんですけれども、東北以南では8~9から15%減少する。特に大きな影響を受けるのは九州地域になるだろうということであります。
 先ほども言いましたように、よく例に出されるのは、リンゴと温州ミカンで、両方とも温暖化で北の方に行くんですが、問題はこれまでリンゴをやっていたところはミカンにすればいいではないかという、そういった単純な問題ではなくて、産業として見た場合には大打撃を受ける可能性が高いということです。
 それから、もう一つは害虫です。病害虫がどんどん増える可能性が残念ですけれどもあります。だから、この病害虫に対する対策も現在考えています。
 それから、サンマの漁場が、ちょっと見にくいかもしれませんけれども、赤い丸で書いてあるところは、現状では北海道のところにまだかなりあるんですけれども、水温が2.9度上昇すれば9月の時点で北海道から消えてしまう。11月ではまだ残りますけれども、そういった変化が考えられます。
 これは最後のものになりますけれども、地球温暖化にどのように対応していくかです。長崎で始まったものですけれども、高温障害に強い「長崎にこまる」が一例です。こういう育種、品種改良をするとき、必ずしも高温障害耐性でなくても、低温障害に対して強い抵抗性のものは割と高温にも強いんです。要するに、温度に対して鈍感になっているというか、そういったものをどんどんこれから見つけていく努力をすれば、ほかの品種改良も進むのではないかと予想されます。現在、「ヒノヒカリ」というのは九州のメインの米でありますけれども、「にこまる」を当面半分ぐらいまでに持っていこうと急ピッチで、毎年これから倍増、倍増でいこうとしています。
 またブドウという果物は高温になると着色障害が起きて、色がつかないんです。それで今どうしているかというと、幹の表面を環状に剥離します。皮をはぐと赤くなるんです。こういうローテクで今のところは何とか対応していますが、今後ちゃんとした育種もやっていかなければいけない。あと5年後にどこまで技術的にできるか、10年後にどこまでできるか。大体戦略としては2030年ぐらいまで考えているということでありますが、そうなるかどうかは別問題として、そこまで考えているということです。
 ということで、一応これで終わらせていただきます。

○鈴木部会長 ありがとうございました。
 それでは、委員の方々からご質問おありの方は名札をお願いいたします。
 9名いらっしゃいます。では、また横山委員の方から回っていただきますでしょうか。なるべく簡潔にご質問をお願いいたします。

○横山委員 わかりました。
 食料とか木材の地産地消とか、それが今後かなり大きな意味を持ってくると思うんですが、その辺についてどういうふうにお考えになっているのかというのが1点です。
 それから、どうも素人として見ていても農業に魅力がないというようなことで、いろいろな日本の農業政策も間違えているんではないかなというようなことも考えるわけです。しかも、食料の自給率というのを上げる、上げると言っていて39%に下がったとか、そういうようなことについて、この審議会の会長としてどんなふうに思って、これは今後こんなふうになるんだぞというような見通しを教えていただければと思います。

○鈴木部会長 森嶌委員。

○森嶌委員 どうもありがとうございました。
 お話によると3.8%分を吸収源でまかなうことになっていますが、このスライドのコピーをいただいていないものですから、スクリーンでは、よく読めなかったので、ぜひ後でコピーをいただければと思います。
 そこで、間伐でこの3.8%を埋めていくということで、育成林から675万ヘクタールを対象にして910万カーボントン、天然生林の600万ヘクタールを対象にして280万カーボントンを吸収するために、20年間に3回ぐらいの間伐をやるということですけれども、それでも110万トン分がまだ足らないということですね。5年間の間にこの1,300万トンに相当する間伐、これが3.8%の削減分に当たるのだろうと思いますが、それを実際にどのようにして実施できるのでしょうか。私の知る限りでは、なかなか労働者も集まらないと聞いていますが、実際に来年から約束期間が始まるわけですから、本当に実施可能なのでしょうか。それを今の推移で戦略的にどういうロードマップでやっておられるのかを教えていただければと思います。

○鈴木部会長 西岡委員。

○西岡委員 3点ございます。
 1つは、技術的な話なんですけれども、「にこまる」というのは例えば非常に高温まで耐えるという話ですけれども、途上国なんかにも耐えるんだろうかと。これまで私どもの方ではもう九州のあたりではジャポニカ米はとれないということを言っていたんですけれども、そんなことはないという話ですが、そこを確かめたい。
 2つ目が海外からのインパクトについてはお話がなかったかと思いますけれども、それをどういう取り組みで今なさっているかと。結果はどうせまだわからない。海外に地球温暖化が及んだときにそういう影響は日本にあるかということの影響の程度というのが2つ目。
 3つ目ですけれども、適応策というのは非常に言葉としてはいいんですけれども、実際問題として、先ほどもちょっとおっしゃったと思いますが、非常に早い勢いで、私の計算では大体1年に5キロぐらいの速さで常態化させていくというときに、農家は30年、50年の単位で計画を立てられていると思うんです。そういう追いかけっこになってしまうことをどう考えておられるんだろうかということについてお伺いします。

○鈴木部会長 長辻委員。

○長辻委員 あるところで聞いたんですけれども、土壌中の炭素の量は海洋中よりもはるかに多いということでして、それで途上国を中心にこれから無謀な農業をやっていくと。それが大気中に放出されていくので、非常にこれは注意が必要であるということを聞きました。その辺のことをちょっとお尋ねしたいのと、それとあともう一つ、バイオエタノールですけれども、2030年ごろ600万キロリットル、これの目標を出されたのはたしか亡くなられた松岡さんではなかったかと思うんですが、これは先ほどのお話ですと今の技術でも可能だとおっしゃいましたけれども……。

○林教授 メタノールまで含めると技術的に可能性は高まりますが、楽観できません。

○鈴木部会長 すみません、後でまとめてお答えいただけますか。

○長辻委員 はい、そのあたりを教えてください。  以上です。

○鈴木部会長 永里委員。

○永里委員 木質バイオマスのバイオ燃料化に関する研究というのは、現在まさしく研究開発途上であって、いろいろな企業の研究所、それから国の機関、それからいろいろなところで行政の方の研究所も含めて皆やっていますが、そこに例えばNEDOからお金が出ている、それから経済産業省、環境省、農水省、文科省、いろいろなところからそういう資金が出ているんですが、実はおのおの競争して、競争するということはすごくいいことなんですけれども、昔、日本が半導体をキャッチするときに、LSI研究組合というのをつくってブレークスルーしたんですけれども、セルロース系バイオ燃料に関する研究組合みたいなものをつくって抜本的にやらないといけないぐらい、研究を加速させるためにですね。そういうことについて先生のご意見をお聞きしたいと思います。

○鈴木部会長 高村委員。

○高村委員 ありがとうございます。
 2点お願いいたします。森林の間伐に関してと、それから3点セットのうちの3つ目、国際協力に関してでございます。
 この間伐の一番の問題はコストだと私は伺っておりますが、6月に採択した戦略では恐らくその点をかなり扱っているんではないかと思いますが、そこについてのご説明をお願いいたします。
 それから2点目、恐らくこれは時間がなくてご説明がなかったのかと思いますが、当然のことながら、途上国の農業分野に対するダメージが最も厳しい状況になることは、世界的な課題になっていると思うんです。したがって、日本が何をするかということが非常に問われる分野かと思いますが、簡単で結構ですから、その点をお願いいたします。

○鈴木部会長 大聖委員。

○大聖委員 私ども、環境省の中でエコ燃料利用推進会議というのを2年間ぐらいやってきまして、その結果によると、いろいろ未利用の生物資源というのはあるんですが、それのポテンシャルの多くは実は液体燃料にするというよりも、そのまま燃やしてしまうというポテンシャルの方がはるかに大きいんです。ですから、その領域とエタノール、それからBTLといいまして、バイオマス・トゥ・リキッドという技術があるんですけれども、そのバランスをちゃんととっていただいて、余り偏らないようにぜひお願いしたいと思います。手を加えないで利用するには、やはり熱源として使うのが一番手っ取り早いということを、ここでは強調しておきたいと思います。
 以上です。

○鈴木部会長 須藤委員。

○須藤委員 ありがとうございます。
 先生が余り触れられなかった問題で畜産の問題があるんですが、畜産は一番公害の問題としてもひどくて、まだ解決していないし、それから野積み、素掘りは禁止はされているものの処理はされていませんよね。この辺の問題を今の森林の問題、それから農業の問題と一体にしてやっていかないと、日本の今の先生が会長をされているような問題がなかなか解決できないんではないかと思いますので、そのお考えを伺いたいのが1点目。
 2点目は、先ほども質問があったんですが、600万キロリッターで9.4%の耕作放棄地で飼料をつくる。私も前からそれを主張しているんですが、本当に今の耕作放棄地に飼料をつくって、今後の日本の農業のあり方としてよろしいのかどうかということと、多分やるとしたら飼料稲をつくられるのかなという気はするんですが、その辺で本当に600万キロリッターが可能なんでしょうかということをお伺いします。

○鈴木部会長 川上委員。

○川上委員 吸収源としての森林の問題は、今のその3.8%だけではなくて、もうちょっと長期的に2050年を目指しても大変重要な問題であることは言うまでもないわけですが、吸収源としての森林の保全ということについても、間伐の話を先ほどされましたが、長期的に森林政策というものをどういう形で持っていこうと、今政府の中で議論をされているのかということが1点。
 それから、もう既に質問が出ましたけれども、間伐自体、これは私も非常に興味があるんですが、労働力だとかコストだとか、それから先ほど触れられましたけれども、間伐材の利用の問題だとかいろいろな面の問題があると思うんですけれども、これを何とかしのいで今回の3.8%というのは今の予算措置でも何とかなるのかと、その辺の見通しをお聞かせいただければと思います。

○鈴木部会長 及川委員。

○及川委員 3点お伺いします。  1つは、先ほどもちょっと出ておりましたけれども、日本の食料自給率がカロリーベースで39%になっているということがあるわけですね。それで、現在地球温暖化が進行していって、それは日本の農業だけではなくて、世界の農業に非常に大きな、温度が上がるという直接的な効果もあるでしょうし、それから間伐といったような効果もあるわけです。そういった世界の食料生産の中で、日本の自給率をこれからどういうふうに農水省としては持っていこうとしているのかということを1つお伺いいたします。
 それからもう1つ、林業ですけれども、CO2の吸収源として非常に注目されているということはあるんですけれども、単にそれだけではなくて、日本は面積の3分の2が森林で覆われているということで、面積の比率から言うと非常な森林大国なんです。ですけれども、木材の自給率は20%程度という具合に圧倒的に輸入に頼っているという現状があるわけです。そういったときに、単に吸収源だけではなくて、林業として日本の森林をどういうふうにされようとしているのかということが2点目です。
 それから、3点目は漁業なんですけれども、日本は海に囲まれていますから、魚を中心とした水産物というのが非常に大きなウエートを占めてきていると思うんですけれども、それを今後、中国の問題なんかが出てきておりますけれども、どういうふうにとらえようとしているのか、その3点をお伺いいたします。

○鈴木部会長 佐和委員。

○佐和委員 3点お伺いしたいんですけれども、1つは森林経営のことについては、ほとんど間伐のことのみを触れられて、植林とか再植林のことについては余りおっしゃらなかったんで、その可能性というのはそもそもないのかどうかということです。
 それから、2点目がたしか京都会議の前後に、日本の森林吸収は90年の排出量が7%ぐらいだったのが、2010年には3.7%ぐらいになるだろうと言われた。そういう推計というのは、樹齢とか木の種類なんかで非常に難しいと思うんですけれども、さっきいろいろ教えていただいた数字のライアビリティーといいますか、確からしさについて、あるいはどのぐらいの誤差があり得るのかということ、それが2点目。
 それから3点目が、今カリフォルニアで森林火災が発生しています。あるところで聞いた話なんですけれども、嘘か本当かよくわからないんですが、要するに森林火災で発生するCO2の排出量は世界の総排出量の20%に及ぶというように言うんですけれども。つまりシベリアなんかで物すごい森林火災が発生していますよね。シベリアの場合は、凍土が溶けてメタンが発生して火災がひどくなる。カリフォルニアの場合は、なぜああいうことが起きたのかということについて教えていただければと。  以上です。

○鈴木部会長 大変時間が限られておりまして、この場でお答えいただかなくてもいいようなご質問は、また後で詳しくご説明いただくとして、できましたら10分以内で。

○林教授 大きく日本の食料問題だけを考えているだけでなくて、世界的にこの地球温暖化の影響で食料、燃料も含めて影響を受ける中でどう考えるかというのは、何人かの先生からご質問いただいていますが、日本の食料自給率だけについていいますと50%です。当面50%を目指す。それ以降についてはその段階で考えようということです。
 50%というのは、日本の農業はどうしても割高になるものですから、50%は外国のものに頼りながら残り50%―半数を日本で生産することを目標にしながら農業政策を進めていく。毎年1%でも2%でも上げて、早く50%に近づけるべきではないかというのは、私の希望でもありますし、多くの方がそう考えているんではないかと思います。
 ただ問題は、安い外国産と価格で勝負しますとどうしても負けますので、大規模な国民運動を展開する必要があります。今度、地球温暖化の問題でも政府としても各家庭に呼びかけられましたね。食料自給率の問題もやはり各家庭に呼びかけるべきだと思います。要するに日本人が日本で生産されたものを食べれば自給率は上がるわけですから。
 ただ、幸か不幸か、魚の自給率は徐々に下がっていたんですけれども、この二、三年は魚の自給率は上がってきているんです。なぜ上がってきているかというと、日本は中国に買い負けしているんです。価格面で負けが始まっていますので、魚の自給率は上がって59%ぐらいまで来ているのではないですか。そういうことは予想もしなかったことなんですけれども、こういうことは今後起きると思います。
 木材の方もそうですが、自給率として20%という状況は、これは日本人が日本の木材を使わないから生じたことです。いま各地方自治体が応援して、地産の木材を何とか使ってもらうという運動も進んできていますが、こういうのをもっと強力にやらないと、木材も自給率は50%にはいかないだろうと思っています。
 それから、この600万キロリッターは本当に可能かどうか。可能にするのは、永里先生がおっしゃったセルロース研究会を各省庁が合同でつくっていただくべきだと思います。もちろん競争的環境だから物事が進むという面もありますが、今はちょうど第二次世界大戦で、ドイツのUボートで海上封鎖されたときイギリスが何をやったかということに学ぶ必要があります。食料が外から入ってこなくなったものですから、徹底的に食料自給のために、例えば牛に木質セルロースを食わせるというような研究、牛には4つの胃がありすけれども、第1胃学、ルミノロジーという学問がそのときに飛躍的に発展しました。
 またネズミに食われる食料を減らすために、ネズミ駆除の学問も確立された。だから、戦時体制をとれば、戦時体制というのは省庁を超えてやるはずなんで、セルロースの問題を戦時体制でやれば600万キロリッターは達成できるのではないかと思います。

○永里委員 私は知財の共有化をするべきだと思うんですけれども。

○林教授 そうですね。
 横山先生から地産地消の将来のご質問がありましたけれども、これも一生懸命やっているところです。それは内閣府もやってくださいますし、もちろん農林水産省も、また他の省庁でもやっていますが成功しているところもあれば、あまり上手くいっていないとこともあります。成功しているところは必ず優れた指導者がいます。成功していないところは、そういう人がいないということです。いま農山漁村で人が減っていますから、核になる人を農山漁村以外からどうやって送り込むかという政策をとらなければいけないと思います。
 予算的にどうなのか。後からこれを見ていただきたいんですが、間伐材はどうやってやったのかということですけれども、平成18年度の補正予算530億、これで15万ヘクタール分です。それから平成19年度の当初予算235億、おおむねこれは8万ヘクタール分、このあわせて24万ヘクタール部分を既にやっているわけですが、平成20年度以降も絶対にやらないといけませんが、その資料はここにはありません。

○地球環境局長 後でいただいて、皆さんにお配りします。

○鈴木部会長 森林吸収の部分はいろいろと皆さん関心が高いところでもありますし、予算との関連もあるし、一体どういう算定でどうなっているのか、何か資料がありましたら後でまた補足していただければと。

○林教授 では、これにプラスアルファの資料も差し上げた方がよろしいですね。

○鈴木部会長 それから、セルロース、アルコールの問題は今日は触れられませんでしたけれども、バイオマスニッポンといういわばオールジャパンの仕組みを事務局の農水省が抱えておられるわけですから、ああいうものを少し活性化していただければどうなんでしょう。あそこで多分600万キロリットルの道筋をつくっておられるんではないかと思いますし。
 では、後でまた先生のお使いになった資料をいただけるということになっておりますし、またご質問に関連の資料がございましたら、ぜひそれもつけ加えていただければと思います。

○林教授 承知しました。

○鈴木部会長 どうぞよろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。(拍手)
 何か今日は農水省の役所側の代表みたいな形でお答えいただいて申しわけなかったんですけれども。

○林教授 いえいえ、とんでもありません。何しろ大臣3人がつぎつぎ交代されると、国民の皆さんは、もう農林水産省なんて信用できないと思っておられるのではないかという恐怖感がありました。それで私は農林水産省の代弁者だと言って歩こうと思っているんです。

○鈴木部会長 どうも本当にありがとうございました。
 それでは、続きまして安田先生をお招きしておりますが、ご紹介するまでもないと思いますが、環境考古学という新しいカテゴリー、分野を創設なさったと申し上げてもいいかと思います。国際日本文化研究センターの教授でいらっしゃいます。よろしくお願いいたします。

○安田教授 安田でございます。
 前回、しゃべるようにといただきまして、審議官がわざわざ京都まで来ていただいたんですけれども、私は風邪を引きまして本当に申しわけございませんでした。39度も熱が出まして、余りこういうところでは実はしゃべりたくないなという気持ちもあったんですけれども、多分鈴木先生のしゃべれという強いご命令ではないかと思ってお引き受けしたんですけれども、幸いなことに風邪を引いて大変失礼をいたしました。
 今日はこのようなところでお話ししていいのかどうかわかりませんけれども、私の日ごろの持論をお話しさせていただきたいと思います。
 21世紀の地球環境問題を考えるときは、まず重要なことは、我々がどんな過去を持っているかということが大変重要だと思います。漢民族というのは過去4000年の間、徹底的に森を破壊してまいりました。こういう民族、森を破壊して水の循環系を破壊してきた民族に、突然森を守れと言ってもこれは無理なんです。あるいはアメリカは1620年にアングロサクソンの人々が渡りましてから、たった300年でアメリカの森の80%を破壊しているわけです。こういう歴史を持っている人々に、突然森を守れ、環境を守れと言ってもすぐに理解できるわけはないわけです。ですから、彼らには別の方法で地球環境問題を守らせるということが大変重要だと思います。  先ほど午前中からトヨタの先生のお話もございましたが、日本のものづくりの技術というものは、日本人が伝統的に持ってまいりましたアニミズムという世界観、これが非常に大きく、車にも命を見つめると、こういったことが精緻な技術を発展させているわけです。ですから、過去というものを人間が無視しては、未来は論じられないということでございます。
 もう一つ重要なことは、我々の過去を見たときに、今日は三橋先生がいらっしゃいますけれども、三橋先生は日本にバックキャスティングという方法をご紹介されました。これはヨーロッパ人がやる方法でございます。しかし、我々は50年前に帰ればすばらしい過去があるわけです。自然と人間が共存している高度経済成長以前の里山の循環を核にしたようなライフスタイルがあるわけですから、何も未来を夢想する必要はないわけです。過去をいかに未来に実現するかということを考えればいいだけでありますから、私はこれを逆バックキャスティングと言っております。そしてもちろん経済成長をスローダウンさせないで、どのように我々の豊かな自然と人間の関係の過去を未来に復元するかということを考えればいいだけのことであります。
 ですから、今回洞爺湖サミットが北海道で開かれますが、一体政府はどのような見識を持って北海道でサミットを開こうとしているのか。実は北海道というのは日本の列島の歴史の中で、過去100年の間に40%もの森林が破壊されたところです。日本列島の中で最も激しい資源破壊が引き起こしたというところが北海道なんです。何でこんなところでやるのか。クラーク博士という北海道大学の創設者が羊とヤギを連れて参ります。牛を連れて参ります。それで過去100年の間に北海道の森林は40%以上破壊された。たった100年で40%の森を破壊した歴史というのは、これはニュージーランドに匹敵するんです。
 そういうところでなぜ洞爺湖サミットがやれるのか。これは自分たちの民族の持ってきた過去というものを、全く無視した選択を現在の政府がやっているから、こういうことになるんではないかと私はつくづく思うわけであります。
 それでは、パワーポイントを持ってまいりましたので、皆様に簡単に見ていただきましてお話をさせていただきたいと思います。  このメソポタミアの肥沃な三日月地帯、こういったところには森も草も水もないわけですが、1万年前には豊かな森がございました。これは私がやっております花粉の化石というものを使いまして復元いたしますと、1万年前にはこのメソポタミアの平原にはすばらしいナラの森林があったことが明らかになりました。こういうはげ山の景観は5700年ほど前に既にもう形成されていたということでございます。
 どうしてそういうはげ山が形成されたかというと、彼らが肉を食べるからです。先ほども肉を食うなという意見がございましたが、羊とヤギを放牧するということが、これが生態系に対して非常に大きな負荷を与えて、はげ山をつくっていったということでございます。
 ギリシャも同じでございます。ギリシャもすばらしい森があったわけですけれども、すべて破壊されました。ヨーロッパは17世紀の段階で徹底的に森が破壊されたわけですけれども、18世紀からその森がなくなったことの恐ろしさに気づいた。だから、一生懸命植林をして今は森の国になっているわけです。私がこういう話をしますと、おまえはヨーロッパの手先になっていると、スウェーデンの王立科学アカデミーの会員にまでしてもらって、うれしそうにヨーロッパの手先になって物を言っているんではないかとよく言われるんですけれども、それはアメリカに留学した人がそういうふうに言います。
 しかし、彼らはヨーロッパがなぜ地球環境問題に熱心であるかというと、彼らはかつて森を植えた経験があるからです。ところが、漢民族や米国のブッシュさんのご先祖以来、彼らは森を植えた経験がないんです。そういう人々に突然森が大事だから森を守れと言ってもすぐにはわからない。これが黄土平原ですけれども、かつてここに森がございました。明代まで豊かな森があったんです。この森を徹底的に破壊したのです。
 これがアメリカの森の変遷ですけれども、1620年から1920年の300年の間にアメリカの森の80%が破壊されたわけでございます。  これに対して我々の、先ほど林先生からご紹介がありました稲作漁労というのは、森と水の循環系を維持し、生物の多様性を維持しているということはもちろんですが、そういう物理的な意味だけではなくて、この米をつくることによって、我々の心のあり方が根本的に畑作牧畜型の人とは違うということです。このような急傾斜にヨーロッパの人々は羊やヤギを放牧するわけですが、我々は美しい棚田を作り出すのです。本来だったら、不毛の大地に我々稲作漁撈民は自らのエネルギーを投入して、豊かな大地をつくるということに喜びを覚えるわけです。だから、陛下も5月には田植えをされて、秋には稲刈りをされる。それは労働というものが美しいということです。ところが、畑作牧畜民の人々は、遊んで羊を飼って、羊に草を食わせて昼寝をしているのがすばらしいんであって、自分が汗水垂らして働くことはすばらしいことではないんです。
 こういう世界観が米の自由化によって失われていくということも、政府は当然考えるべきであると思います。特に我々の社会というのは、水によって人と人が結ばれているということです。自分の田んぼに入った水は自分のものであるけれども、自分のものではない。これは他者の幸せを考えなければ生きていけない社会です。ここに「美と慈悲の文明」というのが生まれるわけです。慈悲の心です。これが21世紀の地球環境問題を解決するキーワードです。これがなかったら地球環境問題は解決できないんです。前回に川勝さんが話したと思いますが、彼は美の文明と言った。美の文明だけでは不十分なんです。美プラス慈悲がなければ21世紀の地球環境問題は解決できない。
 その典型がこのバリ島です。バリ島はこの水田稲作農業をやって、観光をやっているわけですが、今このバリ島には、フォーシーズンとかあるいはブルガリとか、1泊6,000ドルもするようなホテルが建っているんです。バリ島には金持ちしか行けない時代になっているんです。しかし、そのバリ島には美しい棚田があるだけです。  小泉さんは、ようこそ日本という政策をつくって、どんどん日本に来てくださいと言う。日本には、貧乏人というと失礼だけれども、金のない安い外国人のツアーに来てもらっては困るんです。なぜ困るか。それは日本はこんなに美しい森、里、海の循環系を維持したすばらしい国だからです。そこに安いツアーが来てもらっては困るんです。日本に来れる人間というのは、アラブの王様とか金持ちでないと日本には来れない、そういう社会をつくらないとだめです。そんな安いツアーでどんどん中国人や台湾の人がやってきて、そして日本の国内を荒らされては困るんです。
 ですから、日本の付加価値をどう上げるかということが極めて重要です。こういう森、里、海の循環系があるということ、これが我々の宝です。川に水が流れて山に森があり、そしてその魚を食べている限り、我々は持続的にこの社会で生きていくことができるわけです。
 もちろんこういう話をしますと、ヨーロッパ人は水田からメタンが出ているではないかと言うんです。私もよく批判されました。それで私も実際調べましたら、農薬を使っている水田から確かにメタンが出ているんです。しかし、琵琶湖の湖岸の無農薬の水田からはメタンは出ていないんです。それは魚やドジョウやタニシが有機物を食べたり、あるいは動き回ることによってメタンが分解されるから、昔の水田はメタンは出ていないわけです。農薬を使うということがメタンを発生させる大きな要因になっているということです。  こういうふうに我々のライフスタイルが、過去と深い関係を持っているということは、地球も同じなんです。地球の気候変動の未来を予測するときには、過去を知らなければ我々は未来を予測することは全くできないんです。そのことを何度も口を酸っぱくして私たちは言っているんですけれども、なかなか理解されない。例えば、湖の湖底から最近年縞というものを我々は発見しました。これは1年に1本ずつ形成されるものです。湖底にバーコード状の年縞が堆積していました。不思議ですよね、人間の命のDNAもバーコード状、地球の命の記録もバーコード状なんです。そして1年に1本ずつ湖底に静かに形成されているわけです。これは小学校で教えるときにいつも使うんですけれども、上から10本目ぐらいが君たちですよ。それからもっと行くとお父さんですよ、さらに行くとおじいさんですよという、その年単位で地球はちゃんと過去の記録を保存しているわけです。こうした年縞と同じものは、南極や北極の氷河の中にありました。それを年層といいます。その年層の分析から過去の大気の変動が明らかとなっています。その中のメタンとCO2濃度の変動を見たら、過去40万年の間に地球のCO2が300ppmを超えたことは一度もない。ところが、今や380ppmを超えているというのはよく言われることですけれども、これを見ていただいたらわかると思いますが、我々が誕生したのは20万年前です。20万年前に誕生してから現在までの間に17万年間は氷河時代なんです。温暖な間氷期というのはたった3万年しかすぎない。だから、我々ホモサピエンスというのは、寒冷な気候に適応することによってこの地球の支配者になったんです。それは恐竜と全く逆なんです。恐竜はジュラ紀、白亜紀の温暖な気候に適応して地球の支配者になったわけですが、それがメキシコ湾に隕石が衝突したことによって氷河時代が起こって、そして絶滅していった。ところが、我々は温暖化に弱いんです。寒冷な気候に適応していたわけですから、21世紀地球温暖化が起これば、我々の生存の危機というものも当然考えに入れる必要があるということです。
 CO2濃度が急激に上昇するから地球温暖化が起こると、西岡先生たちが盛んに警鐘されてこられたわけですけれども、しかし現実には過去20年の間に80ppmも急増しているわけです。ところが1万5000年前から1万年前にもCO2濃度が増大しました。このときは5000年の間にたった70ppm増大しただけなんです。そのときにマンモスは絶滅して人類の生存も極めて危機的な状況になったわけですが、たった70ppm増大しただけで、地球の年平均気温が温帯地域では5度から6度、グリーンランドなんかでは7度から10度も上がるわけです。なのに、なぜ現在は地球温暖化が引き起こされないのか。これを解明しなければ、幾らCO2濃度が増大するから温暖化が来るといっても、なぜ80ppmも増大しているのにたった0.4度しか上がっていないのか。
 たしかに、感覚的には災害が多くなったりして地球温暖化ではないかと言っていますけれども、本当には立証されていないわけです。では、この1万5000年前から1万年前にたった70ppm増大しただけで大きな変動があった。ところが、今は80ppmも増大しているのになぜ大きな変動がないのか。そのことを示唆するものとして、これは私たちが今研究している途中ですが、これはサイエンスに載った論文ですけれども、大きな気候変動にはずれがあるということがわかってまいりました。モンスーンアジアでは1万5000年ほど前に大きな気候変動がございます。ところが、グリーンランドやヨーロッパ、こういったところでは500年以上温暖化が遅れているわけです。ということはどういうことかと言うと、地球全体が温暖化するには時間がかかる。つまりCO2が増大しても、ある局地では極端に温暖化現象が出てくるとしても、全体に大きな温暖化が出てくるには、500年以上の歳月がかかるということではないかと我々は今予測しているわけです。そうしますと、今80ppmのCO2が増大しても、その影響が地球全体に出てくるのは500年以上後である可能性さえあるわけです。
 あるいは、これはよく言われていることですけれども、1万5000年前に5度から6度、地球の年平均気温が増大します。そうすると、氷河時代の生態系が全部絶滅するわけですが、新しい後氷期の生態系に適応するにはやはり500年以上の年月がかかるんです。500年以上の歳月がかかるということです。ですから、地球温暖化があと500年後に起こったら、さらに500年間不安定な時代、1000年間とんでもない時代がやってくる可能性も視野に入れる必要があるんではないかと思います。  こういう危機の時代を目前にして、我々日本人は一体何をすればいいのか。それはここに書きましたように、アングロサクソンの近代文明に対極する日本の「生命文明」というものをいかに構築するかということにかかっているというのが、これは私の持論でございます。もちろん皆さんに押しつけているわけではありません。私は、「生命文明」というものを構築することが必要だと考えております。
 例えば、これが6500年前の縄文時代の子供の足形なんです。子供の足形ですが指が硬直して指だけが強くうつっており、これは死んだ子供の足形なんです。その足形がどこから出たかというと、大人の墓から出ているわけです。ということは6500年前の縄文人であっても、命というものを見つめていた。親よりも先に子供が死ぬということがやはり縄文人も悲しいことなんです。その形見を大事に肌身離さず持って、死ぬときに形見として墓に埋葬されているわけです。
 こういう命に対する優しい思いがなぜ生まれたかと言うと、その一つがやはり森にある。これは大橋力先生という先生が最近森の音ということに注目されて、森からは130キロヘルツ以上の高周波が出ていること、その高周波が脳の脳幹という部分に大きな影響を与えて、そして脳内物質の活性化に大変大きな影響を与えているということを指摘されています。森というのは今までの議論ではCO2を吸収する、洪水を防止する、水を保全するという物理的な意味での話ばかりだったんですけれども、実は森から出ている音、その高い高周波が人間の脳に大きな影響を与えて、人間の生理的な機能にまで大きな影響を与えている可能性が出てきたわけです。こういった視点でやはり環境というものをとらえていく必要があるわけです。
 だからこそ、森を守ってきた日本人は、森の中で暮らしてきた縄文人は命に対して優しい思いを持つことができたのではないでしょうか。日本の天台宗の開祖最澄さんはこういうことを言いました。「山川草木国土悉皆成仏」、これは山や川、草木、国土、これがみんな仏だということです。この命あるものに囲まれて生きることが仏の世界であるということです。最澄さんは「願文」という中で、こういうすばらしい言葉を残しています。「己を忘れて他を利するは慈悲の極みなり」、こういう心がなかったら地球環境問題の解決に参加する資格はありません。もちろんここにいらっしゃる委員の方はすべて、この「己を忘れて他を利するは慈悲の極みなり」というその気持ちで参加されていると思いますけれども、21世紀はこういう世界をいかに取り戻すか、それが生命文明の時代なんです。  それを発信できるのは実は日本なんです。それは精神的な心の問題のみでなく、テクノロジーとして発信できるのです。その日本が発信できる1つのテクノロジーがこのバイオミミクリーというものです。午前中、車の話がありましたが、イモリやヤモリの足を持ったような車をつくれば、これはガラス戸を登るような車もできるというようなそういう発想ですが、この生きとし生けるもの、命あるものの叡知に学んで新しいテクノロジーの社会をつくっていくというのが一つの取り組みではないかと、私はそういうふうに考えております。
 命の輝きの中に21世紀の新しいものづくりの社会、そして生命文明の時代というものをどう構築していくかということが、日本人に課された大きな役割であると思うわけでございます。
 以上でございます。

○鈴木部会長 大変おもしろく、また刺激的なお話をお伺いしたと思います。
 委員の方々からご意見ご質問等があろうかと思いますが、いかがでしょうか。
 では、渡辺委員から。

○渡辺委員 大変興味深い話をありがとうございました。
 先生のお話の中で、過去に日本は里山を初めとする立派な文化を持っていたわけでありますけれども、恐らくそれを過去、我々はそれを50年前、高度成長という形で捨てたわけでありますけれども、恐らくそのときは世界に負けない国をつくるために、こういったグローバル化を推し進めていったんだろうと思うんですが、今先生のおっしゃっているように、では将来もう一度そういった日本がかつて持っていたような社会を実現していくといったときに、一方で世界経済がますますグローバル化していく中で、具体的には慈悲の心もいろいろと畑作の人間に教えたとしても、なかなか言うことを聞かないであろうというときに、実現するにはどうすればよいかという、もう少し具体的に何か一言ご示唆をいただけると大変私も参考になりますので、ぜひ教えていただきたいと思います。よろしくお願いします。

○鈴木部会長 横山委員。

○横山委員 私は、環境考古学と生命文明の時代と、そのつながりをもう少し説明していただければと思います。
 それから2点目は、先生が講演の最中に経済成長をスローダウンさせないでやっていけばいいと、やはり経済成長は今後も必要だというようなことを強調なさりましたけれども、今後の持続可能な社会とかということを考えると、経済成長のスローダウンということも、視野に入れてやっていく必要があるんではないかと私は常々思っているんですが、その辺はいかがでしょうか。
 以上です。

○鈴木部会長 では、永里委員。

○永里委員 ありがとうございます。
 実は、先生の生命文明機構の方の共同研究員をやっていますので、少しその点では先生のことについてはよく存じているつもりでございます。したがって、この質問は非常にやりづらい質問なんですけれども、先生は一信教の問題も問題になさっていて、多神教の日本に対して、一神教の問題点を指摘なさっています。これは、一神教の人は他を理解できないような点がございまして、これを先生の理論でもってどう説得していくのであろうかと。それから、我々産業界の人間として、自主行動計画というのを持っているんですけれども、これは契約社会、性悪説の人たちにとってはとても理解できない話で、自主行動計画で何でうまくいくのかと、政府と共闘すべきではないかというような話も出ていますが、先生はこれについてどういうふうに解釈なさるのでしょうか。
 以上です。

○鈴木部会長 大聖委員。

○大聖委員 私、教育に携わっております立場から申し上げますと、先生のお話というのは、環境教育とものすごく大きくリンクしているんではないかなと。大人が子供にどういう環境を教えるかということが非常に重要だと思うんです。それから、私ども学生にそういうことをやっているのを指導しているんですけれども、教育効果をどうやって評価するかというのは、ものすごく難しいです、いろいろなファクターが入っていますので。そういうことを乗り越えなければいけないというふうに思っております。
 それから、最近は環境倫理学とか環境にかかわる行動を起こすための心理学的な要素というのもありますので、そういう環境にかかわる包括的な人文社会的な取り組みというのが必要ではないかなというふうに思うわけですが、先生のお考えを聞かせていただきたいと思います。

○鈴木部会長 須藤委員。

○須藤委員 どうもありがとうございました。
 先生の50年前を大体目標にしたバックキャスティングという考え方は、大変おもしろく拝聴させていただきましたが、具体的に私でしたら50年前というのはよくわかるんですが、今の若い人たちにそれを具体的に、要するに未来にそれを期待するわけですが、どんな手法を先生はお考えなんでしょうか、お教えいただきたいと思います。

○鈴木部会長 鹿島委員。

○鹿島委員 大変おもしろいお話をありがとうございました。先生のお話の中で、1万5000年から1万年ぐらいのときの状況と今とを比較してという話で、500年ぐらいのずれがあると。このずれの原因というのは、先生はどういうふうにお考えになっていらっしゃるでしょうか。500年という単位ですと、例えば地下水ですとか、あるいは海流ですとか、そういうことなんでしょうか。それとも、もう少し徐々に徐々にあらわれてくるような、そういうものだというふうにお考えでしょうかというのが1点です。
 2点目は大変長期な話から短期になって恐縮なんですが、世界にはいろいろな文明を持っていらっしゃる国があるんだろうと思うんですけれども、私なんか都市計画という非常に身近なことを、近代になってからのことをやっています。そういう立場から申し上げますと、例えば都市に人がたくさん集まり始めて疫病が起こったときに、イギリスは環境のせいだと考えて都市計画を始める。ところがドイツはそうではない、何か病原菌があるはずだから、その病原菌を発見しようと言って、非常に科学技術を一生懸命研究なさった。結果としてはその両方が交わって、多分今のいい環境というのができたんだろうと思うんですけれども、そういう立場から言うと、日本は先生がおっしゃるような道というのがあるのかもしれませんけれども、ほかの国がほかの道があり得るのか、それともそうでなくて、先生がおっしゃるように、一神教の国は皆日本みたいになってくれないと困ると、こういうふうにお考えなのかその辺についてのご意見をお伺いできたらというふうに思います。大変漠然とした質問で申しわけございませんが、よろしくお願いいたします。

○鈴木部会長 いかがでしょう。

○安田教授 1番から6人ご質問いただきましてありがとうございます。
 しかし、最後の先生のご質問を除いて、あとはこの委員会が検討すべきことではないでしょうか。私がここで答えることではないと思うんです。そのための題材を私は提供したのであって、何のために皆さんが委員になっているか、それは皆さんが考えるべきことであって、私に質問されても、それは答えることはできますよ。できますけれども、それはこの委員会の存続の意味が全くありません。  ですから、1番から5番までのご質問は、皆さんがこれから考えていただくということにさせていただければいいんではないかと思いますが、6番、500年のずれがどうしてあるかという話は私が答えなければいけないと思います。
 これは、多分海洋が深く関係していると思います、海の温度上昇というのが。ですから、今までは気候変動のトリガーは北極であると言われていたわけですが、どうも南太平洋が特に大きな意味を持っているというふうになっています。ですから、この海洋の存在、これが気候変動のトリガーであるということです。
 海というものは、私たち過去のことを研究しておりますと、例えば地中海なんかでもサプロペール層というのがございまして、1万5000年前に地球が温暖化しますとナイル川が大洪水を起こします。大量の淡水が地中海に供給されますと、その海洋の鉛直混合というのがなくなりまして、地中海の海洋の生物が全部死滅するんです。それが真っ黒の層として、海底が無酸素状態になるものですから海底に堆積します。同じようなことが今南極あるいは北極の氷が溶けて、淡水が大量に海に供給されたときに海洋の鉛直混合というのがなくなると、海洋の生物が死滅するということも今危惧されているわけですけれども、海というのはやはり気候変動にとっては極めて重要だと、こういうふうに思います。

○鈴木部会長 5人の方々がちょっと……。

○安田教授 すみません、何かお答えしなければいけないかもしれませんけれども、皆さん英知のある方ばかりで、私がここでそう屋上屋を積み重ねる必要は全くないと思います。

○鈴木部会長 一つ先生がお考えになる美と慈悲との社会あるいは文明をここでつくっていくときに、やはりグローバリゼーションで今進んできている、都市に集中したこういう文明とどうやってそれを両立させていくのかというのが、多分皆さんの一番の関心事だろうと思いますし、具体的に例えば国土交通省なんかですと、都会に住みながら離れた地域でまた別の生活を持つとか、いろいろなアイデアが出てきているわけです。その辺で、先生は例えば経済成長の問題とも絡むかもしれませんが、今後どんな社会が、例えば2050年に先生が主導権をお持ちになって、総理大臣にでもなられたとしたときにどんなことをお考えになるか。

○安田教授 僕が指導権を持って総理大臣になったら、それはもう国際政治をやります。政治を変えれば環境問題は変わるんです。これはダイヤモンドも言っていますけれども、我々が総理大臣になるんだったら、それは中国とどうやり合うか、アメリカとどうやり合うか、その国際政治で環境問題を変えるしかないんです。政治が変われば環境問題は変わるんですから。

○鈴木部会長 具体的に違う文明、文化を持った国を折伏していくわけにはいかないですよね。そこでどういう形で先生の多神教文化に全体を巻き込んで、国際政治の場でブッシュを説得し、どういう形で動いていくかで。

○安田教授 それがなかなかできないですよね。ですから、実は我々は絶滅危惧種なんです。多神教の世界を持っている、アニミズムの世界を持っている人間というのは、少数民族と同じです。ですから、少数民族が今環境破壊の中で悲惨な状態に追い込まれている。その心をわかるのは我々日本人なんです。アングロサクソンの人にその少数民族の心をわかれと言っても、彼らはインディアンの対策とかいろいろ見たらわかると思いますけれども、いかにもお粗末な対策をやるわけです。ところが、本当に少数民族の心を理解できるのは、実は我々なんです。だから、中国で漢民族にやられている中国の少数民族であるとか、あるいはタヒチとか南太平洋で、少数民族が鉱山の開発なんかで、どんどんと今悲惨な目に追い込まれているわけですけれども、そういう人々を救える、それは実は我々です。本当の気持ちが理解できるわけです。でも、それを折伏するというのは、これは創価学会にでも頼まないとなかなか難しいことです。

○鈴木部会長 そうでしょうね。そもそも市場経済という仕組みがサステイナブルではないという、そういうこともあるんでしょうね。

○安田教授 ですから、市場原理主義をどう超克するかということが、地球環境問題を解決するキーポイントでありますけれども、しかし隣に中国があって、市場原理主義を、今地域通貨というと僕の友だちも一生懸命炭俵と木1本交換して、こんなものはタヌキの化けるための葉っぱだと僕は言うんですけれども、そういうことをやっていたらおっしゃるように日本は経済的にやられるわけです。
 ですから、先生、前のシンポジウムでも申し上げたように、日本が今勝てるのは技術力です。ですから、自然に優しい循環型の技術をどうキープしていくか。英知で、自分の能力で対抗するしかないでしょうね。ですけれども、究極は市場原理主義です。アメリカはいいんです、アメリカは80%の人がキリスト教徒ですから。メガチャーチで環境を守ることが大事だと神父が言えば、多くの人々はそれに従うでしょう。でも、中国が従わない、ここが大きな問題です。この欲望の暴発をどうすればコントロールできるか。それが本当に創価学会の折伏しかないんですけれども、我々の力ではいかんとも仕方がない。ですから、暗い話ですけれども、崩壊に行くということでしょうかね。

○鈴木部会長 委員の方々からはよろしいでしょうか。
 今日は、大変刺激的で脳が活性化される面もあったと思いますが、また安田先生はいろいろなご本をおつくりになっていますので、ぜひご覧いただくとまたおもしろいのではないかと思います。今日はお忙しいところをおいでいただいてありがとうございました。

○市場メカニズム室長 事務局から次回のご連絡でございますけれども、次回は11月19日の月曜日、14時から環境省の第1会議室で行いますので、よろしくお願い申し上げます。
 ありがとうございました。

12時05分 閉会

7.浅岡委員への回答

浅岡委員への回答[PDF 144KB]

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