中央環境審議会地球環境部会公聴会 議事録 後半

議事録

午後3時40分 再開

○司会 審議を再開いたします。
 冒頭、佐和委員の方から発言がございます。

○佐和委員 お恥ずかしい話ですけれども、さっきまた計算間違いをしておりまして、 473億ドルといいますと約5兆円ですので、GDPの1%です。どうも申しわけございませんでした。

○司会 それでは、次のご発言は畑 直之さんでございます。
 畑さんは気候ネットワークの常任運営委員をされております。よろしくお願いいたします。

○畑 ご紹介いただきました気候ネットワークの畑と申します。本日はこのような機会をお与えいただきまして、どうもありがとうございます。
 私の意見については、資料3の10ページから11ページに載っておりますが、おおむねこれに沿って、若干捕捉等させていただきながらお話しさせていただきたいと思います。
 まず1点目ですけれども、やはり今回の答申案は、残念ながら、かなり不十分であると言わざるを得ません。従来、政府では地球温暖化防止行動計画とか地球温暖化対策推進大綱ということで政策を行ってきたわけですけれども、皆様ご存じのように、既に温室効果ガスの排出量は大幅に増えてしまっている。やはりその現状をきちんと見据えたら、それをさらに進めた政策が必要なわけですが、そういったものを示しているとは到底思えないということで、その辺は大幅に検討を深める必要があると思います。
 2点目ですが、まず、やはりここでは京都議定書の批准・発効ということを明確にすべきだと考えます。
 ご存じのように、ヨハネスブルグサミットでの発効ということを考えますと、5月末ごろまでには確実に批准を終えることが重要ですので、それは京都会議の議長国として当然であり、また、多くの日本の人々がそれを求めているのも明らかですので、ここのところを明記すべきだと考えます。
 京都議定書については先ほど議論もあったわけですけれども、これは世界で唯一の温暖化防止のための国際的な仕組みなわけです。枠組み、ルールと言ってもいいと思いますが、これに代わるものはないわけですから、やはりこれをきちんと進めていくことが必要だと考えます。
 3点目、答申案に盛られています京都議定書目標達成計画ですね、これをやはり地球温暖化推進法を改正して、同法に基づく計画としてきちんと位置づけるべきだと考えます。この計画を、法律に基づく計画とするということを盛り込んでいる点は、答申案の中で評価できると思うんですが、もっとはっきりと批准・承認に際して、現在この地球温暖化対策を目的とした法律としてある、この地球温暖化対策推進法を改正して、京都議定書の目標達成を担保する形にし、そこでその計画をきちんと位置づけるという形にすべきで、その点を答申の中にも盛り込むことを望みたいと思います。
 4点目ですけれども、この答申案のステップ・バイ・ステップのアプローチというのは、やはりかなり問題があると思います。第2ステップの開始前、第3ステップの開始前に見直しを行うという、そのプロセス自体はよいことだと思うんですけれども、ここで今、盛り込まれている案では、やはりどう見ても、2005年までは様子見で何もしないというふうに思われます。これでは2008年近くになって、あるいは2008年以降、慌てて削減を強化することになりかねない。これはもちろん、環境面で温暖化防止を前倒しするというのは当然ですけれども、やはり経済的にも、突然急激に何%もCO2 を減らすというのはマイナスが大きいわけですから、やはり早期対策を前倒しでどんどん進めて、それによってきちんと目標達成をスムーズに行うことが重要だと考えます。
 ですから、工程表というのが出てきますが、やはりこれは早め早めに政策・措置を実施するスケジュールとすべきだと考えます。
 5点目なんですが、やはり政策・措置についての記述がかなり不十分であると考えます。この部分は既存の施策の羅列とかけ声というか、普及啓発が中心で、中身がないというふうに言わざるを得ません。この答申案は「国内制度の在り方」というタイトルがついているわけですから、これはどう考えても、やはり政府が行うべき政策措置について記述すべきものだと思います。ところが、肝心のその部分が不十分というか、ほとんど中身がないと言わざるを得ません。
 もちろん、すべての政策・措置をここに書くことはできませんけれども、考えられる政策・措置、それから対応する法律ですとか税財政措置というものは、網羅的に記述すべきだろうと考えます。
 先ほども政策についてはいろいろな議論があったわけですけれども、やはり普及啓発はもちろん必要ですし、これは当然、今までも行われて今後も行っていく、私たち環境NGOとしても行っているわけですけれども、やはりそれだけですべてを実現することはできない。やはり温暖化防止というのは、あらゆるところから出るエネルギー起因のCO2 が一番大きいわけですから、そのためには社会、経済の構造を変えていくことが重要で、そのための政策が必要不可欠だと考えます。
 先ほどから委員の方も含めて議論があったわけですけれども、やはりルール化していかなければそれは難しいと考えます。例えば、今、日本では既に公害対策が行われて、その過程で、例えば大気汚染防止なり水質汚濁なり、いずれもこれは法律で規制されて、その部分についてはどの企業も前提にして経済活動を行っているわけですね。それを守らないで大気汚染物質をばらまいている企業はないわけで、それはもう明らかに犯罪の世界なわけですが、そういう環境コストをきちんと負担した上で、同じスタートラインで今、日本ではきちんと競争が行われているわけです。
 ところが、エネルギーからのCO2 については、残念ながらまだそういう状態になっていないわけです。ですから経団連自主行動計画等、実際にやっている企業とやっていない企業がある。ですから、やっている企業の方が経済的には負担をしているというか、損をしているんですね。これでは、やはり経済全体を変えていって全体を温暖化防止型にしていくということには、なかなかならないと考えます。ですから、そういうふうにしていく政策・措置が必要で、そのためには、そこに1つ挙げていますが、やはりそういった経済的なインセンティブ、価格のインセンティブによってそういう仕組みを内蔵していく炭素税等の手法というのは、必要不可欠だと考えています。
 先ほどWWFの提言のご紹介もありましたけれども、私たち気候ネットワークも一昨年、ハーグの会議の前に「6%削減のための市民案」というのを出しました。そのときの提案も、簡単に言いますと、日本の場合、技術的なポテンシャルは十分であって、あとはやはり政策・措置次第であるという結論を得ています。例えば、産業について言えば、省エネの設備等はまだ可能性はあるわけですけれども、今の経済的な状況からするとなかなか投資が進まない。やはり不況の中で資金回収が難しいというところで、省エネ設備の投資が進まないという状況があるわけです。そこはやはり政策の出番ということで、いかにしていろいろな方法で、短期で資金が回収できるような制度をつくっていくか、それによって省エネ投資を促すことが政策に求められるわけです。それはそこで、例えば機械関係のいろいろな需要を生み、経済の活性化にもつながっていくはずです。
 6点目ですけれども、やはり政策・措置についての議論はきちんと行って、合意形成を図っていくことが必要だろうと考えます。批准に向かっては、ある程度の概略を示していくということになると思いますが、それ以降も含めて、ではどういうふうに具体的な政策をとっていくのか。その点については各セクターが参加した場できちんと議論を行っていくことが重要だと思います。その際、情報公開、データを含めたものについては、やはりきちんとしていくことが議論の基盤としても必須だろうと考えております。
 それから、第2ステップ開始前、第3ステップ開始前の見直しの際には、やはり各セクターが参加した場できちんと検討を行うべきと考えています。
 最後に7点目、原子力発電についてですが、これはやはりほかの環境負荷を生じる、放射能という問題から考えた場合、地球温暖化対策としては容認できないと考えておりますし、今、原発の新設というのは、どう考えても現実的なCO2 削減策とは到底考えられないと思います。
 以上でございます。

○司会 ありがとうございました。
 ただいまの件に対しまして、コメントをいただきたいと思います。

○横山委員 ありがとうございました。WWFと気候ネットワーク含めて、私は日本のNGOがかなり力をつけてきたのではないかということを、こういう機会からもよく理解できるような気がします。
 中身について、私は、ほとんどそのとおりだと思います。ただ、私もこの中央環境審議会に加わってみて、例えばこういう公聴会とか、あるいは委員のメンバーの中にも経済界の方もいらっしゃって、かなり前進的なことを言うと、「それではだめだ」ということに必ずなってくるわけです。そうすると、その中間をとって、それでだめだったらもう少し厳しくする、例えば第1ステップでだめだったら、それこそ第2ステップで義務づけるとか、厳しくするというのは、何か私は、最近少し甘くなったのかもわかりませんけれども、やむを得ないような気がします。
 根本的な原因は、まず、今の審議会方式というのがもうだめで、あらゆる分野の人に集まってもらって意見をもらって、そして中間的な案をやっていくということでは私はもうだめだと思うんですが、現実にはまだそれしかないわけで、そうすると、この段階で、これでやむを得ないのかという発想も、あるところでは必要になるのではないか。
 例えば、WWF、気候ネットワークともに「この案ではだめだ」と言っても、経産省と今、折衝していても、この案ですらだめだと言われているわけなんですね。そうすると、それに対してもっともっと厳しくせよというと、なかなか妥協点が見出されないような気が私も最近するんですけれども、その辺でどうなのか。
 例えば、原子力の問題も、私も全く同じような発言をしているんですが、後で個人的に聞いてみると、環境省としてこのくだりを入れないと、例えば政治家に説明に行っても絶対に通らないんだと。「こんなものじゃだめだ、どうして原子力推進と書かないんだ」と言われる。そうすると、「これはもうお経みたいなもので、ただ単に書いているだけです、これで理解してもらえるならしようがないじゃですか」と。私も、これはまずいとは思います。しかし、そういう方便も、今、日本の中では必要なのではないかというような気がします。
 畑さんも、多分、環境省がやろうとしていること、中環審がやろうとしていることは、経産省がやろうとしていることとか産構審が今やりつつあることに比べれば、ましなことをやっているとは思っても、それでも不満だということはよくわかるんですけれども、何かうまい方法を見つけないと、同じように、せっかくの前向きなものが出ても、それではだめなんだ、あれではだめなんだということになる可能性があるような気がしますか、そ
の辺、どんなふうにお考えになっているか後でお話を聞かせていただければと思います。

○桝本委員 お経を言っている私としては、あるいは我々としては、先ほどお話を申し上げたとおりでございます。
 それから、あと2つございます。
 1つは税でございますが、これは先ほど秋元さんがお話になられたことをもう一度申し上げさせていただくことになりますが、百歩譲りまして税あるいはそのほかの規制を課すとしても、お願いは、税を払う人、場合によると中小企業を含めた企業かもわかりません、消費者かもわかりません。ぜひその人たちの意見を十分聞いていただきたい。ここに「必要不可欠である」とされていますが、この判断には、税を払う人にも大いに関わらせる必要があります。一方的に「不可欠」というふうに言うのは、私はいかがかと存じます。
 それから、一番重要で申し上げたいことは、公害の大気汚染防止の話と二酸化炭素の話が事例として並ぶように出ました。実はこれは、既にご案内かもわかりません、あるいはご承知で畑さんはおっしゃっているのかもわかりませんが、全く質を異にするものです。大気汚染にかかわるNOx 、SOx 等を代表とするもの、これは間違いなく有害物質です。しかし、CO2 はあらゆる生命活動とあらゆる活動に伴う、むしろ必要なものであるわけです。結果として温暖化という問題をもたらしてはおりますが、これはあらゆる生物の活動に伴って生ずるものです。私がこうして今しゃべっていることだけで、CO2 を出しているわけです。CO2 を出すなということは活動をやめるしかないというような代物ですので、大気汚染防止という公害の問題と地球温暖化問題のCO2 問題は、ぜひ区別してお考えいただきたいし、区別して考える必要があると存じます。

○飯田(哲)委員 意見(6)のところの横山委員が触れられた合意形成のあり方なんですが、これは先ほどの鮎川さんのときに三橋委員がおっしゃった、NGOもきちんと参加をして政策・措置を検討する場が必要なのではないか。これは私も審議会の場で何度も例示をしていたもので、欧州委員会の方で取り組んだ、これも矛盾の固まりではあるんですが、ECCP--ヨーロピアン・クライメタル・チェンジ・プログラムというのを、NGOと欧州委員会と産業界とが自分たちで合意形成をしている。
 先ほどの横山委員の話で、この答申が出てくるのには、一方で我々の見えないプロセスがあるわけですね、役所間の調整という。ただ、これが出て終わりではなくて、ステップ・バイ・ステップで今度は第2ステップに向かっていくわけですので、第1ステップの間に第2ステップに向けて、そのようにダイレクトに当事者が議論して政策を出すような場を、少なくとも実験的にでもやっていくような可能性というのは必要なのではないかというふうに、この意見(6)、あるいは先ほどの三橋委員のご意見、横山委員のご意見を聞きながら、やはりここは非常に重要なことではないかと思いました。

○飯田(浩)委員 まず1つは、一番最後の原子力についてですが、原子力による環境負荷と地球温暖化と、どちらのプライオリティが上か。
 実は私、昨年の夏、アメリカのシエラフラブに尋ねました。「原子力についてどう考えるか」「会員で好きな人はいない。しかし、会として原子力に反対を言ったこともない」さらに加えて「ブッシュが議定書から離脱するくらいならば、原子力を使った方がいいとは思っている」という話がありました。
 原子力というのは、地球に対してそれほどの環境負荷があるのか。放射能というのは、天然放射能は幾らでもありますし、どのような具体的な負荷があるのか。恐らくチェルノブイリが出ると思いますが、チェルノブイリも私は見てきましたが、これは今ここで言うと長くなりますが、あれは原子力発電所ではありません。プルトニウム製造工場ですから安全という観点は全くありません。例えば圧力容器もありませんし建屋をごらんになるとわかります。日本の原子力発電所と比べれば、日本の町工場よりもっと悪いです。どうお考えかをお聞かせください。

○司会 コメントがいろいろございましたが、畑さんの発言をお願いいたします。

○畑 ご指摘どうもありがとうございます。
 まず、一番最後の飯田浩史委員のご指摘ですけれども、私としては当然、温暖化防止も放射能もない、両方というふうに考えています。
 それから、飯田哲也委員のコメントは、そのとおりということで私も賛成いたします。
 それから、桝本委員のご指摘ですが、もちろん大気汚染と温暖化は違うだろうという、それはそのとおりです。ですから、ここで税を挙げているのも、やはり大気汚染のように規制でそれはできませんから、やはりこういう経済的な手法が必要なのではないかという認識を持っています。
 ただ、今、私たちもCO2 を出しているとおっしゃいましたけれども、今の地球温暖化というのは、人間の産業活動というか、化石燃料を掘り出し--ということから起こっているわけですから、それは生物的なあれとは違うというふうに思います。
 それから、税についてきちんといろいろ意見を聞くべきだというのは、それは当然だと思いますし、そういうプロセスが必要だというふうに考えます。
 ただ、前のこととダブりますけれども、やはり温暖化防止型の経済・社会に変えていくために、そういった仕組みを入れていくということで、私の考えとしては必要不可欠だと思っております。
 それから、一番最初の横山委員のコメント、非常に難しいんですけれども、もちろん私たち環境NGOとしても、実際、省庁間の動きですとか政治的な動きですとか、そういうことも把握はしているつもりですので、現実ベースでどうなるかということをもちろん考慮はしていますが、やはり私たちは、地球温暖化防止に取り組む環境NGOということで、やはり環境の視点からこういった主張をするセクターとして活動しているわけですから、もちろん今の答申案についても、評価できるところは評価したいと思いますが、やはり私たちの視点からして、不十分なところは不十分だというふうに言っていくのが私たちの務めだと考えています。
 ちょっとお答えになっていないかもしれませんが。

○飯田(浩)委員 横山委員のお話の中でちょっと聞き捨てならないのは、原子力を入れるのはお経だというのは、別に桝本委員が言ったわけではないですよね、あれ。横山委員がおっしゃるのは。環境省がそうおっしゃっていたと。環境省の方、どなたか代表でお答えいただけますか。あれはお経ですか。全く必要ないと思っているんですか。

○事務局(石飛調整官) ここでおっしゃっているお経というのがどういうことを意味するのか、わかりませんけれども、ここに書いてあります原子力に関しての記述は、遡れば地球温暖化対策推進法の基本方針にも述べられていることでございますし、また、現在の地球温暖化対策推進大綱にも、ほぼ同趣旨のことが記載されておりまして、これは政府としての方針として位置づけられてきたものが、この答申案にもそのまま記載されていると、我々としては認識しております。

○飯田(浩)委員 記載されているから認識するということではなくて、本当に必要なのか、必要でないのかお答えください。

○事務局(石飛調整官) 私ども当然政府の一員でございますので、政府の一員として、その方針にのっとって進めていくということが我々としての現在の見解でございます。

○司会 この程度にしておきたいと思います。

○飯田(哲)委員 私も検討に参加していたんですが、事務局の見解ではなくて中央環境審議会の議論の場としては、少なくとも原子力が必要か、必要でないかは議論していません。まず。それから、技術的なポテンシャルとしては、あるという数字は出していますが、それを使うかどうかという判断はしていないはずです。それはここで議論するべきものであって、この報告書は審議会の議論を反映していますので、少なくとも建前上は事務局の見解を聞くのではなくて、そういう意味で、ここは、私は逆に書き過ぎだというふうにコメントしたところです。

○司会 今回の報告書案をまとめる段階では、原子力の問題をそう深く議論はしておりませんけれども、その前の段階で、環境基本計画の見直し作業を全面的にやりまして、今の環境基本計画ができたわけですが、そのときにはかなりこの問題について議論をいたしまして、その結果、当時の中央環境審議会の委員の総意として合意できた案文が環境基本計画に載っている。その表現と今回の表現とは、大体平仄が合っているということが事実でございます。
 それでは、まだ次の予定もございますから、次に移らせていただきたいと思います。
 畑さん、どうもありがとうございました。
 次は、信州大学工学部助教授でいらっしゃる高木直樹様に意見を陳述していただきます。
 よろしくお願いいたします。

○高木 長野市の高木でございます。今、議論がちょっと煮詰まっている感じがありますが、私はちょっと違う視点で書いておりますので、お聞きいただければと思います。
 私は信州大学工学部で環境関係の教員をしているんですけれども、地域に根差した研究をというふうなことで、騒音とか気象とか植生などの調査を通じて、地方都市の実態把握みたいなことをやっております。ただそれをやって学会に出しているだけでは詰まらなく
なってきて、地方都市における環境行政について、さまざまな提言を行ってきております。
 私の住んでいる長野市において、行政と市民、事業者が協力して、いわゆるパートナーシップですけれども、環境問題の改善を目指す会議をつくろうということで、ローカルアジェンダの策定を目指した「長野環境パートナーシップ会議」の立ち上げに参画いたしまして、現在その企画運営会議の議長ということで行動しております。
 本日は、その「地方都市における」というような視点から、環境省のいろいろな施策に対して発言をさせていただきます。
 今日の話としては、主に交通問題を取り上げさせていただきます。
 もちろん交通問題だけではなくて、さまざまな問題が今、我々の目の前にはあるわけですけれども、一つの例として、交通問題を取り上げて話をさせていただきます。
 ここまでにも話が出てきているように、交通問題というのは避けて通ることができない問題です。温室効果ガスのおおよそ20%が運輸関係に起因しているというデータがあります。私のグループでは、主に通勤用の自動車の削減を目標に検討を重ねています。我々で独自に調べたところ、長野市の運輸に関連するエネルギー使用のうち大体25%あるいは30%程度が通勤用の自家用車に起因している。さらにその90%が1人乗りであるというようなことです。
 これは長野市だけではないと思いますが、そうしたようなことから地方都市では公共交通網の衰退が激しくて、利用者が激減している。特に、この10年間で自家用車利用に急激にシフトを起こしています。当然いろいろな問題を起こしていて、渋滞だとか騒音だとか、中心部の駐車場の不足とか、バスとか電車の会社の赤字などが起きています。また、そういったよく取り上げられる面だけではなくて、交通事故の増加であるとか、また、我々が余りに車に乗っているために、中高年齢者の運動不足から来る健康状態の悪化というようなこと、それから郊外の大型量販店に客をとられた中心商業地区の衰退と空洞化といった、今、地方都市で挙げられている問題のかなりの部分が、実は交通問題に起因しているだろうと。これは、地方都市があるべき姿と逆の方向にベクトルが向いているからであろうと思っております。
 そうしたことを改善していくためにということで、先ほど申し上げたような、通勤での自動車削減を目標にしています。具体的に、どういうふうにすれば通勤自動車が何%減るのかという算定は難しいのですが、逆に、通勤用の自家用車利用の50%削減を我々は一つの目標に、ローカルアジェンダ策を検討しています。要するに、50%削減するまで手元にさまざまなカードを持っていて、そのカードを社会的な事情に応じて1枚1枚切っていって、最終的に50%削減まで持っていこうということが我々の作戦です。仮に50%の削減ができたときには、長野市内の温室効果ガス排出量の約4%ほどが削減できるという計算になります。
 環境省の目標達成のシナリオの中間報告では、自動車利用の自粛というのは不確定要素が多いということで、検討対象になっていませんけれども、やはり大きな可能性があることは間違いないと思います。
 では、どうしたらいいんだろうかということで、施策としては、要するに、自動車が使いにくくて公共交通網が使いやすいまちづくりということ、また、地方都市では移動距離が余り大きくない場合が多いので、自転車の利用というようなことも考えております。具体的に言うと、自動車のための道路環境の整備ではなくて、自動車を使いにくくする道路環境の整備というようなことを我々は今、考えております。バスとか自転車とか歩行者にとって便利なようなということで考えているわけです。また、駐車場の撤廃とか駐輪場の整備といったハード面の整備のほかに、通勤手当とか企業内の駐車場の撤廃とか、そういう企業に対する手当、それから公共交通機関に対する手当というふうなソフトの面での整備も必要だろうと考えていますし、さらに大きな話になれば、中心市街地の再開発を行って、郊外での新たな住宅地の開発とか、郊外型のスーパーの新設の制限といった、コンパクトなまちづくりといった複合的な施策が必要になるだろうと思っているわけです。
 これからがいよいよ本題になるんですけれども、このように考えたときに、実施段階では当然大きな壁にぶち当たるだろう。市民の理解という壁も当然あるわけですけれども、それ以上に大きな、そしてとりあえず目の前に立ちふさがる壁としては、地方行政においては専門家が不足しているために、市民へのアピールの以前の問題として、行政の施策として取り上げてもらうことが非常に難しいのが現状です。地方行政における環境問題の専門家の育成というは急務だと思います。
 また、施策が複合的になればなるほど行政の縦割りの弊害が出てきます。道路局等の道路担当の部署では、自動車をスムーズに走らせることにばかり目が行っているわけで、当然、自転車とか歩行者に対しての視線は欠如しているし、公共交通網ということに対しても不足しております。
 そんな状態ですので、自動車が不便になるような施策に対する反発は非常に強くて、理由にもならない、「そんなこと言っても、今は自動車社会だから無理です」といった、私は決して理由にはなっていないと思いますが、それで蹴られてしまうのが現状だと思います。
 しかし、今のまま自動車社会を放置しておけば、これまで以上に自動車交通が中心になっていきます。そしてほかに、今、環境省を中心にしてさまざまに検討されている地球温暖化対策、いろいろなことを考えていらっしゃるわけですけれども、それらを、特に地方においては、それらすべてを「自動車交通の増加」という、たった1本の柱で飲み込んでしまう危険すら、私はあると思っております。
 また当然、環境省の関連する地球環境問題だけではなくて、さっき申し上げたような高齢化社会の問題とか、中心市街地の問題といったようなことからも、非常に大きな弊害になる危険があると思っております。
 1つお願いしたいのは、自動車を自粛して他の手段に変えていくということを、やはり積極的に取り上げていっていただきたいと思います。地方行政、先ほども専門家がいないという話をしましたけれども、結局、環境省で取り上げたいろいろなことを、そのまま自分たちのところにおろしてくるというパターンが非常に多いので、例えば公共交通網を整備しましょうというふうな文書そのもの、字面は読んでくれるわけですけれども、具体的に自分たちの中でやろうとすると、非常にお茶を濁すようなことになってしまう。自動車利用の自粛というのがもっと前面に出てくると、それなりの対応が各自治体では十分にとれるだろうと思います。
 また、費用対効果という点から言っても、多分、他の、新しい何か大きな技術を開発したりというようなことよりも、非常に費用対効果にすぐれていること、また、地方都市が抱える、さっきの高齢者の問題とか、そういったような他の問題にまで非常にいい影響を与えるという意味では、非常に重要なことだと思います。
 今ずっと交通問題のことばかり話をしてきたんですが、実はこれと全く同じことが、他の対策についても同じことが起きています。やはりそのリードをしていただくのは環境省しかないだろうと思います。ぜひその辺のリーダーシップをとっていただきたいというようなことをお願いしたいと思います。
 それから、先ほどから国民の周知を優先すべきというような意見があるわけですけれども、実は私は、市民の方と直接に話をしていて、もう十分にそのことはご存じだと思っております。地球サミット以来、環境に関するいろいろな情報が流れてきておりますので、本質的には理解している。ただし、まだ先のことだと思っているのが現状だと思います。自分のことに直接的に関係した影響がまだ出ていないので、まだ自分にとっては先の話だと思っていると思っております。だからぜひ、京都の議定書を発効させる、これでボタンがかかって、みんなが「あ、自分のことだ」と思うとまでは、まだ思っていませんが、議定書を発効させて、さらにそのステップをできるだけ早く、要するに、さまざまな不便--不便と言ったらいけないのかもしれませんが、影響が国民に起きるようになって初めて、国民がこういった地球環境問題を自分の問題としてとらえてくれるときが来ると思うし、そうしたときには、ライフスタイルの変更というようなことにつながっていくだろうと思っておりますので、環境省がリードをとって、そのボタンを早く押していただきたいと思っております。
 以上です。

○司会 ありがとうございました。

○塩田委員 ただいま高木さんから交通問題についての一つの例として、温暖化対策を交
通の面に関連させるというお話がありましたので、私の意見を申し上げたいと思います。
 私は、温暖化対策というのは、皆さんご指摘のように、温暖化ガスの量を抑制するというところに重点がある政策だと思っております。これに対して、例えばNOx とかSOx とかそういうガスについては、特定の地域の濃度が高まると健康に被害があるというようなガスですから、これは問題が根本的に違う、先ほど桝本委員からもご指摘があったわけですけれども、温暖化対策に関しましては、全体でどの程度の量の温暖化ガスを抑制できるかということが大事だと考えます。
 そういうふうに考えますと、私は今、高木さんがおっしゃった、自動車をある程度不便にして、いろいろなメリットが期待できるような政策を進めるということに関して、それは一つの考え方だと思いますけれども、この温暖化対策全体の中でこれがどの程度の効果があるかという点については、若干疑問があるのではないかという気がいたします。
 そういう意味で、温暖化対策の中では、ご指摘がありましたように交通は全体の20%の温暖化ガスを排出しておりますが、その中で自動車が大分部分の問題を提起いたします。それでは、結局自動車をどのぐらい減らせるかという問題については、私は、こういうふうに考えます。
 大都市圏、例えば首都圏、中部圏、近畿圏のように公共交通機関がかなり整備されていて、そこに大量の交通量があるというところについては、ほかの交通機関にシフトすれば温暖化ガスは減るだろうと思います。それに対して、今の長野市というご指摘は非常に微妙なところですが、普通のところは、今ご指摘がありましたようなまちづくりあるいは村づくりを根本的に変えるという数十年単位の政策がなければ、自動車を度外視して生活できない方が大部分だろう。そういう所で公共交通機関の整備をしても、その温暖化ガスの抑制効果はネグジブルであろうというふうに思います。
 そこで、ちょっと今、高木さんの論点から私が外れてしまっているので申しわけないんですが、この温暖化対策の今の答申案の中では、そういうふうに考え方を分けて、要するに、温暖化対策の抑制効果があるような政策を国としては、あるいは地方公共団体も推進をしていくべきであろう、そういうふうに思います。その内容については、先ほど畑さんから、もっと考えられる施策・措置などを具体的に網羅して記述すべきだというご意見がありましたが、私は、そういう方向にこれから向かっていくべきだというのは当然だと思います。また、鮎川さんから、車の諸制度をクリーン化する必要性にもっと具体的に触れるべしというご意見が書面で提出されましたけれども、それについても賛成です。
 ただ、今、長野市のご提言について、私、正面から議論しておりませんが、この問題はむしろ交通の問題として、そういうことを試みていくということは重要なことであろうし、先ほど具体的にご提言があった、通勤用の車を50%削減するということに関しては、一つの非常に見識が高い目標ではないかという感じがいたします。
 これについては、既に提案されているのは、なるべく通勤を相乗りですることの奨励ということで、これはかなりの効果があると思いますし、それは大都会ですと難しいかもしれませんが、長野市の勤務形態などを考えれば、十分これは実現するものだろうと思います。
 それから、地方公共団体に交通の専門家を招いてこういう施策を推進されるということ、それもいいことだろうと思います。ただ、先ほどご提言がありました駐車場をやめてしまうとか、あるいはバス路線をこれから新たに設けるとか、そういうものは、路線によってはもちろん可能だと思いますが、駐車場の廃止もなかなか簡単ではないだろうし、それからバス路線も、閑散路線をこれから開設するということもなかなか難しいだろうという気はいたしますけれども、そういうことをねらって対策を講じられていることは意義があると思います。ただ、地球温暖化対策全体の中の位置づけはどういうことになるかなと。やはりある程度、私は具体的な施策ごとに、どの程度の量の削減ができるのかということを考えていくべきだろうと。それで、量を多く実現できる施策を優先していくべきではないのかなと、現在の段階ではそのように考えています。

○司会 ありがとうございました。
 今、もう予定の時間まで7分程度しか残っていませんので、延長させていただかざるを得ないと思っておりますが、いずれにしましても、発言を簡潔に願いたいと思います。

○猿田委員 では、簡単に申し上げます。
 今、塩田委員からも自動車問題についていろいろお話ございましたけれども、今、高木先生が地元でいろいろおやりになっておられる対策といいましょうか、交通量の。全国的に見ますと、バス路線というのは減少傾向にあるわけですね。採算が合わんというんで、特に地方ではどんどん路線が廃止されるというような傾向があるわけですけれども、私も十数年自動車排出ガス問題に携わっているものですから、そういうのはよくわかるんですが、ただ、使用者から見れば、車の機動性というのが非常に重要視されるわけで、どうしても利用したくなる。
 そうすると、なぜバス路線が廃止されるのか。1日の運行回数が少ないからどうしても不便、逆に余り利用価値がないから乗らない。機動性を考えれば、自分で車を運転したいということになるんでしょうけれども、大都市の場合には、塩田委員もおっしゃったように、かなりそういう交通体制が整備されておりますから、逆に利用しやすいので利用していると思いますが、地方へ行くほどそういう意味での利用頻度が下がってしまうために、赤字路線の凍結ということで廃止されていく。その辺をどうするのか。
 まして、これから高齢者社会の中で、そういうような医療関係とかそういう面からも車というものの重要性も出てくると思うんですけれども、そういう場合に、では果たしてバス停、対応できるところがあるのかどうかという問題もあるかと思うんですが、その辺を、いわゆる地方の社会的条件の中でどのように対応していくか、非常に興味のあるご意見をお聞かせいたいたんですけれども、例えば都市の中で、2車線あるならば1車線は通勤・退勤時間にバス専用レーンにしてしまうとか、何かそういうことも可能かと思いますが、そう片側何車線というのは少ないだろうと思いますね。では、その中でどのようにしていくのか。
 ある意味では、その地域の住民の方のライフスタイルの転換ということにも関係してくるわけですから、その辺でまた今後のご活躍を期待したいと思います。意見として。

○司会 高木さん、発言ございましたら簡潔にお願いします。

○高木 1つ、地方都市では移動の数が少ないので、公共交通網でというのは難しいという話があったわけですが、もちろん実際にそのとおりなんですが、地方都市では移動の距離も少ないんですね。要するに3キロ以内ぐらいの移動がかなり多くて、その部分に関しては、かなりの部分が自転車で対応できるだろう。それは長野の話ですけれども、当然、地方によっては雪でだめだとか山でだめだとかあるでしょうから、その地方、地方の都市によって、必ずそれなりの解決策が私はあると思っています。大都市から見ていると、それは地方は難しいよねというのはあるかとは思うんですけれども、実は地方都市にうまく考えるシステムができれば、それなりの解決策は必ず見出していけるのではないかなと。それを見出せるような方向づけを、ぜひしていただきたいというのが私の今日の一番の趣旨でございます。

○司会 ありがとうございました。
 それでは、予定の時間もなくなってきましたので、このぐらいにしたいと思います。
 高木さん、どうもありがとうございました。
 引き続きまして、大國昌彦さんにお願いしたいと思います。
 大國さんは日本商工会議所を代表されまして、東京商工会議所・環境委員会副委員長でございます。そして王子製紙の会長でもいらっしゃいます。
 では大國さん、できれば10分以内ということで、よろしくお願いいたします。

○大國 ただいまご紹介いただきました、商工会議所の環境副委員長をやっております王子製紙の大國でございます。時間が余りないということでございますので、簡潔に申し上げます。
 お配りしてありますペーパーに基本的なことは書いてございます。個々のコメントもついておりますが、総括的な問題について意見を述べさせていただきたいと思います。
 今までこのCOP7に至りますまで、日本の政界、環境省を初めとする皆様に大変ご努力いただいたということは、よくわかっております。特に、今まで温暖化の問題などで出なかった森林の吸収ということをしっかりと表明され、また、相当程度各国がそれを理解したということについては、もう非常に高く評価をしておる次第であります。なぜかなれば、日本は海外においても植林をしているナンバー1の国であるということ、意外と皆様ご承知ではありませんが、日本は堂々と海外に植林をしている国であるということをご理解いただきたいと思います。
 ところで、地球温暖化の防止、これは何よりも地球規模で実を上げることが重要であります。世界各国がこぞって参加する、当然そうなるべき代物だというふうに思っておりまして、また、その応分の負担を誠実に実行することが不可欠でございます。
 京都議定書では、削減目標の半分が米国の削減によって達成される前提でございました。その米国が不参加である。また、将来的には全世界の二酸化炭素排出量の約半分を占めると予想されている発展途上国については、何の約束もしなかったという、結果としてはそういうところまで来ておるということであります。したがって、今のこのままの仕組みを進めましても、地球規模での温室効果ガスの削減の実効は期待できないのではないか、あるいは将来を何も担保していないということが言えるわけであります。したがって、米国が参加すること、また、発展途上国を含めまして国際的に負担が公平である、そういう保証が欲しいわけで、それまで国際条約で縛られてしまうというようなことでは、まさに日本の経済というのは、これから臍をかむ思いに苛まれることになるのではないかと思っております。
 批准ということが国際的にどんな意味を持つのか、もうがんじがらめに「これ以上出たらいけない」というように相当厳しい、罰則規定こそありませんけれども、国際的な日本の評判がそこでもう、いつもいつもチェックされる。また、政治の世界--といっても国民にふりかかってくることは直結しております。そういうことで細心の注意を払って、私の考えとしては、条約の枠外で自主的な取り組みを行うべきではないかというのが基本でございます。
 まず、そのなぜかなればのもとですが、削減目標6%。米国は7でEUが8ということで最初、論議をされました。極めて公平だという感じがいたしますが、この6%は1990年の時点での話を言っておりますが、日本はその時点で既に相当の省エネルギーをやっております。第1次、第2次のオイルショック以来、日本のエネルギー削減は各企業とも大変な努力をいたしました。
 ほかの業界についても似たようなことだと思いますが、私、製紙業界におります。1990年にイギリスの下院の与野党の代議士が私どものところへ参りまして、そのとき彼らが持っている資料と対比いたしましたが、その時点で日本は、世界の標準より20%少ないエネルギーで運転しておりました。その90年を指標として、これから決められるわけであります。
 そういうことで、この6%という意味は、そこからヨーイドンをするほかの各国と我々とではレベルが全く違う。6%というのは 100のうちの6だから、大したことないだろうと思われるかもしれませんけれども、産業界といたしましては、もう死ぬ思いの現在までの省エネルギーをやってまいりました。
 それでは、99年の数字がございますが、99年の排出量から横ばいで2008年から2012年の、その時点までいくと仮にいたしましても、これはもちろん、経済成長できるかできないかは技術の問題でありますけれども、経済成長は多分ゼロと仮定をいたします。それでいたしましても、どんなマグニチュードが日本に襲ってくるかと申しますと、例えば家庭生活の面で言うならば、日本の全世帯におけるテレビ、照明器具、冷蔵庫、冷暖房などが約10カ月半停止をするというエネルギーの節減をしなければいけない。また、産業部門で言いますと、全国の工場を2カ月半操業停止をすることが必要になる、それぐらいのエネルギーの削減が、現状から言うと言えるわけであります。
 国民の生活、多大な影響を及ぼす規模の対策が、いろいろな手を使ってやっていくということがこれからやることで、各企業とも、そういう努力を現在もしております。これは経団連傘下の企業は全部そういうことをやりまして、製造業を含む産業界については、若干増えておりますが、何とかやろうという覚悟でやっております。しかし、まだまだこれから技術開発をしなければいけない。あるいはエネルギー設備に対しても相当な程度の、何千億円、私どもの企業1つとっても 1,000億円では足りません。これは何らコストダウンにならない部分の投資をする必要があります。そういう、いわゆる経済工学的な考えではありません。サイエンス的な技術を使って--技術ではありませんね、サイエンスであります--採算度外視のものをやって数字だけは何とか達成できるであろうというのが、2000年、2010年前後のところに対する我々の考えであります。
 この対策というふうなことを、仮に政府が何かをやろうというふうなことになりますと、高率の課税というようなことが問題になります。こういう課税というふうなことになりますと、エネルギーを多く使う国内の企業は、もう間違いなく海外に移転するだろう、あるいはなくなってしまうだろうと思います。現在でも日本の産業は空洞化の度が強まっております。これは、もともと日本のエネルギーコストが非常に高い。これが各企業、特に商工会議所は中小企業をたくさん抱えております。日本の製造業、ものづくりの底辺を築いておりますのが中小企業でありますが、これはもうもろに打撃を受けることは全く間違いない問題でありまして、空洞化、すなわち日本のものづくりが消えていくんだと。
 消えていったときどうなるんだということを考えますと、日本の製造業によって、ものをつくることによって海外に輸出をする、それによって日本の食糧、日本の食糧は60%も輸入をしております。先進国でこんなに輸入している国はございません。また、エネルギーは水力以外はほとんど輸入している。そういう国もございません。そういう我々の立場から言って、こういうコストが上がる方法は何とか避けたいということでございます。
 私は現在、日経連の副会長で、雇用問題の委員長もやっております。空洞化問題は今もう大変な問題を抱えておりまして、連合ともいつも膝つき合わせまして議論をしている最中でありますが、打つ手がないというのが実態だと思います。
 そういうことで、非常に大きな問題があるわけですが、最初に申し上げましたように批准というようなことになると、日本は真綿で首を締められるぐらいの問題が起きてきている、そういうことになるということで、極めて慎重にお取り扱いをいただきたい。
 また、環境税に関しまして、環境税と言いましても特に二酸化炭素の問題でございますが、これは最近、財政再建の中から抱き合わせ的に言われておりますが、この地球環境問題は、日本の財政問題と全く一緒に論ずるべきではないと思っておりますので、決してそういうことはないとは思いますが、ぜひそういう国民の反発を食うようなことはなさらないようにご留意いただきたいと思います。
 各論につきましては、ここに書いてありますように、大体そう大きな問題はありません
が、見る視点を、少し大きな立場でそれぞれ見ていただきたいということでございます。
 そういうことで、私の陳述を終わらせていただきます。

○司会 ありがとうございました。

○佐和委員 二、三お伺いしたいわけですが、産業構造の転換ということについて、どうお考えなんでしょうか。
 つまり、10年たつと、これは別に日本だけに限らず、かつてアメリカも、それからヨーロッパ諸国もすべて辿った道なんですけれども、GDPに占める製造業の比率は明らかに低下の傾向にあるわけですね。加えて製造業の中に占める素材型産業の比率というのは、もう低下せざるを得ない。そうしますと私は、恐らくといいますか、まず間違いなく、2010年ごろには製造業の占める比率がGDPの20%前後まで下がり--これはヨーロッパ諸国並みですね--それから、製造業に占める素材型産業の比率というのも相当程度低下すると思うんですね。そうしますと、これはおのずから産業用の、それほど「きつい、きつい」とおっしゃっていただかなくても、ご自由にやっていただいても、結果的には産業用の二酸化炭素が減ることは、あるいは横ばいで推移することは、私は間違いないと思うんですが、いかがでしょうか。
 それから、要するに自主的取り組みに任せろ、政府は何もするなというようなことをおっしゃいますけれども、自主的取り組みのインセンティブというのは何なんでしょうか。何が自主的取り組みを促すか、あるいはモチベートするんでしょうか。それについてお答えいただきたいと思います。

○横山委員 私は、1点、この中に出てくる家庭生活での「テレビ、照明器具、冷蔵庫、冷暖房および給湯用のエネルギー使用をおよそ10カ月半も停止する」このくだりに実はびっくりしたんです。冷静に考えると、例えば石油とか車とかは除いて、あるいは産業界も今のままでいいということで、単に家庭だけで6%削減ということになると、こうなるということだと思うんですが、それはちょっと、余りにもひどい。例えば家庭だけで6%削減してくださいということで今、問題提起されているとすれば、こういう表現でもいいのかもわかりませんけれども、そうではなくて、各分野が痛みを
伴ってやろうというときにこういう表現は、かなり誤解を生むのではないかと思います。
 先ほど国民の反発を食うようなことは言わないでほしいとおっしゃられて、私もそのとおりだと思うんですが、逆の意味で、こういう表現は反発を食うのではないかと思うんです。いかがでしょうか。

○飯田(哲)委員 私も手短に3点ですが、今のと同じ場所で、私は別の意味で、こういう脅しのような表現は、やはりやめるべきだと思います。技術ポテンシャルとかいろいろな可能性を見ても、こういう寒いくらい貧しい省エネではなくて、効率を上げることによってより豊かな、エネルギー効率の高い技術ポテンシャルをいろいろなところで示されているのですから、これはある意味、知性の問題だと思います。
 2つ目に、死ぬほどの努力とおっしゃったわけですが、実際に王子製紙さん、製紙工業さん自身が、かつては田子ノ浦のヘドロを生み出したものを今、コクエキで使っておられて、エネルギーの半分をバイオマスエネルギーとして使っておられるわけですね。それは非常に、環境にもいいし、エネルギーコストが半減しているわけです。これは非常にメリ
ットで、これは死ぬほどの努力ではなくて、逆に、いわゆる環境と経済のメリットですね。
 それから、化学工業会さんはのみは投資金額と削減効果を公表されていまして、大体平均投資回収年率 2.6年程度の、1990年度実績ですね。直近でもまだその程度の、個別に見るとゼロ年という投資回収の施策は幾らでもある。今後の計画を見ても、まだ幾らでも産業界は可能性があるということを、化学工業会さんは一応公表されているわけですが、そういうところをすべて公表した上で、本当に「死ぬほど」なのかどうかきちんと透明性のある形で説明しないと、これは全然説得力がない。
 3つ目に、空洞化という話をおっしゃっているわけですが、これは佐和委員と一緒ですが、今、中国と日本で賃金の差は40倍あるわけです。その40倍の付加価値を埋めるだけの紙を日本は本当につくれるんですかということが、今、問われているわけですね。本当にエネルギーコストだけの話なのか。むしろ積極的に付加価値の高い経済社会をどうつくっていくか、そういう形で技術開発も、あるいはいろいろなビジネスも生み出していかないと、それこそ本当の意味で崩壊的に日本の経済は落ちてしまうのではないか。やはり余り既得というか、既存の経済構造だけを維持するようなことをおっしゃられると、全く未来が感じられないというふうに考えます。

○司会 それでは、今のコメントに対しましてお願いいたします。

○大國 たくさんいろいろな問題をお伺いしたので忘れそうですが、もし私が答えなかったらおっしゃってください。
 最初の、製造業のインセンティブはどうなんだというお話でありますが、これにつきましては、基本的な、基幹的な産業といいますか、そういうものはわずか数年では体制なんか急には変えられないということが、まず基本にあります。したがって、まず今のもので生きなければいけない。恐らく私の考えでは、製造業に従事する人間の数、それから日本全体に占めるGDPの比率は、製造業については減ってくるだろう。これは間違いなく減ると思います。その分の人がだんだんサービス業に変わっていく、それが日本のこれからの人のあり方だろうと思います。
 ただし、そう減っていくとか何とか言っても、それがそんな簡単に、机の上で物を書くのとは全く違います。設備を1つ建設するのにも数年かかるという業界であります。それを「はい、それじゃ潰しましょう」とは簡単に言えない。そこにいる人間が、それではいろいろな産業に対してエンプロイアビリティーがあるのかというと、それもつくっていくのに時間がかかる。まず、だから現在のものを基本にどうしようかということであります。
 もちろん、技術というものが革新していくわけですから、それを取り入れることによって何とか達成したいなということで、必死の努力をすると言っているのはそのことでありまして、それはしかし、必ずしも採算に乗るかどうかもわかりません。やってみなければわかりません。これから研究して生み出す技術もあります。これもまだ、どのぐらい日本にインパクトを与えるものであるかも、まだわからない。しかし、努力はするということを、「必死」という表現をしましたけれども、お金も多分にかかる。生きるか死ぬかですから、そういうことでの大きなお金も動くだろうということであります。
 別な、そういう設備の、あるいは技術の開発で仕事ができるじゃないかというのは第三者のお考えでありまして、現実に携わっている人が、それでは、それで何人雇用できるんだなんていう計算は、とてもできません。そういうことで、今のものを中心に考えていかざるを得ないというのが我々産業界のものでございます。
 それから、これは従業員が減ってくるというのも、当然そうすべきであって、GDP比率から言うと、製造業もそうだし、また、一人当りのGDPも変わってくるというのは、もう10年たったら相当変えるようにしていかなければいけないということも、本当にそう思っております。
 また、ちょっと飛びますが、付加価値の問題につきましても、そんな簡単に付加価値がつくものがあるなら教えていただきたいということであります。
 それから、家庭用のエネルギーをどうかということを言うのはひどいではないか、こういうお話ですが、これはもちろん、それだけでやることではなくて、1つのものにまとめた場合にはどのくらいかと。実は、何キロワットのエネルギーとかいうことを申しましても、あるいは各産業でどのぐらいずつとか言っても、なかなかこれはおわかりいただけない。実は今日は皆様方、割と専門家でいらっしゃるのでおわかりいただいているんですが、国会議員の先生たちに説明するときにはわからなかったんです。それで結局、マグニチュードで説明をしたということでございます。
 それから、田子ノ浦のヘドロの問題、それもエネルギーに変えているというお話で、もちろん、そういうことも最近はできるようになった。実はこれは世界に先がけてやっているんですけれども、実はその辺の採算の問題は、生産にかかわる部分の採算というのは、我々は省エネルギー対策という項目ではなくて、生産投資ということでやっておりまして、もちろん、企業の収益問題の中の計算に入るものであります。今、化学業界が0.何年とか2.何年とかいうものについて、もちろんそういう項目もなくはないんですけれども、大体はエネルギー投資というものは、そんな画期的なものはほとんどございません。恐らく数年以上の投資回収年数になると思います。
 あと何か、私、忘れたものありますかね。

○司会 中国との賃金差が40倍あって、エネルギーコストだけではないのではという話。

○大國 もちろん、このエネルギーぐらいいいではないかというようなお考えでおっしゃるんだったら、これは大変なことでありまして、賃金格差、もちろん30倍とか、少ない人でも20倍日本の方が高いということで、これについては、もう既になってしまっているわけですからしようがないわけですが、これをもちろん次々と、今度の春闘などでも労働界ともいろいろな話をしながら、増えないような努力をしていく。
 これは、1つは多角的な雇用制度というようなことを考えていろいろやるんですが、それでも中国のような人件費になるわけがない。そういうことで、付加価値みたいなものを何とかつけていこうというつもりで努力しているんですが、付加価値が簡単につくなんて
いうことはないわけで、付加価値というのは言うは易く、達成するのはなかなか難しい。
 したがって、人件費についても減らそうとしております。エネルギーについても減らそう、あるいは物流とかそういうものにつきましても、政府にいろいろな規制の問題、そういうふうなものを訴え出ておりまして、ごく最近は少しそういう規制撤廃が進むようになってきた。しかし、どんなことをしても中国にコストはかなわない。そこで、やはり技術、あるいは高度な技術と言った方がいいかもしれません、そういうようなものをつけながらやっていくというのが、日本のこれからの製造業。したがって、その分の生産高も減ってくる可能性がある。
 したがって、おっしゃいますように、その分でエネルギーが減るんではないかということも、あるいはあるかもしれません。だけれども、今の私の話は日本の経済成長はゼロだということでやっておりますので、ゼロで果たして日本人が満足できるかどうか、若干問題はあると思います。しかし、あらゆる努力をして、確かにエネルギーの少ない方向に向かいたいとは思っておりますが、いかんせん期間は短いんだよということであります。
 それから、それはよろしいんですが、世界各国、紙の業界で申しますと、現在はもっと開いているかもわかりませんが、日本で紙をつくらない、それでは中国ででもどこででもつくろうということになったといたしますと、そこが二酸化炭素をどんどん出します。恐らく猛烈な勢いで出す。それを許容しながら日本だけが締め上げるということは、いかがなものか。世界の、地球の温暖化の問題を論議しているわけでございますので、そういう意味での論議はおかしいのではないかと私は思います。
 よろしいでしょうか。

○司会 どうもありがとうございました。
 残念ながら余りにも時間がございません。むしろもう20分超過しておりますので、大國さんとの意見交換は、この程度にしたいと思います。
 ありがとうございました。
 あとお2人の意見陳述者がいらっしゃいますので、簡潔によろしくお願いいたします。
 次は、大林ミカさんでございます。環境NPOの環境エネルギー政策研究所副所長でいらっしゃいます。また、自然エネルギー促進法推進ネットワークの副代表も務めていらっゃいします。
 大林さん、よろしくお願いします。

○大林 大林でございます。本日はこういう場で意見陳述ができますこと、大変嬉しく感じております。
 実は私、以前、京都議定書が採択された次の年、やはり中央環境審議会でこういった答申案を出されたときにも意見陳述をさせていただきました。その際の社会全体の雰囲気とか世論調査を見ても、やはり地球温暖化防止に向けた一層の理解が社会の中では広がってきた。答申案そのものを見ても、また審議会のメンバーの方々のメンツを見ても、やはり
地球温暖化防止がより一層、現実的なものになってきたのではないかと考えております。
 それから4年たちまして、いよいよCOP7の合意を受けて日本政府が京都議定書の批准に大きく一歩踏み出したというふうに、私たち、考えているわけですけれども、やはり今日プレゼンテーションをなされた方々、もしくは委員の方々からも、京都議定書の批准がこの目的ではないといったような意見が出されていることを大変残念に感じます。
 私たちは、京都議定書を批准・発効させるためにもう既に4年間という歳月を費やして、議論を積み重ねてきているわけですね。やはりそこには国際的な議論、国際的な英知を尽くした研究が重ねられて、さらに国際的な、国の指導者たちがずっと精緻な議論を重ねてきているわけですから、やはりこの京都議定書の批准を日本は第一義に考えるべきであるし、その発効に向けてより一層の努力を進めていくべきだと考えます。
 そういった観点からこの答申案を拝見いたしますと、やはり今現在、日本が温室効果ガスを削減するどころかどんどん増やし続けているという現状を見ますと、今までの日本の温室効果ガスの削減対策、地球温暖化対策が十分ではなかったと言わざるを得ないと思います。この答申案を拝見いたしますに、横山委員からは、環境NGOは環境省に対して厳しい意見がというふうなご意見もあったわけですけれども、私は、やはり環境省が環境を守る省であるのであれば、さらなる地球温暖化防止に向けて、もっと具体的で強力な施策をとっていくことが必要だと思います。
 ここで申し上げております強力な施策といいますのは、強力な締めつけ、いわゆる規制ということのみをあらわしているのではなくて、温室効果ガスを削減するために強力な力を発揮する政策という意味で申し上げております。まず、この現状の政策というものが十分ではないわけですから、実際に増え続けているわけですから、まずその検証から始まって、これから脱皮した新しい政策的なツールを提言していくことが必要になってくると思います。
 ここで掲げられております議定書目標達成のための排出削減、吸収に関する対策・施策を見ますと、日常生活、事業活動におけるステップごとの対策・施策ということで、新たな基盤づくりであるとか、国民各界各層の理解と行動を求める活動の展開という形で、いわゆる普及啓発活動というものが、運動を進めていくことが一番重要というような形で挙げられているわけですけれども、そうではなくて、やはりその運動を進め、さらに地球温暖化防止につなげていくためには、それを奨励するための政策が必要だと思います。
 具体的に挙げますと、電力のエンドユーザーである消費者の電力消費を下げるということで言えば、例えば私が意見書の中で取り上げさせていただきましたのは、デンマークがやっておりますデンマークの省電力トラスト。これは電気料金の1%にトラスト分のお金を課金いたしまして、それをトラストとして積み重ねて、そのうちの8割を、例えば電力機器のラベリングに使って普及啓発していく。それがさらには消費者の行動を変えるような強力をインセンティブを持つ普及啓発政策となっている。それは2割をそれに使っておりまして、8割は電気暖房を地域の熱供給の暖房政策に変えていくといったものに使っていて、そして省電力に対して非常に大きな効果を上げている。そういった政策がとられることによって、消費者も消費行動を変えることができますし、そういうインセンティブを伴った政策が重要になってくるのではないかと考えます。
 今、省エネルギーのことを申し上げたんですけれども、例えば自然エネルギーに関して言えば、こちらの国内制度小委員会の方でも1度、報告書の中に取り上げられておりましたドイツ型の自然エネルギーの固定価格買い取り制度。これは私たち、自然エネルギー促進法の方で推進している制度ですけれども、そういった政策が有効なものだというふうに私たちは考えております。
 一方で、この省エネルギーなり自然エネルギーの政策をどういうふうに日本の政府が進めているのか見ていきますと、やはりそこには省庁間の壁というものがあって、具体的には、自然エネルギーの政策で言うと、つい先ごろ新エネルギー部会で取りまとめられました「新しい自然エネルギーの市場拡大の措置・政策」というものの中に、例えば対象電源として廃油・廃プラが入っております。この答申案の中にも、日本の二酸化炭素の排出を増大させている一つの原因として挙げられているわけですけれども、そういったものに対してインセンティブを与えるような制度が、ある一方の省庁ではとられていて、もう一方の省庁ではそういった政策に対して何ら有効な対抗策がないといったような現状を、やはり地球環境とエネルギー問題の分野で活動してきたNGOとしては、大変残念に感じるわけです。
 そういった意味でも、環境省に対しましては、やはり日本の環境政策を束ねる行政省庁といたしまして、このエネルギー政策に関しても、地球温暖化防止の観点から、提言なり提案なり、何らかの施策を言うような活動を起こしてほしいというふうに強く要望いたします。
 今後、電力自由化の議論が進んでいきますと、安い化石燃料からの発言が増える可能性あるわけですね。そういったことに対しましても、やはり総合的な地球温暖化防止対策が必要というふうに私たちは考えております。
 また、実施に関しましては、これまで何度か委員の方々からも発言ございましたし、意見陳述者の方からも発言がございましたけれども、省庁間の壁を超えるだけではなくて、各セクターの壁を超えて、環境NGOや市民がきちんと平場で議論できるような場を設けまして、そこでさまざまな施策のすり合わせと実行を行っていくことが必要なのではないかと思います。
 さらに、それを実施に移していくアプローチにつきましては、ここではステップ・バイ・ステップのアプローチとして、だんだんに施策を見直して実行に移していくよということが挙げられておりまして、それ自体は何ら私たち、反対するものではないわけですけれども、ただ、中身を見ていきますと、やはり2005年までは実質的な政策の導入がなされないと私たちは考えております。こういった様子見の形では、2008年から2012年の間の国際公約を果たすためには全く間に合わないと考えるわけですね。その後の、次の約束期間をにらんだ提言だというふうな言われ方もなされているわけですけれども、それでは十分ではなくて、地球温暖化防止が待ったなしというふうに考えて、また、それが新しい経済のあり方をつくっていくものであるというふうに考えるならば、何よりもまず第1に、日本が京都議定書を批准することで明らかにこれに取り組むという姿勢を示して、それによって産業界を刺激していくことが重要なのではないかと思います。
 政府として京都議定書の批准の議論に加わっておりませんアメリカでも、例えば産業界を覗いてみますと、国内制度を充実させていく、将来的に政治状況が変わったときに、議定書の批准なり何らかの議論が行われていくのを睨んで、国内制度の構築が率先して行われております。そういった取り組みを日本でも、まさに産業界の方を中心として率先してやっていただきたいと思います。
 一番最初に清水委員から、技術があってもそれを活かしていくようなシステムがなければだめなんだというお話がありました。私、まさにそうだと考えております。それに関しましては私たち環境NGOも、いろいろな提言も含めまして一緒に活動していきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 以上です。

○司会 ありがとうございました。
 ただいまのご意見に対しまして、コメントがございましたらお願いします。
 --それでは、とりあえずはございませんので、もうお一人の方の意見を伺いましてから一括して、もし大林さんに対してコメントがありましたら、またその段階でお願いしたいと思います。
 それでは、どうもありがとうございました。
 最初の段階で、もし時間が余りましたらフロアの方からも意見をいただきたいと申し上げたんですが、もう予定の時間を30分過ぎておりまして、ちょっと無理かと思いますので、ご了承いただきたいと思います。
 最後になりましたが、武田 泉さんにお願いいたします。
 武田さんは、全国鉄道利用者会議代表でいらっしゃいます。

○武田 武田でございます。全国鉄道利用者会議の代表ということで、お話をさせていただきたいと思います。
 ただいま追加の配付資料をお配りいたします。ただし、部数が少のうございまして、お2人で1部ずつぐらいになるかと思いますので、よろしくお願いいたします。利用者会議の皆様にはちょっと遠慮していただいて、なるべくほかの方に回るようにしていただきたいと思います。
 今日、私が意見表明したいことは、今回の答申案にいろいろ出ていますけれども、特に鉄道等の公共交通機関を基軸とした交通環境対策について、意見表明をしていきたいということでございます。
 温室効果ガスの伸びが運輸旅客部門、とりわけマイカーの伸びに著しいというふうに述べられております。これに何らかの対策を講じることが極めて重要との認識が共有されているというふうに私どもも考えております。答申案では、その後に国内制度の整備やグリーン購入、ライフスタイルの形成について書かれておりまして、さらに「交通対策のグリーン化」として具体策が取り上げられております。
 マイカーの削減は、やはりいろいろ生活が近代化しておりますので、原始的なものに戻るわけにはいきませんので、その代替となる公共交通機関の充実、とりわけ道路によらず電気による運転も可能な軌道系交通機関、特に鉄道でございますけれども、そういったものの充実が不可欠なはずでございます。しかしながら、項目として取り上げられているものには、自転車対策とエコドライブや道路の管理、とりわけ海外から輸入した手法であるTDMやITの活用等の文言ばかりが目立っております。その一方、公共交通機関の維持、特に鉄道について具体的にどうするという話がなきに等しいわけでございます。
 中央環境審議会におけるこのような姿勢は、地方自治体における環境セクションの対応を極めて曖昧なものに終始させ、廃止直前の地方鉄道へ具体的な対策も施せないまま、自動車が増加していく状況を指をくわえたまま傍観していたり、実効性がなく、かけ声倒れのノーマイカーキャンペーンだけに終始していたようにも受け取れるということでございます。
 私は現在、職場は北海道でございますけれども、文部科学省の内地研究員ということで沖縄の方にも行っております。そして地方の各地から東京の方を見たりしているわけでございますけれども、お配りしました資料の1枚目をごらんください。
 まず、1枚目の左の下の方でございますけれども、三重県の交通対策課のホームページということで、県庁本体には直接リンクしていないんですけれども、そこにこういうことが書かれております。
 これは一般市民が書いた質問ですけれども、「ところで交通政策課では公共交通の利用促進を事務分掌の1つに挙げられていますが、具体的な業務は公共交通利用のPRだけなのでしょうか? 職員の方が一番感じておられるでしょうが、PRだけで車から公共交通へのシフトが進むほど甘くないのが現状です。公共交通へのシフトを進める上で一番効果があるのは、車の利便性を低下させることだと考えられます。しかし、昨今ますます道路整備が進み利便性はむしろ高まっています。」ちょっと飛ばして、「このままでは道路整備による便益が車利用者のみに及びますます車の利用を促進させる」ということでございまして、その後いろいろな、リーダーシップをとってさまざまな施策をやったらどうか、公金を入れたらどうかとか、そういうことをいろいろ述べてあるわけです。それについての回答が小さく書いてありまして、そこを読んでみますと「さて、当課の公共交通促進の対策が県民への啓発に終始しているとのご指摘でございますが、そのご指摘は甘んじて受けるほかはないと思います」とおっしゃっていて、要するに、やはり各県レベルとか自治体レベルの公共交通対策というのは、せいぜいPRとか普及啓蒙活動しかできなくて、具体的に何をどうやったらいいかということが全くやられていないのが現状ではないかと思います。
 同じページの右側をごらんください。これは国土交通省--旧運輸省がつくった交通環境対策のさまざまな施策の概要でございますけれども、一応今のところ考えられているのは、貨物輸送でモーダルシフトということで、鉄道利用促進への転換ということはいろいろ言われているわけで、輸送力増強とか長編成化とか書いてあるわけでございますけれども、旅客輸送についてはほとんど何も書かれていなくて、要するに、目立ったことは全然書いていないということでございます。下の方になりますと、エコドライブとか省エネ策ということで、道路・自動車交通に関しては述べられていますけれども、鉄道についてはほとんど描かれていないということでございます。
 今のページの裏を返していただきたいと思います。
 地方の鉄道が現在どうなっているか、これをちょっと皆様方に申し上げたいんですけれども、これは8年くらい前、東北地方の普通列車に新型の車両が入るということで、これは当時のJR東日本の秋田支社がつくったパンフレットでございますが、これを見ますと「通勤・通学が便利に。快適に」と書いてありまして、「ご乗車される方に優しい機能デザイン」とか「都会派感覚の新方式」のドアとか、非常にいいことがたくさん書いてあるわけでございます。
 しかしながら、これを導入したらどういうことになったかといいますと、2枚目をごらんください。これは私が撮った写真でございますけれども、左側の大きな上の写真は、かつて地方で走っていた鉄道車両でございます。いわゆるボックス型のシートでたくさん人が座れるような状況だったのにもかかわらず、これを一夜にして下のような、山手線等で走っているような横座りの座席にしました。これは座席が非常に少ないわけで、要するに、どんどん立たされてしまうわけですね。つまり、取れる運賃は立たせても座らせても同じだということで、経営効率を考えたら立たせて、混雑させて運んだ方が鉄道会社としてプラスになるわけでございます。しかし、逆にこういうことになりますと、地方の住民というのは「じゃあ鉄道やめて車にしましょうか」となるということでございます。
 同じ車両で、右側でございますけれども、これは青森県庁の職員だと思われますけれども、帰りに一杯ビールでも飲みながら行きたいなというときも、置き場所がないので床に置いてビールを飲んだりとか、それから、座席がないからドアのところにもたれかかって休んでいる若者とか、もう座り込んでしまう人とか、こういうのが続出しておりまして、例えば青春18きっぷとか安い切符で北海道へ行くときに、この電車に6時間以上も乗って行かなければならないということで、大きな荷物を抱えながら立って弁当を食べたりしている。このような状況が日本の地方の鉄道では蔓延しているわけでございます。
 3枚目の右側をごらんください。
 この電車が入ることによって、座席定員が大幅に減ったということが表に示されておりますし、その下の、岩手日報の「声」の欄に投書されたものを見ても、バッテンばかりで最悪の電車ということで言われていますけれども、これは何度JRに私どもが申し上げても一向に改善する気がなくて、 150両以上導入された中で改善されたのはわずか3両しかない。とんでもない車両を入れられたということで、こういう消極的な鉄道会社の経営姿勢が、車を増加させることになっているということでございます。
 あと、一番最後のページの裏を返して見ていただきたいと思います。
 JR西日本の方では、外国人の株主からもっと経営改善をしろということで、儲からない赤字線は廃止しろと言われているんですけれども、廃止がなかなかままならないという場合は、列車の本数を減便して、そしてスピードダウンして走って使えない鉄道にしようということがなされまして、4月以降は西日本の30から40線区に拡大すると言われております。こうなってしまいますと、確かに地図上では鉄道はありますけれども、とても使えるようなものではないということで、やはり車で行くしかないとか、そういうこともあります。
 また、ワンマン運転が拡大すると、要するに乗り方が地方、地方によって全然違うわけで、乗りなれていない中学校から高校生になる受験生が待っていたら、ワンマン列車だったので、ドアが開かないまま行ってしまったとか、こういうようなことは日常茶飯事で、もうひどい状況でございます。
 それから、JR東日本が12月に切符の制度を変えまして、わかりやすい切符制度にするという触れ込みでさまざまなPRがされたんですけれども、実際ふたを開けてみたら非常に使い勝手のいい切符がどんどん廃止になるということで、要するに、利用促進ということからも鉄道会社は逆行するようなことをやっている。すなわち、鉄道会社にとっては地方の赤字ローカル線の自社の路線に乗せるよりも、レンタカーとかそういうものの利用者に対して割安な切符を販売する、そういう施策をしておりますので、鉄道を利用するというよりその他の、特にマイカーの方にシフトするということを鉄道会社自体がやっているということでございます。
 さらには本来、ヨーロッパの方でやられているような共通運賃制度をもしやるんであれば、東京圏でもJR、民鉄に限らず何でも乗れるような方面別の切符をつくるべきではないかとか、こういうことが言えるわけですけれども、運輸省、国土交通省の方は何もやろうとしてこなかったわけです。
 それについてはこの後の方に書いてありますけれども、政府を含めて環境の部局が具体的に公共交通対策に取り組まなかったのは、こうした分野が国土交通省の鉄道局や道路局や都市局、そういったものの所管であって、所管を飛び越えてまで勧告するような政策対応がなされてこなかったということがあります。もし本気で政策をやるということであれば、地球環境対策の予算で鉄道の公共交通改善の対策に補助金を出したり、役所の都合で形成されているような鉄道関係の法体系、これは鉄道事業法とか軌道法とか都市モノレール促進法とか、道路整備特別措置法、連続立体事業についての建設省運輸省協定、さまざまありますけれども、こういう法体系を全部抜本的に見直す必要があるのではないかということでございます。
 少しはしょりまして、要するに、今コストの安い路面電車、LRTの導入なんていうことをいろいろ地方の方が勉強はしていますけれども、先ほど言ったような役所の都合による法体系によって全くできないような状況でありまして、もう補助金も出なければ支援する制度もなければ、国土交通省へ持っていってもだれも相談できる人がいないというような状況でございます。そういうものがある限り、公共交通機関の充実というのは全くできないような状況でございます。そういうためには、やはり役所の縦割りを超えて、もうどうしてもやらなければならないということであれば抜本的に、ほかの方法でやれることがないのかということを十分考えていただきたいということでございます。
 もう一つ、日本の鉄道会社が環境対策として考えられていることは、省エネの電車をつくるとか切符のリサイクルをするとか、あとごみのリサイクルをするとか、そんなことだけでございまして、動力自体を、例えば風力電車のように新エネルギーを使った電車を走らせようとか、そういうような動きは皆無でございます。北欧のスウェーデン等では、エコラベル、そういう電力料金が多少高いものを使ってでもやろうとして、それを電車の車体とか切符につけて、そしてライフスタイルの変革を起こそうというような動きがありますけれども、そのような動きは全く皆無でありまして、「地球にやさしいJR貨物」と言いながら、何の対策もされていないディーゼル機関車から紫色の煙がどんどん吐かれているような現状でございまして、これで果たして一般の国民が見て環境対策になっているかどうかというのは、極めて疑問でございます。
 そういう中で、最後にちょっと環境省について申し上げたいんですけれども、北海道の大雪山国立公園の中に、ふれあい自然塾という事業が1つあります。要するに、環境省としても、例えば国立公園のふれあい自然塾とかそういう事業をやるときは、もうちょっと住民の意見を聞いたりとか、ライフスタイルの変革に沿うような、自然との触れ合いだけではなくて、これまで林業とか鉄道がどういうふうに発展して、消滅していったかとか、そういう負の産業遺産というものが仮にあったとしたら、それも残して、そういうものを含めて国立公園等があるべきでありまして、そういう中から地球温暖化対策に関係するようなライフスタイルが築かれていくのではないかと考えるわけでございます。
 以上で終わります。

○司会 ありがとうございました。
 もう予定の時間を45分も過ぎておりまして、この会場の使用時間がもう切れております。残念ながら、今の発言に対するコメントはできないということで、お許しいただきたいと思います。
 それでは武田さん、どうもありがとうございました。
 それでは、8人の方から意見の陳述をいただきました。それぞれいろいろな角度からのご意見をいただきまして、本当にありがとうございました。
 今日いただきましたご意見、ご議論も十分踏まえまして、来週24日に開催されます第5回地球環境部会におきまして、再度この答申案につきまして審議が行われることになっております。
 それでは、これをもちまして公聴会を終了いたしたいと思います。
 司会の不手際で時間が延びまして、申しわけありませんでした。
 本日は大変ありがとうございました。(拍手)

午後5時17分閉会