保健・化学物質対策

平成27年度第1回(通算第3回)水俣条約対応技術的事項検討会 議事録

日時

平成27年5月22日(金)18時00分~20時00分

場所

経済産業省別館1階 101-2・103・105共用会議室

出席者

出席委員

大塚直(共同座長)、東海明宏(共同座長)、蒲生昌志、崎田裕子、高岡昌輝、高村ゆかり、田村暢宏

政府出席

環境省環境保健部環境安全課、経済産業省製造産業局化学物質管理課

政府傍聴

環境省、外務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、国土交通省、防衛省

議題

  1. (1) 検討の進め方及びスケジュール(進捗報告)
  2. (2) 検討会中間報告書(案)について
  3. (3) その他(今後の予定等)

議事録

(1)検討の進め方及びスケジュール(進捗報告)

(環境省より資料1、事務局より参考資料5(追加ヒアリング部分)について説明)

崎田委員:文化財修復関係では、水銀はどのように使用されているのか。また、今後、水銀使用量が削減されていくという理解でよいか。

事務局:伝統工芸において使用される水銀朱と金属水銀は、事業者によって適切に保管・管理されている。水銀朱の使用量は、修復される社寺等の建造物の大きさによって異なる。参考資料5、43ページに直近の使用量を示しているが、今後の長期的な使用量についてはヒアリングでも具体的には示されていない。金属水銀も同様であり、修復する工芸品の量によって、金属水銀の使用量も変わってくる。

環境省:多くの伝統的建造物は文化財保護法に基づいて修復されており、その場合の修復は原状復帰が原則である。そのため、元々建造物にアマルガムメッキや水銀朱を使用している場合は、修復にもアマルガムメッキや水銀朱を使用することとなる。

高岡委員:参考資料5、29ページに水銀の年間調達量が750kg程度とあるが、これは年間の水銀使用量と同値という理解でよいか。また、同資料31ページに水銀スイッチの代替可能性や今後の国内動向について記載されているが、基本的には水銀使用量は削減しつつ、維持管理用としては引き続き需要が見込まれるということか。

事務局:御指摘のとおり、ここで示す水銀の年間調達量は年間使用量とほぼ同値である。また、参考資料5、31ページの「今後の国内動向について」では、モーター用過電流保護スイッチ(以下、OCRという。)の国内需要は減少しているが、鉄道車両や大型冷凍設備等の代替品への置き換えが容易でない設備の修復にはOCRが使用され続けるため、引き続き水銀の利用が見込まれるとしている。感震器は国内では既に水銀フリー化が進んでおり、近年中には製造が廃止されると伺っている。

高岡委員:維持管理用として、水銀が使用され続けるということか。つまり、海外での大型冷凍設備等の維持管理において、OCRを使用し続けるということか。

事務局:海外で使用される設備の維持管理という点については事業者に伺っていないため、今後追加でヒアリングを実施したい。

大塚座長:国内の大型冷凍設備等の維持管理では、OCRを使用し続けるのか。

事務局:参考資料5、31ページではOCRの代替化が難しいとあるため、周辺機器全てを取り替えない限りはOCRを使用する必要があり、そのための水銀需要が見込まれる。

大塚座長:設備自体が更新されるまではOCRが使用され続けるということだろう。

蒲生委員:参考資料5、31ページの6で、条約に伴い水銀使用製品の供給ができなくなることが広く周知されているわけではないと記載されているが、ユーザーは当該製品に水銀が使用されていることを認識していないということか。それとも、水銀使用製品であることは認識しているが、水俣条約の影響について認識していないということか。

事務局:30ページ、2ポツ目にOCRには廃棄時にメーカーに返送する旨記載した注意書きを添付していると記載されているが、感震器にも同様の注意書きを添付するか、添付が難しい場合は販売時にユーザーに対して注意を促すこととなっているため、ユーザーは当該製品に水銀が使用されていることを認識しているはずである。条約の影響で製造が難しくなることについて、今後周知の必要がある。

(2)検討会中間報告書(案)について

(環境省より資料2について説明)

<1~4章部分>

大塚座長:中間報告書案については、1~4章と、5~8章に分けて議論したい。まずは、前半の1~4章について、御意見を伺いたい。

田村委員:6ページ(1)⑤の製品の安全性の問題は非常に重要である。今後試買調査を実施するにあたり、水銀含有量の測定だけでなく、各製品の安全性についても試験を行っていただきたい。製品の安全性に関する試験方法の検討は環境省だけでは難しいと考えられるため、産業界等の関係者の協力を得ながら検討していただきたい。また、10ページ(2)(c)の適用除外事項について、とくに製品の輸出入に関連する部分について再度説明いただきたい。

環境省:試買調査の安全性試験に関しては、御指摘のとおり環境省にはあまり知見がなく、必要な情報提供を含め、産業界に協力していただきたい。10ページ(2)(c)について、国内では既に製造が廃止された製品で、海外では製造され続けている製品は適用除外に該当しない。つまり、国内で水銀スイッチ製造が廃止された後に、国外において製造された水銀スイッチのメンテナンス用の水銀スイッチを、日本から輸出することはあり得ないということである。

崎田委員:本報告書案には、電池だけでなく様々な水銀使用製品について詳細に記載していただいており、業界としては水銀対策に取り組みやすいと考える。一方で、製品の製造廃止等の対策の進捗状況について、全体的な把握が重要となるため、業界団体、大手メーカーに協力してもらうといった対応が必要だろう。今回示された水銀対策を進めていくにあたっては、業界全体で共通認識を持っていただくことが重要となる。

環境省:御指摘のとおり、水銀対策の全体的な進捗把握はしっかりと行っていく必要がある。新法に基づき、水銀による環境の汚染の防止に関する計画を今後策定する予定であり、この計画の中にこうした水銀対策を位置付け、その後も計画のフォローアップを行う中で進捗状況を確認していきたい。

高村委員:事業者からの協力もあり、条約基準の前倒し・深掘りが具体的に検討されている点で、意義のある報告書案だと考える。報告書案に関して、3点質問がある。

1点目、田村委員からの指摘とも係わるが、10ページの「(1)基本的考え方」の「国内においても」という箇所はどういった意図で記載しているか。「も」の意味が不明確である。日本の高温多湿な気象条件では使用できないボタン形電池等について、国内には代替品がないが、海外には代替品がある製品は適用除外ということか。また、国内に代替品はあるが、海外には代替品がない場合はどうなるのか。

2点目、6ページ⑤の今後の課題について、製品製造等規制と適用除外については、規制の実施状況や技術的条件等を考慮しつつ、丁寧に見直していく必要がある。前倒し・深掘りが出来ない事例を把握しなければならない。⑤で、電池について「数年後を目途に見直しの検討を行うべき」とあるが、具体的な見直し時期を明示したほうがよい。全体的な実施状況の見直しについては実施計画の進捗確認で行われる予定と思うが、製品製造等の状況の見直しについては、電池だけでなく他の製品についても必要と思われるため、製品製造等の包括的事項を記載する箇所に記載すべきではないか。

3点目、適用除外となる製品については、製品ごとに9~11ページに明確に記載されており、事業者にとっても対策がしやすくなっていると思われる。9ページ、表2の「実現可能な」はFeasibleが原語のはずだが、技術的に可能というだけでなく、経済的な実現可能性という要素も含まれるという理解でよいか。報告書に条約の解釈を示したほうがよい。

経済産業省:1点目について。国内には代替製品があるが、海外においては、気象条件等の差異により代替製品がないという場合もあり得るので、代替製品のない国向けの輸出に関し適用除外が認められることはあり得る。ただし、そのような場合の取扱いについては現段階では十分に検討できていないため、引き続き関係省庁と協力し検討していきたい。

環境省:2点目について。ボタン形酸化銀電池やボタン形空気亜鉛電池は廃止期限を2017年に前倒しすることを目指しているため、「数年後」の見直しに関しても、その辺りがメドとなってくると理解しているが、具体的な年数を記載できるかどうか、検討したい。

経済産業省:環境省と同様の認識だが、条約の締約国会議では附属書Aに関する見直しが検討される予定であるため、国際的な状況を考慮して年数を検討していきたい。

大塚座長:「数年」と記載すると、5~6年と思う人もいるのではないか。具体的な年数を記載しなくてもよいかもしれないが、「数年後」という記載が適当かどうか、検討していただきたい。

環境省:「2~3年程度で見直しの検討を行う」と記載してもよいかどうか、経済産業省の意見を伺いたい。

経済産業省:具体的な年数の記載については検討が必要だが、条約第4条8項では、条約の発効から5年以内に附属書Aを再検討すると規定されており、国内における見直しがそれよりも先になるということはまずないと考える。

大塚座長:委員から、見直しについて具体的な年数を示してほしいという意見があったことは、記録に残しておいていただきたい。

高村委員:数年と記載すると、5年以上のようにも感じる。2017年を目途に前倒しの状況を確認する必要がある。また、条約発効後の議論を踏まえて、国内法についても定期的に見直しを行うという文言を、製品製造等禁止の包括的事項を記載する箇所に追記したほうがよいのではないか。

環境省:文言追加について、検討させていただく。

大塚座長:製品製造等の状況の定期的な見直しについて、電池以外の製品についても見直しを行うという点は、対応していただけるということでよいか。

環境省:「8.今後の課題」に記載する可能性もあるが、後ほど、座長とも相談させていただいた上で判断したい。

経済産業省:3点目について。Feasibleの解釈として、経済的な意味合いも含むかという点については、条約の解釈にもよるため、外務省にも確認の上で明確化したい。

<5~8章部分>

大塚座長:次に、5章以降の内容についてご意見を伺いたい。各種指針の対象者について、17ページの水銀含有再生資源の管理に係る技術指針では、対象者は水銀含有再生資源の管理者のみで、保管・運搬等の委託先は対象者とはならない一方で、14ページの貯蔵に係る技術指針では、他者に貯蔵を委託した場合には委託を受けた者が指針の対象となるとされている。こうした違いの趣旨について説明していただきたい。

環境省:水銀含有再生資源の管理は運搬、保管、処理、処分等の様々なプロセスを含む。例えば、非鉄金属製錬スラッジの管理においては、非鉄金属製錬事業者の敷地内からスラッジを廃棄物処理事業者の敷地内まで運び、そこで水銀を抜き取り、処理後のスラッジが元に戻されるまでの全プロセスについて、非鉄金属製錬事業者に所有権がある。従って、所有権を持ち、管理という行為全体に責任を有する者が義務を負うこととしたもの。他方、水銀等の貯蔵は単一の行為であり、貯蔵を委託する場合、貯蔵という行為全体を委託するという観点で、責任が委託先に移ったという考え方を採用している。

大塚座長:水銀等の貯蔵者と比較して、水銀含有再生資源の管理者に比較的重い責任を課すという方針だという理解でよいか。

環境省:御指摘のような考え方もありうるが、環境保全上も実際に、所有者が一括して責任を負う形の方がメリットがあると考えている。というのは、水銀含有再生資源の所有者、運搬者、保管者それぞれからバラバラに定期報告がなされるよりも、所有者から一元化された情報が定期報告されたほうが、情報の収集・取扱いが容易になると考えている。

大塚座長:貯蔵の場合、報告はどのようになっているのか。

環境省:貯蔵自体が単一行為であるため、現に水銀等の貯蔵を行っている者を定期報告義務の対象としている。

高岡委員:17ページ、7-3(2)では、廃掃法上の廃棄物への移行量を報告すべきとあるが、廃掃法上の廃棄物に移行しなかったものは商品となり得るのか。必ずしも全ての水銀含有再生資源が廃棄物に移行するわけではないと考えられるが、その部分はどのように扱うのか。

環境省:廃掃法上の廃棄物に移行したものは、廃掃法に則り適正処理されることとなり、新法案の所掌範囲外となる。ただし、廃掃法上の廃棄物に移行した水銀含有再生資源の量については、情報を把握しておくことが必要と考えている。非鉄金属製錬スラッジは今後も有価で取引されることが想定され、その場合は廃掃法上の廃棄物ではない。

経済産業省: 17ページ、7-3(2)の報告事項のうち、「処分作業別の処分量」には、条約でいう「処分」される量、すなわち資源回収等される量が該当する。非鉄金属製錬スラッジの場合、水銀を抜き取った後は、単なる非鉄金属を含む有価物となり、水銀含有再生資源にも廃掃法上の廃棄物にも該当しないため、「処分作業別の処分量」として報告されることとなるのではないか。

高岡委員:100トンの非鉄金属製錬スラッジの水銀含有量が10%の場合、水銀が回収された後、90トンのスラッジが非鉄金属製錬事業者に戻るということか。廃棄物や商品に水銀が移行する場合を考慮し、水銀の移行量を報告することはないのか。

環境省:それは水銀等の貯蔵に係わる事項である。15ページ、6-3(2)の貯蔵の定期報告では、廃掃法上の廃棄物への移行量を報告すべきとしており、御指摘の移行量はこの部分で考慮されている。非鉄金属製錬スラッジは廃棄物処理事業者によって処理されるまでは水銀含有再生資源と見なされ、処理後は水銀が含まれていないため、新法案の所掌範囲外となる。スラッジから回収された水銀は貯蔵に関する規制下で管理されることとなる。

高岡委員:6章と7章によって、漏れなく水銀が管理されるということか。

大塚座長:金属水銀は貯蔵の対象となるのか。

環境省:非鉄金属製錬スラッジ処理後には純度の高い金属水銀が回収されるが、こうして回収された水銀は貯蔵規制の対象となる。

大塚座長:15ページ、6-3(2)で報告すべきとされている「廃掃法上の廃棄物への移行量」に関して、廃棄物への移行はどういった場合に想定されるか。

環境省:例えば水銀の価値が下がり、金属水銀自体が廃棄物となる場合が該当する。

高岡委員:14ページ、6-1の3段落目で示されている貯蔵規制の対象物質の定義について、95%以上の濃度で顔料として使用される水銀は、貯蔵規制の対象とならないということか。95%というのは、顔料としては高純度のようだが。

環境省:水銀朱については、ほぼ100%の濃度で使用する場合もあれば、貝殻の粉(胡粉)を混ぜてピンク色にして使用する場合もある。他の顔料と混ぜ、95%以下の濃度となった顔料は、貯蔵規制の対象とはならない。

崎田委員:15ページ、6-3(1)で、定期報告の対象要件として30kg以上が裾切り値とされているが、30kgの根拠を説明していただきたい。大規模事業者にとって30kgはあまり多くないが、中小事業者にとっては多いという場合もあるのではないか。参考資料5、44ページに漆塗に使用する朱の保管量が9.6kgと示されているが、こうした場合は報告の対象外ということでよいか。

環境省:条約第3条では、実験室規模で使用される量の水銀又は水銀化合物は適用除外となっている。これを受けて、何らかの裾切り値を検討した結果が30kgということ。その根拠としては2点。参考資料6の34ページ4.2.1にあるように、消防法及び危険物の規制に関する政令に基づき、30kg以上の水銀等は消火活動に重大な支障を生ずる恐れがあるため、消防署への届出が義務付けられており、追加的負担が少ない。これが根拠の一つ目。もう一つの根拠は、30kgとした場合の補足率である。同じページの中ほどにあるように、裾切り値を30kg以上に設定する場合、貯蔵者数の補足率は50%程度、貯蔵量の補足率は99%近くなり、国内における水銀貯蔵量のほぼ全量を確認できることから、この値を採用している。

蒲生委員:貯蔵については報告対象となる裾切り値について具体的な量が規定されているが、水銀含有再生資源については具体的に示されていないのはなぜか。

環境省:水銀含有再生資源については条約で量の規定がない。水銀廃棄物についても条約第11条で対象物が定められており、水銀含有量等の基準が今後定められるとされているものの、保有量の裾切りはないため、貯蔵の場合とは異なってくる。

蒲生委員:水銀含有再生資源は数量によらず、届出の義務があるということか。

環境省:おっしゃるとおりである。

崎田委員:18ページ、8について、製品の表示と回収に関しては引き続き検討していくとあるが、製品のライフサイクル全体をとおして適切に条約を担保することは大変重要であるため、なるべく早い段階で、表示に関するガイドラインの検討を行っていただきたい。また、製品に適切な表示を行うことは、廃製品の回収のしやすさに係わってくるため、表示と回収について同じ委員会において検討を行うか、適切に情報共有を行うようにしていただきたい。また、回収については自治体の回収を想定しているようだが、電池等について業界による自主回収の取組も行われているため、こうした民間主導の先進的な取組事例が先細りにならないような仕組みを検討してほしい。

環境省:なるべく早い時期に表示に関するガイドラインの検討を実施するという御指摘は十分に留意したい。製品の表示については環境保健部会の所掌事項であり、廃棄物の適正な回収については循環型社会部会の所掌事項であるため、表示と回収を同じ検討会で議論することは難しいが、相互に進捗状況等を適切に情報共有しつつ進めていきたい。事業者等による自主回収については、今後の課題の「市町村等」の「等」に含まれているが、文言追加が可能か検討したい。

蒲生委員:18ページ、8章の今後の課題について、製品の廃止期限の前倒し・深掘りや、水銀回収のより一層の促進等の対策がなされることによる効果がどの程度あるのか、量的なものも含めて確認することも必要である。

環境省:製品の廃止期限の前倒し・深掘り等の見直しに当たっては、ご指摘の点を考慮したい。

大塚座長:報告書の内容については本日の議論でおおむね固まったと考えるが、具体の修正については東海委員と私に一任いただくということでよいか。

(異議なし)

大塚座長:それでは、本日いただいたご意見を反映し、事務局と座長で必要な修正を行い、中間報告書として取りまとめさせていただく。

(3) その他(今後の予定等)

(資料1に沿って環境省より説明)

(質問なし)

森下課長:全3回の技術検討会においては委員の皆様、業界関係者からご協力いただいた。本日、衆議院の環境委員会において、水銀による環境汚染の防止に関する法律案及び大気汚染防止法の一部を改正する法律案が可決された。衆議院本会議に送付されており、可決されれば、来週には参議院で審議されることとなる。できるだけ早く、国内における条約担保の体制を整え、日本の取組を海外に発信していきたい。

山内課長:委員をはじめ、関係者の皆様には報告書の取りまとめにご協力いただき感謝する。環境省と連携し、一日も早い条約締結に向け、作業を進めていきたい。

事務局:追加の御意見等は1週間後の5月29日までに事務局にお送りいただきたい。次回の開催は夏以降を予定している。日程や会場は改めて御連絡差し上げる。

以上