保健・化学物質対策

平成26年度第1回水俣条約対応技術的事項検討会 議事録

日時

平成27年2月23日(月)17:00-19:00

場所

TKPガーデンシティ永田町ホール2D

出席者

委員(◎座長)(敬称略)

  • ◎大塚 直      早稲田大学大学院 法務研究科・同法学部 教授
  • ◎東海 明宏     大阪大学大学院工学研究科(環境・エネルギー工学)教授
  •  蒲生 昌志     産業技術総合研究所 安全科学研究部門 リスク評価戦略グループ長
  •  崎田 裕子     ジャーナリスト・環境カウンセラー
  •  高岡 昌輝     京都大学大学院 地球環境学堂 地球益学廊 教授
  •  高村 ゆかり    名古屋大学大学院 環境学研究科 教授
  •  田村 暢宏     東芝ライテック株式会社 環境推進部長

事業者

  •  日本圧力計温度計工業会
  •  日本硝子計量器工業協同組合
  •  日本医療機器産業連合会
  •  日本電気計測器工業会

環境省

  •  環境保健部 環境安全課

経済産業省

  •  製造産業局 化学物質管理課

事務局

  •  (株式会社エックス都市研究所)

議題

  1. (1) 検討の進め方及びスケジュール
  2. (2) 水銀添加製品の製造者及び取扱事業者に対するヒアリング
    1. 1.製品製造等禁止の適用除外の範囲
    2. 2.製品製造等禁止の水銀含有基準及び開始時期
    3. 3.既存用途製品の洗い出し
    4. 4.水銀等保管の状況
  3. (3) その他(今後の予定等)

議事録

検討会の開会にあたり、環境省環境保健部森下環境安全課長、経済産業省製造産業局山内化学物質管理課長より挨拶があった。

森下課長:2014年11月に、合同会合でとりまとめた報告書[文末脚注1]は意義深いものとなった。水銀に関する水俣条約を担保するための新法案提出に向けた作業を経済産業省と共に進めている。本検討会では、報告書で今後の課題として示している点を中心に議論していただきたい。

山内課長:政省令で決定しなければならない作業を速やかに進めていく必要がある。水銀対策の技術的可能性について客観的に御議論いただきたい。

事務局:本検討会は年度内に2回開催し、次年度も引き続き開催する予定である。

議事に先立ち、早稲田大学大学院大塚教授、大阪大学大学院東海教授が共同座長に選出され、第1回の進行は大塚座長に行っていただくこととなった。

(1) 検討の進め方及びスケジュール

(環境省より資料1-1~1-3の説明)

蒲生委員:資料1-2の今後のスケジュールに関して、検討会の開催回数が多すぎるのではないか。可能なら議論すべき内容を集約し、開催回数を減らすことを検討していただきたい。

環境省:2015年夏までに計4回という回数が多すぎるということか。

蒲生委員:2016年春までの期間も含め、負担が大きいと考えている。

大塚座長:私自身は、本検討会よりも開催頻度の高い委員会をいくつか経験しており、事務局より提示された回数は妥当ではないかと感じるが、回数に関して、再度検討いただきたい。

崎田委員:資料1-3では条約の構成と担保措置の全体像が示されている。本検討会の主な議題は新法による条約国内担保における措置の具体的な内容だが、水銀大気排出、水銀廃棄物に関する検討は、同時並行で政府として行っていくのか。検討の場が異なるとしても、公衆に対する情報発信時には、条約担保に関連する検討事項を同時に発信していただきたい。

環境省:少なくとも大気汚染防止法の改正作業は、新法と同時並行で進められる予定である。水銀廃棄物に関しても、廃棄物処理法政省令改正による措置について検討する必要があるが、この検討は夏までに実施することになる。

高村委員:水銀の貿易関係を外為法等によって担保するのは妥当だが、措置を実施するタイミングと内容について、現段階で想定があれば示していただきたい。外為法で条約担保する場合、附属書の内容をそのまま引用する方法と、製品別の規制を列挙する方法が考えられる。水銀添加製品の製造・輸出入の禁止について、水銀含有量基準の深掘り、廃止期限の前倒しを行う場合には、製品ごとに規制内容を列挙する方法が良いかもしれない。

経済産業省:外為法における措置の内容は、水銀添加製品の製造に関する新法による措置と同じものとする予定であり、水銀含有量基準や廃止期限についても、新法と同様とする予定。

(2)水銀添加製品の製造者及び取扱事業者に対するヒアリング

1.製品製造等禁止の適用除外の範囲

(事務局より参考資料4の説明)

日本圧力計温度計工業会:資料2-2-1にお示しするとおり、高温用ダイヤフラムシール圧力計については、中低温域(0℃~229℃)では代替可能、高温域(230℃以上)では代替不可である。シリコンオイルの沸点は250℃で、250℃を超えて使用すると急激な蒸発によりダイヤフラムが損傷する恐れがあるため、10%程度低い温度を使用限界温度として設定している。電気式の水銀を封入した高温用ダイヤフラムシール圧力トランスミッタが存在するが、高温用ダイヤフラムシール圧力計と比較すると2.5倍の価格であり、かつ使用者側の付帯設備費用も発生してくる。現場指示だけが必要な場合、わざわざ高価なトランスミッタは必要ないわけで、要は制御を伴うものなのか、そうでないものかが選定基準となると考えられる。また、高温用ダイヤフラムシール圧力計は緊急停電時でも圧力を表示するため、リスクマネジメントとして使用されることも想定される。

日本硝子計量器工業協同組合:資料2-2-2にお示しするとおり、ガラス製水銀温度計については、温度測定に要求される精度が低い場合は代替可能で(測定温度範囲-50~300℃で精度±1℃以下、301~500℃で精度±3℃以下)、要求精度が高い場合には代替不可である(測定温度範囲-50℃~300℃で精度±0.5℃以上、301~500℃で精度±2℃以上)。デジタル式温度計への代替については、事業者の費用負担のほか、信頼性の低さ、計測結果の継続性の担保の困難さが問題視されている。具体的には、デジタル式温度計は、温度表示が何らかの原因で変化しても、測温部と表示部が異なるため、正しい計測値か判断できないといった問題がある。一方、ガラス製水銀温度計は温度計全体を見ることができ、正確な計測値を知ることができる[文末脚注2]

日本医療機器産業連合会:資料2-2-3にお示しするとおり、水銀血圧計及び水銀体温計については、適用除外となる用途は想定されていない。日本医療機器産業連合会としては、2020年で水銀を含む医療機器の製造を中止することを目指し、水銀フリー製品の製造に注力する。なお、製品の下請け業者には零細企業が多く、今後の事業展開を考慮し製造廃止までの猶予期間を十分に設ける必要があるため、廃止期限の前倒しは難しい。

日本電気計測器工業会:資料2-2-4にお示しするとおり、当工業会の会員企業がスイッチ及び継電器を製造しているわけではなく、スイッチ及び継電器を組み込んだ製品を製造する企業が数社確認されているのみである、ということにご留意いただきたい。計測制御機器のメンテナンス期間は10~20年と長期にわたることが多く、プラント用の監視制御設備、試験装置のメンテナンス用途がしばらく続く見込みである。メンテナンス作業用の機材として水銀を含む組込み製品を使用する場合があるため、その点にも配慮していただきたい。これらの点に十分にご配慮いただければ、製造・輸出入の廃止期限の前倒しは問題ないと考えている。また、条約の規定内容をまだ十分に理解していない顧客もあることから、今後のメンテナンス体制の打合せを行うために十分な猶予期間を設けていただきたい。また、メンテナンスには単純な修理だけではなく、定期的な校正点検も含まれる。点検する装置を海外から日本に送る必要がある場合に、水銀添加製品の輸出入が発生するが、こうした輸出入についても除外対象としていただきたい。

大塚座長:資料2-2-4に「海外出張サービス用の一時持ち出し等の輸出入も除外対象とされたい。」とあるが、これは一時持ち出しに限るということでよいか。

日本電気計測器工業会:装置の点検校正をするためのメンテナンス用機材を会員企業が保有している場合があり、そうしたメンテナンス用機材の中に水銀が含まれているものがある。こうした機材を一時的に海外に持ち出し、メンテナンス終了後に日本に持ち帰る場合があるということである。

大塚座長:資料に示されているのは、今言及のあったメンテナンス用機材に限らない話ということでよいか。

日本電気計測器工業会:おっしゃるとおりで、メンテナンス用機材に限らず、水銀添加製品を部品として組み込んだ装置を海外に輸出している場合に、業界ごとに頻度は異なるものの、定期的に点検校正の必要が生じるため、それに伴って製品の輸出入や部品の海外持ち出しが発生することがある。持ち出された部品は、点検校正終了後に日本に持ち帰ることもあれば、海外で修理に使ってしまうこともある。

田村委員:スイッチ・リレーが組み込まれた装置の部品を交換する場合、形状が同じでなければ交換することができない。国内メーカーでは、こうした交換修理用の部品をある程度在庫している可能性が高い。既に製造された製品を在庫しておくこと自体は問題ないが、海外で部品の修理・交換が必要になった場合、水銀添加製品の輸出入が生じることとなる。RoHS指令でもメンテナンス用途は適用除外となっているため、水俣条約担保にあたっても、メンテナンス用途については十分に配慮する必要がある。また、さきほど日本電気計測器工業会より要望のあったメンテナンス用機材に関しても、海外に持ち出せなくなることがないよう、十分に考慮するべきだと考える。

崎田委員:日本医療機器産業連合会では、水銀血圧計や水銀体温計に関する対応をすでに進めているとのことで、安心した。一方で、製造を行う下請け業者には零細企業が多く、製造中止までの猶予期間が十分に必要とのことだが、2020年までには、こうした零細企業でも準備が整えられるということでよいか。他法案の検討に参加した経験から申し上げると、全ての事業者に対して措置を徹底するというのは非常に大変なことだと感じている。

日本医療機器産業連合会:会員企業に限った話だが、2020年までに水銀を含む医療機器の製造を中止するための準備を進めている。非会員の製造業者及び輸入販売事業者には当会の影響力が及ばないため、その点は課題といえる。

崎田委員:日本医療機器産業連合会の業界カバー率は何割程度か。

日本医療機器産業連合会:当会では、業界全体の約30%の製造・取扱いをカバーしている。

崎田委員:非会員企業に対して、どのように水銀フリー代替化に向けた対応を徹底していくのか。

日本医療機器産業連合会:非会員企業は当会の管轄外であり、当会からの働きかけは難しい。業界全体としての取組に関しては、所管の省庁とも改めて相談させていただきたい。

大塚座長:今の御指摘に対して、環境省や経済産業省から何か補足はあるか。

経済産業省:条約を批准するためには、少なくとも2020年という廃止期限を遵守する必要がある。そのために、法律による規制だけでなく、業界の協力を仰ぎながら、関係する事業者に対し、条約担保の趣旨を徹底していくことが我々の役割だと認識している。

高村委員:全体に関連することで、とくにスイッチ及び継電器・リレーに関連することだが、校正用途については条約附属書A(b)で2020年以降も適用除外となっていると理解しているが、念のため事務局に確認したい。これが一点目。また、メンテナンス用部品に関して、附属書A(c)の適用除外は「水銀を含まない実現可能な代替製品によって交換することができない場合」という条件となっているため、実現可能な代替製品が無いということを確認する作業が必要になるのではないか。資料中で言及されているメンテナンス用の部品にどういう種類のものがあって、それらに本当に実現可能な代替製品が無いのかどうか、確認する必要がある。

経済産業省:一点目について。おっしゃるとおり、附属書Aの冒頭部分で、校正や参照の標準として使用される製品は計測機器も含め適用除外となっている。

大塚座長:附属書Aの適用除外は、廃止期限の2020年以降も継続される。また、附属書A(c)の「実現可能な代替製品によって交換することができない場合」という条件を踏まえると、メンテナンス用の部品であったとしても、無条件に使用し続けることはできないのではないかと考えられるが、いかがか。

経済産業省:御指摘の点は課題として認識している。今後厳密に検討し、対処方針を決定したい。

高岡委員:附属書A(b)の「研究、計測器の校正及び参照の標準としての使用」について、圧力計などはこれに該当すると考えられるが、スイッチ及び継電器は本当にここに該当するのか。条文の解釈を確認しておいたほうがよい。

経済産業省:基本的には条約の解釈の問題。原文では「products」とあるが、この言葉が指す範囲も関係する。また、参考資料4の1ページの2.2で、INC5の議事録では「当該条項及び附属書は、骨董品を含む使用中又は使用済の製品を対象としていない」とある。同様に、2.2にあるとおり、計測器のメンテナンスについては、附属書A(INC5時の附属書C)の除外規定(c)における「交換」には、維持管理及び改修を含むとされている。これらの点を総合的に勘案して、スイッチ及び継電器の校正用途での使用が適用除外の対象となるのかどうか、検討の必要がある。

高村委員:水銀添加製品を海外に一時的に持ち出すという点について具体的なイメージが掴めないため、御説明いただきたい。なお、計測機器の校正・点検用途は、附属書A(b)で適用除外となっていると理解している。

日本電気計測器工業会:解釈の仕方によっては、附属書A(b)は計測器だからといって除外されるわけではないとも読める。水銀の物理的な特性を基準にして何らかの測定・校正をする場合、或いは分析機器等で水銀を標準試料として添加する場合は、適用除外となるのではないかと考える。20年以上前に製造されたスイッチ及び継電器が組み込まれた製品が存在するため、それらをメンテナンスする必要がある。水銀リレーが組み込まれた製品であっても、水銀リレー以外の箇所が壊れる可能性があるが、その場合に輸出入が規制されていると、メンテナンスすればまだ使える製品がゴミになってしまうこととなり、それは顧客にとっても我々にとっても本意ではない。そうした観点からも、メンテナンス用途については代替不可として、輸出入も除外対象としてほしいと申し上げている。

大塚座長:水銀リレーに関して、とくに問題となるのは附属書A(c)の解釈である。資料2-2-1で「水銀充満式温度計で対応している高温域(500℃以上)での温度測定に使用する製品は少なく、すぐに切り替えることが難しい」とあるが、具体的な説明をお願いしたい。どの程度難しいのか、また何か方法はないのか。また資料2-2-1で平成25年度の水銀廃棄量は316kgとある。水銀使用量に対して、水銀廃棄量が多いのではないか。

日本圧力計温度計工業会:ガス封入式温度計は主に中低温域(500℃以下)の測定に使用されていて、目盛表示が均等にならない、感温部の形状が大きくなる等、水銀充満式温度計と比較すると条件が悪くなる。客先の了解をとりつつ切り替えする必要があるため、すぐに切り替えることが難しい。

田村委員:参考資料4の2.2の考え方は今後も重要になってくる。例えば、UNEPより話があったが、ボーイング社では飛行機のディスプレイに水銀を含むバックライトを使用しており、バックライトの交換時には、同じ形状の部品が必要となる。メンテナンス用の部品が米国から輸入できなくなる場合、飛行機を廃棄しなければならないことになるが、これはおかしい。米国に飛行機を持ち込んで、そこで部品を交換すれば問題ないのか、といった冗談めいた話もあった。技術的に代替可能かどうかということだけでなく、実情を踏まえた対応が必要である。また中古品について、例えば中古車のカーナビにバックライトが組み込まれており、それを輸出する場合にカーナビを除いて輸出する必要があるのかどうか。カーナビなら取り外しは難しくないが、スピードメータに水銀添加製品が組み込まれている場合、取り外して輸出するのは困難である。そうした点もご配慮いただきたい。

2.製品製造等禁止の水銀含有基準及び開始時期

(事務局より参考資料5の説明)

日本圧力計温度計工業会:さきほど大塚座長より指摘のあった平成25年度の水銀廃棄量については、一定量水銀が溜まってから廃棄している。定期的に廃棄しているわけではない。

日本硝子計量器工業協同組合:精度の低いガラス製水銀温度計は、赤液式温度計又はデジタル式温度計に代替がなされる見込み。なお、ガラス製水銀温度計の製造事業者は中小企業・零細企業のみであり、廃止期限の前倒しはそれらの企業の経営上、難しいと考える。

日本医療機器産業連合会:参考資料5の10ページで、水銀血圧計に関する今後の見通しの部分で「市中保有品は2020年までに修理対応する予定」と記載されているが、水銀血圧計を2020年以降も使用したいと考えている医療従事者もいるため、そうした需要があるうちは修理サービスを実施してほしいとの要望もある。その点、ご配慮いただきたい。

日本電気計測器工業会:メンテナンスについては、顧客と相談の上で実施していく必要がある。新法が決まった後に顧客と相談する時間が確保できるのであれば、廃止期限の前倒しについてはとくに問題はない。

経済産業省:日本電気計測器工業会は水銀スイッチ・リレーのユーザーとしての立場としてご説明されていると思うが、参考資料5の7ページにもあるとおり、以前に水銀スイッチ・リレーの国内メーカーに話を伺った際、2020年に向けて水銀フリー製品に代替移行していくとの話があったため、補足させていただく。

崎田委員:水銀添加製品の製造を行っている企業には中小企業が多く、水銀対策の徹底が難しいという意見が多いように見受けられた。各企業が水銀対策を徹底できるような社会状況を整えていく必要がある。

大塚座長:水銀フリー代替化を進めていくにあたって、政府からの支援に関する要望があれば、この場で御意見を伺いたい。

日本圧力計温度計工業会:水銀に代わる液体金属は存在せず、一民間企業が水銀に代わる物質を開発するのは費用、人材の面から不可能に近く、その点をご検討いただきたい。

高岡委員:参考資料5の7ページにおいて、国内メーカー1社が製造しているスイッチ及び継電器の水銀含有量が示されているが、これらは附属書Aで規定されている水銀含有量基準(最大20mg)を超えている。この会社も、基本的には水銀フリー代替化を進めるのか、また保守用にはこうした製品を継続して製造するつもりはあるのか。

事務局:ヒアリングでは参考資料5の7ページの表の右列に記載があるとおりで、2020年までに水銀フリー製品へ代替移行すると伺っている。

田村委員:参考資料5の7ページのスイッチ及び継電器について「組込製品の保守用途で、水銀添加製品は今後も一定の需要が見込まれる」とあるが、今後もこうしたスイッチ及び継電器を製造し続けるという意味ではないのか。

事務局:右列1ポツ目については、過電流保護スイッチ及び傾斜感知用スイッチを製造している個社のヒアリング結果を掲載しているが、2ポツ目は日本電気計測器協会の業界としての意見を掲載している。

大塚座長:ここで掲載されているスイッチ及び継電器については、少なくとも2020年までに製造を廃止していただく必要がある。

3.既存用途製品の洗い出し

(事務局より参考資料6の説明。)

日本圧力計温度計工業会:表1のリストに掲載されているとおりで、リスト掲載分以外の新用途は想定していない。

日本硝子計量器工業協同組合:リストに掲載されているとおりで、リスト掲載分以外の新用途は想定していない。

日本医療機器産業連合会:医療機器は、詳細な分類を行っておらず、大枠ではリストに記載されているとおりである。X線診断装置など医療機器の詳細は今後調査する。

日本電気計測器工業会:会員企業に照会した限りでは、概ねリストに掲載されているとおりである。業界団体に加盟していない企業、他業界団体の会員企業が製造している製品については把握していない。可能な限り早い段階でパブリックコメントを実施し、そうした企業の意見も取り入れることが必要である。

環境省:表1の既存用途製品リストは、現時点ではたたき台というステータスとしている。既存用途製品の洗い出しは、条約第4条6で規定される未知の用途の製品流通を抑制するために必要な作業である。未知の用途が何か規定するためには、既存用途の洗い出しを網羅的に実施する必要がある。現状のリストはまさにたたき台であり、製品によって分類のレベルが異なっていることが課題。例えばスイッチ及び継電器の項目は分類が細かすぎるかもしれないと考えている。こうした課題も含め、今後改めてリストを関係事業者等にご確認いただき、更新していく予定である。

崎田委員:表1について、国内では製造していないが輸入されている製品と、国内で製造が続いている製品とでは性格が大きく異なるため、書き分けたほうがよいのではないか。また、例えば参考資料6の8ページ「その他水銀化合物」では、塩化第二水銀を含む製剤の用途として塩化ビニル製造(触媒)が掲載されているが、国内ではこうした触媒利用は廃止されていると業界より伺っている。現行のリストでは、国内でいまだに水銀を用いる塩化ビニル製造が行われているという誤解を招く恐れがある。現在廃止されている用途について、それが分かるように色分けするといった書き分けをしていただいたほうがよい。

環境省:条約では、条約の発効時点で確認されていない水銀添加製品の製造及び商業上の流通を抑制すると規定されており、この規定内容を踏まえると、国内で実態がない用途であっても、リストに掲載しておくべきという解釈となる。日本国内で既に実態がないものはここから除いておくべきという政策判断はありうるが、今回お示ししているリストは、条約規定に準拠した事務局案である。

田村委員:既存用途製品のリスト化は重要である。製品を細かく分類しすぎると、リストに漏れが出てくる可能性がある。省令が定まった後でも、既存用途で漏れが見つかった場合は、リストに追加することができるようにしておくべき。例えば、表2で水銀の用途として灯台のレンズ浮揚用、また使用製品としてポーラログラフが掲載されているが、表1にはこれらの用途・製品は掲載されていない。また今回初見の製品で水銀イオン周波数標準器のようなものもあるため、今の段階で全ての製品・用途を網羅し、今後は追加を認めないという対応は難しい。過去に製造したという証拠が示された場合、リストへの追加を認めるといった措置が望ましい。

大塚座長:新法を作成する際に、対応方法を決めておく必要がある。

環境省:省令の制定後に既存用途の漏れが見つかった場合でも、必要なものについてはリストに追加できるようにする。

高岡委員:省令制定時には、表1と表2の両方を使用するということでよいか。品目、試薬別に掲載されているが、現時点では可能な限り既存用途を列挙しているということでよいか。

環境省:表2は水銀又は水銀化合物そのものをリスト化している。一方、表1は水銀等を含んでいる製品をリスト化している。

高岡委員:省令制定時点では、どのような形になるのか。

環境省:現時点では、何らかの整理をしなければ分かりづらいため、2つの表に分けている。省令では表1、表2の両方が使用されることを想定。

田村委員:表2に掲載されているX線分析装置は、水銀が使われているというよりも、分析の標準液として使用するだけなのではないか。細孔分布測定装置、ポーラログラフには確かに水銀が使用されている。リスト中で、標準液として水銀を使用する場合と、製品に水銀が使用されている場合とが混在しているのではないか。例えば、水銀測定装置、原子吸光光度計にジメチル水銀が使用されているとは考えにくい。確認していただきたい。

高岡委員:過去に米国が作成した既存用途リストがあったと記憶しているが、それを作成した際の関係者等に、今回作成したリストを確認してもらうような作業は行っているのか。そうした関係者から、追加できる情報が聞き出せるのではないか。

事務局:御指摘のあった米国の既存用途リストは既に参照しているが、関係者への確認はまだ行っていない。

4.水銀等保管の状況

(事務局より参考資料7について説明。)

環境省:参考資料7、5ページの表2と表3では義務対象者が大きく異なる。表2は毒劇法の保管に関する技術上の基準で、毒物劇物営業者及び特定毒物研究者のみが義務対象者だが、表3は毒適法の運搬に関する技術上の基準で、対象者は特定されていない。

日本圧力計温度計工業会:資料2-2-1に示された内容のとおりである。

日本硝子計量器工業協同組合:水銀等保管の状況は平成24年12月20日時点で、組合員16社で99%以上の濃度の水銀を合計244.4kg保有している。保管に際しては、毒劇法を遵守しており、排気設備及び消火器の設置等を実施している。

日本医療機器産業連合会:資料2-2-3にお示ししたとおりである。

日本電気計測器工業会:資料2-2-4にお示ししたとおりである。

環境省:資料2-2-3で、水銀等保管の状況として在庫量100~200kgとあるが、これは水銀血圧計に入っている状態の水銀を指しているのか、それとも血圧計2100~4200台「分」ということか。製品に入っている状態は、金属水銀の保管とは見なされない。

日本医療機器産業連合会:製品2100台~4200台「分」で、金属水銀としての保管量である。

田村委員:化学種が無機水銀となっているが、金属水銀でよいか。

医療機器:おっしゃるとおりである。

崎田委員:ここでは、廃棄物としての金属水銀ではなく、適切な管理がなされている金属水銀について検討しているが、金属水銀の保有者が廃棄を望む場合、それは廃棄物となるのか。

環境省:今回は、水銀含有再生資源ではなく、高純度の金属水銀について検討している。水銀含有再生資源については、今回のヒアリング対象事業者とはあまり関係がなく、次回以降の検討である。御指摘のとおり、金属水銀の保有者が廃棄物と見なせば、その金属水銀は廃棄物となる。現在、金属水銀には価値があり、廃棄物として取り扱われないが、将来的に需要が減って廃棄物となった場合は、廃棄物処理法の枠組みで取り扱われることとなる。

崎田委員:水銀廃棄物の処理に関する環境省の検討では、主に最終処分に関して検討を行っていくという理解でよいか。

環境省:金属水銀が廃棄物となった場合の取扱いについては、中央環境審議会循環型社会部会のもとで検討がなされる。水銀含有再生資源については、本検討会で取り扱う。

蒲生委員:参考資料7で、金属水銀と水銀化合物の両方が含まれている箇所と、金属水銀のみが言及されている箇所がある。例えば13ページ、4.1の2段落目で、保管・取扱の届出義務を裾切り30kgとした場合の補足率が示されているが、これは金属水銀のみのデータを用いて、水銀化合物は含まれていない。水銀化合物も含めた場合の捕捉率はどうなるのか。また保管者という場合、事業者単位なのか、研究室単位なのか、どのようなイメージをお持ちか。

事務局:水銀化合物については、参考資料7、3ページの表1で、蛍光ランプの製造における年間水銀調達量について、業界団体より提供された数値を掲載している。このほか、試薬として水銀化合物を保管している者も把握されているが、具体的な保管量は把握されておらず、今回は金属水銀に限って補足率をお示ししている。

事務局:保管者というときに、事業者単位なのかどうかという御指摘に関しては、毒劇法の基準において毒物劇物営業者等がどのように規定されているのか整理させていただく。

東海座長:日本電気計測器工業会では、スイッチ及び継電器自体を製造している企業は存在せず、金属水銀を保管している者は存在しないということだったが、故障した製品を工場内に暫定的に保管しているということはないという理解でよいか。

日本電気計測器工業会:スイッチやリレーの形で保管している。製品の製造はしておらず、金属水銀や水銀化合物という形で保有している者は存在しない。

(3)その他(今後の予定等)

(経済産業省より資料3の説明。)

田村委員:資料3では「試験方法について公的な試験方法が確立されていない場合」には、適宜試験方法を決めるとあるが、含有の有無を確認する場合に、分析感度によって検出されたりされなかったりということがあると思う。最近は高感度の分析機器も開発されているようだが、そうした機器の選定等についてはどのように検討しているのか。また、条約ではランプ等について水銀含有量基準が定められているが、分析で発生する誤差に関しては、どのように扱っているのか。

経済産業省:試験方法については、公的に決まっていないものが多く、分析に関する論文や広く知られた知見に基づき、適切な試験方法を設定している。また、本調査は含有濃度の特定というよりも、第一種特定化学物質を含む製品の流通実態把握が目的であり、濃度の誤差に関する追求はしていない。

大塚座長:化審法下で行われている本調査事例が、水銀に関する検討において何らかの参考になるという趣旨でご紹介いただいた。そうした点も含め、質問等あればお願いしたい。

崎田委員:水銀に関して、含有表示がない場合でも水銀が含まれていることがあり、また含まれている場合にどの程度含まれているかという問題もある。水銀について同様の調査を実施するにあたっては、どういった目的で行うのかを明確にする必要がある。

環境省:現状では「水銀含有」という表示は殆どなく、「水銀フリー」という表示しかない。また水銀フリーと表示されていても、水銀が含有されている可能性についても、視野に入れている。表示と含有状況の確認を行いたい。

大塚座長:とくに組込み製品については難しい面もあると思うが、今後検討していただきたい。

高村委員:議題(2)1に係る内容だが、本日事業者より伺った内容を踏まえると、ほとんどの製品に関して、条約担保上問題はないのではないか、という個人的な印象を持っている。他方で、各事業者の判断がつきにくいもの、適用除外に該当するか否かという点について、条約に照らし合わせて明確化することが重要である。本日議論された計測機器の校正用途についても、適用除外であるということがはっきりすれば、事業者側の対応も明確になる。また、計測機器の適用除外については「実現可能な代替製品(feasible alternative)によって交換することができない場合」という条件と「適当な代替製品(suitable alternative)が利用可能でない場合」という条件があるため、適用除外に該当するのかどうか、個別に洗い出しの作業が必要である。また、田村委員より指摘のあったボーイング社のディスプレイに組み込まれるバックライトのような課題もある。こうした判断に関しては、米国やEUのような先進国でどのように取り扱われているかが参照基準になると考えられる。世界市場の中での取り扱いを確認しておけば、条約不遵守の問題は防止することができる。先進国における適用除外の取扱いに関する情報を整理していただきたい。

事務局:本日ヒアリングを実施した4団体に対して追加の質問等がある場合は、1週間後の3月2日(月)までに事務局までお知らせいただきたい。第2回検討会は本日と同じ会場で3月27日(金)13時-16時に開催する。

以上


[注1] 「中央環境審議会環境保健部会水銀に関する水俣条約対応検討小委員会」及び「産業構造審議会製造産業分科会化学物質政策小委員会制度構築ワーキンググループ」の合同会合で取りまとめられた報告書。平成26年12月22日付で「水銀に関する水俣条約を踏まえた今後の水銀対策について(循環型社会部会及び大気・騒音振動部会の所掌にかかるものを除く)」として環境大臣に答申された。


[注2] 日本硝子計量器工業協同組合による補足説明(3月9日受領):デジタル式温度計の構造は、測温部と表示部からなります。測温部(温度センサー部)はサーミスタや測温抵抗体で出来ており、その測温部での温度変化を電気抵抗に変え、表示部で温度表示にしています。一般的に、測温部は金属の筒などで保護されており、導線(リード線)を通じて温度表示部へ繋がります。また表示部では、電気回路等を使用し、温度表示へ変換しています。従ってデジタル式温度計はガラス製温度計のように全体を確認できる構造ではないことになります。この測温部に何か変化があったり或いは表示部に変化があったりしても、確認することはできません。一方、ガラス製温度計は水銀のある球部から温度を示す先端までを確認できます。このようにガラス製温度計では目視で全体を確認でき、デジタル式温度計は温度表示だけを見ることになります。