放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料
(平成30年度版、 HTML形式)

第2章 放射線による被ばく
2.2 原子力災害

チェルノブイリ原子力発電所事故と東京電力福島第一原子力発電所事故の放射性核種の推定放出量の比較

チェルノブイリ原子力発電所事故と東京電力福島第一原子力発電所事故の放射性核種の推定放出量の比較
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この表は、チェルノブイリ原子力発電所事故及び東京電力福島第一原子力発電所事故により、環境中に放出された放射性物質のうち、代表的なものを比較して示したものです。
これらのうち、セシウム134とセシウム137は人の健康影響上考慮すべき放射性核種の代表とされています。表にはそれぞれの核種の融点と沸点が示されています。
セシウムは沸点が678℃のため、核燃料が溶融(融点は2,850℃)した状態では気体になります。気体状のセシウムが大気中に放出されると温度が下がり沸点以下になったところで液体状、さらに温度が融点の28℃以下になると粒子状になります。このため、大気中でセシウムの多くは微少な粒子状になり、風に乗って遠くまで拡散することになります。これが、放射性セシウムが遠方まで拡散した大まかなメカニズムです。
チェルノブイリ原子力発電所と東京電力福島第一原子力発電所の放出量を単純に比較、評価することはできませんが、チェルノブイリの場合の放出量が多いのは、爆発した炉心が直接大気にさらされる状態になったことも影響していると思われます。一方、東京電力福島第一原子力発電所では格納容器の大規模な破壊を防げたことが温度の低下、わずかな漏れ量から放出の抑制につながったと考えられます。
しかし、一部キセノン133など大気に放出されやすい希ガスは、東京電力福島第一原子力発電所でも高い割合(東京電力福島第一原子力発電所:約60%、チェルノブイリ原子力発電所:最大100%)で原子炉から放出されたと評価されています。そのため、発電所の出力規模(東京電力福島第一原子力発電所:合計約200万kW、チェルノブイリ原子力発電所:100万kW)が大きく事故当時炉心に溜まっていた希ガスの量が多かった東京電力福島第一原子力発電所では希ガスの放出量が多くなったと考えられます。

本資料への収録日:平成29年3月31日

改訂日:平成31年3月31日

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