保健・化学物質対策

東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議の中間取りまとめを踏まえた環境省における当面の施策の方向性

1 はじめに

 平成25年11月に「東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議」(以下「専門家会議」という。)が設置され、計14回の議論が行われ、平成26年12月22日に議論の中間的な取りまとめが公表されました。

 環境省においては、この中間取りまとめを踏まえた「当面の施策の方向性(案)」を作成し、平成26年12月22日から平成27年1月21日までパブリックコメント(任意の意見募集)を行ったところです。

今後、パブリックコメントで頂いた意見を参考にしつつ、当面の施策の方向性を踏まえた、必要な施策の取組を進めていきます。

2 当面の施策の方向性

(1)事故初期における被ばく線量の把握・評価の推進

 中間取りまとめにおいては、「専門家会議では、これまでに明らかになった実測値を重視しつつ、国内外の専門家による推計値と合わせて評価を行った。これらのデータには、いずれも不確かさや限界が存在することを踏まえれば、今後も、線量推計の基礎となる様々な測定データの収集と信頼性の評価を継続することが重要である。また、事故初期の被ばく線量については、現在も複数の研究機関により今般の原発事故による被ばく線量の評価についての研究が行われていることから、今後さらに調査研究を推進し、特に高い被ばくを受けた可能性のある集団の把握に努めることが望ましい。」とされています。

 このため、調査研究事業を通じて、事故初期における被ばく線量の把握・評価の推進に努めます。

(2)福島県及び福島近隣県における疾病罹患動向の把握

 中間取りまとめにおいては、専門家会議は「国際機関の評価と同様、今般の原発事故による放射線被ばく線量に鑑みて、福島県及び福島近隣県においてがんの罹患率に統計的有意差をもって変化が検出できる可能性は低いと考える。また、放射線被ばくにより遺伝性影響の増加が識別されるとは予想されないと判断する。さらに、今般の事故による住民の被ばく線量に鑑みると、不妊、胎児への影響のほか、心血管疾患、白内障を含む確定的影響(組織反応)が今後増加することも予想されない。こうした評価は、WHO報告書やUNSCEAR2013年報告書での評価と同様である。」とされています。

 全国がん登録等を活用することで様々ながんの動向を地域毎に把握することが可能となりますが、こうした分析には専門的な知見を要します。このため、調査研究事業により新たに研究組織を構築して標準化された方法を用いて各種がんの罹患動向を把握し、その成果を定期的に自治体や住民に情報提供します。

 また、がん以外の疾患についても、既存のデータベース等を活用することで同様に対応していきます。

 なお、疾病罹患動向把握を進めるに当たっては、今後、環境省が行っている調査事業において、対象疾患や地域等を含めた具体的な手法を専門家の知見も踏まえて検討します。

(3)福島県の県民健康調査「甲状腺検査」の充実

 中間取りまとめにおいて、専門家会議は、「今般の原発事故における放射線被ばくによる発がんリスクは低いと予測される。しかし、チェルノブイリ事故後に小児の甲状腺がんの増加が報告された前例があることから、甲状腺がんが増加するかどうかについては特段の注意を払う必要がある。」「UNSCEAR2013報告書においても、被ばく線量の推計において不確かさがあることを考慮し、推計された被ばく線量の幅のうち最も高い被ばく線量を受けた小児の集団において甲状腺がんのリスクが増加する可能性が理論的にはあり得ること、また、今後、状況を綿密に追跡し、さらに評価を行っていく必要があることを指摘しており、 専門家会議は県民健康調査『甲状腺検査』が実施されてきたことは適切な対応であり、今後も継続していくべきものであると評価する。」としています。

 その上で、「専門家会議は、福島県民の将来の安心を確保するため、この県民健康調査『甲状腺検査』について、甲状腺がんの増加の有無に関する科学的知見を得られるようなものとして充実させるべきであると考える。特に、被ばくとの関連について適切に分析できるよう、WHO報告書でも言及されている 疫学的追跡調査として充実させることが望ましい。」と指摘しています。

 このため、県民健康調査「甲状腺検査」をさらに充実させ、対象者に過重な負担が生じることのないように配慮しつつ、県外転居者も含め長期にわたってフォローアップすることにより分析に必要な臨床データを確実に収集できる調査が可能となるよう、福島県を支援していきます。具体的には、県民健康調査の甲状腺検査の結果、引き続き治療が必要である場合の支援を行うこととし、詳細について福島県と検討を進めます。

(4)リスクコミュニケーション事業の継続・充実

 専門家会議は、放射性ヨウ素による被ばくについて、UNSCEAR2013年報告書で示されたデータを踏まえ「福島県内よりも福島近隣県の方が多かったということを積極的に示唆するデータは認められていない」としています。その上で専門家会議は、「福島近隣県の自治体による個別の相談や放射線に対するリスクコミュニケーションの取組について、一層支援するべきである。その際、各地域の状況や自治体としての方向性を尊重し、地域のニーズに合わせて柔軟な事業展開ができるように配慮することが望ましい」と指摘しています。

 このため、福島近隣県における既存のリスクコミュニケーション事業の内容を充実させるとともに、福島県及び福島近隣県の各地域の状況や自治体としての方向性を尊重し、地域のニーズに合ったリスクコミュニケーション事業の推進に取り組んでいきます。

 具体的には、現在行っている①正確な情報を発信するための統一的な基礎資料の作成、②リスクコミュニケーションに携わる人材の育成、③住民の方々の理解をサポートするためのセミナーや住民参加型の勉強会の開催、④帰還を選択する住民を支える相談員の支援拠点の整備 等の事業について、特に(a)自治体と連携した事業の実施、(b)専門家と少人数の住民が相互に意見交換を行う住民参加型プログラムの強化、(c)放射線や県民健康調査等に関するわかりやすい情報の発信 等の視点を踏まえた取組を進め、地域のニーズにあわせた柔軟かつきめ細やかな事業を福島県内外で実施できるよう努めます。

                                            以上

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