保健・化学物質対策

東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議 第7回議事録

日時

平成26年6月26日(木)

場所

STANDARD会議室 神谷町会議室 6階ホール

議事次第

  1. 開会
  2. 挨拶
    浮島環境大臣政務官
  3. 議事
    1. (1)被ばく線量に係る評価について(その5、まとめ[2])
    2. (2)被ばくと健康影響について(その3)
    3. (3)その他
  4. 閉会

午後4時58分 開会

  • 桐生参事官 本日は、お忙しい中お集まりいただきまして、ありがとうございます。
    定刻よりやや前でございますけれども、丹羽委員以外についてはお集まりいただきましたので、開始したいと思います。
    なお、丹羽委員については若干遅れるという連絡をいただいております。
    また、本日御欠席の委員で、明石委員、荒井委員、宍戸委員、本間先生からは、欠席との連絡をいただいております。
    議事開始に先立ちまして、傍聴者の皆様へ留意事項を申し上げます。
    円滑に議事を進行させるため、事務局の指示に従ってください。
    また、傍聴中は静粛を旨とし、発言・拍手などの賛否の表明や、これらに類することにより議事の進行を妨げる行為は御遠慮ください。
    また、御質問、御意見等のある方は、お配りした用紙にお書きいただき、事務局に提出してください。
    携帯電話、アラーム付きの時計等は、音が出ないようにしてください。
    その他、事前にお配りした内容について御注意いただきたいと思います。これらをお守りいただけない場合には退場していただくこともありますので、御理解よろしくお願いいたします。
    それでは、冒頭、浮島政務官より御挨拶を申し上げます。
  • 浮島環境大臣政務官 皆さん、こんばんは。御紹介いただきました、環境大臣政務官の浮島智子でございます。
    委員の先生方におかれましては、第7回目の本専門家会議に、本当にお忙しい中にもかかわりませずお集まりいただきましたこと、まず心から御礼させていただきたいと思います。本当にありがとうございます。
    また、本日は被ばく線量の評価につきまして、原発事故による住民の被ばく線量がどのくらいであったかについてお話し合いをしていただきたいと思っているところでもございます。
    さらに、今回からは、被ばく線量の評価結果を踏まえた健康リスクや健康管理に関する議論に入って参ります。
    WHOやUNSCEARでの評価、そして福島の県民健康調査なども踏まえまして、本会議の評価を行っていただきたいと思っているところでございますので、どうか本日も、長時間にわたりますけれども、いろんな御意見をいただきたいと思いますので、どうぞ最後までよろしくお願いいたします。
  • 桐生参事官 ありがとうございました。
    なお、浮島政務官は、公務多忙により、途中で退席させていただきますが、御了解いただきたいと思います。
    続きまして、資料の確認をさせていただきたいと思います。
    お手元の資料でございますけれども、議事次第がございます。
    議事次第に配付資料が書いてございまして、これをもとに確認いただきたいと思います。
    資料1-1、1-2、資料2-1、2-2、2-3、これがメインの資料でございます。
    また、委員の提出資料といたしまして、石川委員と祖父江委員からの提出資料がございます。
    さらに、参考資料といたしまして、参考資料1-1から参考資料4までございますけれども、それぞれ確認いただきまして、不足のもの等がありましたら事務局までお申し出ください。
    それでは、これより議事に入りますので、以降の進行については座長にお願いしたいと思います。お願いいたします。
  • 長瀧座長 それでは、第7回の会議を始めます。よろしく御協力をお願いいたします。
    最初の議題は、被ばく線量に係る評価について(その5、まとめ[2])。
    被ばく線量に関しましては、これが7回目でございます。十分議論してまいりましたけれども、まとめがある程度でき上がっておりまして、今日は前もって委員の皆様にもお送りして見ていただいたところでありますが、それも含めまして、最初に事務局から説明をいただきまして、その後、討論に入りたいと思います。
    どうぞよろしくお願いいたします。
  • 桐生参事官 それでは、資料1と資料1-2に基づきまして、御説明させていただきたいと思います。
    お手元資料の1-1と1-2。これは、前回御議論いただきました、被ばく線量把握・評価のまとめについて、前回の御議論と、その後の委員の先生方からいただいたコメント等を踏まえて加筆修正したものでございます。
    いただいた意見をなるべく反映するように書き加えたものでございますけれども、この中で2点ほど、特にポイントだけ御説明させていただきたいと思います。
    資料の1-1が書き直したバージョンで、資料1-2が新旧対照表になってございます。新旧対照表のほうをもとに御説明させていただきたいと思います。
    左側が前回、右側のカラムが今回の資料でございます。
    めくっていただきまして、2ページ目を御覧になっていただきたいのですけれども、1点目は、前回御議論のあったBest Dose Data等の表現でございますけれども、これについては、右側を見ていただくと、2ページ目の1番目のポツでございますけれども、Best Dose Data等の表現は削除させていただきまして、かわりに、最も重視すべきデータとして、実測の線量データを扱ったという書きぶりになってございます。
    また、その2ページ目の一番下のポツでございますけれども、そういった実測値が限られていて、環境モニタリングデータやモデルに基づく計算データによる被ばく推計を補助的に利用したというふうな書きぶりをさせていただいております。
    また、ちょっと飛びますけれども、7ページ目を御覧になっていただきたいと思います。
    7ページ目の一番下のポツですけれども、ここにデータが限られているということで、限られているデータ以外の対象者で、特に注意検討を要するようなグループということで、三つのグループにお分けして、以下のところでそれぞれのグループについての検討を加えていると、そういった流れに整理させていただいております。
    もう一点、事務局から説明させていただくのは、小児甲状腺のスクリーニング検査について議論いただきましたけれども、4ページ目を御覧になっていただきたいと思います。
    4ページ目の右側の上から2番目の丸でございますけれども、この測定結果の信頼性、精度、また妥当性や正確度の観点から、評価すべき要因としてバックグラウンド値、ヨウ素摂取シナリオ、スクリーニングレベル、甲状腺ファントム、そういった四つが会議で取り上げられましたので、それについて、そういう四つについて、以降ではまとめた整理をしております。
    なお、傍聴者のコメントや一般の方からの意見等がありまして、それに答える形で、やや解説的な書きぶりにさせていただいております。
    以上の2点を特に強調して御説明させていただきたいと思います。
    また、参考資料の1-2でございますけれども、岩波の雑誌「科学」の体表面汚染スクリーニングが示す初期甲状腺被ばく防護の不備という論文でございますが、これについては、恐縮でございますが鈴木委員にコメントをお願いしておりますので、ちょっとお願いしたいと思います。
    事務局からは以上でございます。
  • 長瀧座長 鈴木先生から、先に御意見を。
  • 鈴木委員 私も体表面汚染から内部被ばくの線量を考えていくという考え方は、非常に興味を持ってこの論文を読ませていただきました。
    体表面汚染が内部被ばくを反映するというのは、汚染空間に行って、ちょうど呼吸をしていると内部被ばくを起こすわけですが、同時に乾性沈着あるいは湿性沈着という形で、放射性物質が体に沈着してまいります。その沈着データを測ったものが体表面スクリーニングになるわけです。
    ただ、今回の測定に関しては、非常に不確実性が高いのが欠点であります。
    その一つは、体表面汚染のそれぞれの個人個人の何カ所かを取ったデータというのは極めて限られていまして、一番高いデータを掲げて、何例いたかというようなデータになってしまっているというのが一つです。
    一般には、手のひらとか、それから靴、そういう汚染した土とか建物とか、そういうものをさわったところが高くなります。そういうものだけをカウントしていきますと、いわゆるその個人の汚染レベルとしては外れ値を書いている形になります。
    そういうものをベースにして汚染の分布を見ていくということは、ちょっと全く違う意味になってしまうという意味で、非常に大きな問題がございます。
    これは、もう少し全身の計測データのあるようなものを見て、汚染の分布というものを見ていかないと、正確な評価はできないだろうと思っております。
    もう一つは、これはこの論文の中でも書いてありますが、沈着速度、放射性物質が体に沈着していくスピード、これはこのスクリーニングレベルを決めるときは、0.1cm/sec、1ミリ/秒のスピードで沈着するというふうに仮定を置いてやっております。これは乾性沈着で、文献で見ていきますと一番遅い沈着スピードになります。
    ただ、実際の福島原発事故のとき、15日、16日は雪が降ったり雨が降ったりして湿性沈着になっていますので、この沈着速度はずっと速くなっています。
    そういう意味で、それぞれの状況に応じて汚染というものを評価していかないと、0.1cm/秒で得られた値というのは、決して、吸っていた空気の汚染濃度を反映しないという、非常に大きな不確実性を持っております。
    この辺が、このstudy2007の大きな不確実性を持ったデータの扱いになっているかと思っておりますので、これは、この分布から汚染レベルがどのくらいである、あるいは内部被ばくのレベルがどういう形であるというような分布を想定するというのは、かなり科学的には無理があるのではないかと思っております。
    以上です。
  • 長瀧座長 どうもありがとうございました。
    今の鈴木先生のお話について、何か特に付け加えて話はございますか。
    これは質問に対するお答えということで、我々もそれに同意するということでよろしゅうございますね。
    さて、それでは......。どうぞ。
  • 春日委員 すみません。もう一度、御説明をお願いしたいんですけれども、鈴木先生に。
    靴底ですとか手のひらで測ったデータがこの論文に示されているというふうに、そういう御説明でしたでしょうか。
  • 鈴木委員 そういうものを含んだ値になっています。
    これから全部チェックしていかないといけないのですが、今まで測定した人たち何人かから聞きまして、あるいはその個票のようなものの中に、汚染が一番高かったところというのをメモ程度に書いてあるようなものもございます。そういう中に、足とか、あるいは手のひらとかというような記載のあるものがございます。
    これは、これから私たちでもうちょっと詳しく見ていくつもりでありますので、また時間をいただければ報告できるかと思います。
  • 春日委員 それは、この論文には書いてない情報ですね。
  • 鈴木委員 はい。この論文に書いてあるのは、県が集計したものを見ています。そうしますと、高い値を示しているものがあるわけですね。
    その高いというものが、体全体の汚染分布が高い中の、一番高い部分を見ているのか、それとも、個人の汚染レベルとしては、外れ値として、靴とかそういう非常に高いところの値を記載したのか、その辺がここでは非常に曖昧になっています。そういうものをベースにして、汚染の分布を評価するという、例えばここの論文の中に、分布図が出てきているかと思います。図5、6、7、この辺がそうですよね。そういうふうな分布を書くということはかなり無理があるのではないかというコメントです。
  • 春日委員 わかりました。この論文だけを見たときには、そこまでの情報は得られないと思ったので。
  • 鈴木委員 この論文の中で、著者たちも非常に重要なことは、単に1点じゃなくて、ちゃんとCPMで書いていったようなデータがあったら、それでもってある程度のディストリビューション、汚染の分布という形がわかるから、非常にそういうものが必要だということをちょっと書いていますね、後ろのほうで。
    ただ、彼ら自身は、この値が外れ値なのかどうかということは何ら書いていません。
  • 春日委員 そうしますと、例えばこの委員会でいろいろな文献やデータを参照するときには、そのデータがどうやって取られたかという方法的にもきちんと説明が十分そろった文献を参照したいという、それが一つの先生の御意向でしょうか。
  • 鈴木委員 そうです。もうちょっとしっかり見ないと、こういうデータで何かを語るというのは、かなり危険があると、科学的にも問題があると思っています。
  • 長瀧座長 よろしいでしょうか。できるだけ質問にも答えるということで取り上げたので、今までの主な議論からは直接加わるものではありません。
    さて、それで今から大体40分ですから、30分くらいは自由に、線量のまとめに関して議論を進める予定でありますけれども、まとめといいましても十何ページあるまとめなので、それと、急に時間がぱっとできましたので、この説明をどういうふうに議論していくか迷っているところでありますけれども、実際には、このまとめで言いますと、まず甲状腺の被ばく線量が出てきて、その次に外部被ばく線量、それから甲状腺以外の内部被ばく線量になって、県内と県外というふうに分けて記載してございます。
    ですから、この記載の順番に従いまして、最初の甲状腺は非常にページ数が多いのですけれども、まず県内の甲状腺の被ばく線量のまとめに関しまして、もう十分お読みいただいた上ではあると思いますけれども、もう一度ここで何か問題がございましたら、訂正すべき点、あるいは加える点につきましても、御意見がありましたら、ぜひ、いただきたいと思います。
    最初に、基本的な考え方というのを飛ばしてしまいましたが、基本的な考え方についても、御指摘、御意見等がございましたら最初にいただいても結構ですが。
    非常に量が多いのですけれども、甲状腺全体について、どこでも御意見がございましたら。
    特に、先ほど鈴木先生からお話のありました甲状腺の直接の測定について、いろいろと不確定な、あるいは不十分なところも、当然そういう状況で測定されたわけですから、そういう条件があることは当然周知の上で、しかも、それから何が言えるかということを御議論いただいたと思います。
    全体として、国際的な報告も、WHOの報告がございまして、UNSCEARの報告もありますけれども、だんだんと線量の評価の幅が現実に近くなりつつありますし、この間のUNSCEARの発表に比べまして、今回のこの審議会、この専門家会議の発表は、もっと幅が狭くて、できるだけベストという言葉はなくなりましたけれども、実測値に従って我々がどこまで解析できるだろうかということをまず議論してまいりました。
    甲状腺に関しましても、その直前のUNSCEARのまとめでも、モデルに従って割と実測値の場合で数倍の差が出るということは書いて、それは、その性格から当然なことなのですけれども、我々はできるだけ実測値に応じて、応じたデータをどこまで入れるかということを中心に議論した。それを補足する意味で、モデルをいろいろと今後も考えていこうというのが基本的な考え方のように思いますが、そういう線で、特に、もし順番から言いますと、それでいいかということの御意見、それから1,080人について、いろいろと御意見いただきました。それについて、さらに付け加える御意見がございましたら、どうぞ、よろしくお願いいたします。
    最後のところでもいいと思うのですが、特に甲状腺ところは長いものですから、UNSCEARとかWHO国際機関のまとめから言いましても、まとめはもうちょっと短い文章の、短いところがあったほうがいいんじゃないかと思いますので、この次に、今、1、2ページのまとめという結論、まとめというものを、線量に関して準備していただくことを一つ考えておりますけれども、そういう中で、もし入れるとすれば、今までの議論のまとめは、不確定なところはものすごくたくさんあるのだけども、その不確定なものを含めて考えて、何が科学的に言えるかということが、この委員会での結論として出せるものであればいいということを中心に議論してきたように思いますので、そこら辺についても何か御意見がございましたらどうぞ。
    長いですから、一言一句ここで各行についてお話ということはいたしませんが、特にこれはよろしいでしょうか。線量に関して。
    どうぞ。
  • 石川委員 大変長い線量把握の評価というふうなことで出ているわけですけれども、いろんな方面、方面の記載がなっていまして、これは本当に、簡単にまとめるのは難しいと思うのですよね。それと、私が何回か前に指摘しました13年度のUNSCEARの報告の中の、32番だったと思うのですけれども、個々の個体のいろんな行動範囲とかが決まらないし、どういうものを急性期に食べたのかとか、そういうことも定まらない中で、個別のあれでは、ここの報告においても、まだまだ飛びはねるというものはあるのではないかというふうなことを推測しながら、もう健康支援の問題に入ったほうがいいのではというふうに思いますけど、いかがでしょうか。これはこれでいいということにしまして、提案です。
  • 長瀧座長 どうもありがとうございました。
    恐らく今日ここで、この議論を、オープンの議論の最後にしたいと思っておりますので。
    特にもう甲状腺のほうはこれで、そうしたらあとは外部被ばくのほうについて、何かございませんでしょうか。
    今まで議論してまいりましたのは、主に県民の健康診断、基礎調査ですか、行動記録による外部被ばくの線量の評価を、これは各個人の被ばく線量ということで、これも個人線量というのはチェルノブイリでも今まで指摘もなかったものでありまして、推定ではありますけれども個人の線量が出ていて、一応、それを内部被ばくのものとして妥当であると評価するというようなまとめであると思いますけれども、それで、よろしゅうございますでしょうか。
    これは今後の、今お話がございました健康診断のためには、この線量は非常に大きなウエートでありますので、もう皆さん一致して認めるというところまで認識を深めておきたいと思います。
    その次は、この甲状腺以外の内部被ばくの線量でありますけれども、現在、10万人以上ですか、丹羽先生が全国で測っている内部被ばくは。
    だから、10万人以上をボディカウンターで測るというのは、普通に考えると、ものすごい量の測定値がある、実測値があるということでありますけれども、議論の中では、最初は何割かの方に測定可能なレベルのセシウムがあったんだけれども、最近は、ほとんど99%の方が、普通の食事をしていれば測定の範囲に入らない、測定できないということがずっと報告されております。
    これも、そういう状況であるということで、専門家会議として評価してよろしゅうございますでしょうか。
    あまり、議論したんで、これでいいような感じというか、皆さんに文章を前もって見ていただきましたので、今のようなまとめで、今ちょうどまとめさせていただいたような簡単な文章でまとめをつくるということと、あと、これは座長の希望なのですが、せっかくここまで我々が議論してきましたので、これはやっぱり将来に十分、役に立つように、それぞれのところに資料がすぐわかるように、まとめのこの10ページの中にも資料を入れるし、こっちの参考を見ればもっとわかるというように、将来のための資料づくりということをぜひお願いしたいのと、それから、さんざん議論がありました甲状腺の1,080人に関しましては、測定法のバックグラウンドも問題になりましたので、これは将来のために、1,080人全員の甲状腺の直接測定した値と、そのときに肩口で測ったバックグラウンドの値と、それから、そのときのいわゆるバックグラウンドの値、できれば汚染のときの値もわかる範囲のものも含めて、記録として数値を残しておく。将来、また問題が起こったときにそこで議論できるような余地をつくっておくというようなこともお願いしてよろしゅうございますか。
    それでは、これで線量のところは一通り、またまとめの短いのができたときに御意見をいただきますし、途中でいつでも、まだ結論までの間に会議はありますが、一応ここで線量に関しては、我々の議論は、あるレベルまでは行ったということにさせていただきたいと思います。
    そうすると、今度は今まで議論してきました線量に基づいた場合に、今後の健康のリスクをどう考えるか。また、そのリスクに対してどういう対応が考えられるかということになるわけでありますけれども、そちらは、またこれから何回かにわたって議論しなければならないと思いますが、まず、最初に、石川先生から、日本医師会とそれから日本医師会と学術会議合同の文章が出ております。これは日本医師会と学術会議の合同の提案でございますので、その意味で、最初に、石川先生からじっくりと御説明をいただきたいと思います。
    よろしくお願いいたします。
  • 石川委員 どうもありがとうございます。お時間を5分間いただけるということで、発言の機会を与えていただきまして、本当に感謝を申し上げます。
    それから、今、座長のお話の、私たち日本医師会と日本学術会議のシンポジウムの資料も提出しているのですけれども、これについては、学術会議ということのクレジットではございませんで、座長の取りまとめということで取り扱いをお願いしたいと思います。
    それでは、まず、私の提出資料、日本医師会が考える重要施策ということで、これは最初のときにも御紹介を申し上げたものであります。
    23年7月ということですから、3.11発災から4カ月弱のそういう時期に、文科省からヒアリングを受けまして、私が述べたものでございます。
    それが、なぜ、今ここでまた発表するのかといいますと、大体この四つに分けて出しているのですけれども、そのうちの三つが、ほぼ私たち日本医師会が考える、被災された方の健康支援の柱になっているということがありますので、あえて発表させていただくということと、今回、この平成24年の6月に国会で提出されました、東京電力原子力事故により被災した子どもをはじめとする住民等の生活を守り支えるための被災者の生活支援等に関する施策の推進に関する法律、これは大変私はすばらしい法律だというふうに思っております。
    これは日本医師会のほうもそういうふうに思っているわけなのですけど、その法律の部分に、かなりこの私たちの言っていることの共通点があるということも含めまして、報告させていただきたいと思います。
    なお、この本会におきましては、冒頭、この法律の具体化とかそういったことについて、この会議が健康支援についてお話しするということでは大変意義ある会議ということで参加させていただいております。
    それでは、その資料、まず1番目に、子どもを放射線被ばくから守るというふうなことで、絆、命を守る施策。これはチルドレンファーストということで、そういう概念で述べているものでございます。
    実は、このたった1枚のことでございますけれども、実はこの1枚を発表する前に、文部科学省の幹部の方たちに私が申し述べたことは、ぜひ測定したら、必ずその測定結果を住民の方に返してもらいたい。
    なぜならば、お母さん方の間に、既に自分たちの子どもたちの甲状腺を測ったのだけれども、測定してもらったのだけれども、この7月6日の時点でまだ報告をいただいてないという事実を挙げまして、何でそれを隠すのかということを含めて、最初に文部科学省の幹部の方に問いただしたという事実があります。測定したらすぐ結果を公表してもらいたいということでございます。
    これで1番目のところで、まず、福島県内外のホットスポットへの対応ということを述べております。福島県の中だけでなく、この時点で茨城、千葉、そういったところにもホットスポットがあるという事実がありましたので、これを述べております。
    そして低線量の長期被ばくが及ぼすリスクの評価とそれを踏まえた施策に早期に取り組んでもらいたい。低線量被ばくについては、これからも議論されると思うのですけれども、大変、住民の不安というのがそこにあるということは御存じのことと思います。
    特に、先週のことなのですけれども、私は鎌ヶ谷のほうで診療しておりますけれども、鎌ヶ谷の行政の方から、隣の松戸市で甲状腺の検査を松戸市がやっているのだけれども、私たちはどうしたらいいかと相談に見えております。松戸市並びに千葉市北部の9市で、昨年の秋に、9市の市長さんが、国に要望している。
    そういうのが、事実があって、大変この住民の声をまとめた市が、実にまだこの放射線被ばくの問題を市民が生活の中で抱えているということがわかると思います。
    それから、2番目に飛びまして、私たちは検診と補償ということで、今、大変不安に思っている方たち、福島県内外の方たちに対して、学齢期以降も含む検診と、それから安心の醸成のための補償というふうなことを柱に提案しております。児童・生徒、学齢期は当然のことながら、成人後の継続的な検診を行うべきということでされております。
    そしてこの検診項目は、現状行われている検診プラスαではなく、この「原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律」、これは大変、日本の歴史の中でも重要な法律ですけれども、それを規定された広島・長崎の原爆被ばく者検診等を参考に、今回の事故の特殊性に基づく検査項目を設定してもらいたい。
    その次のページに、既存の検診の活用とデータの管理という、これが平成24年に福島県医師会の木田委員、これは、この検討チームの木田委員が提出した資料でございますけれども、日本のいろんな健康診査、こういうふうにありますけれども、例えば成人検診のところでは、血算だとか、そういうものがないわけなんですけど、それから血尿とかそういったものが項目にないんですけど、そういうものを加えたもので検診を行う等、いろんな工夫が必要だということになります。
    そして医療補償に係る必要な施策ということで、これは先ほど述べました子どもの支援法の中にも、国が責任を持ってこの医療補償を、もし仮に何か発病した場合には、そういうものを国が責任持って治療に当たるべきだということが書かれております。
    そして3番目は、子どもたちにきちんと放射線と健康影響、そういったものの教育をしていただきたいと。これは次世代の子どもたちに、もし、放射線との身体の影響だとかそういったものについて、差別だとかそういうものが起こらないようにということも含めて、それから、いろいろな不安だとか、そういったものに対しての対処等も含めて教えていくことが大事だということで、3番目で言っております。
    4番目は割愛させていただきます。
    そして、もう一つめくっていただきまして、26年2月22日に日本医師会と日本学術会議の共催シンポジウムの共同座長取りまとめというのがございます。
    これについては、1番目から次の終わりの6番目のところまでありますけれども、この前文は、1番目に、国・福島県・東電、そして専門家・科学者は健康支援対策への信頼の回復をと。やはり冒頭に言いました、例えば隠蔽しているとか、そういったことの疑いを持つような状況が最初にありましたので、そこの信頼をぜひ回復して、健康支援を、具体的内容を出していってもらいたいということであります。
    そういった、健康支援の具体的内容が重要で、そして拡充と意義の説明によって信頼が回復されると。それで安定した生活感覚を取り戻すことができるのであるので、そういうことをしてもらいたいということであります。
    2番目には、東京電力福島第一原子力発電所事故の影響の科学的な解明を望んでおります。
    次のページ行きまして、3ページ目は、国・福島県・東電は生活再建の総合的な環境対策と地域づくりの支援というふうなことでございます。
    この中で、第2フレーズのところに、避難指示による避難や自主的避難が長期化した中では、放射線に対する不安だけでなく、個々人の生活再建、コミュニティの復活、地域復興に係る課題にも総合的な対処が必要であるというふうなことで書いてあります。
    実はこの問題は、まだ実際には現地の方たちのところでは、まだ十分にその不安を払拭できているものではございませんので、生活全般にわたっての支援が必要だというふうな認識でございます。
    4番目は、国の健康支援システム・汎用性のあるデータベースの構築ということで、これは廃炉作業員・除染作業員等も対象とした国の健康支援システムの構築と、さまざまな検診データ等のデータベースを共有できるようにしてもらいたい、そういう構築をすべきであるということでございます。
    5番目には、住民や作業員への健康支援・人的資源育成等のためのナショナルセンターを整備してもらいたい。
    6番目には、健康権の概念を尊重し長期的かつ幅広い視点からの健康支援体制の構築をお願いしたいということでございます。
    私たちは、現場にいる医師も含めて、国民の健康を守る中で、特に被災された方たちは、大変不安を持っております。その不安を払拭するためにも、この検診の体制と補償の体制、冒頭言いました2番のところです。これを実現したいというのが私の意見でございます。
    どうもありがとうございました。
  • 長瀧座長 どうもありがとうございました。
    医師会のほうは、時期的には早いときでありましたけども、随分お待たせして申し訳ありませんでした。
    この合同共同座長の取りまとめは今年の2月に出たものでありまして、まだ十分に審議の対象になると思いますが、ここの専門家会議の目的の範囲で、今の先生の御説明に関して、もし御質問がございましたらどうぞ。
  • 清水委員 ありがとうございます。
    質問というか、確認させていただきたいのは、福島県の中だけでなく、県内、県外でいろんな検査が行われています。今、先生のお話でも、松戸でもやっていらっしゃる。
    いろんなところでやっていると思うんですけれども、福島県内では、県民健康調査委員会もあって、そこで、ある程度統一された検査項目、あるいは方法を基本にして行ってるのですけれども、県外のほかのところではどんなふうにして、つまり、ある程度基本的な方針というのがあって、統一されて行われているのか、あるいは県ごとに検査方法あるいは項目を、評価方法も含めてですね、異なっているのか。その辺のところをちょっと教えてください。
  • 石川委員 先ほど、千葉県の9市の要望書のことについて、ちらっとふれたりしておりますけれども、この9市について言えば、その9市の中で、やはり自分たちでやりたいのだけれども、なかなか予算の関係上できないので、国の支援を求めているという形になります。
    それから、今まで出た、例えば宮城県だとか栃木県というところについては、県でも一定いろんな結論が出ているというふうなことも聞いておりますので、そこのところの具体的な意見というのは、むしろこの場で次回当たりから出していただければいいんじゃないかと思います。
    私が言いたいのは、やはり実際に、先週、実際に私は、日本医師会をやっておりますので、そこに市の健康福祉部の方が、まだ市民からいろいろな検査をしてもらいたいという要望がずっとあるので、これを市のほうではどうしたらいいかという真摯な質問があったということで挙げさせてもらいました。
  • 長瀧座長 ほかに、石川先生に対して何か御質問はございませんでしょうか。
    それでは、また次のお話を伺ってから、また石川先生に対しての御質問もということにいたしまして...、どうぞ。
  • 春日委員 御質問がなければ、補足ということでよろしいでしょうか。
    石川先生からも御説明がありましたように、この日本医師会と学術会議の共催シンポジウムの共同座長の取りまとめは、日本学術会議の幹事会を通っているものではございませんので、医師会側は石井常任理事、そして学術会議側は私が、二人の共同座長の責任で出したものです。
    そのことを、もう一度確認いたします。
  • 長瀧座長 では、鈴木先生。
  • 鈴木委員 鈴木です。住民の健康不安に対して、検診をするということが本当のベストアンサーなのかということは十分議論しないといけないんだろうと思います。
    今、栃木で、お母さん方と話していますと、いまだに水道水を飲めない。要するに、放射性物質がまだあるかもしれないので、ペットボトルをわざわざお金を出して買って、幼稚園で配付しているというようなことが起きているのです。そういう不安を持っている人たちに、じゃあ、がんの検診をやりましょうというのが本当のベストアンサーになるのかどうか。かえって、本当の意味で、やっぱりリスクリテラシーというのをどう醸成していくかという中で、総合的に考えていかないといけないところに、医療という形ですぐ答えを出すというのは、何か落とし穴があるように私自身は思います。
    ですから、もうちょっとその辺の、何で今まで線量の話をやってきたかというと、この線量レベルでどういうリスクがあるかということをもうちょっと押さえた上でどういう対策を考えていくか、総合的に考えるんだろうと思います。決してそれが検診という形に直結するとは、私は思っていません。
  • 石川委員 いきなり、例えば、がんの検診だとかということを言っているのではなくて、基本的には、例えば、ここの会議で、私は今まで6回、線量の把握ということで、先生方が議論されているのをずっと聞いていて、大変綿密なことをおやりになって、それを日本の一定の結論にしようとしているということはよくわかりました。
    しかし、それだけでは、今先生もおっしゃったように、栃木県だけではないんですよ。ほかのところでも、まだそういう、ほかのところの水を使って調理しているお母さんというのはいるわけです。
    それを、じゃあ、どうしたらいいかというと、それじゃあ、がんの検診をやるとか、そういうことには、もちろんなりません。
    ただ、そのときに、いろんなほかの病気も含めて、要するに検診できる体制を構築してくることが、一つ、僕は安心を醸成することになるんじゃないかと思うんです。
    私たちは、お母さん、あるいは子どもたちに対して、そういう健康を支援している、今できることは、そういう検診。がんの検診ということじゃなくても、これは、やはり健康を見守っていくという体制そのものが大事だというふうに思っているのです。
    それで、先ほども冒頭に言いましたけれども、例えば、低線量被ばくの結末ということについては、もちろん誰も語れないわけですから、それが、情報としては、日本のいろんな国民、被災されたお母さん方も含めて、いろんな国民の方たちには、そういう低線量被ばくはどうなのだろうという、そこはかとない不安もあることは事実なんですね。このことについて、きちんと解説できればそれが一番いいんですけれども、それはできないわけですから、これはしょうがないと思うんですよね。
    私たちは、そういう検診という形で見守っていきますよ、補償しますよという対応を取るしかないと思います。
  • 丹羽委員 この問題は、本当に大事な問題だと思います。
    ここで線量を一生懸命議論してこられたことで、私自身が、自分自身でもまだ、ほかの方々にも、特に福島に行っている方に、これは大事だよ、だからやろうよねという話をよくしているのが、個人線量計です。
    それで、実際に私は、ここにぶら下げている個人線量計で測って、空間線量のガンマから受ける線量が大体1mSvなんですね。バックグラウンドとセシウムで。
    そういうようなことで、これは東京駅だとどうなるのか。これが0.6くらい、年間線量で。広島に行ったら、あそこ加古川自体が、やっぱり0.9くらいなんですよね。
    そういうふうなことを実際に東北、福島にもお願いして、全国のメンバーにこれを配ってくれよと。千代田テクノに100本借りて、そして10都道府県とか、そんなに多くて、実際、その市町村で生活している方々の線量を見ましょうということをやっています。
    これは、もともと福島視点に立った立場で、別によその市町村の方に関しては関係ないんですけど、実際にやってみると、福島の市内に住んでて、それほどではないという感覚があります。それは、やはり私も復興なんて考えてたら、この情報は大事だと心から思っております。
    もう一方で、石川先生は低線量のことは誰にも語れないとおっしゃっておられます。私は、随分長いこと放射線の生物学をやってたんです。マウス使っての発がん実験、細胞レベル。
    そういうのばかりやっていて、放射線防護はとんとまた弱いのですが、それに関して言いましたら、やはり線量は低いとがんは出ません。それは厳然たる事実であり、それは当然確率的に出てもいいんだけど、あまりにも小さいから出ないというふうに私自身は思っているし、広島、長崎でも全く同じです。
    その場合に、そういうふうな線量のときに、何も言えないかと言ったら、言えるんです。これは普通の疫学で見ても、どう頑張っても見えません。ただ、がんでも何でも疾患というのは、普段、我々が何かの疾患にかかるとき、かかったらオールワンなので100%かかった人はかかっているわけですね。かからない人はかからないで、数の上での比較はできて、それで統計的有意じゃないよねという議論はできます。それからポピュレーション。でも、個人にとっては、私は何でこんな病気になったんだと思うのは当たり前です。だから、やはり放射線の地域におられる方は、やっぱりこれは放射線じゃないかと、不安がそこでよぎります。当然です。
    これは常に、そこら辺の問題というのは、我々の研究者では、数でしか、集団でしか対応ができない。集団で見る限り、このあたりでバックグラウンドのあれが大きいからやっぱり見えないよねという言い方はできます。それの中でもあるのかもしれない、人々は思います、当然。
    でも、これは証明できないけれど、一つ言えるのは、これぐらいの線量であれば、例えば、私が福島市内に住んでいて、年間1ミリです。これはバックグラウンドのガンマとセシウムのガンマを含めた線量です。それで私が放射線のために大変な病気になるかというと、私は、それはあまり思ってないんです、実は。
    だから、線量を測ろうよと一生懸命言っているのは、そういうふうなことで、自分自身の状況に関して把握する。なぜ不安になるかといったら、状況がわからないから不安になるんです。私もこれを付けて測り始めるまで、どれくらいの線量が出るかというのは、空間線量計で普通の線位置で家の前で測ると0.5mSv/hあります。家の中で0.2くらいですね。それで、光が丘とか、あるいは飯舘のほういくと、すぐ1マイクロくらいにすぐなるし、そのような中で、実際ぐるぐる回ったり車で回ったりしている生活圏の中でどれぐらい実際に出てるかということを測ることで、やはり、なるほどこの程度かというふうなことを自分で実感して、自分なりに納得しております。
    だから、私は、健康診断はもちろんいいかもわからないですけど、一つは、やはり放射線のことですから、放射線状況をきちんと個々の方々に理解していただくということは、特に極めて大事かと思っております。これは、高いといえば高いんですけど、数買ったら1万円くらいなんですね。それで、そういうふうなもので、ある程度、自分自身の線量状況が把握できるんであれば、これは非常に私自身にとっては、皆さん方の不安に対して、ある程度のことが言えるというふうに、私自身は思っております。
    以上です。長くなりましたが。
  • 長瀧座長 よろしいですか。どうもありがとうございました。どうぞ。
  • 石川委員 多少ディベートみたいになっちゃうと嫌なんですけれども、先生のおっしゃりたいことは何となくわかったような気がしますけれども、そうやって個人が行動するところ、今の線量を測るのは、それは全く無駄だとは言いませんけれども、例えば今、今日の時点で、千葉県の、先ほど言った9市の--9市だけじゃないですね、ほかのところですね、まだホームページに測定結果を出しています、空間線量の。これを、かなりの方が見てるんです。そういう事実があります。
    これは、先生がおっしゃって、例えば今、いろんなところ行って、飯舘村はこういうふうになっている、だけど、そこはどうだこうだと言っても、実際に住民の方たちの不安を取る、大体、私は、それを住民の方に持たせるということはなかなかできないと思うのです。そういうことをいつも普段身に付けておきなさいということもできないと思うんですけれども、実際に払拭するためにどうしたらいいかということについて、ぜひ鈴木先生にお考えいただいて、提案してもらいたいと思うんですよ。本当に専門家の立場であれば。
    絶対大丈夫なんだと、そういうことを言えるのかどうなのかということですね。先生たちが大丈夫だと言えば人々が安心するかどうかということなんですよ。じゃないですよね。我々が言ったって同じですよね。
    私も、幾らでも、実際にその地域に行って、お母さんに言われましたよ。今のところは大丈夫だと思うけれども、一生懸命これから育っていく間に子どもたちを見ていきましょうね、くらいしか言えないですよね。だけど、それは継続して見ていくということしか言えないと思うんですよね。
  • 丹羽委員 おっしゃるとおりで、その議論はよくわかります。
    もう一つ、私自身で追加しておきたいことは、結局、我々がなぜ信頼を失ったか、研究者として。それは我々が本当に考えなければならないこと。
    私はたまたま放射線を随分長いことやっていましたので、これぐらいの線量ではこれぐらいというふうな自分の物差しを持っております。でも、一般の方々は物差しがないですよ。それを、こういう物差しだと、我々は自分の物差しを持って、ものを言った。これが一番よくなかったと私自身はすごく反省しています。
    だから、これぐらいだったらあまり心配しなくていいよというふうに一生懸命申し上げたつもりなんですが、それは、言うなれば政府が、ならば何で逃げろと言うんだよ、何でセンタリングでどうのこうの、あるいは計画避難というふうな、政府がどんどんどんどんと施策を推し進めてきた中で、我々自身がこういう物差しがという議論をしましたけれども、これは逆に言えば、何か政府のちょうちん持ちでやってるのか、というふうにとられても仕方がないような場面があったと私自身は思っております。
    これは本当に、我々は本当に反省しなければならないし、そういう状況をわかってなかったというのはよくなかったと思いますけれども、結局、先生がおっしゃったように、我々が何を言っても、多分心配なお母さんはわからないし、理解できないし、心配するのが当たり前なんですね。それはどういうところから来ているかといったら、やはり状況が自分では本当にわからない。だから、その状況を知ることから始めようねということしか、我々にはオファーできるものが実はないんです。
    それで、随分長い間検診するということは当然あります。ただ、それでも、今日、自分の子どもが風邪引いたら、「これは放射線のせいじゃないか」と思うのは、親心として当たり前です。誰もそんな、ましてや小児がんなんかになられたら、絶対これは放射線のせいだと思われます。それは人間そういうふうに考えますし、そういうようなものですから、そのアプローチはもちろん大いにやってくださってもいいと思います。
    ただ、それ以上に、状況を把握してくださる、検診するな、せよという問題以前の話に、自分の周辺状況をそういうふうに関わっている方々に関して、特に自分の周辺状況を理解してくださることの方が大切ではないかというふうに思っております。
    プラスアルファで検診して、やっぱりないよね、でも、たまたま小児がんにかかる方は必ず出ます、ある一定の確率で。その場合には、仕方がないから疫学的に比較するということしか手がないんです。
    だから、そういうことで我々が持っている全てのツールを目の前に出して、順番に効果的なところからやっていくしか仕方がない。一番基本的なのは自分でできることだと思っております。それが、こういう個人の線量計だと私自身は思います。
    これも、先生とディベートしてるわけじゃないです。それを悪いとか言ってるわけじゃなくて、それは一つのやり方ですけど、それより自分で状況を把握できるということを、人々ができることは何か。単に誰かにやってもらうことを待つんじゃなくて、その方々が御自分でできることが何かを考えることも、専門家の役割ではないかと思っております。
  • 長瀧座長 どうもありがとうございました。ほかにございますか。
    今、御議論いただきましたように、本当にこの専門家会議は、気持ちは今、医師会としてお話になったとおり、もう本当に被災者の健康を第一に考える、これはもう目的としては間違いない、みんなが共有してこの会議にいると思いますけれども、その健康を守るために、今、線量が出てきまして、線量から、ある程度のリスクが想像できる、そういう状態を加えて何ができるかという議論を今からこの専門家会議でやることになると思いますので。
    それと、リスクがどれぐらいかと。そうすると、そのリスクに対してどういう対応をするかということも、これは住民の気持ち、行政の問題、信用の問題、いろいろとあるでしょうけれども、この会議では、むしろ科学的に考え、専門家としてどう考えるかということをお話しして、それを社会が、あるいは行政、政治としてどう扱っていただけるかというような気持ちでおりますけれども。
    それが専門家会議で、最初にこの会議の目的としてお話しいただいたところであると思いますが。そういう意味で、今、医師会としての住民の心配、それから、できるだけ検査をするというようなお話を伺いましたけれども、特に線量評価まではいかないにしても、検診するということのメリットも当然ありますけれども、じゃあデメリットはどうかということで、検診に対する考え方を、祖父江先生にお話しいただきたいと思います。
  • 祖父江委員 資料があります。がん検診の利益と不利益と書いたものです。
    今後、住民の方々の健康管理を考えていく際に、検査とか検診ということが一つの手段としては大きなものがあるわけですけれども、それを実際に提供するときに、それが考えている利益をもたらすということもありますけれども、それ以外に、不利益というのももたらす可能性があるということを十分に考えておかなくてはいけないというようなことを御説明させていただきたいと思います。
    これは福島の方々というよりは、一般の検診に関して、がん検診に関しての考え方であるということを踏まえていただきたいということであります。
    今は、がん検診というのが、がん対策の中の一部で行われる。がん対策というのは、がんの死亡を減らすだとか、がんの罹患を減らすという目的でやられるわけですけれども、がん検診はその中で、特に死亡を減らすということの意味で行われる場合が多いです。
    下のスライドですけれども、死亡率を下げるためには、有効な検診を正しく行う必要がある。
    当たり前のことのようですけれども、これをきちんと科学的に事実を積み上げてこれをやっていくというのは、結構大変なことです。
    十分な検診というのは、まずは死亡率減少効果があるという科学的根拠があるということですけれども、それに加えて、最近は死亡率減少効果がある、そのことに加えて、それによる利益と不利益のバランスを考えてやるかどうか、推奨を決めるということまで含めてのアセスメントがされます。
    それをガイドラインと称してまとめるわけですけれども、次のページに行ってください。
    ガイドラインというのが、これはいろんなことを書いてありますけれども、それまでに積み上げられた--左側から、研究の成績、これをシステマティックレビューという形でまとめていくわけですけれども、その際に、まずはその利益、死亡率減少ということに関して証拠をまとめるということとともに、下の段ですが、不利益。これがいくつか、利益に比べると複数の項目と言いますか、種々雑多なものが含まれてくるわけですけれども、それについても取りまとめて、両者のバランスを考慮して推奨を決定すると、こういう流れがあります。
    下の段で、利益というのは主にはがん死亡の減少と。そのほかにはQOLの向上ですとか医療費の削減ですとか、本当に真陰性、がんがなく検査がマイナスであったという人たちの安心ということもありますけれども、一方で、不利益として、そこには四つ書いてありますけれども、偽陰性とか偽陽性というのは、四角の中のものとして、本当は病気がある、疾患があるのに検査の結果が陰性であったですとか、本当は病気がないのに検査の結果が陽性であるとか、そういうような間違って判断された人たちに対して、やはり何らか不利益が生じるであろうと。
    特に罪深いのは、疾患があるのに陰性であったということは罪深いですけれども、頻度的に多いのは、この偽陽性といいますか、疾患がないのに検査の結果は陽性になったということです。この方々に対して、何もしなければ検査もしなかったであろうところが、精密検査等の、ある意味侵襲のあるような検査をされることがある。これは不必要ではないかということが挙げられます。
    それから、検診に伴う合併症、こういうものはスクリーニングの段階では少ないですけれども、例えば、大腸内視鏡なんかをスクリーニングとしてやるというような場合には、ある一定確率で穿孔ですとか出血とかが起こる。こういうことがされておりますので、人間ドック等でも。そういうことが合併症として挙げられる。
    加えて、今注目されるのが、寿命に比べて臨床的に意味のないがんの診断治療と書いています。これは、非常にゆっくりした進行をするようながんの場合、その人の寿命が全うされるまでに症状を呈するような大きさにまでならず、そういったがんを検査によって、検診によって早く見つけて治療してしまう可能性があるという意味です。
    このことを理解するのに、いくつか検診に係る用語を説明させていただくと、左から右にがんが進行するとして、生物学的ながんの発生というのはもっと前にあるかもしれませんが、ある一定の大きさになると検診で発見可能になってくる、この段階です。
    治癒可能分岐点というのを経過して、これが症状発現の前にあるのががんの場合よろしくないんですけれども、タイミングで症状が発現し、治療が行われる。検診を受けると、その分、症状が発現する前に見つかるわけですけれども、その前に見つかる時間を先行時間。これだけ早く見つかりましたという意味ですね。
    検診発見可能から症状発現までの間を、滞在時間と言います。無症状であるけれども、検診で発見可能である時間、この長さのことです。滞在時間と言います。
    この下の図で、罹患率と有病率という言葉があります。本当は有病率と言っては、あまりよろしくなくて、有病割合という言い方のほうが正しいんですが、これは次元が違うんですね。罹患率というのは1年単位、有病率というのは無時限です。人を人の数で割ったものなので、時間の単位は中に入っていません。
    普通は有病率、罹患率というのは、病気を持っている人に対して使われる言葉なので、下の図で、罹患率というのは、この筒の中にたまる水の1年当たりの人数とか、入っていく流量、スピードの意味です。有病率というのは、その中にたまっている量です。あるタイミングにおける、ある一時点における量。それの関係が、有病率=罹患率×疾病期間。病悩期間です。病悩期間が長い病気に関しては、その分有病割合が2倍、3倍に増えるということです。
    この関係は、無症状の検診発見可能の状態でも同じような適用ができまして、無症状の検診発見可能で、その有病割合というか、そういう状態にある人たちの割合は、罹患率は一緒といったら一緒ですけれども、罹患率×無症状の検診発見可能期間、すなわち滞在時間ですね、掛け算したものになると。
    なので、滞在時間が長い疾患に関しては、その分有病割合が大きくなるということです。ゆっくりしたがんは、たまっている量が多いということです。
    次のページ行っていただいて、先ほどの池の深さみたいな、筒の深さみたいなものを棒の長さで表現したのがこれで、ちょっと横側にしたものがそうなんですけれども、滞在時間が棒の長さで、棒の数が罹患率だと思っていただいたらいいですけれども、罹患率に関しては両方とも、右も左も一緒なんですけれども、棒の長さが違うために、ある一定のところで検診、ある一定のタイミングで串刺しにしたようなもので、それにひっかかってくるのが未発見がんですけれども、その割合が、滞在時間の長いがんのほうが、短いがんに比べてひっかかりやすい。結果的に、検診で発見されるがんは、棒の長さの長いがんが多くなるということです。
    これだと、存在割合が右と左で1対1だとしても、検診発見がんの中での存在割合は、この棒の数の割合になってくるので、滞在時間の長いがんがどうしても増えるということになります。
    過剰診断というのはどういうことかというと、下の図の説明は、今度はがんの進行度を、今まで横に考えていましたけれども、縦に考えてます。
    過剰診断を考える場合には、病気の進行度、進み具合ということとともに、その人の寿命がどうなのかということがもう一つ加わってきます。それが横軸です。年齢、寿命と書いてあるのは、この方はここで寿命が尽きるという意味ですけれども、傾きが急峻ながんほど早いがん、傾きが緩やかながんほど遅いがんということになります。真ん中の対角線のようなスピードを持ったがんでありますと、この方は、がん死とともに寿命が尽きるという意味ですけれども、もうちょっと緩くゆっくりのがんですと、症状が発現するとともに寿命が尽きるとか、あるいは発見可能と同時に寿命が尽きると、こういうスピード感を持ったがんがこういうふうに図示される。
    早目のがんで、一番左側の傾きで書いてあるので行きますと、このタイミングで、この赤のところで検診を受けると、放置すればそのまま進むところを、検診を受けるという行為で、できるだけ軽快ですとか治癒のほうに向かせるということが可能である。このために検診を行うということになります。
    こういう行為だということで考えていって、ここの黄色の部分で書いてある過剰診断というようなところで検診を受けた場合、仮にがんを発見したとしても、放置したとしても、この方は症状を呈する前に寿命が尽きるというか、寿命を全うされる。こういうところで検診を受けてがんを見つけるというのが過剰診断に当たるということです。
    次のページで、こういうことなんですけれども、仮に検診発見可能な時点がちょっと早まったと考えます。
    それはいいことなんですけれども、いいことの部分があらわれるのが、この緑の部分です。
    ここのところは、早いがんをより早くに見つけて治癒に向かわせるということでいいんですけれども、この薄い黄色の部分がどうしてもついてくるわけですね。過剰診断と言われるところのほうがむしろ、たくさんとは言いませんけれども、こういうものが必ずついてくるというところが、単に早期発見というか、早く発見するという行為が、いいことももたらすけれども悪い面もあるんだと。寿命が尽きるまで悪さをしないような非常にゆっくりしたがんも、ついつい見つけてしまうということ、それが副産物、ついてくるということを重々理解した上で検診等を行わないといけない。
    特に、こういうことが多く生じるのが、高齢者の方々に、非常に早く、早期ながんを発見できるような行為をした場合に、放置しても、その方が寿命を全うするまでに悪さをしないものも多く見つける可能性があるということになります。
    そういうことをなぜ言うのかというと、ある程度こういうことが考えられる証拠があるからなんですけれども、こういう証拠は、この人を放置したら寿命が尽きるまでに何も悪さをしなかったなんていう証拠を提示することは個人的には不可能です。一回治療してしまえばそれで観察できますので、不可能です。
    ただ、集団として出てきているデータが、どうも患者の診断を示唆するようなデータが多い、いくつか見られるということで、一つの例が、これはアメリカにおける前立腺がんの罹患率の推移なんですけれども、ほかのがんは特になだらかな変化をしていますけれども、前立腺がんが1990年当初、前半の当たりに、非常に急峻なピークがあって、下がっています。
    このときに何が起こったかというと、アメリカでPSAを用いた前立腺がん検診が非常に普及しました、急速に。そのために、このような上昇が起こり、下降した。一通り普及して下降したんじゃないかということが推察されます。前立腺がんのリスク要因がこのときに大きな何か変化があったのかというと、そういうことはあまり考えられず、恐らく検診の普及ということがこの上昇につながってるんじゃないかというふうに考えられています。
    ページをめくっていただいて、同じようなことが、韓国の女性におけるがんの罹患率の推移をここで示したものですけれども、甲状腺がんが非常に急速に増加しています。乳がんが増加しているのは東アジア共通なんですけれども、この甲状腺がんがこのスピードで増加しているのは韓国が特異的です。全世界的に見ても、このスピードで増加しているのは韓国だけだと思います。
    下の図が、これは2007年における年齢分布を見たものですけれども、ちょうど乳がんと同じような年齢分布を甲状腺がんがとっています。日本ですともうちょっと甲状腺がんというのは高齢側にシフトした形で分布していますけれども、どうしてこんなことになったのかということが、乳がん検診を、韓国の場合はマンモグラフィに加えて超音波を使う。超音波を使って乳がん検診をした際に、甲状腺を同時に見るというようなことがかなり行われているようで、そのことで甲状腺がんを見つけてしまうというような行為が、こういう増加につながってるのではないかというふうに思われています。
    ですから、こういう全体、がんの罹患率の動向がこういうようなことで、国レベルでの罹患率がこのように変わっている、増加しているということの原因として、検診ということを考えられるのではないかということで、過剰診断ということが示唆されるということがありますし、もう一つ大きなデータとしては、いくつかのがん検診の評価研究がされています。その際に、Randomized Controlled Trialという、ランダムに2部に割りつけて検診の評価をするということが通常されますけれども、ランダムに2部に割り付けるということは、二つの分の罹患率は当然一緒になるはずなんですけれども、多くのがん検診の評価研究では、検診を提供したほうが、罹患率が高くなります。それも、最初に高くなって一緒になるんだったら、それは先取り効果でいいんですけれども、20年、30年追跡しても、ずっと高いままなんです。こういうことが過剰診断を示唆するデータということで考えられています。
    それが、ですから不利益の一つとしてやはり考えるべきではないかということなんですが、不利益の中には、そういうことも含めて、いろんな間違った判断をされた際に生じる不都合ということが、それ自体はいくつか小さなものかもしれませんけれども、検診を行うという行為の中でいくつか積み上げられていって、それを無視するのではなくて、きちんと評価して、不利益をカウントし、利益というのは、もちろん死亡を減少させるとか大きなファクターなんですけれども、それとともにバランスを考えるということが必要なのではないかというふうに考えられています。
    このガイドラインを予防分野について行っている、U.S.Preventive Services Task Forceというところがあります。半公的な機関なのですけれども、そこがガイドラインでの推奨を判断する際の、これが判断基準なんですけれども、グレードとしてA、B、C、D、Iとあります。Iというのは、これは証拠が不十分と、インサフィシャントエビデンスということでありますけれども、推奨しないということになりますが、A、B、C、Dのところは、何らかの証拠があるということなんですけれども、A、B、Cについては死亡減少の証拠があるんだけれども、A、Bは不利益があまり問題にならない。なので、推奨します。Cは、死亡減少に関しての利益と不利益が、大きさとして近接している。なので、推奨も反対もしませんと。Dは、昔は、死亡減少の効果がないとする証拠がある。だからやめましょうと言ってたんですけれども、それに加えて、仮に死亡減少の証拠があるとしても不利益が利益を上回ると判断されるものはDとして、使用を控えるようにというふうに判断するように、これは2007年の部分から更新されています。
    そのDリコメンデーションという判断がされた、最近というか2012年に行われたものなんですが、このPSAによる前立腺がん検診を、この2012年以前は75歳以上に関してはD判定でした。しかし、75歳未満に関してはI、インサフィシャントエビデンスという判断だったのを、2012年の段階で全年齢に関してDリコメンデーションに変えました。要するに、全年齢に関してPSA検診はやめたほうがいいと言い出したのですね。
    アメリカの事情を御存じの方は、相当これは大きな影響があるなと思われると思いますけれども、アメリカの50歳以上の男性は、ほとんど全員ぐらいPSAを受けています。そういう状況の中においてやめたほうがいいと言い出したのは、これはものすごくインパクトのあることで、当初は相当混乱しました。
    これは英語で書いてあるので、わかりにくいので、下の段の日本語の部分が非常に重要なので読んでみますと、「前立腺がんは、数千人の男性とその家族を巻き込む重大な健康問題である。しかし、PSA検査を受ける前に、全ての男性は、現在の科学がPSAについて語っていることを知るべきである。それは、非常に小さな利益をもたらすかもしれないが、大きな不利益をもたらすかもしれない、という点である。我々は臨床家がこの証拠を考慮して、個々の受診者がPSA検査について理解し、小さな利益の可能性でも不利益を上回る価値があると個々に判断しない限り、PSA検査を行わないことを勧める。」というふうに言いました。
    この「小さな利益」とか「大きな不利益」とか、一体何なんだということですが、それが右側の上の、Possible benefit of screeningとかExpected harms of screeningというところですけれども、Possible benefitとしては、1,000人受けると1人前立腺がん死亡を防ぐことができますと、これが利益ですね。
    Expected harmsのところに書いてあるのは、1,000人PSA検査を受けると、30人から40人は勃起障害あるいは排尿障害を治療のために引き起こします。2人はcardiovascular event、心筋梗塞、そういうようなheart attackとかいうことをtreatmentのために起こします。1人は、足とか肺に血栓を起こします。
    3,000人に1人は、外科治療の合併症のために亡くなります。こういう利益・不利益に関しての定量的なデータを示して、バランスを考え、集団として不利益が利益を上回るだろうと判断をしてD判定をしたということです。
    こういうことは、本当はきちんとやらなくてはいけない。それに、かなり年齢によってこの利益・不利益バランスというのが変わってくるんだろうというようなことがあって、下の図は私の単なるイメージなんですが、若いところは偽陽性が多かったり、あるいは放射線被ばくに関しての不利益が多かったりして、利益・不利益バランスがあまり大きくないかもしれない。
    一方、高齢者は、過剰診断の例もありますし、合併症もあるし、いろんな偶発症があります。例えば、バリウム検査しても高濃度バリウムだとかなりの頻度で閉塞を起こしたりしますし、あるいは撮影台から転倒したりされますし、そういう不利益というのもかなり急速に増えるので、私的な年齢におけるバランスが、利益が不利益を上回るというところで、検診を推奨すべきということがあるんじゃないかというようなことを考えます。
    なので、今後、健康管理のために検診、検査を使うということを恐らく進めるわけですけれども、頻回にやればいいとか、あるいは項目を多くすればそれがいいというようなことではなく、きちんと利益をもたらす項目であり、なおかつ、それがまだ不利益をきちんと考えて、利益・不利益バランスを考えた上で項目等を決めていく、あるいは頻度等を決めていく必要があるんじゃないかということを御説明したいと思い、資料を提示しました。
    以上です。
  • 長瀧座長 どうもありがとうございました。非常に詳しく、がん検診の利益と不利益について御説明いただきました。
    この会議そのものは、本当に被災者の健康のことを一番の目的としているわけでありますけれども、健康を考えるときに、検査をすればそれでいいのかというと、そうでもない。検査をするんだったら、それの利益と不利益を考えるのも、この専門家会議の大きな義務であろうと思いますので、ちょうどたまたま今日は両方の御意見をいただきましたので、ぜひ御質問ございましたら、どうぞこの時間を使いたいと思います。どうぞ。
  • 佐々木委員 ありがとうございました、佐々木です。
    三つ質問させていただきたいんですが、第一は今のお話に直接関わることでありますけれども、この利益の程度、不利益の程度というものは、実際に実施してみないとわからないことなのか、あるいは、いろんな例えば有病率とかそういうことから、ある程度、実際には検診しなくても推測ができることなのかということを一つ伺いたい。
    あとは、直接のお話に関わることではないんですけれども、ぜひ先生に伺いたいのは、日本の市町村がやっている検診の制度というのがあると思いますが、日本では、受診率が必ずしも高くない、むしろ低いということが問題になっているんだと思いますけれども、それが本当なのか、本当だとすればなぜなのか、そして日本の検診制度というのは、国際的に比較したときにどの程度のどういう特徴があるのかというようなことがわかりましたらお教えいただきたい。
    三つでございます。
  • 祖父江委員 かなり大きな話ですけれども、利益・不利益に関して、推測で行うかということはあまりなくて、やっぱり実証的なデータを集めるということに徹するんだと思います。
    利益というか死亡減少効果というのは、これはやっぱり評価研究を行う。かなり大規模なものが必要になって、CTの検診ですとか、PSAにしても、世界的にいくつか行う。国際間で共同して行って、複数のRCT (Randomized Controlled Trial)でポジティブと出ればオーケーというような形で、データを共有するような形で判断をしていくということになるんだと思います。
    一方で、不利益というのは、これは割と個別的な話なので、各国のデータをそれぞれの国が集めて、独自の国のデータでもって判断していくということが重要なんだと思います。特に合併症ですとか過剰診断ですとか、あるいは偽陽性率とかいうのは、要精検率とほとんど一緒になるんですけれども、それは国によってはかなり違います。なので、自国のデータを尊重しと書いてあるのはそういうことなんですけれども、そのデータをできるだけ集めて、不利益に関するデータもできるだけ集めて、利益・不利益バランスを考えていくということになるのだと思います。
    ただ、そのときに、バランスを考えろといっても、相当質の違うものを比べることになるので、これはなかなか、こういう価値判断でいきますというか、客観的な数値化しますということがなかなか難しいところがあります。なので、多くの人でコンセンサスを得るというようなことでしか判断しづらいところではあります。
    それから、今の市町村のがん検診の精度がどうなのかとか、精度といっても、Accuracyというか、正しさの具合ということとシステムということと・・・。
  • 佐々木委員 僕が言ったのは受診率です。
  • 祖父江委員 受診率ですか。
  • 佐々木委員 低いんだと言われてると思うんですが、本当にそうなんですかという。
  • 祖父江委員 それは、もしそうだとすれば、なぜ低いのでしょう。
  • 佐々木委員 すみません。その精度のことを申し上げたんではありません。
  • 祖父江委員 受診率は、統計上は低いです。OECDのデータなんかで、国際的に提示されているものを見ても、日本の子宮頸がん、乳がん検診の受診率は20%、あるいは高くても30%ぐらいですけれども、諸外国、欧米の先進国では、7割8割といったところの数字が出ています。
    これは、いろいろとからくりもあって、子宮がんですと3年に1回、少なくとも受けた人の割合が諸外国では出ているんです。日本ではそういうデータはないので、毎年のデータを出すということになっています。ただ、3年累積して受診率を出しても、恐らく日本の場合はそんなにも上がらない。
    それはどういう意味かというと、同じ人が毎年受けているという仕組みが日本では通常されているのに対して、イギリス等はきちんと仕組みをつくって、3年に1回違う人が受けるような形の受診体制ができてるんですね。だから累積すると、毎年20%でも累積すれば60%になるわけですね。
    そういう形でのコール・リコールシステムというのを、日本で構築できていないのが問題であって、総受診数というか、検査数自体は、日本の検診ってそんなに少なくないんですよ。乳がん検診なんかでも見ても、そんなにイギリスと変わらないのに、そういう何年かに1回受けた人の割合という形で計算すると受診率が低いということであります。いいですか。
  • 清水委員 ありがとうございます。
    今の利益と不利益の問題なんですけれども、利益の中にもいくつか項目があって、この2ページです。不利益の中にもいくつか項目がある。
    これは一つ一つの重みがそれぞれ違うと思うんです。例えば、がん死亡の減少、これは大きな重みがあると思うし、それから患者さんのQOLの向上とか、真陰性者の安心とか、これは大きな重みがあると思うんです。それから不利益の中でも、例えば先生がさっきおっしゃったように、偽陰性者の治療遅延、これは大きな問題ですよね。
    そういうのを比べると、さっきおっしゃったバランスで比較がなかなかできないことがあるということが一つですね。
    それから、滞在時間の長い疾患というのは、まさに、今の甲状腺乳頭がんというのは、非常になかなか生命予後がいい疾患なので、このことで過剰検査が行われているかどうかというのは、話題になっています。
    ただ、甲状腺の中の悪性腫瘍というのはピンからキリまでありまして、ほとんど90%以上は乳頭がんという予後のいいタイプですけれども、中には未分化がんといいまして、これは横綱級です。人間の体の中にできる悪性腫瘍の中でも一番悪いものと言われているのが、実は、これは乳頭がんから移行してきます。これって本当に悪性腫瘍の中の乳頭がんが90%とすると、未分化がんは本当2%から3%くらい、低いパーセントなんですけど、これを見逃すと、あるいは、これを移行する前にたたくと、そういうことは、なかなか全員に対して行われるような、この乳頭がんの患者さんは将来未分化がんになる、ならないと判定することは、これは現時点では不可能です。
    ただ、見逃すとその患者さんの生命予後にとって100%のことなので、なかなか難しいところがありまして、今問題になっている甲状腺の被災者の後のエコーにおける検診が、過剰検査ではないかということに関しまして、先生は、どういうふうにお考えになっていますか。
  • 祖父江委員 過剰診断という言い方はちょっと気を付けて使わないといけないと思いますけれども、何か、過剰診断というと間違った感じがしますけれども、何も判断として間違っているわけじゃなくて、きちんとそれぞれの過程では、病理検査をし、きちんとがんと診断し、治療するということなので、それぞれのプロセスでは間違ったことはしてないんだけれども、全体として、そのがんの性質上、そのような結果をもたらすということですね。
    甲状腺がそういう非常にゆっくりした進展速度を持っているがんであるということは、大人のがんで特にそういうことは観察されてきていますので、当然子どものがんでもそうであろうということが、あらかじめ恐らく、わかっていたということがあるので、ある程度、想像された結果ではあるとは思うんです。
    ただ、こういうことをやるという判断をした以上は、きちんと結果を出してそれを解析していくという必要もありますし、見つかったがんに関しては適切に対応するということが必要なんですけれども、そこでお子さんに診断されたがんに関してどうするかということを、こうするべきだということをきちんと語れる人がなかなか今いないと思うんですよ。ですから、きちんと理解し、納得して診断治療を進めていくということしかないと思うんですけれども、それを過剰に診断されたとか、そういうようなことではなく。ですから、一つの判断としては、観察していきますという判断もあってもいいとは思うんですけれども、それを綿密にきちんと、ちょっとでも大きくなったら対応できるような体制でやっていくということも必要ですし、治療する、外科的に切除するということがいいという判断をされたら、それをするということで、それぞれが今の段階で納得する形での治療を進めていくということで、それをきちんと記録するということはもちろん重要ですけれども、そういうことでの対応なんだと思います。
  • 長瀧座長 甲状腺がんに関しましては今後もこの会議としては一番大きなトピックになると思いますので、また引き続き、ずっとお話を伺いたいと思います。
    ほかにございますか。どうぞ。
  • 石川委員 まず、韓国のMajor Cancerのこの図なんですけど、これはある年から、例えば甲状腺だとか乳がんが増えてきたというようなことでお話あったわけですけれども、このときに、同時に、その後の死亡率といいますか、死亡数といいますか、その変化はどういうふうになっているのかということと、今、利益・不利益のお話が2ページのスライドと7ページのスライドで利益・不利益、特にUSPSTFはこうやってグレードを付けてるということなんですけど、これは、私が見ますと、2ページの利益・不利益というのと、それから7ページの、要するに利益と不利益というふうなことで考えますと、ちょっと意味合いが違うんじゃないかなというように思うんですよ。
    7ページのほうは、例えばもっと公衆衛生的にどうか。公衆衛生的に利益・不利益なのか、あるかどうかという判断をしてる点はないでしょうか。
    2ページ目のほうは、どちらかというと公衆衛生的なところもあるんですけど、ちょっとミックスしてるんですけれども。個人にとっての利益・不利益という側面が強くて、7ページ目とニュアンスが違うじゃないかと思うんですよね。
    できれば、私は、その不利益というのが、要するに、特に個人の不利益ということについての分析がこれは必要なんじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  • 祖父江委員 第1点の韓国の甲状腺がんの死亡率のトレンドはどうかということですけれども、これはあまり大きく変化していなかったようです。ですから、増えているわけでもないし減っているわけでもないという感じでした。
    それから、U.S.Preventive Services Task Forceのほうの表といいますか、判断基準における不利益の意味合いということですけれども、多くは、やはり、false positiveとover diagnosisを不利益としてカウントしています。
    先生のおっしゃる公衆衛生的な不利益というのは、コストのことですか。コストは、あまりここには反映していません。あくまで健康影響としての利益・不利益バランスです。コストのことは、また次の段階で考えるというようなのがU.S.Preventive Services Task Forceのやり方ですね。
  • 遠藤委員 遠藤です。
    私は、泌尿器科のことはあまり知らないのですけれども、これは多分、泌尿器科の先生と公衆衛生の先生で大分意見が違うんじゃないかという気がして仕方がないんです。
    例えば、9ページのところを見ますと、利益は1,000人に1人が助かる。しかし、下のほうは3,000人やったら1人が合併症で死ぬとか、それから、あるいは1,000人で1人とか30人、40人とか、いっぱい書いていますね。
    多分これは、手術する先生の腕によって随分変わってくるはずですよね。多分、泌尿器科の先生は手術をするほうですから、僕はこんなに合併症は多くないとか、僕はもっと治療成績がいいとか言いますね。だから、泌尿器科の見方がまた変わるんじゃないかというのが一つ。
    二つ目が、このデータだけ見れば、僕だってこれは受けないですね、PSA検診。しかし、一般の多くの日本人は、多くの人はPSA検診やってくださいと言うんです、希望は。これは、この格差というか、国民感情と随分違うところがあるんですけど、これはどのように説明したらいいのかなというのをお聞きしたいんですが。
  • 祖父江委員 この9ページの上の不利益に関する数字ですね。定量的なデータに関して、アメリカはこうだけれども、日本はもうちょっと違うだろうと。当然そうですね。なので、日本でも、こういう不利益に関しての定量的なデータを提示して、利益・不利益バランスを考えていく。
    恐らく、先生おっしゃるように、日本ではこんなに合併症が多くないということでしょう。日本の泌尿器科の先生方はそうおっしゃいます、確かに。ただ、アメリカでも、当初アメリカの泌尿器科学会は、この判断に関して大反対していましたけれども、かなり似たような方向性での改定をしています。全体としてPSAを、集団としては勧めません、個人レベルで判断しますというようなことに変わってきていますし、不利益がかなり重要な問題であるということを前面に押し出しているようなガイドラインになっています。
    あと、日本の人たちというか、一般の人たちがどう考えているか、そのギャップがあるのではないかということですけれども、ガイドラインの役割というのは、一般の人たちがどう考えているかではなくて、科学的証拠がどうなのかで判断し、むしろ、一般の人たちが考えていることとギャップがあるんであれば、そのことをきちんと提示し、説明するためにガイドラインをつくるというふうに私は思っています。
  • 遠藤委員 どうもありがとうございます。
  • 長瀧座長 どうぞ。
  • 春日委員 大変、多角度、広範囲の御説明をありがとうございました。
    非常に広い問題を含む御説明だったと思うので、それだけに、全体としてわかるところと、わかりにくいところがあるように思います。
    例えば、4ページ、5ページに示していただいている概念の図ですけれども、これはもちろん、例えば肺がんなら肺がんの中にも進行の早いタイプと遅いタイプがあるでしょうし、臓器別ではなくてがんの種類別にもあるとは思います。
    ただ、一般的にといっても、それが正しいのかわかりませんけれども、前立腺がんであれば、例えば、私もよくわかりませんけれども、例えば黒色皮、melanomaのようなものに比べると、皮膚がんに比べると、前立腺がんであれば遅いがんの割合が多いだろうと。そういうことは言えるかもしれません。
    何が言いたいかと言いますと、この4ページや5ページの図をがん検診全体で考えるのではなくて、個々のがんによって大きくこれが変わるということも御説明を加えていただいたほうがわかりやすかったかなというふうに思います。
    それから、どなたかからの先ほどの御発言にもありましたけれども、検診の頻度によってもまたこの効果は変わってくるのではないかというふうに思います。
    それから、4ページ目の上の図の御説明でしたけれども、これは滞在時間の長短によって有病率が変わってくるということを御説明いただく場合には、赤いバーとブルーのバーの本数はそろえていただいた上で、長さが違うときにどう見えるかという御説明をいただくと、もっとわかりやすかったかなというふうに思います。
    この図をそういうふうにつくっていただくと。
  • 鈴木委員 本数は一緒ですよ。
  • 春日委員 赤い本数が。
  • 鈴木委員 赤い本数と同じです。
  • 春日委員 赤い本数をそろえていただいたほうがわかりやすいかなと思ったんですけど、そうじゃないんですか。それは勘違いですか。
  • 鈴木委員 検診で見つかるがんの、見つかるやつがブルーになってて、見つからないやつが。
  • 春日委員 そうか。この縦線にひっかかってくるところをブルーにしたという、そういう意味ですね。
  • 祖父江委員 そういう意味です。
  • 春日委員 すみません。それはちょっと聞き間違いました。そこは失礼しました。
    それと、この御説明を、例えば厚労省のがん検診のあり方を議論する委員会で説明していただくのであれば、その意味はわかるんですが、今回この場で御説明していただいた意図というのが、もう一つよくわからなくて、これをもとに、今後私たちはどういうことで議論していけばよろしいんでしょうか。
  • 祖父江委員 いくつかあったものの、最後のところが重要ですかね。
    今日は、ですから一般的ながん検診の考え方の紹介をしますということを冒頭に申し上げましたけれども、ゆっくりしたがんに関して言うと、過剰診断の不利益というものが大きさとして大きいですということを指摘するために、この資料は出しました。
  • 春日委員 その過剰診断の不利益があるということはよくわかるんですが、その大きさの比較というのは、がんの種類によって違うのではないでしょうか。
  • 祖父江委員 ですから、甲状腺はゆっくりしたがんの代表的なものだと思います。ただ、前立腺がんに比べると、前立腺がんはやはり高齢者に多いので、寿命の問題というのが近接しているわけですけれども、甲状腺の場合はそこの問題はちょっと違うので、前立腺がんの考えをそのまま適用するわけにはいかないと思います。
  • 長瀧座長 ただ、がんの種類によっても当然違うでしょうから、今のお話は、一つ一つのがんについて議論していくと限りなくなってしまいますので。
    要するに、検診というものにとっては、プラスもあるけれどもマイナスもあるんだということの感覚を、我々としては共有することが必要ではないかなと思うのですが。
    もちろん我々は、私も医者になってもう五十何年たちますけれども、最初のうちは早く見つけるということが絶対に100%いいことで、見つけなければ亡くなってしまうという時代も当然あったわけだし、がんもそういうものが多かったけども、どんどん世の中が進んできて、非常に早い時期から診断ができるようになると、早く診断するということが、がんの種類その他を考えると全て早く検診したほうがいいということではないんだと、十分にデメリットも考慮した上で行動しなければいけないと、decision makingをした結果じゃないというようなお話ではないかと思うんですけど。
  • 祖父江委員 もう一つ、頻度の問題がありましたけれども、どういったインターバルで検診をすると利益があるのか、死亡減少効果があるのかということは、これは評価研究の中で本当はすべきなんですけれども、何年間隔で行うのがいいかと。ただ、RCT、Randomized Controlled Trialでできるのが、そんなに、2年間隔にやるアーム、3年間隔にやるアームというようなことができないので、そこは利益に関しては、効果の大きさに関して、後でシミュレーションを行うようなことで穴埋めしていくようなことが考えられます。
    一方で、不利益のほうは、頻度を上げると必ず大きくなっていきます。これは要精検率が、ほとんど偽陽性の割合と同じなので、検診をやればやるほど、間違って、がんはないけれども陽性になるという人の数は増えます。
    なので、頻度を上げるとどうなるかというと、一般的には不利益がどんどん重なっていきます。
  • 長瀧座長 どうもありがとうございました。どうぞ。
  • 大久保委員 今のお話にも関連しますけど、一般的に検査を連続して行ったときに、そのときの判定を2回プラスの場合を陽性とするか、どちらか一方を陽性とするかによって、感度・特異度が違ってくるわけですね。
    今回の、祖父江先生からの御説明の中の利益というのは、この感度が高いときは利益が上がる。そして不利益というのは、この特異度が低いと不利益が増えるという、そのバランスになるんですね。そうすると、感度も特異度も同時に上げてしまえば両方とも改善されるのですけれども、通常、それは、どちらかを上げればどちらかが下がるといった感じで、トレードオフの関係になります。
    それで、検査を多くくり返すということは、どちらか一方がプラスになれば陽性というふうに判断する場合は、基本的に特異度がどんどん下がってきますので、その分、不利益が上がってくる。そしてコストも増えていくということです。
    それと、たまたま前立腺のお話が出ましたけれども、この前立腺のPSAは現在の感度・特異度の評価であって、これが将来、全く前立腺の検診方法が変わって、技術革新によって感度も特異度も同時に上がる新しい検査方法ができれば、この利益と不利益とのバランスが崩れて、利益が増える場合もあるということです。
    例えば甲状腺のがん検診をするときに、今の検診方法の場合の評価ももちろん必要なんですが、それに新しい方法が開発されることによって、従来の感度・特異度が変化することによって、利益と不利益のバランスも変わってきますので、将来的には検診をやるべきか、やらないべきか変わってくると思います。
    また利益・不利益は対象とする疾患の有病率にも影響を受けます。有病率が高ければ利益が増え不利益が減少し、そのバランスが変化します。従って、全住民を対象とするのではなく、ハイリスクの者のみを対象とする方法もあります。
  • 長瀧座長 ただ、もう一つ変わるのは、先生がおっしゃったのは、がんの発育のスピードも非常に関係するということがあるんじゃないかと思いましたが。
    正確に診断してもスピードが遅いときの利益・不利益という問題も一緒にお話しいただいたような気がします。
    まだもう少し御議論ございますか。どうぞ。
  • 清水委員 清水ですけれども、実は先週、韓国で甲状腺の学会がありまして、ちょっと参加してきたんですけれども、韓国の急激な、2003年くらいから、がんの頻度が上昇して、今や断トツのトップですよね、女性で、韓国においては。
    これは、一つは、どうしてこんなに増えるんだと聞いたんですけれども、エコーの検査が非常に発達し、やるようになった。一生懸命探すと。
    それが一つと、この6ページのグラフは、これは手術した患者さんだと思うんです。最終診断ですから、採った標本を病理で診断して、甲状腺がんあるいは乳がんというふうな、病理学的な診断がこれだけ増えたということだと思うんです。ということは手術をしているんです、ほとんど。
    甲状腺のがんの場合に、非常に早く見つかった場合には、経過観察をするという選択肢も実はあるので、恐らく僕は、ほとんどの患者さん、検診でがんの診断がつくと、手術をしている患者さんが多い。これが利益なのか不利益なのかというのはこれから調べなくちゃならない問題だというふうに思って聞いていました。僕は先週ちょっと経験したんで、コメントまで。
  • 祖父江委員 ちょっといいですか。
    このグラフのもとになっているデータは、韓国の地域がん登録のデータです。別に手術をされた方だけではなくて、全て診断されたがん患者さんが登録される仕組みになっています。
    日本に先駆けて、既にがん登録は法的な届け出義務を課せられている疾患になっていて、レセプト等もきちんと使って漏れのないような仕組みができています。
  • 清水委員 そうすると、エコーで検査して、がんという診断はエコーだけではつかないと思うんで、細胞診までやっている検査なんですね。
  • 祖父江委員 がん登録の中では、きちんと診断の根拠になった検査も取っているので、病理学的な、あるいは細胞学的な診断根拠があるものの割合というのも当然出ます。恐らく甲状腺の場合は、ほとんどそれは100%に近いものだと思います。
  • 長瀧座長 どうぞ。
  • 石川委員 短いあれで発言しますけれども。
    さっき言いたかったことの続きなんですけれども、2ページ目の利益・不利益というふうに言った場合に、ここでクロスパターンとか何だとか、そういうのは置いておいて、私は利益のここに書いてある分があれば大いに結構というふうに思うんですよね。
    そのときに不利益を見ても、例えばこのがん死亡の減少、大いにこれは一番結構なことで、私たち臨床家からすれば、こういったことができるからがん検診をやる。
    それと何よりも、そこが一番言いたいんですけれども、患者さんが、先ほど検診率が悪いと言いましたけれども、受診率が悪いと言いましたけれども、受診する人たちの一番気持ちの中にあるのは、がんになりたくないということで、がんの検診をやって安心したいというふうなことなわけです。やはりそこの不安を払拭できるというのは、一つがん検診にあるだろうというふうに思います。
    クロスパターンの検診も、僕なんかもやってますし、乳がんの検診なんかもやってますけれども、やはり見つけたときは、本当にこれは、それから偽陽性が多いというのは、これは偽陰性をとにかく少なくするためにどうしても少しオーバーなところがあるというのは、これはやむを得ないことだと思うんですけれども、私はそういうふうなことで、患者さんの安心といいますか、それが一つあるんじゃないかなと思うわけです。
    以上です。
  • 大久保委員 今の御発言に対して。
    祖父江先生のおっしゃることは、1万人いて、1人がんの患者さんを発見して治療できたとしても、1,000人のfalse positiveの患者が出て、もしかして、それによって2人が死んでいるかもしれない。そういう利益・不利益のバランスを見ましょうという趣旨で、定性的なお話じゃなくて、定量的な判断もしていかなきゃいけないという趣旨だと思います。
  • 長瀧座長 これは、もう根本的なところなので、ずっとお話を続けても無理だと思いますので、今、振り返って、では、今、福島でどういう検診をしているかということの御説明を事務局からしていただきまして、それに基づいて、またしていただきたいと思います。
  • 前田補佐 事務局でございます。それでは、御用意させていただきました資料2について、簡単に御案内を差し上げたいと存じます。
    資料2-1、福島県「県民健康調査」の概要という形で御用意させていただいたものでございます。
    今回、専門家会議の皆様は、福島県の健康管理のほうにも御従事いただいている先生が多数いらっしゃることを考えまして、簡単に枠組みだけ御案内させていただこうと思っております。
    おめくりいただきまして、スライドの3番目、ページで言うと2ページの上側で、県民健康管理調査の概要という形がございますが、左側に基本調査、これは外部被ばく4カ月というデータ。左下側に小さく書いてあるホールボディカウンター、個人線量計、こちらも被ばく線量の推計ということで、これまで議題1の中で御議論いただいた際に、こちらのデータをフル活用させていただいたというところでございますが、これから御議論いただくところといたしましては、右側の甲状腺検査でございますとか、これは事故時18歳以下の方全員にやられている。健康診査という形で、原則、既存の検診を活用するということになっておりますけれども、避難区域の方々については少し上乗せという形で検診をしているということがございます。
    その次が、こころの健康度・生活習慣に関する検査という形で、アンケート形式で避難区域の方々に実施しているもの、妊産婦に関する調査ということで、母子手帳を受け取られた方に関する調査を実施している。大きくこの四つがあるというふうに考えてございます。
    スライドを少し飛ばせていただきまして、ページでいきますと5ページ目、スライドの9番目でございますが、一つ、例で甲状腺検査ということがございますが、これは皆様、御案内かもしれないですが、念のためでございますけれども、事故時18歳以下の方々を対象に、昨年度までに一巡目という形で先行検査という形で実施をさせていただいて、本年度、次年度で二巡目という形で検診して、それ以降は、20歳の方までは2年に1度、それ以降は5年に1度という形で進めるという予定でございます。
    さらにおめくりをいただきまして、ページでいきますと7ページ、スライド13番目でございますが、その他甲状腺以外の健康診査という形も実施しておりまして、これは健康状態の把握、生活習慣病の予防や疾病の早期発見という形で、下の囲みがございますが、0歳~6歳、7歳~15歳、16歳以上の方々を対象に、それぞれ通常の検診、あるいはそれに上乗せという形で実施をされているものでございます。
    7ページ目下のスライド、14枚目でございますけれども、これは福島県における検診の一覧表という形で簡単にまとめさせていただいておりますが、特に大人の方々につきましては、通常の検診で受診する機会のない方、お子様ですと学校検診であるとか、そういう機会があると思いますが、大人でそういう機会がない方については、福島県内で一般の健康診断と同じ項目の検診を実施しているという状況でございます。
    こちらについて、次の枠組みだけ御案内を差し上げましたけれども、甲状腺検査について、種々御疑問がございまして、こちらは資料2-2のほうで、昨年度、本年度でございますけれども、これは甲状腺検査に関して、他県で同じような検査をした場合に、小さなしこりや嚢胞の割合でありますとか、あるいは、がんと診断される方々がいらっしゃるかどうかという形で、他県に、3県に御協力をいただきまして、結果を出させていただいた例でございます。
    資料2-3のほうが、健康リスクに関する論点メモという形で簡単にまとめさせていただいたものでございますが、ほかの論点がございましたら適宜追加をいただくものでございますので、こちらに縛られるというものはございません。
    項目といたしましては大きく四つに分けさせて、書かせていただきました。
    議題の1ということで、被ばく線量について御議論いただきましたけれども、その被ばく線量に基づいて、どういったリスク評価を行っていただくかということ、線量当たりという形でリスク評価をいただくこと。
    御評価いただいた線量というものがございますので、線量に基づいてどういったリスクをどのぐらいの大きさ、どの地域に見込むかということ、というところがこれからの御議論の一つのポイントになろうかというふうに考えてございます。
    2番目が、健康リスク評価に基づく健康管理のあり方ということで、これは先ほどの祖父江先生、石川先生からの御披露もございましたが、どういう形で検診を進めていくか、あるいは疫学的に追跡でモニタリングをしているかということもございますので、どういった疾患をターゲットにしていくことによって、1で御議論いただいた健康リスクを明らかにできていくかという形で、適切な手法について御議論されるものというのがあるかと思っております。
    おめくりいただいて、2ページ目でございます。
    福島県の県民健康調査及び現在までの結果の評価についてという形で書かせていただきましたが、これは、検診が始まりましたのが事故直後、平成23年の10月頃ということで、他方、我々の今この時点は、平成26年の7月にもう入らんとしているところですので、当然時系列が異なりますが、まさに議題1でお示しをいただいたとおり、被ばく線量の評価をいただいた上の中で、健康リスクを御議論いただく上で、今の福島県の健康調査について、これは不足しているようなヨウ素がさらに必要かどうかというところも当然御議論があると思いますし、結果が当然出てきておりますので、その結果に対して、さらに見直しを行うところがあるかないかという、それが御議論の論点としてあるかというふうに承知してございます。
    さらに、3の[4]で、国連科学委員会、UNSCEARのほうが影響報告書も、これは4月に出していただいておりますので、その中で、例えばでございますが、甲状腺についてはいくつか指摘がございました。
    これは比較的線量の高い地域でございますが、その中の推計にさらに数倍の方が多数いた場合はリスクが見えるかもしれないというような御指摘、あるいは甲状腺検査に関して、個人線量が適切に評価できている集団からなる疫学的研究のためのコホートを確立することを検討すべきだというような御提言もございましたので、こういう声に対して、どういう形でお答えしていくのがよろしいかというところも御議論があると思っております。
    さらに、4の医療に関する施策のあり方という形で最後まとめさせていただきましたが、これは1から3まで御議論いただいた上で、さらに被ばく量の観点から事故による放射線の健康への影響が見込まれ支援が必要と考えられる範囲というところについても御議論いただくものというふうに承知してございます。
    この御議論いただきますに当たって、参考資料のほうでデータ集を用意させていただいたので、御披露させていただきますと、参考資料の2-1が、5月19日に福島で開催されました県民健康管理調査の一通りの資料でございまして、甲状腺の結果なんかは最新の状況として、こちらの資料として見ていただくのが一番よろしいかと思います。
    参考資料2-2-1が健康診査の状況、これは23年24年のデータのまとめたのが、前々回の13回の福島県の会議で御披露されておりますので、そちらを御用意いたしました。
    同じように2-2-2が、こころの健康度・生活習慣に関する調査のまとめたもの、2-2-3が妊産婦に関する結果の報告書をまとめた回の資料をそのまま御用意させていただいたものでございます。
    あと、簡単に参考資料のタイトルだけ御案内しますと、参考資料2-3は、これは会議資料で示させていただいた、WHOの健康影響評価報告書で、それぞれリスクであるとか分け方とか考え方を御披露させていただきましたので、それを改めて掲載をさせていただいております。
    参考資料2-4が、WHOの健康リスク評価報告書の全体のレビューでございまして、中にそれぞれの地域でどれぐらいの被ばく線量を見込んでいるかという数字もございましたので、そちらの数字を記載させていただいております。
    参考資料2-5は、同じようにUNSCEARでどういう形で被ばく線量を評価しているか、概要がどうだということをまとめさせていただいて、参考資料2-6が、UNSCEARの報告書の中で、特に今後の調査という形でリコメンテーションがございましたので、そちらをまとめた表という形で、改めて御提示させていただいております。
    最後に、少しだけ丁寧に資料を説明させていただきますと、参考資料の2-7のほうで、これは第4回のこちらの会議の中で、崎山比早子先生にヒアリングをお願いして御披露いただきましたけれども、先生から御意見、質問という形で御頂戴いたしましたので、当然、これからの議論に重要な御指摘かと思いますので、こちらのほうは参考資料という形で御提示をさせていただきましたので、こちらも今後の御議論の中の御参考としていただきますようお願いしたいと思います。
    事務局からは以上でございます。
  • 長瀧座長 どうもありがとうございました。
    今から、この専門家会議としましては、議論してまとめた線量に基づいて、リスクをどう考えるかということ。そして、そのリスクに基づいて検査をどうするか、足りない検査も含めた対策をどうするかということになるわけですが、今日は、まだ15分は時間がありますけれども、リスクの評価に関して、もう既にUNSCEARの話は、この会議で大分、抽出したものを使って議論いただいたと思います。
    結局、タイトルにも、少なくとも急性影響といいますか、tissue injury はないということ、それから、将来の健康影響についても識別できるものはないだろうというようなUNSCEARの報告がございましたけれども、このリスクについて、さらにこの委員会で議論すべきかどうかということを、今もう少し、今日、御議論いただけたらと思いますが、いかがでしょうか。
  • 石川委員 福島県の県民健康管理調査の概要でいただいたんですけれども、教えていただきたいですけど、13ページ目のスライドの健康診査1のところで、これは以前のやつで、データを見てもそうなんですけれども、0歳~6歳、7歳~15歳で、これは尿の検査が入ってないということは、これはほかのところでやるということで認識しているのかどうかということです。
    一つ教えていただきたいと思います。
    それから、資料2-3の叩き台は、大変まとめられていて、これで意見とするのは、この方向でいいと思うんですけども、先ほど私がちょっと言いました、福島県外のスポットの方たちに対しての健康調査だとか、そういったことについては、ここの議題にしないということですか。
  • 長瀧座長 先生、今申し上げましたのは、リスクを最初にある程度みんなで共有して、そのリスクに基づいて県外も考えるかどうか、そういうお話になってきますので。
    今の先生のお話は、まずリスクをどこまでみんなが共有の認識として持つかということを最初のお話にいただいて。
  • 石川委員 尿のほうは。
  • 前田補佐 すみません。今日、特に資料を御用意しなくて恐縮でございますが、尿検査に関しては、確か学校検診のほうで、お子様に対してはやられていたかと思いますが、ただし、血糖と血尿の部分だけを見ていたかと思いますので、もしリスクを明らかにする上で尿検査のこういう項目について調査をすべきだという御議論がございましたら、そちらのほうの御意見いただいて、御検討いただければというふうに承知してございます。
  • 石川委員 じゃあ、ほかのところでやっているということなんですね。
    ただ、これは、経年的な変化ってすごく大事なんで、ぜひ、それだったらつなげられるデータにしてもらいたいと思います。そっちのほうのデータを持ってくるとか、していただいたほうがいいと思います。
  • 前田補佐 こちらについては、学校検診のデータも含めて、法律上の制度上のことでございますが、見られるという形になってございます。これはデータ集約に一定のお時間をいただくことになると思いますが、試みとしては可能という形になってございます。
  • 長瀧座長 どうぞ。
  • 鈴木委員 検診の内容を、何でその検診が必要なのか、放射線生物学あるいは放射線疫学のデータから、それは本当に意味があるものなのかという議論をしないで、これが抜けてます、あれが抜けてますという議論は、ちょっと委員会としてはおかしいんじゃないかと思います。
  • 長瀧座長 県外のことも問題になると思いますけれども、まずリスクをここで共有したものを持っておかないと話がばらばらになると思いますので。そこについて御議論があるかどうか。
    UNSCEARのお話を、この会議としては伺ったわけですけれども、それを、この会の共有の認識としていいのか、あるいは問題があるとすれば、どこに問題があるのかというふうな御議論があれば、ぜひいただきたいと思います。
    どうぞ。
  • 祖父江委員 放射線の線量に基づくリスク、それに基づく健康管理ということだけでなく、放射線とは因果関係は恐らくないであろう心理的な要因に関しても、きちんとそれはフォローしていくというか、実態を把握し、きちんと対策をとっていくべき、むしろそっちのほうが大きい問題だと思います。
  • 長瀧座長 それによって健康診断のあり方も、やり方も全然違ってしまいますので、そこを、まず全体の共有の認識として持ちたいと思います。UNSCEARですらと申しますか、健康影響のところで数行にわたって、はっきりと書いてございますね。
    現実の影響はなかったけれども、避難のために何十人も亡くなった。それから、避難生活のために何人が亡くなっている、この健康状態、あるいは精神的な影響に耐えられなくなった人たちの行動というのは決して無視すべきものではないとはっきりと書いてございます。
    ただ、委員会としては、これは我々の任務ではないからということで、それ以上は書いてありませんけれども、私自身もそれも含めて、それはこの会議の健康という意味ではあると思いますけれども。
    まず、そこを共通の認識として持たないと話がばらばらになっていく。放射線が怖いからこういう検査をやりましょうというのと、放射線のリスクはないんだけれども、心配ならこういうのというので随分科学的な議論が違うと思うんです。
    まず、そこのところを最初にと思ってリスクを申し上げました。
    どうぞ。
  • 阿部委員 私どもの大学が、この県民健康の調査を担当して重点的にやっているところです。例えば健康診査を見ていただくとわかるとおり、この目的にも書いてありますが、これは低線量の被ばくだけの問題だけではなくして、むしろ、その避難された方の避難された地域において、いわゆる社会的環境、生活環境、経済的な環境に基づいて、いろんな問題が生じます。従いまして、例えば生活習慣病もありますし、心の問題等もありますから、それもら含めて、調査あるいは対応するというふうに私は理解しております。低線量被ばくだけの面から、この調査をするということではなくして、避難された方を中心とした生活環境、社会環境、経済的な環境から派生する健康問題や心の問題、それらの原因を含めて調査をすべきじゃないかというふうに、私どもは理解しています。
  • 長瀧座長 そういう立場から言いますと、線量がわからないから、怖いから何をしましょうという議論と、それから本当に被災者の方の健康を願っているというのと、きっちりと、我々は頭を整理しておかないと、ついつい放射線が怖いからやりましょうというものと一緒になってしまうと、かえって議論が難しいと思いましたので。
    それでそのリスクの話を、今日はどうもあまり時間がございませんけれども、もし決められるものなら議論いただいて。
    専門家会議なので、それぞれ専門家の先生として、これは御自由に。この会議での御意見でございますから、お話いただいていいと思いますが、UNSCEARがもう納得できない、ここはどうしてもというものがあれば、ぜひこの委員会で。
    ただ、この委員会がUNSCEARと違いますのは、我々はUNSCEARの報告よりも、もっと日本人として実測値をたくさんデータとして議論してきたということでございます。
    あまりUNSCEARのデータに関して、ただ、将来のリコメンデーションに関して、例えば内部被ばくを調べろと言ったって、もうこれだけ調べていて、これ以上調べようがないというようなところ、会議は当然ありますけれども、いかがでしょうか。リスクに関して、これ以上の議論が、この会議で必要かどうか。
    決して、決めつけているじゃありませんので、ただ、議論が、チェルノブイリのときから経験してますけれども、そこを整理しないと、いつまでも同じ堂々めぐりになってしまって、わからないから怖い、怖いからどうするという、定性的な、いつも決まったような議論になりますので、この専門家会議としては、やはり共通の認識を持っていたほうがいいと思ったので、お話いたしました。
    どうぞ。
  • 石川委員 私のところで御説明いたしました、24年のときに、国会、参議院本会議で、全会一致で可決されたこの法律ですね。そこの8条のところから11条のところにかけて書いてあるんですけれども、国は支援対象地域、そして括弧付けて、その地域における放射線量が政府による避難に係る指示が行われるべき基準を下回っているが、一定の基準以上である地域を言うというようなことで書かれています。これがどこの地域を言うかということが一つ問題になると思います。
    それで、及び支援対象地域以外の地域で生活する被災者、これは遠くに行ってしまった被災者ですね。これはもう明らかに検診する対象になると思うんですけれども、それと支援対象地域以外の地域から帰還する被災者並びに避難地域区域から避難している被災者を支援するため、食の安全・安心の確保に関する施策、子ども学習等の支援に関する施策、就業の支援に関する施策、移動の支援に関する施策等々、つながるんです。
    先ほど、私は、松戸だとか、ほかのところのホットスポットのところの検診というのも、どうやってこの有識者会議で判断するのかということは明確に出すべきだというふうに思います。それを議論していただいて、要するにそういう声があるわけですから、そのことに対してやっていただきたい。それを、この叩き台の中で、今、リスク評価というような形でまとめられていますけれども、その後でもいいですから、こういうところはきちんとやっていただきたいというふうに思います。
  • 長瀧座長 一番はっきりしていますのは、この法案ができたときと今と、線量の評価が全然なかった時代と線量の評価がどんどんとできてきた、リスクに対しても科学的にものが言えるようになってきたというのは、非常に大きな違いだと思うんですね。それは今の段階での科学的な知識に応じて、この日本の専門家としてどう対応するかということは、それはすごく我々の大きな責任だと思いますので、非常に今、十何人のこの議論はすごく大きな影響があると思います。それぞれ責任を持って、もし同意できないんだったら、ぜひはっきりと申し上げて、お話しいただいたほうがいいと思うんですが。
    どうぞ。
  • 伴委員 UNSCEARの評価ということですが、この評価についてもいろいろ問題点が既に指摘されています。経口摂取に関して、多分過大評価になっているだろうという指摘がありますし、一方で、経口摂取で考えていない、考慮に入っていない成分もあります。吸入摂取に関しても、それが過大であるのか過小であるのか、そこはUNSCEAR自身も可能性としてどちらもあり得るということを言っています。
    ですから、その意味で線量がかっちりと決まるほどの確度はないわけですけれども、ただ、先ほど来議論になっている、いろいろなデータ、実測値等を基に眺めていったときに、そんな極端に高い線量ではないだろうと考えられます。具体的な例を出せば、チェルノブイリの事故のように非常に高い甲状腺の線量がもたらされたという次元ではないだろうと。多分それよりは桁違いに小さいであろうから、仮に疫学調査を、全体を対象にやったとしても、何か違いが検出できるような状況ではなかろうというUNSCEARの結論に関しては、私もそうだと思います。
    ただ、UNSCEARが評価しているのは、前回も申しましたけれども、あくまで代表値です。個人差ということはそこには入っていませんので、中には、高い被ばくを受けた人たちもいるはずなんですね。ですから、そういった幅と言いますか、それがどれぐらいまであるのかということは、やはり今後もいろいろな形で、できる限り線量の再構築に努めるべきだと思いますし、特にそういう方たちに対して、然るべきサポートが提供されるべきだと。それは何も、やみくもに検査をするということではないですけれども、医療面も含めて、しかるべきサポートが考慮されるべきだと思います。
  • 長瀧座長 ありがとうございました。
    もうおっしゃるとおりで、個人線量がないということが、今、我々の議論と一番大きな違うところですね。数は少なく限られているかもしれないけれども、個人線量を含めて、我々ここで議論したというのが、一番UNSCEARと違うところ。チェルノブイリの議論とも全然違うレベルで我々はここで議論してきているということだと思います。
    ただ、じゃあその個人線量で議論した範囲で、それを超える人がどれくらいいたかというときに、その幅を超える方が何人かいたときに、それに従って対応する検査を変えるかどうかということも、我々の決定する非常に大きな義務ではないかと思います。
    あるいは議論しなければならない、責任を持たなければならない点であると思いますので、何かございましたらどうぞ。
  • 鈴木委員 UNSCEARのレポートのいいところは、もしあるとして、どういう疾患が、リスクが高まる可能性があるかということと、これは絶対上がらないよという形の区分けがある程度できていることだと思うんです。
    一番可能性があるとしているのは小児甲状腺がんで、もしかすると、今、伴先生がおっしゃったように、個人的な行動の違いによっては内部被ばくも高い人がいるかもしれない。ただ、相対として見たときは、集団として本当に疫学的に増加が見えるかどうか、ぎりぎりのものだというような評価なんだと。私もそれはそうだと思います。
    次に挙げているのが、乳がんと白血病になってくるわけですが、その他のがんになってくるとほとんどない、あるいは循環器疾患とか、腎臓も含めてだと思いますが、そういうものに関して、あるいは遺伝的な影響に関して、それは、この被ばく線量では起きないという形で明確に書いてあると思います。
    私たちは、やはりそこも押さえていかないと、何でもかんでも見てしまうということになりかねないし、今までの、例えば東海村JCO事故の後で、まだ村民の検査をやってますが、村民たちは被ばく線量は低かったんですが、毎年がん検診をやっているものだから、自分たちは放射線によってがんが増えると信じている人がいっぱいいるんですね。
    やっぱり、いろんな医療サービスを行っていくというときに、必ずそういう、何でこのサービスをしているかということが住民に正しく伝わらないと、かえって違う健康不安を出してしまうということがあるかと思います。
    甲状腺のエコースクリーニングについては、今日はあまり時間がないので言いませんが、やはり50%近い人に所見が出てしまって、中には全く良性の変化なんだけれども不安に思ってしまって、次の検査をまた求めていくというような方が出てきてしまっている。こういうネガティブな面もあるということを十分理解した上で、私たちはどういう検査のあり方がいいのか、あるいは、どういうサポート体制がいいのかということを議論していく必要があるかと思います。
  • 長瀧座長 どうぞ。
  • 丹羽委員 線量に関しての健康リスクというのは、全くおっしゃるとおりで、そのプラスアルファ、今、鈴木先生がおっしゃったこと、それから先ほど阿部先生が述べられたことですが、やはり今回の事故が教えてくれたことは、量的にはUNSCEARもWHOも--WHOは少し高いんですが、それでも随分低いという評価でありました。
    ただ、既に県民健康管理調査で明快になっておりますが、放射線とは直接関係のない疾患因子、疾患そのものじゃないですが、そういうものが非常にやはり悪い方向に動いているというのも、これまた事実であります。
    そうすると、ここの事項の教えてくれることは、やはり、そういうふうな社会的なインパクトからもたらされる物事まで考えなければならないというふうなことであろうかと思います。
    そのような余波をかぶった方々は、福島にもちろんおられますし、福島の外にもおられると思います。国として、我々専門家としても、やはりこういうことが起こる、そういうことに対してどういう手段が我々オファーできるかということを、やはり考え、それをまた国に対してもこういうふうな形でアプローチするのがいいんじゃないですかということまで言うことができればと思っております。
    だから、非常に広がりの大きい事故であるということで、それに尽きると思いますので、よろしくお願いします。
  • 長瀧座長 今後もまだ続いてあると思いますので、今日、どうしてもという方がいらっしゃらなければ、これでいいですね。最後に何かまとめがありますか。通達がありますか。
  • 前田補佐 ありがとうございました。
    専門家会議としての健康リスク評価等につきましては、引き続き御議論いただくことをお願いいたします。
    次回に関しましては、第8回の専門家会議は7月16日を予定してございます。その際、先生方以外の専門家の先生も含めて、多数ヒアリングをお願いしたいと考えてございますので、どうぞよろしくお願いしたいと思います。
    また、先生方には、8月まで日程を、今の御都合をお伺いして、日程調整、次の会、それ以降の会議の調整を進めてございますが、念のため、9月の御都合についてもお尋ねさせていただきたいというふうに思ってございますので、9月の御都合につきましても、また事務局まで、御負担をおかけして恐縮ですけれども、御教示のほど、何とぞよろしくお願いいたします
    また、本日の議事概要及び議事録につきましても、後日公開とさせていただきますので、事務局から案をお送りさせていただきますので、後日御確認をお願いいたします。
    事務局からは以上でございます。
  • 長瀧座長 今日は、かなり御議論いただいたのも、本質的なところに近い議論であると同時に、我々自体も、自身の責任も、この委員として感じなければならないというところまで来まして、決して今日で結論をつけるつもりはございませんので、また引き続き、いろいろと委員として責任ある発言をお願いして、今日は終わりにしたいと思います。
    どうもありがとうございました。

午後7時31分 閉会