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化学物質と環境円卓会議(第18回)議事録

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■日時:平成18年10月29日(日) 13:00~16:00
■場所:埼玉県産業技術総合センター 多目的ホール
■出席者:(敬称略)
<ゲスト>
  小川 和雄 埼玉県環境科学国際センター研究企画室副室長
  石田 好広 東京都江東区立東雲小学校主幹
  嵩  一成 日本チェーンストア協会環境委員
<学識経験者>
  原科 幸彦 東京工業大学大学院総合理工学研究科教授
  安井 至 国際連合大学副学長
  <市民>
  大沢 年一 日本生活協同組合連合会組織推進本部環境事業推進室長
  有田 芳子 主婦連合会 環境部長
  中下 裕子 ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議事務局長
  村田 幸雄 (財)世界自然保護基金ジャパン シニア・オフィサー
  角田 季美枝 バルディーズ研究会運営委員
  後藤 敏彦 環境監査研究会/環境報告書ネットワーク代表幹事
 崎田 裕子 ジャーナリスト、環境カウンセラー
 <産業界>
 瀬田 重敏 (社)日本化学工業協会広報委員会顧問
 豊田 耕二 (社)日本化学工業協会 常務理事 (中塚巌代理)
 永合 一雄 日本石鹸洗剤工業会 環境委員 (吉村孝一代理)
 小澤 義一 (社)日本電機工業会 (社)電子情報技術産業協会2005年事業所関連化学物質対策専門委員会副委員長
 八谷 道紀 (社)日本自動車工業会 環境委員会・地球環境部部会長
 <行政>
 岩渕 準 愛知県環境部技監
 佐々木 弥生 厚生労働省医薬食品局審査管理課化学物質安全対策室長(黒川達夫代理)
 吉田 岳志 農林水産省大臣官房審議官
 照井 恵光 経済産業省製造産業局次長
 上田 博三 環境省環境保健部長
  (欠席)
北野 大 明治大学理工学部応用化学科教授
岩本 公宏 (社)日本化学工業協会 環境安全委員会委員
   (事務局)
青木 龍哉 環境省環境保健部環境安全課長
■資料:
○事務局が配布した資料
資料1 「光化学オキシダントの植物影響調査」による環境教育(小川さん発表資料) [PDF(763KB)]
資料2  化学物質と環境に関する教育 ~ 小学生の実態と今後の教育の方向 ~(石田さん発表資料) [PDF(276KB)]
資料3  生活者教育における流通業の可能性(嵩さん発表資料) [PDF(337KB)]
別添  エコ・ニコ学習会ガイドブック(嵩さん資料)[PDF3MB]
○事務局が配布した参考資料
参考資料1  第17回化学物質と環境円卓会議議事録(メンバーのみ配布) [HTML]
参考資料2  化学物質と環境円卓会議リーフレット [HTML]
○円卓会議メンバーが配布した資料
上田さん資料1  「かんたん化学物質ガイド わたしたちの生活と化学物質」[PDF(9.4MB)]
上田さん資料2  「かんたん化学物質ガイド 乗り物と化学物質」[PDF(11MB)]
上田さん資料3  PRTRデータを読み解くための市民ガイドブック*[PDF(2MB)]
上田さん資料4  紫外線保健指導マニュアル*[PDF(2MB)]
上田さん資料5  熱中症保健指導マニュアル*[PDF(850KB)]
上田さん資料6  花粉症保健指導マニュアル*[PDF(3.6MB)]
豊田さん資料1  地球の未来を化学が作る*(日本化学工業協会のページへ)
豊田さん資料2  最新環境教育(CO2等)授業テキスト/緑の化学グリーンケミストリー * [PDF(656KB)]
豊田さん資料3  「夢・化学-21」キャンペーン* [PDF(1MB)]
豊田さん資料4  Challenge to "International Chemistry Olympiad"国際化学オリンピック*[PDF(1MB)]
豊田さん資料5  プラスチックとプラスチックのリサイクル*[PDF(1MB)]
豊田さん資料6  プラスチックリサイクルの基礎知識2006*[PDF(8MB)]
豊田さん資料7  化学産業は地球温暖化対策に積極的に取り組んでいます *[PDF(688KB)]
  *メンバーのみに配布


■議事録

1.開会

(青木)   時間もまいりましたので、まだメンバーの方で御出席いただいていない方もおられますが、開始させていただきます。
   私、事務局を務めさせていただいております環境省環境保健部環境安全課の青木でございます。本日は、お忙しい中をお集まりいただきありがとうございます。それでは、第18回化学物質と環境円卓会議を開催させていただきます。
   まず、この円卓会議は、化学物質の環境リスクに関する情報を市民、産業、行政、学識経験者間で共有し、相互理解を進めるために、平成13年に設置されたものでございます。できるだけ幅広い方々に、また、各地で御参加いただけるということ等を考えまして、各地域で実施しております。最近ですと、愛知、福島、東京となりまして、本日は埼玉県での開催ということでございます。この開催に当たりましては、埼玉県の方々に大変御協力いただきました。この場をおかりして感謝を申し上げたいと思います。
   それでは、本日は、安井さんに司会をお願いしてございますので、今後の進行につきましては、安井さんにお願いいたします。よろしくお願い申し上げます。

(安井)   それでは、ただ今から第18回化学物質と環境円卓会議を開催させていただきます。振り返りますと、17回は、お手元に議事録がございますが、18年2月21日ということで、だいぶ日があいておりますが、恐らく今年はいろいろな事情がございまして、契約等がうまくいかなかったのではないかと思います。いずれにしましても、第18回ということでだいぶ長く続いておりますが、本日もご発表と意見交換を行わせていただきたいと思います。
   まず、本日の進行でございますが、3人の方から御発表いただきまして、それから休憩をはさみまして、メンバーで意見交換をしてまいりたいと思います。
   御発表いただきます3人の方でございますが、最初に埼玉県環境科学国際センター研究企画室副室長の小川和雄様、続きまして、東京都江東区立東雲小学校の主幹・石田好広様にお願いいたします。そして3番目に、日本チェーンストア協会環境委員の嵩一成様にお願いしたいと思います。
   議事に入ります前に、事務局の方から本日の出席状況等と資料の確認などをお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

(青木)   それでは、本日の御出席の状況、また、メンバーの交代等がございましたので、その御報告をさせていただきます。
   まず、メンバーの関係でございますが、産業側で越智徹さんに代わりまして小澤義一さんにお入りいただいております。
   また、行政側では片桐佳典さんに代わりまして岩渕準さん、塚本修さんに代わりまして照井恵光さん、滝沢秀次郎さんに代わりまして上田博三さんに新しくお入りいただいております。
   また、代理としての出席でございますが、産業側で中塚巌さんに代わりまして豊田耕二さん、吉村孝一さんの代理としまして永合一雄さん、行政側でございますが、黒川達夫さんに代わりまして佐々木弥生さんでございます。
   なお、産業界のほうで岩本公宏さん、学識経験者のほうで北野大さんが御欠席となっております。
   続きまして、配布資料の確認でございます。まず資料でございますが、資料1が小川さんの発表資料、資料2が石田さんの発表資料、資料3が嵩さんの発表資料でございまして、別添として「エコ・ニコ学習会ガイドブック」を付けてございます。
   次に、参考資料でございます。こちらは部数の関係で円卓会議のメンバーの方に原則として配布してございますが、参考資料2上田さん資料12と原科さん資料、これは新聞のコピー(2006年6月17日付け 朝日新聞)でございますが、これらにつきましては、会場の方も含めて配布させていただいております。
   参考資料1は、前回の化学物質と環境円卓会議の議事録でございます。これは、環境省のホームページに既に掲載されておりますので、そちらの方でも御覧いただければと思います。
   参考資料2は、「化学物質と環境円卓会議リーフレット」ということで、この円卓会議の趣旨や、本日メンバーとして御参加いただいている方々の御略歴等を記載させていただいております。
   上田さん資料1~6につきましては、環境省の方で昨年度作成し、今年度出来上がったパンフレット等でございます。
   豊田さん資料1~7は(社)日本化学工業協会の豊田さんからご提供いただいた資料でございます。
   原科さん資料は、先ほど紹介いたしましたが、本年6月17日付け 朝日新聞のコピーでございます。
   特にこの中で上田さん資料12は、会場の方も含めてすべての方に配布させていただいております。本日の「環境教育」という観点で、環境省として、子供向けの資料ということで作成したものでございまして、漢字にはルビを振り、また、絵を多くして見やすいものにするといった工夫をしております。これについては、今後も各年度2つ程度の分野を対象として、作っていきたいと考えております。
   また、本日、会場の方にはお配りしていない資料につきましても、入り口の方に若干余部を置いてございますので、必要な方はお持ち帰りいただければと思います。よろしくお願い申し上げます。
   以上でございます。

2.議事

(安井)   ありがとうございました。それでは、早速ですが、議事に入りたいと思います。今、御紹介ございましたように、今回の議題は「化学物質と環境に関する教育」でございます。特に子供達を対象とした教育及び地方公共団体等における取組等々について議論をさせていただきたいと思います。
   3名のゲストスピーカーに大体20分程度、お話をいただき、その後、5分間程度の短い質疑応答を持ちたいと思います。休憩をはさみまして、全体討論に入りたいと思っております。
   それでは、早速ですが、小川様から最初の御発表をいただきたいと思います。小川様、よろしくお願いいたします。

(小川)

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   ただ今御紹介いただきました環境科学国際センターの小川です。どうぞよろしくお願いいたします。
   御紹介いたしますテーマは、「『光化学オキシダントの植物影響調査』による環境教育」でございます。従来こちらの円卓会議でやられていた化学物質とは若干ものが異なりますが、人為的な原因で生じる光化学オキシダントを対象としております。しかも、埼玉県は、日本一、光化学オキシダントの高濃度の県であるということも知られております。そのような関係で、私どもは、30年来、光化学スモッグの植物影響についてモニタリングをしてまいりました。さらに、昨年から県民参加でこのような調査をやろうということで、取組を始めました。意外に反響が大きいということで、その取組の内容と光化学オキシダントの植物被害の実態について、御紹介させていただきたいと思います。


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   環境教育は法制化されておりまして、持続可能な社会をつくるためにも必要不可欠なものと思います。持続可能な社会をつくることは、なかなか簡単にできるものではないと思います。例えば、皆さんよくご存知の地球温暖化も、人為的な炭酸ガスの排出量が既に海や森の吸収量の2倍にもなっております。何とかしようと思えば、直ちに半分にしなければならない。そのような実態に至っているわけです。持続可能な社会を維持するためには、必ず健全な生態系、それをつなぐ健全な物質循環というものが順調に進んでいなければなりません。そのためには、人々に関心を持っていただいて、理解を深めていくという形での環境教育の取組が必要になってまいります。


スライド3

   化学物質といいますと、何となくイメージ的に近づきがたいような、難しいような感じがいたします。このようなものを知るということで、入り口のわかりやすさが非常に大切ではないかと思います。本日、御紹介するアサガオ調査は非常に入り口がわかりやすいものといえると思います。


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   光化学オキシダントの植物影響を考えるのは、最初から光化学オキシダントを説明しますと、また大変なもの、難しいものといった感じがいたします。自動車や工場から出た窒素酸化物や炭化水素が光化学反応によって、オゾンを主成分とした酸化性物質になっていくのですが、それを最初から説明しても非常に近づきがたいと思いますので、影響から見てみようということです。


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   アサガオ調査を考えてみますと、まず、光化学オキシダントという化学物質の影響が誰にでも簡単に実感することができ、しかも、大人から子供まで体験することができます。また、やった結果、そのインパクトが非常に大きく、誰でも被害を見ると驚いてしまいます。さらに、調査に取り組む過程で説明会や報告会を開催する中で、身近な大気汚染から地球環境問題まで総合的な展開が可能な材料でもあるといえます。また、役所としては、皆さんが参加することによって、より詳細な被害分布が把握できるというメリットがございます。


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   何故、今、アサガオ調査か?ということですが、ご存知の方も多いと思いますが、今、世界規模でオゾン濃度が上昇しております。特に東アジアや日本の関東地方で著しいものがございます。現実に、植物影響の大きさは地球温暖化の進行と相まって、持続可能な社会の実現に大きな障害になる可能性も秘めております。また、従来、酸性雨の影響という形で報道されていた世界の樹木衰退の一因にもなっております。一方、一般市民は、「光化学スモッグ注意報」という名前はほとんどの方がご存知です。しかし、その内容については情報が不足している状況であると考えております。


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   何故、埼玉県でこの調査をやっているかと申しますと、これは環境省のホームページでございますが、御覧のように、関東地方が光化学スモッグ注意報の発令回数が断トツに多い。中でも、今までの発令回数を全部合計すると、埼玉県が最も著しいところでございます。


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   ちなみに、これは平成16年度の注意報基準の0.12ppmを超えた出現日数のランキングです。赤の丸で示してありますように、埼玉県が上位になっております。昨年は埼玉県でも光化学スモッグ注意報ではなく、警報が発令されております。


スライド9

   もう1つは、先ほど申しましたように、オゾン濃度が年々上昇していることがあります。100年前に比べて4~5倍に上昇しているという論文もございますが、少なく見積もっても2倍以上は上昇しております。しかも、東アジアでは原因物質の窒素酸化物の排出量が年々増えております。従いまして、今後も光化学オキシダントは上昇していく可能性が十分あるわけです。


スライド10

   これは、東京都の報告書のコピーですが、0.06ppm以上の光化学オキシダント濃度が出現した時間数の推移です。御覧のように、1990年以降ずっと増加しております。しかも、0.10ppm以上の頻度が増えているということがわかります。


スライド11

   これは植物への影響を見るためのAOT30(注、Accumulated exposure to O3 over a threshold of 30 ppb)、AOT 40(注、Accumulated exposure to O3 over a threshold of 40 ppb)という指標でございます。30ppb、あるいは、40ppbを超えた値を積算したものでございますが、例えば埼玉県の一般環境局のAOT30を計算してみますと、過去20年間で濃度が2倍になっております。


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   これは電力中央研究所で昨年発表したものでございます。AOT40を全国と関東地方で集計してみました。AOT40になりますと、1980年以降3倍ぐらいになっております。したがいまして、植物へ影響するレベルだけで見てみますと、単なる平均値よりは非常な速度でオゾン濃度が上昇しているということを示しております。


スライド13

   さて、どのような調査をするかということですが、これは簡単です。アサガオの種を5月中旬ぐらいにまき、6月下旬に植えて、7月末に調査します。精度よくしようと思えば、事前に、同じ被害を見て目あわせを行います。
   この方法は1973年~97年まで1都9県で共同調査が行われていたという経緯がございます。


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   これはそのときの風景で、このようにして同じものを見て、どういう評価をするかで自分の位置づけがわかるようになっております。


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   これは、被害の出ているアサガオの例でございます。葉っぱ全面に被害が出ていると100%と、半分なら50%と評価します。誰が評価しても±10%ぐらいには入ります。また、子供達に評価してもらうのでしたら、被害があるかないかだけでも結構です。それでも、それなりの成果は得られます。


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   これは埼玉県のデータでございます。下の段は、被害発生地点率と書いてありますが、 10カ所調べて10カ所被害があれば100%とします。ほとんどの年で100%の被害が出ているというのがおわかりいただけると思います。


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   これは横軸にオゾンの濃度、縦軸に被害葉率といって、調べた葉っぱの枚数のうち何割に被害があるかを示したものです。御覧のように、平均値では直線関係になります。ただ、場所によって、標準偏差をとってありますように、ばらつきが非常に大きくなっております。これは植物の特徴といえます。


スライド18

   これは同じ1都9県の調査でございます。埼玉、東京の多摩、群馬、栃木南部が被害がひどいということがおわかりいただけると同時に、長野、山梨、静岡にまで被害が出ている様子がおわかりいただけると思います。これが年々上昇していくということです。


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   これは今年、104地点の調査を行いまして、その結果をまとめたものです。一番上の段だけで見ていただきますと、104地点で104カ所全部で被害が出ておりました。また、被害葉率が54%というのは、54%の葉っぱに被害が出ていましたということで、どなたがどこでやっても必ず被害を見ることができる、そのぐらいの状況になっているといえます。


スライド20

   今のものを内挿法で地図にしたものでございます。埼玉県の南部は被害が少なくて、西部とか北部で被害がひどいということで、これも参加された県民の方々の期待を裏切るデータです。常にこのような傾向を示しておりまして、気象条件によって北部がひどいか、西部がひどいかという違いはありますが、南部は常に低いというのが埼玉県の傾向でございます。


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   今まで説明いたしましたように、県民参加型のアサガオ調査をやってみますと、誰でも被害を見ることができますので、翌年もやりたいということになります。先ほどの地図で示しましたように、何故、緑の多い県北部や西部で被害が多いのか、皆その説明を期待するようになります。アサガオ調査は、やってみますと反響の大きいものでございまして、様々な方が調査に参加されるようになってきております。また来年も参加したいと予約される方もいらっしゃいます。


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   また、このようなオープントップチャンバーを使った実験をすると、生長の影響も分かります、という説明をいたします。御覧のように、アクリルの箱で、片方の箱には活性炭を通した空気、もう片方の箱には防塵フィルターのみを通した空気ということで、オゾンだけを取り除いた条件で比較してみますと、次のようになります。


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   3週間育てたコマツナで、右側の写真が、我々が知っている空気で栽培したもの、左側はオゾンを取り除いただけの空気で栽培したコマツナです。コマツナは決して感受性が高い方ではないのですが、これだけの生長影響が出てまいります。


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   これは今年、生きがい大学の方々の参加で、県内7地点で同じような調査を行いました。今年は実は余り差が出なかったのですが、それは、御承知のとおり、今年の6月と7月は非常に日照不足であったためでございます。しかも、6月、7月は注意報が各1回程度ずつ出たのですが、サンプリングの直前ということで、やはり影響が出ない条件になってしまいました。


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   しかし、全部をプロットしてみますと、御覧のような図になります。1つは日最高平均値、1つは昼間の平均値、1つは40ppb以上の積算値でございますが、いずれの指標にしても、あるレベル以上で生長が急激に落ちてまいります。y軸の数字は、浄化区の乾物重を100とした相対値で表したものです。したがいまして、80なら、浄化区の生長に対して、外気の生長が80%だということを示しております。例えば日最高平均値でしたら、約70ppbを超えると生長が急に落ちてまいります。また、昼間の平均値でいえば、50近いところで生長が落ちてまいります。これは学会で発表してもいいぐらいのレベルの結果が得られております。


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   私どもが行った研究をついでに補足させていただきますと、オゾン濃度の調節できるチャンバーでイネを育ててみました。


スライド27

   そうしますと、真ん中の矢印が現状程度の濃度でございます。その濃度で既にほとんどのイネで、おコメの乾物重の低下が見られております。日本米で低下が著しいのはあきたこまちで、約2割、現状の濃度で低下いたします。強いのはコシヒカリで、ほんの数%の低下ですんでおります。一方、外気追随型で1.5倍のオゾンをかけてみた結果が一番右端でございます。AOT40に直しますと、2倍以上のレベルになってしまうのですが、一番ひどいものになりますと、50%も乾物重が減少するものもございます。しかも、その2倍以上というのは、あと数十年で現実に発生する可能性もありうるというレベルです。


スライド28

   今のデータをもとに、1990~2000年のイネの減収率を地図上で求めてみると、このようになります。千葉の銚子の方では余り影響はないのですが、埼玉、東京の多摩、群馬、栃木南部では5%程度の減収が起こっていることが推定されます。


スライド29

   今、速いスピードでアサガオ調査の結果を御紹介いたしましたが、このようなことをすると、この枠の中のことが説明しやすくなります。例えばオゾンと聞いたとき、オゾン層というのは我々の味方ではないのかという疑問が生じることがありますが、近くにいると、大変な酸化性物質で植物に影響があるものだということです。オゾン層というのは、自然に放出された酸素が光の力でできたオゾンだけれども、対流圏のオゾンは光化学反応で、窒素酸化物や炭化水素が反応してできてくるもの、そういうような説明ができます。また、どういうところがひどい汚染になるかということでは、大気汚染全体の仕組み、移流・拡散の仕組みなども説明できるようになります。もちろんオゾンの影響というのは、この調査で自ら葉っぱに被害が出るということを見ているわけですから、非常に受け入れやすいものでございます。
   さらに、オープントップチャンバーの実験では、成長が5%程度は簡単に下がってしまうことが分かります。将来、例えば温暖化で日本の小麦やトウモロコシを輸入しているところがどんどん乾燥化していって、なかなか輸入ができなくなったときには、この5%が非常に大きく影響してまいりますので、そのような食糧問題との関連でも大切なものであります。特に東アジア地域のオゾン濃度の上昇というのは著しいものがございまして、中国は小麦の生産量世界一ですが、そのような地域で収量が落ちてくると、世界の食糧需給に大きな影響をもたらす可能性があるわけです。しかも、光化学オキシダントというのは、温暖化とか、現在、都市部のヒートアイランド現象の進行とともに発生しやすくなるものですので、しっかりとした対策をとらなければ大変なことになってしまうということも考えることができます。
   以上、非常に速いスピードで御説明いたしました。目に見えるアサガオの調査をすることによって、非常に関心を得ることができますし、実感することができます。そのため、様々な環境教育に寄与することができるということで、報告をさせていただきました。以上でございます。


(安井)   小川様、ありがとうございました。それでは、数分間でございますが、メンバーの方から何か御質問等はございますか。

(原科)   どうもありがとうございました。大変興味深い御発表でした。このような調査を昨年から県民参加で始められたのは2003年に環境教育の推進に関する法律(注、環境の保全のための意欲の増進及び環境教育の推進に関する法律)ができたことと関係しているのですか。

(小川)   特にそういう自覚はありませんでした。

(原科)   実は昨日、関西大学で日本不動産学会の第22回大会がありました。そこで私は、埼玉県で2~3年前から住民参加でやっておられる綾瀬川流域の水質モニタリング調査の事例を発表してきました。埼玉県では、そのような住民参加型の活動を積極的に進めておられるので、そのような先行的な活動と関係があるかと思ってお聞きしたのですが、そういった関係はございますか。

(小川)   特に関係はなく、調査地点を増やしたいというこちらの要求と、調査に参加されていた方が最初は20人だったのが、50人を連れてくる、そういう形で倍々で来ているということです。

(原科)   もう1ついいですか。先ほど「目あわせ」というのがございましたね。この目あわせ、というのは、実際に皆さん一緒に見て、どのぐらい被害を受けているかというのを大体目測でやるのですか。

(小川)   はい、そうです。これは必ずしも全員がやっているわけではありませんが、目測で、同じアサガオについている葉を1枚1枚、葉っぱ全体の面積に対して何割ぐらい被害が出ているかというのを評価し合うんです。そうしますと、平均値では、平均値±10%にほとんどの場合が入ります。20人ぐらいいますと、たまに完全に飛び離れているという方もいらっしゃいますが、被害があるかないかという点に関しては余り間違いがございません。

(原科)   わかりました。

(安井)   ありがとうございました。ほかにございませんか。瀬田さん、どうぞ。

(瀬田)   ひとつお伺いしたいのですが、これはむしろ原科さん、安井さんにお伺いした方がいいのかもしれません。まず、埼玉県はなぜ日本一の光化学オキシダント高濃度県なのか、これについてどういう解釈が行われているのか。
   2つ目が、大体風が吹いていると思うのですが、風が吹いて、なおかつ濃度が高いということは、どこからか集まってくるからなのか、あるいは吹き飛ばされてもその地域からさらに多く出てくるということなのか。
   3つ目は、アサガオを使うというのは、大変興味深いし、非常に面白い活動をしておられると思って感心しておりますが、アサガオの変化が本当にオキシダントと対応するのか。例えば、温度の問題、つまり、東京都心に比べて、例えば熊谷などは大体いつも2~3℃高いという感じがしているのですが、温度が非常に高くなっているところと今回の被害が出ているところが一致してないかどうか。オキシダントと温度との関係がつながっていないか、こういったことについてお聞きしたいと思います。

(小川)   順不同でお答えさせていただきます。アサガオの被害というのは、実は1970年頃から報告されております。当初は1都3県で原因を十分検討いたしました。ロサンゼルススモッグのときに植物が枯れたということがあり、オゾンのばく露の試験をすると、同じ症状が出たとことから、光化学オキシダントの被害に間違いないことが確認され、1973年以降、1都3県から1都9県に発展する共同調査として続いております。他の被害症状はふ入りのアサガオと間違いやすいところもございますが、光化学オキシダントのアサガオ被害というのは、どなたが見ても、一度見ると間違いようがないということがございます。
   それから、何故、埼玉県が高濃度なのかという点については、東京都の大気汚染物質が夏になると海風で移流してきます。移流しながら紫外線で反応して光化学反応を起こしながら埼玉県の方に流れてくるわけです。一度、窒素酸化物と炭化水素が反応してオゾンがつくられても、余りにNOが多いと、生成したオゾンがまたつぶれて少なくなります。そのため、東京都心では注意報が出にくくなります。そのような大気汚染物質が流れてくるのですが、20数年前は埼玉県南部の被害がひどかったのですが、現在ではより北部にまで移流し、被害がひどくなるということがわかりました。

(瀬田)   その地域の温度の影響についてはいかがですか。

(小川)   熊谷が非常に温度が高いということがございますが、もちろん光化学反応を進める上では、日射量とか温度が高いというのは重要なファクターになります。全てが東京の汚染物質というわけではなく、埼玉県内の汚染物質も含めて、気温が高い、日射が強いと、光化学反応に寄与しますので、植物に被害が出ます。一方、このような植物影響というのは、植物の側からも見る必要がございます。あまり気温が高い日中は実はアサガオはしおれてしまって気孔を閉じてしまいます。そうなりますと、いくら高濃度になっても被害が出ないわけです。そこで、調査地点でのばらつきが出てまいります。逆に、3時頃になって高濃度であると、必ず被害が出てしまいます。

(瀬田)   よく分かりました。ありがとうございました。

(安井)   崎田さん、どうぞ。

(崎田)   すばらしい発表を伺いました。実は、このようなアサガオの調査というのは、小規模のグループ、あるいは、小規模単位では随分実施されていて、私も今、大学生や社会人になった子供が小学生の頃にベランダでやったという経験があります。参加した子供達や生徒たちが本当にいろいろなことを考えるきっかけになる、すばらしい環境教育の場づくりだと思います。
   質問ですが、実はそのような少人数のところでやると、全体の傾向を分析したり、生徒たちにフィードバックして、何故そうなったのだろうか、きちんと考えたり調べたり、あるいはそんなふうに葉に影響が出ないようにするにはどうしたらいいのかと、次の年に継続調査するといった活動ができない。今回、埼玉県が県という単位で取り組んでくださったということで、私はぜひそのような継続的なことを支援していただけると大変うれしいと思っています。環境教育というのは、現在の傾向を調べて感じるだけではなく、どのように環境負荷低減に実際に子供達が参画し、問題解決能力を実感していくか、そこが非常に大事だと思います。ぜひその方も計画してほしいと思いますし、既にそういう計画があるなら教えていただきたいと思います。

(小川)   先ほど申し上げましたが、埼玉県は、30数年間この調査を続けております。ただ、県民参加で始めましたのは昨年からです。この形での調査はずっと続けるという予定でおります。昨年は700鉢をつくりまして皆さんにお配りしたのですが、これ以上増えていくと大変ですので、今度は種からつくっていただいて実施しようと考えております。毎年、説明会を日曜日などに、いろいろな場所でやっておりますし、報告会も2月に予定しております。ですから、連絡をいただければ、そのような資料の送付、いろいろなデータの紹介など、続けていけると思います。

(崎田)   私が申し上げたかったのは、環境負荷削減に向けてどういうふうに参加できるか、ある程度そういう道筋をつけていくのが、今の時代の環境学習にとって大変大切だと思ったものですから、発言させていただきました。

(安井)   それでは、小川様、ありがとうございました。
   続きまして、東京都江東区立東雲小学校の石田好広様より御発表いただきたいと思います。

(石田) 

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   こんにちは。江東区立東雲小学校の石田と申します。よろしくお願いいたします。


スライド2

   私は、今回「ケミストリーカードゲーム」を考案した関係でゲストスピーカーとして呼んでいただきました。そのゲームを考案するきっかけについて最初にお話をしたいと思います。
   実は、平成14年度、15年度の2年間、研修の一環として環境省と東京都環境局に勤務する機会がありました。その中でいろいろな仕事をさせていただきましたが、半分近くは「訪問学習」対応でした。訪問学習は、総合的な学習の中で環境について関心を持った子供達が質問をしに来るというもので、その子供たちの対応をしておりました。その対応の中で、地球温暖化、ごみの問題などには子供達は非常に関心を示しているのに、化学物質に関しては関心が薄いなという感覚を持ちました。


スライド3

   実際、質問件数もかなり少なかったように思います。その当時のデータは残っていませんので、「gooランキング」(検索件数のランキングが調べられるもの)の中で環境についてのサイトからご説明いたします。それを見ますと、化学物質というのは、いろいろなものに関わりがあるのですが、化学物質として調べている、例えばダイオキシンが27位、愛・地球博が100ポイントだとすると、12.3ポイントとなっておりまして、関心の低さがこのデータからもおわかりになると思います。


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   そのように関心が低いと感じる一方で、実際に質問が来ますと、どう説明すればいいのか、化学物質というのは非常に難しいという感じがしました。では、分かりやすい資料はないものかということで、環境省時代に省内や都庁でいろいろな資料をかき集めたのですが、専門家の方が分かるような資料はたくさんあるのですが、子供向けの資料というのはほとんどございませんでした。
   そこで、このままではいけないと思いまして、子供でも分かる、そして楽しく学べるような化学物質の教材を作る必要があるのではないかと考えました。


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   で、考案したのが「ケミストリーカードゲーム」です。考案するに当たって、まず化学物質に関心をもってほしいというのが1点目にありました。2点目として、せめて名前だけでも知ってほしいということ。そして3点目なんですが、子供達が環境問題について調べていきますと、化学物質が一方的な悪者になってしまう傾向があります。そうではなくて、メリットとリスクの両面から化学物質について見てほしい。また、そのリスクを回避するための方法を知るきっかけになってほしい。そんな願いを持って考案いたしました。


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   次に移らせていただきます。6年生のクラスの担任の先生に協力していただいて、2クラスでアンケート調査を行いました。アンケート調査の中では主に、本日も配られていますが、「わたしたちの生活と化学物質」という冊子に載っている化学物質や、「ケミストリーカードゲーム」に載っている化学物質を取り上げて、子供達に質問しました。
   アンケート母数が65人とかなり少ないものですから、参考程度にお聞きいただきたいと思います。また、データは、65名で本当は百分率というのは科学的ではないのですが、イメージがわきやすいと思いましたので、パーセント表示をさせていただいております。


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   まず、「化学物質に興味がありますか?」と子供達に問いかけました。このデータで「ふつう」という子が多かったのですが、このような場合、子供達は「ふつう」と書くことが多いので、この数字はむしろ興味がない方にカウントすべき数字ではないかというように私は受け取っております。興味がある子が23ポイントです。


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   次に、いくつかの化学物質を列挙しまして、その化学物質について、どんなことに使われているか知っているもの、また、聞いたことのあるものを質問しました。この中で、クエン酸については、使われ方が半分の子は分かっていて、かなりの子が「聞いたことがある」と答えています。これについて、追加で調査しましたら、「クエン酸」という言葉を使ったテレビCM等が流れているという子供達の返事が返ってきました。
   それから、次の3つ、ダイオキシン、フロンガス、水銀、これはたぶん環境問題の学習の中で付随してこのような化学物質の名前を知ることがあったのだろうと思われます。ただ、他のものを見ますと、「聞いたことがある」というデータだけでも半分以下に落ち込んでいるものがあり、かなり子供達は化学物質について知らないということがこのデータで分かります。


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   次に、身近な化学物質に絞って、今度は「たくさん使うと人や動物に害のあるものはどれでしょうか。すべて丸を付けてください」という形で問いかけました。殺虫剤、シンナーに関しては、70%ぐらい有害性を認識しておりました。私は、殺虫剤についてはもっと高い数字が得られるのではないかと予想していたのですが、なぜこんなに低いのだろうかと思っています。洗剤、塗料、接着剤に関しては、半分以下というデータが出ております。


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   次に、農薬についての子供達の考えということで、農薬はなくてはならないもの、あるととても便利なもの、なるべく使わないほうがいいもの、使ってはいけないものという、4択で聞いてみました。実はこの学年の子供は2年前に私が担任していた学年で、温暖化であるとか、ごみ問題は熱心に調べていた学年の子供達です。環境についてはかなり関心のある子供達だったものですから、どんなデータが得られるかと思ったのですが、「なるべく使わないほうがいいもの」という回答が非常に多くなっています。


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   これと比較して、カドミウムについて同じような問いかけをしてみました。カドミウムはイタイイタイ病の原因物質だというあたりは、子供達は学習しているようで、そのことの説明と、携帯電話等のバッテリーに使われていますが、「それについてどう思いますか」という回答をしてもらいました。自由記述でやりましたので、内容が複数回答になっております。これを見ますと、あまり使わないほうがいい、使うのをやめよう・なくせばいい、携帯電話を使わない、簡単に、危険性があるならやめてしまうという意見がかなり多いことが分かります。
   次に、感情的な回答、びっくりした・驚いた・不安だというようなこと。「特に考えはありません」という回答もありまして、ただ怖がってしまっていたり、無関心であったり、そういう子供もかなり多いことが分かります。できれば真ん中あたりの「注意して使う・きちんと使う」とか「違うものを使う」、こういう考え方ができる子供に育ってほしいと考えております。


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   まとめますと、やはり化学物質への関心は、決して高いとはいえないということがいえると思います。主な化学物質でも聞いたことすらない子供が多い。それから、化学物質とどう関わっていけばいいかというあたりがリスクコミュニケーションの基礎的な部分だと思うのですが、そこの部分についても十分でないということが分かってきました。
   そこで、学校現場としては、もっと意図的・計画的に学ぶ機会を設定する必要があるのではないかと考えました。


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   小学校現場で化学物質と環境についてどのように学習していったらいいかということで、その可能性について考えてみました。まず、化学物質についての有害性とか危険性を知るという意味で「内容知」にポイントを当ててお話しします。


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   1つ目は、小学校6年生理科で「水溶液」の学習がございます。これは教科書からの抜粋なんですが、身のまわりにある水溶液の扱い方について、「まぜると危険ですよ」というような表示が出ています。ただ、残念ながら、これは発展的な学習の部分で、本来の教材として、こういった身のまわりのものを扱って実験するようなことはございません。意欲的な先生がこのようなところをしっかり扱ってくださるのみにとどまっています。ですから、このあたりをもっと積極的に取り上げていくべきだと考えています。


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   2つ目は保健の学習です。最初のページは、「病気の原因物質として化学物質が関係しています」という内容となっておりますが、左側に「いろいろな病気」と書いてあって、「ダイオキシンが引き起こす病気」と紹介されています。


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   保健の中での学習、たばこの害について学ぶ際の化学物質ということで、タール、ニコチン、一酸化炭素。


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   こちらは薬物中毒です。中学の生活指導上でもかなり問題になっているようで、小学校の教科書にもこのようなものが載せられるようになりました。
   これらは保健学習ですが、この教科書1ページを学習するのに与えられた時間はおおよそ20分程度だと思います。もっと時間をかけて学習できるような体制が整えられるべきだと考えております。


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   3つ目です。小5の社会科、小6の理科の中で、環境問題を扱う部分がございます。左側に出ているような環境問題が教科書の中で扱われます。残念ながら、化学物質についてはほとんど扱われていない状況です。しかし、横断的に考えていきますと、それぞれの環境問題が化学物質と関わっていますので、逆に、そのような観点から化学物質をいろいろな環境問題の中でもっともっと積極的に扱っていくというやり方もあるかと思います。


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   次に、「方法知」と書きましたが、化学物質とどのように付き合っていくか考えるような学習を、どのように行えばよいか、私なりに考えてみました。


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   小学校3年で「スーパーマーケットの仕事と買い物」という学習があります。その中で、いろいろなスーパーマーケットの工夫や消費者としての工夫を学ぶわけです。


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   教科書にはこのようなページがございまして、最も消費者が気にしているのは安全性だという記述が出てまいります。これで終わっているのですが、保護者に対して、「安全性について、どのようなことを気にしながら買い物をしていますか」という調査をしてみました。その結果として、肉も野菜も国産のものしか買わない、あるいは、食品添加物の多い加工品などはなるべく買わないようにするといった回答がありました。このようなアンケート調査を題材に子供達の間で学習したのですが、今まで食品添加物についてはどんなものか全く知らなかった子供達がかなり関心をもって、家庭によって違うのはなぜだろうというあたりまで疑問に思って学習してきました。


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   次です。これが最も今、学校の中でやりやすい授業ではないかと思いますが、農業や水産業の学習です。農業では農薬を使っていますし、水産業では養殖の中で抗生物質を使っています。収量アップと環境との問題を対比して考えさせて、どうあるべきか、子供達に議論させるような授業が組めるのではないかと思っております。


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   最後に、社会科と総合的な学習の時間をあわせて「わたしたちの買い物が世界を変える」という授業を私はやってきました。最初はまず、国内の生産者について調べようということで、農家の方を呼んで、農家の仕事の話を伺いました。農家の人は食べてくれる人の安全を考えて、農薬を最小限に抑えて使っていますというお話をして下さいました。
   次に、NGOの方の協力を得まして、海外の事例としてバナナを作っている人についてお話をしていただきました。フィリピンでは、かなり農薬を使っていて、農作業をしている人にも被害が出ている、という学習をしました。この学習では、子供達から、やはり農薬は減らしていかなければいけないのではないか、また、農薬を使わないバナナもたまには食べるという意見がだされました。農薬を使わないバナナの方が高いということを学習したので、自分のおこづかいだったらどっちかなと真剣に考えたわけです。たまには買わなきゃいけないというのが子供達の考えです。それから、農薬を使っている人に安全な服装で作業してもらう。これはフィリピンの農家の方が軽装で農薬を撒いている事例からきたものだと思います。このように子供達の考え方が構築されていきました。農薬について大変考える良い機会になったのではないかと思います。


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   これから小学校教育で望まれる方向性として、繰り返しになりますが、化学物質について学ぶ機会をもっともっと増やしていくべきではないかということと、有益性とリスクについて考えること、そして自分なりの判断ができるような学習経験や学習スタイルもあわせて増やしていくことが必要だと思います。
   私が環境省からいなくなってからかなり分かりやすい資料ができているのですが、もっともっと小学生が見ても分かるような教材が必要と思いますし、あわせて学習プログラムの開発も大切ではないかと考えております。
   以上で私の発表を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。


(安井)   ありがとうございました。それでは、メンバーの方から御質問等ございましたらどうぞ。後藤さん、どうぞ。

(後藤)   簡単な質問なんですが、地球環境問題と化学物質の対比表がありましたね。そのときにおっしゃった、全体的に勉強しなくてはいけないのではないかというようなコメントと、最後の方向性は必ずしも一致してないと思います。こういった環境問題全体を通じた、私的に端的にいうと、エコロジーでやらないとだめだと思っていますが、最後の方向性は、やはり縦割り的な化学物質の教育というところに行っていると思うのですが、その辺はどう考えておられるのでしょうか。

(石田)   私の中では決して分離しているわけではありません。原因物質を取り上げると、例えば「オゾン層の破壊は、フロンガスが原因だ」で終わってしまうわけですが、そのフロンガスはどんなものか、どんな使われ方をしてきているのか、というあたりまで掘り下げると、化学物質の学習になると考えます。

(後藤)   分かりました。

(安井)   崎田さん、どうぞ。

(崎田)   小学校の現場では、理科や社会など、それぞれの分野の専門の先生、あるいは、そのような分野の知識の豊富な先生はそれなりにいらっしゃると思いますが、将来のことを考えながら、暮らしの中の化学物質がどのような影響を与えるか等に関して、どのように子供達に伝えていったらよいか、そのようなことを情報としてしっかりつかんでいらっしゃる先生が少ないように思います。それは先生の責任というよりは、そのような情報提供、今、教材というお話がありましたが、教材だけではなく、どう伝えるかという先生方の研修などが少ないのではないかという気がします。おそらく教材の開発やプログラム開発の先には、先生方の研修、または、地域社会の中でそのようなことを伝える活動をしている人たちが学校のプログラム作りに連携するといった発展が必要なのではないかという感じがしました。
   公立の環境学習センターの管理・運営の責任をとっている場所があります。今、私はそこで、その地域の小学校で、例えば1学期30時間分のプログラム作りなどの御相談を受けたりすることが多いのですが、地域と学校が連携しながら、様々な暮らしやまちに関わる環境分野についてプログラムを作っていく、そのような相補的な場づくりが必要なのではないかという気がしております。現場の先生としてのコメントをいただければ大変うれしいと思います。

(石田)   環境教育推進法(注、環境の保全のための意欲の増進及び環境教育の推進に関する法律)というお話が先ほど出ましたけれども、あの法律ができても、学校現場では環境教育は全く進んでいないと私は思っています。ましてや、その中での化学物質はマイナーな分野になると思います。小学校の現場の先生で化学物質について意識して授業されている方は一体何人いるかというと、まずほとんどいないと思います。ですから、崎田さんがおっしゃったように、教員に対しての研修はまず必要だと思いますし、また、最近、企業やNPOと学校との垣根がかなり取り払われてきていますので、そのあたりで企業さんやNPOさんからもっと学校現場の方にアプローチしてもらって、このような学習を進めていただければありがたいと考えております。

(原科)   ケミストリーカードゲームのお話をされていましたが、これは対象は6年生ですか。

(石田)   一応高学年をイメージして作らせていただきました。今、環境省の方で出されたものは、さらにバージョンアップしていますので、使いやすくなっていると思います。

(原科)   化学物質への関心が余り高くないという調査結果が出ていますね。小学校のカリキュラムの中で、化学物質というのは、何年生ぐらいから出てくるのですか。高学年になってからでないとできない、3、4年生ぐらいではなかなか難しいという気がするのですが、その辺はどのような状況でしょうか。

(石田)   「酸素」「二酸化炭素」という言葉が出てくるのは6年生です。ですから、化学物質というと、6年生までは学習するのは難しいといえるのかもしれません。ただ、私はやはりこのような環境の問題は、ライフスタイルが確立する前に何らかの形で学習していくべきものだと思います。4年生ぐらいまでに大体子供のライフスタイルって決まってしまうという実感がありまして、それまでに少しでもいいから化学物質を考える機会を提供すべきだと考えております。

(原科)   確かに我々の経験で、3年生、4年生ぐらいで結構理科に関心をもっていた記憶がありますから、その頃から教えてもおかしくないかもしれないと感じました。

(岩渕)   1つよろしいですか。小学校で環境問題に関するこのような副読本は東京都では配られているのかどうか、その辺を教えていただきたいと思います。

(石田)   東京都では2年前に副読本は廃止になりまして、ウェブ版(東京都教育委員会HP)になりました。今年度から私はそのウェブ版の委員をさせていただいているのですが、残念ながら、小学校のページには化学物質のページはございません。先日の会議のときに、入れるべきだと主張してきました。市町村の副読本は、自治体によって様々です。私が勤めている江東区では副読本は出しております。

(安井)   ありがとうございました。それでは、最後の御質問ということで、豊田さん。

(豊田)   ケミストリーカードゲームの中で「メリットとデメリット」ないしは「メリットとリスク」という言葉を使っておられますが、子供にそのような学習をするときには具体的にどのような言葉、用語を使っているのでしょうか。

(石田)   「よい面と悪い面」という言い方をしています。

(豊田)   分かりました。どうもありがとうございました。

(安井)   なかなか興味ある御発表いただきましてありがとうございました。
   それでは、続きまして、日本チェーンストア協会環境委員の嵩さんから御発表いただきたいと思います。

(嵩) 

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   こんにちは。日本チェーンストア協会環境委員の嵩と申します。
   チェーンストアとは、平たく言えば、スーパーマーケットのことです。業界の中に、イオン、イトーヨーカドー、ダイエー、西友など、100社程度あります。本日私は、日本チェーンストア協会の環境委員会委員という立場で発表させていただきますが、普段は株式会社西友のCSR推進室という部署で仕事をしています。我々の業界は「流通業」あるいは「小売業」と呼ばれます。私は20年間この業界で仕事をしています。環境部門に6年いて、縁あって、この化学物質と環境円卓会議に2年ほど参加させていただいているのですが、その中で、小売業、スーパーマーケットというのは、生活者の啓発や教育という部分に関して可能性があるなと常々思っております。どうしても教育というと、文科省や学校教育に話がフォーカスしがちなのですが、それだけではないと思いますし、1つのチャネルとして、我々のような業界が何を担っていけばいいだろうか?これは私自身の課題でもあるのですが、今考えていることを、これから発表させていただきます。


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   発表は、3つのテーマに分けてお話しします。1つ目は、我々の業界の特性についてまずご理解ください。2つ目が、我々がこの数年間で担ってきた生活者の教育や啓発に対する実績です。それを踏まえて、最後に、そういう我々だからこそできる可能性、特に今日のテーマの「化学物質の教育」に対して我々は今後コミットしていけるのではないか、という可能性を踏まえて、ぜひお時間をいただきたく思います。よろしくお願いします。


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   最初に、流通業について簡単に説明します。私は、先ほど申しましたとおり、西友という会社に属しており、私が発言するものというのは、どうしても西友というバックグラウンドの中で私が日々仕事をしながら感じることです。その1つとしてお聞きください。


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   西友について簡単に説明します。西友というお店は全国に400店舗ぐらいあって、売上高は年間1兆円ほどです。従業員は60,000人規模で、お客さまが日々数百万人。これは西友という会社1社だけの話なんですが、これに上位数社を入れると、日々数千万人の人が来て、数十万、数百万人の人間が働いている、非常に規模の大きい業態です。従業員の8割はパートさんという形です。また一方で、産業界の中で、働く人と市民が非常に近い業界であるともいえます。地域の人がそのままそこのお店に来て働いています。そして日々、多くの人がお店にやって来て、フェース・トゥ・フェースのコミュニケーションができるインフラの場を持っているというのが、他の業界にない特性であって、実はそこに大きな可能性があろうと考えています。


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   いくつかビジュアルでお店を紹介します。


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   店内をお見せします。こちらは生鮮などの食品売り場です。


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   これは衣料品です。


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   その他に自転車があったり、音楽CDがあったり、家電があったりと、いわゆる生活消耗材全般を扱っている、人々が生活していく上で必要な、生活の基盤となる消費をサポートしている業界です。


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   この絵は重要だと思うので説明します。小売業、流通業のポジショニングです。真ん中に店舗を書いて、右側に生活者がいて、左側に生産者がいて、左を見ると、BtoB(注、Business to Business;企業間取引)です。店舗と生活者間の、BtoC(注、Business to Consumer;対一般消費者取引)もあり、これは我々の業界が、生産者に対する影響力と、生活者に対する影響力の両方を持っていることを意味します。生活者というのは、いろいろなものを自由に選択しながら消費していると考えがちですが、実は流通業が仕入れた範囲の中でしかモノを選べないわけです。逆にいうと、生産者も流通業が仕入れてきているものしかつくれないわけです。我々の持っているビジネス上の権限を、どれだけ社会に対してポジティブに使っていけるか、というのが我々の持つ社会的な責任ですし、我々もそこを担っていくことができれば、社会を良い方向に変えていくための大きなキーファクターになり得ます。ここを我々は強く認識して、1つ1つ活動していきたいと思っています。


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   小売業、流通業のCSR活動を整理すると、大体この4つの柱になるのではなかろうかと思います。これはもちろん西友の整理ですが、他社がやっても大体このような形に落ち着きます。商品と環境と従業員とコミュニティ。
   商品というのは、すなわち我々の本業そのものです。仕入れてお客さまにモノを販売します。その中で、環境への配慮や安心・安全について、本業のビジネスを通じ、世の中を正しい方向に引っ張っていければ、という活動があります。環境というのは、例えばエネルギーです。お店1つあったら、今は24時間営業のところもたくさんあります。電気、ガス、水道もしくは物流の問題もあります。売れ残りの問題に関していうと、廃棄物の問題なども絡んできます。それらをいかにマネジメントしながらビジネスを成立させていくかです。そして従業員。業界全体で数十万人以上の規模の組織体ですから、この活動を推進する意味でも、従業員の意識や教育というのは非常に大きなものになります。そしてコミュニティです。我々はモノを売るためだけの箱ではなく、例えば地域のリサイクル拠点になり得る可能性であるとか、情報発信の拠点であるとか、もしくは今日のテーマである、地域に対する教育、情報発信の拠点になり得る可能性も考慮しなければなりません。この点でいうと、学校や役所の役割に近いところも担っていけるのではないかと考えています。本日は、最後のコミュニティの部分に関してもう少し深めて話をしたいと思います。


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   さて、我々がやってきた生活者教育の実績に関してお話しします。


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   1つ、西友のユニークな活動として「エコ・ニコ学習会」というプログラムを持っています。これは簡単にいうと、店舗を総合的な学習の場として提供しているということです。スーパーマーケットの現場というのは、非常に侮れない側面を持っていまして、例えば「社会問題」という言い方をしてもいいし、「環境問題」という言い方をしてもいいし、その中には化学物質問題も含まれるのかもしれませんが、大抵の課題が身近なスーパーマーケットという箱の中に存在しています。例えば環境問題でいうと、廃棄物やリサイクルの問題、電気のエネルギーの問題や、物流の問題、容器包装やレジ袋の問題、バリアフリーの問題、流通というもののシステム、他には、生産者とのつながり、農家とのつながり、労働の課題であったり、男女雇用の問題であったり、もちろん食の安心・安全も1つのテーマです。そういうことが常に事業の裏返しとして存在します。これら1つ1つは生きた教育の場として、スーパーマーケットには恐らく、学校教育や教室の中だけでは学べない要素が含まれています。これを開放して使っていってもらおう、ということでやっているのが環境学習プログラムの「エコ・ニコ学習会」です。


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   「エコ・ニコ学習会」とは何かについて、もう少し簡単に説明します。実は今日、配布資料で「エコ・ニコ学習会ガイドブック」というA4サイズの全部で8ページの冊子を入れていますが、時間の関係上、本日はパワーポイントの方だけで説明します。
   参加対象は、大体小学校高学年10~20名と書いてありますが、それ以上でもそれ以下でもよく、比較的広く受け入れています。1年間365日、基本的にいつでもオーケーです。誰がやるかというと、お店の店長や売場マネジャーなどが実施しています。そして、スーパーマーケットの仕組みであるとか、先ほど言った様々な社会・環境問題に対して、テーマを持って扱っております。


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   いくつか実際に行っている風景のビジュアルを持ってきました。これは我々のやっている環境配慮商品の話です。ここで写っているのは、店長が小学校の子供達に説明している絵なのですが、教えるということとはちょっと違って、例えば我々の商品でもいろいろな課題があり、売れていたり売れてなかったりの問題もあります。そういうことを自由に、どうすればいいのかなということも問いかけながら、コミュニケーションしているわけです。


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   学校単位の参加が非常に増えているのもこの数年間の特徴です。これはクラスで来た小学生が容器包装のことを調査しているところです。


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   子供達ばかりではなくて、NGO など大人の方たちも来てくださっています。これは、食品廃棄物をどう処理しているかということを、非常に興味を持って聞いてくださっているところです。


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   我々は流通業ですから、いろいろな生産者もしくは廃棄物の処理業者ともつながっています。ニーズのあった子供達を農家に連れていって、農家の人たちと直接コミュニケーションする機会を提供することも実施しています。こうした機会というのは、子供達にとっても新鮮なようです。我々のコーディネートで行っています。


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   スウェーデンにも行きました。海外のスーパーマーケットはどうなっているのか? 海外の環境活動はどうなっているのか? ということで行きました。


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   「エコ・ニコ学習会」の実績は、昨年の2005年は全国400店舗で年間22,000人の子供達が参加してくれました。回数にして800回を超え、平均して1日に2~3回行われています。大変なニーズがあるということです。ずっと右上がりの上昇で、総合的学習の時間の導入とリンクしたグラフになっています。


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   こうした活動の発展形として、「エコ・ニコサミット」という、子供達だけの環境会議も開催しています。毎年1回、今まで4回開催しています。化学物質と環境円卓会議のメンバーでもある崎田裕子さんにコーディネートをしてもらいました。グリーンな会社を底辺から作っていこうという弊社の試みの1つです。


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   また、つい先日は、小池大臣から環境大臣賞をいただくこともできました。


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   こうした活動は徐々に認められてきていますが、「ニコ・エコ学習会」は、現段階では、それほど化学物質に関するファクターは強くないです。1つには、先ほど石田先生のお話にもあったように、それほど参加者のニーズがないということがあります。あわせて我々自身もそれを提供していくノウハウがないのです。私自身は、そこには多くの可能性があると、この会議に参加しながら考えています。もちろん、可能性と同時に、いくつかの課題もあります。


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   2万人以上の子供達に800回の学習会を開くには、組織の大きなマネジメントが必要です。1つの環境部門の部署、といったレベルでなく、ほとんど全社的な活動になるのです。そこにはやはりビジネス上のロジックが非常に重要で、我々がこれまで社会貢献として学習プログラムをやってこられたのは、このロジックと整合性が取れていたからです。
   我々はこのロジックを4つに分解しています。1つはロイヤルカスタマーの育成です。日々の、もしくは将来のお客さまを作っていくという活動そのものです。もう1つは、企業ブランドの育成です。そして3つ目は、これがかなり大きいのですが、従業員に、こうした活動を行う自分と自社に対するロイヤリティ、働く誇りを育成することです。活動を通して、自分たち自身が啓発されることとも言えます。学習会の参加者は2万人ですが、従業員は西友だけでも6万人ですから、従業員に対する効果も実は大きいのです。そして、4つ目がグリーン市場の育成です。我々が1つ1つの課題を地域と共有することによって、我々自身がもっといい仕事、いい商品を調達できる土壌をつくりたい、というモチベーションになります。


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   次に、活動を推進するための今後の課題を3つに整理してみました。これが最後のスライドになります。1つは、化学物質も含め、教育の最新のトレンドに、しっかり組織が対応できるようなルートをそろそろ持たないといけないと思い始めています。これは行政のサポートも必要かもしれませんし、我々自身が自発的なネットワークをつくっていくことも必要だと思います。そういうことが、2つ目の人的資源の確保にもつながっていくと思います。また、これは事業活動の一つとして行われ、そこにはもちろんコストも発生しますので、3つ目として、そのコストにどのように対応するか、今後さらに拡大できるか、があります。我々も我々自身のポテンシャルなり社会的責任なりを考える中で、もっと多くのサポートを受けながら、またはネットワークを広げながら活動を広げていく体制づくりが必要なのではないかと考えております。


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   私のこの発表が何らかの方向性や新しい発見になればと思い、本日お話しさせていただきました。ありがとうございました。


(安井)   ありがとうございました。それでは、御質問等いただければと思います。原科さん、どうぞ。

(原科)   最後の方で、企業のモチベーションについて、ロイヤルカスタマーの育成や従業員教育とモラル、これらは大変結構なことだと思います。1つは、ロイヤルカスタマーとはどういう意味合いなのか、もう少し教えていただきたい。それから、西友だけではなくて業界全体でこういう動きがあるということをおっしゃっていたと思いますが、同じようなことをやっている事例や、全体の動きなどをお聞きしたいと思います。

(嵩)   ロイヤルカスタマーの育成は、実際、現場レベルにいると、ダイレクトに感じることができます。世の中の情報というのは、大人から子供に流れていくのが一般的だと思いがちなのですが、子供から大人に発信されていく情報の強烈さというのは、この活動を通じて一番認識したことの1つです。子供から言われたら、大人は行動を変えやすいんです。例えば、子供から提案されて分別を始める大人は意外に多いと思います。もしくは、店舗でこういう学習プログラムに入った子供達というのは、数日後にお母さんを連れてきて、お店で一生懸命説明したり、買い物途中に「お母さん、ここはこうなんだよ」とか「こういうのを買わなきゃだめなんだよ」とか話したりします。店長たちも、「もっとやりたい」と言ってくれています。地域から依頼が届いてしぶしぶやっているのではなく、自分たち自らから学校に行って、「我々はこういうことをやっているから、ぜひ参加してください」と、そういう風土が実はもうできあがっています。ここまで来るのは大変でした。4~5年かかったと思うのですが、最初はいやいや行っていた現場が、お客さまの信頼、モノを売るという大前提の上での信頼関係構築に気づいたことが、非常に強力に作用しています。
   これが業界全体の動きになっているかというと、なっていると思います。他社のいいところを取り入れることに関しては、非常に長けた業界ですし、早いです。先ほど石田先生のプレゼンテーションの中でも、私が使ったような絵がありましたが、あれは西友ではありませんでしたね。恐らくジャスコだったと思いますが、同じような活動はありますし、我々は戦略的に早くからやっていたという分だけ、いくらかのアドバンテージが今でもあるのかもしれませんが、これは業界全体の流れだと思います。

(原科)   そうすると、さっきおっしゃった「ロイヤルカスタマー」の場合のカスタマーは、子供が長期的に環境配慮型になっていく、そのような意味でこの言葉を使っておられるのですか。

(嵩)   両方です。子供達が長期的になっていくのと、もっとリアルタイムには、1週間後にそうやってお客さまが来てくださるということです。短期的にも長期的にも作用しています。

(原科)   分かりました。

(安井)   大沢さん、どうぞ。

(大沢)   最初に、参加者数が02年に急激に増えていますが、ここは何かやり方を変えたのか、それとも世の中が要望するようになってきたのか教えていただきたい。
   それから、西友さんですばらしいと思いますのは、店長さんやマネージャーさんが自らやっているという点で、だからこそ800カ所というのができるのだろうと思うのです。同時に、最後の課題にもありましたが、最新知識を店長さんや売場のマネージャーさんにきちんと伝えていく、店長さんやマネージャーさんへの環境教育というのも重要だと思います。その辺はどのようにされているか、教えていただけたらと思います。

(嵩)   まず参加人数の伸びは、外的要因と内的要因があると思うのですが、外的要因としては、先ほどのプレゼンテーションの中で言った「総合的学習の時間」で非常に盛り上がったというタイムリーさです。ただし、2006年のトレンドを見ていると、もしかしたら2004年レベルまで落ちるかもしれないなと思います。なぜかというと、「ゆとり学習」の見直しなどが始まっています。こういうことは世の中の反応が早いです。これには一つ危惧を持っています。
   内的な要因としては、我々自身が「エコ・ニコ学習会」の効果の作用に気づいて、チラシ戦略、ポスター戦略等の、情報発信戦略をやったことですね。それが総合的学習の時間とちょうど重なって有利に働きました。
   それと、800回もやれたということ、これはマネジメントそのもの、トップコミットメントそのものという形でいくつかの要件があるのですが、例えば西友という会社ですと、ISO14001を小売業として世界で初めて一斉に取った企業です。従業員の環境教育をやった歴史はもう10年になります。そこが底辺になっています。また、それをマネジメントとしてやっているので、全店舗にあるパソコンをパチッと叩くと、「エコ・ニコ学習会」の最新のマニュアルが引き出せるという仕組みが整っています。さらに、うまくやっている店舗というのが5、6店舗あるとすると、それが「ベストプラクティス」として示されて、他店舗も真似できるようになっています。このようにマネジメントのサポートがしっかりしていますし、他にも、しっかり活動した店長やマネージャーが経営層から表彰されます。そういう形で活動を盛り上げていくことが、プラス面として作用していると思います。

(安井)   中下さん、どうぞ。

(中下)   大変興味深い取組で、ますます進めていただきたいと思います。先ほど化学物質についてはやっていない、それについては余りニーズもない、というような御発言がありましたが、例えば食品の安全性を考えても、中に含まれている食品添加物であるとか、農薬であるとか、様々な化学物質の危険性といったものが問題になると思います。また、最近では、電気ストーブによって化学物質過敏症になり、これについて裁判で損害賠償が認められるという例が出てきたことを考えますと、いわゆる家庭用品についても、使われている化学物質がどういうものかを把握し、どのような使い方をしたらよいか企業側としても、ロイヤルカスタマーの方々に理解していただかなければいけないのではないかと思います。このような観点からの企業側の消費者に対する働きかけ、教育的な働きかけということについてはどのようにお考えでしょうか。
   それから、それをもしやるとした場合に、現状では問題があるのではないかと思います。先ほど一般的に人材育成の問題や経済的な問題を挙げられましたけれども、もっと化学物質に絞って、例えば化学物質に関する情報が不足しているなど、問題点としてお感じになることがあれば、教えていただきたいと思います。

(嵩)   今の質問は大体私が課題認識していることを全部代弁していただいたような気がするのですが、私自身もこの化学物質と環境円卓会議に出席しなければ、こういう可能性やポテンシャルを感じることもなかったかもしれないと思います。おっしゃるとおりだなと思います。ここに対してどういうふうにコミットできるかというのは、課題は理解しつつも、答えを持っていません。CSR部署にいる私自身がこれをやれと言われても、化学物質をテーマにお客さまと話せと言われても、相当難しいと思います。それをマネジメントとして800店の店長なり売場マネジャーに展開するためのメッセージ、これは科学的データの話をしてもしょうがないです。相方向コミュニケーションですから、それをどうやって企業メッセージとして外に発信していくかは、相当ナーバスです。我々もいろいろなことを言って、いろいろなことを発信すると、「そうじゃない」という形で教えてもらう立場にあるわけです。その中でどういう適切なコミュニケーションの仕方があるか探りながらやっていて、私がこの場でこういう話をしているのも、多くの方からヒントをもらいたいからです。議論して1つの答えを見出せるということもあります。答えになっていませんが、課題認識はあるけれども、非常に答えを出すのは難しいと考えています。

(安井)   崎田さん。

(崎田)   私も実は今の質問とわりに似ている側面もあるのですが、少し具体的に質問させていただきます。私は、西友さんが行う子供達の環境教育の現場などに、いろいろ参加させていただいており、会社の関係者の方が熱心に取り組んでいらっしゃる姿を拝見し、これからも熱心に広げていただければうれしいなと思っています。今の発表の中で、例えば販売店としての消費者に対する影響力、生産者に対する影響力について9ページのところでご説明されていました。この力は大変大きいと思うのですが、具体的に質問させていただくと、今、VOC(注、Volatile Organic Compounds;揮発性有機化合物)対策など、非常に強く求められています。例えばお菓子の袋の印刷などは、おいしそうにくっきりと写すには、印刷過程でかなりVOCを使わなければできない状態です。しかし、消費者の方に写りの悪さを許容していただければ、VOCを減らすことができます。印刷会社の方によれば、消費者のマインドが影響してくるそうなので、消費者との中間にある販売店がこのことにどのように取り組んでくださるか、商品をそろえてくださるか、消費者に伝えてくださるかということを、かなり勉強してくると思います。そういうような問題が突きつけられたときに、どのように、内部でお考えになるか、教えていただければと思います。

(嵩)   ものすごく考えている点です。例えば店頭レベルでどのようにお客さまとコミュニケーションするかというのは、一方でお客さまが何をニーズとして持っているかということの裏返しなので、そういうのはマクロで年がら年中マーケッティング調査をやっているわけです。そうやって出てくる答えは、価格とか、便利さとか、品質とかが出てきて、実はそれをうのみにしてマーケティング戦略をやっていると、環境や化学物質のような話にはちっとも出てきません。だから、できないという話ではないと考えています。我々はそれを一方で理解しつつも、ある場面でとんがった議論をやっていかなければいけない。例えばNGOとかNPO等と、とんがった議論をやっていかなければいけないと思っているのは、常にそこに未来の市場のヒントなりサインが絶対あると考えているからです。今、崎田さんがおっしゃってくれた話は、実は会社としてはやりたくてしょうがないのです。いかに店舗と生活者の部分で適切なコミュニケーションをし、それによって、その影響力を生産者につなげて、両方ともwin-win、理想的な形にしていくというのは、今、まだ十分でありません。生産者とつながっているのは、組織の中でいうと、バイヤーや商品部の人たちです。そこが調達に対しては力を持っているわけです。こうした調達する人間が300人、400人程度いるので、この人たちを今、再教育して、いかに自分たちが影響力を持っているかを知らせていかなければなりません。もっと平たくいえば、「そもそも、自分の子供や家族に食べさせたいと思うものを仕入れているのか」という原点から入っていく必要があります。商品を仕入れて、特売でもいいし、コーナーをつくって展開するということは、その商品を会社として、もしくは調達者として支持するということです。それを支持していくことが自分自身の誇りになるかという、非常に原点の教育から始めていかなければいけないなと思っています。そこにはもちろん、価格の要素等は変わらず重要なのですが、私は間違いなく、市場の価値というのは急激にこの10年も経たないうちに変わっていくと思います。それができる会社やできる法人でなければ、残っていけないとも思いますし、それはまさにビジネス戦略そのものになっていくと理解しています。今、お返事するとすれば、「おっしゃるとおりです。期待してください」と申し上げておきます。

(安井)   自信満々の御回答で、ありがとうございました。
   それでは、ここで15分ぐらい休憩をとりたいと思います。

―― 休憩 ――

(安井)   そろそろ皆様お戻りのようでございますので、再開させていただきたいと思います。
   前半の部では、埼玉県の小川様、東雲小学校の石田様、日本チェーンストア協会の嵩様から御発表いただき、その後、御議論いただきました。後半の部は、まず、それぞれの御発表に対して御質問を続けていただくという形でしばらく続けさせていただき、その後で全体的な議論、教育はいかにあるべきか、といった議論に移りたいと思いますが、よろしいでしょうか。
   それでは、村田さん、どうぞ。

(村田)   小川さんの発表に対するコメントです。光化学オキシダントの問題を教育に使うという手法を、WWF(注、World Wide Fund for Nature;世界自然保護基金)のヨーロッパ各国の環境教育担当者が10年ぐらい前に「保存キャンペーン」という名前で、ヨーロッパ域内のいろいろな国で実施しました。植物は何を使ったのか、はっきり記憶していませんが、統一のセンシティブな植物の種を学校に配って、その評価に関しては、たしか10段階で子供でも評価できるようにしました。影響の程度を撮った写真のシートのようなものをあわせて配布して、ヨーロッパ域内の状況を集めたことがありました。

(安井)   有田さん、どうぞ。

(有田)   関連して。私もスカーレットオハラの調査については、先ほどなつかしいなと思っていました。私は神奈川県に住んでいますが、十数年前、神奈川県から5年間ほど種をいただいて、環境関係のメンバーで育てました。今、村田さんがおっしゃったように、やはり簡単な写真で比較して影響の程度が分かるシートがありまして、それで評価測定いたしました。ただ、毎年、取った種が劣化していくので、今後はどのように種などを配布していくのか質問するつもりでした。先ほど、今までは鉢で渡していたとおっしゃったので、大変だと思ったのと同時に、種についてはこれからなのかなと思ったのが感想でした。

(安井)   小川さん、何かコメントございますか。

(小川)   有田さんの質問からですが、今までは鉢で配っておりました。700鉢つくるのは、非常に大変です。ただ、我々のこの調査に参加されている方は、実は埼玉県環境科学国際センターを中心に身近な観察局などといったところで様々なことをやられている。また、地域でも結構いろいろなことをやられている方が多くおられます。ですから、今後は地域で種を配って、種から調査をすることをお願いしようと思っております。
   それから、村田さんの質問とも関わるのですが、調査の方法は、1970年に初めて被害が見つかってから、73年にアサガオ調査をするまでは、様々な農作物に被害が出ますので、何を指標植物にしたらいいのかということを盛んに研究いたしました。その中でアサガオが生育期間も長いし、被害が分かりやすいので適しているということで選ばれました。評価としては、村田さんが仰っていたのと同じように10段階ぐらいに被害を分類します。精度よくするためには、必ず事前に目あわせをします。ただ、一般の方を巻き込んだ調査になりますと、なかなかそうもまいりませんので、やはり参考になる多様な写真を配ってやっていくということになると思います。

(原科)   今のことで。先ほどちょっと御質問させていただきましたが、私が昨日、日本不動産学会でどうして水質モニタリングの発表をしたかといいますと、不動産というのは、良好な環境をつくれば、経済的価値が高まりますね。つまり、環境資産が形成されている。そのようなことで、より良い環境をつくっていくことも不動産にとって大変重要なことだと思っていまして、そのような観点から、水質モニタリングをするパートナーシップの関係を調べました。その中で、先ほど崎田さんがおっしゃったように、水質モニタリングの場合には、現状を認識して、さらにその理由は何なのか原因を理解する、そして行動を起こすというパターンが観察されたんです。しかし、オキシダントの場合は、実は原因は自分たちで考えてもよく分からないですから、この理解は少し難しいんですよ。大気はつながっていますから、埼玉県だけではなくて、むしろ東京とか神奈川、首都圏全体で住民が参加して調べる、そして考えてみるとなれば、原因まで探れると思います。ですから、埼玉では県民参加でやられているのですから、東京都や神奈川県など、幅広く首都圏全体でやって、そして情報交換して考えるというようになると、少し変わるのではないかと期待したいのですが、その辺はいかがでしょうか。

(小川)   難しいですね。私どものところでは、埼玉県でどんどん広めようという考えでやっております。ただ、ご存知かもしれませんが、環境のセクション、地方の試験研究機関、こうした調査の中心になるところは全国どこも縮小傾向です。例えば来年、東京都の環境科学研究所は都立ではなくなってしまいます。環境整備公社の中に出向という形で皆さん行かざるを得ない。例えば神奈川県にしても、おそらく一時期の半分ぐらいの人しかいない。環境、環境といわれながら、全国の環境研究機関というのは本当に縮小傾向となっております。ですから、核になるような方がいないと、なかなか難しいのではないかと思います。もちろん私たちの調査の中にも実は東京都の方も参加しております。県の境を設けているわけではないので、どんどん広げていければと思っております。やり方によっては簡単にできますので、そういう可能性も十分あると思います。

(原科)   なかなか厳しい状況だとお聞きしたので、難しいと思いますが、ぜひそういう方法で拡大していただきたい。むしろ県民や都民の理解があれば、それが逆に政治的なフィードバックになって、そういう環境行政に対して、もっとしっかりやれということになると思います。今、単純にいろいろな行政の効率化ということで来ています。それはある程度までは減らした方がよいのでしょうが、大事なのは行政のパフォーマンスですから、トータルでどうなるか、人々の交流やパフォーマンスではどうなるのかを考えれば、そう簡単に環境行政の人員をどんどん減らしていくわけにいかないと思います。そのようなことはむしろ一般の市民の考え方次第でで決まることですから、トータルで意識を改革するような方向にぜひ向かってもらいたい。大変だと思いますが、ぜひそういった努力をしていただきたいと思います。

(安井)   大沢さん、どうぞ。

(大沢)   先ほどの崎田さんの質問にも関わるのですが、市民が参加する環境調査活動という意味では、自分で気がついて自分の行動を変える。それから周りも含めた地域の行動を変えるということにとどまらず、社会の仕組みを変えて、環境改善につながるような実感を得ていくということでないと、継続性はなかなか得られないと思います。市民による環境調査活動で一番広がっているのは、おそらく二酸化窒素の測定活動だろうと思います。これは小川さんに御指導いただいたところもあるのですが。例えば生協の組合員でいうと、去年は、全国で約1万5,000カ所で二酸化窒素の測定をしています。10年ぐらい前の最盛期には3万カ所を超える測定をしていました。今でも東京の連絡会など一生懸命やっているところがありますが。また、去年、酸性雨については約5,000カ所で生協の組合員が測定しています。測定を始めた最初のうち、1年目、2年目は「あっ、色が変わった」、こんなに濃度が高いのだということを実感することになるのですが、それが3年目、4年目になっていくと、「去年と同じぐらいだったね」ということになって、その後は、この調査で例えば二酸化窒素の濃度を下げるのにどう役立ったのかとか、オキシダントの濃度を下げるのにどう役立ったのか、社会の仕組みをどう変えることにつながっていくのか、というあたりが見えてこないと、なかなか継続していかない。3年もやるともう飽きて「分かった」ということで辞めていきます。次々に新しい人が毎年入り、そこで新しい気づきをして広がっているのですが、人が入れ替わっているだけということがあります。そこをどう継続して、広げながら、なおかつ社会全体の環境をよくしていくか、というところが重要なポイントだと思います。また、そこが環境調査のこれからの一番の課題だと思っています。

(安井)   小川さん、特によろしいですか。

(小川)   これはすべて共通の問題だと思います。

(安井)   有田さん、どうぞ。

(有田)   私も生協の組合員なので、それに関連して一言発言させていただきます。例えば飽きるというよりも、改善の結果が見えてこないと、なかなか継続はしないと思います。二酸化窒素の測定も、また、スカーレットオハラのアサガオを育てるという点にしても、生協の関係でいえば、配送車のルートをどのように変えて、効率よく配送すればよいかなど環境改善のところにつながっていたと思います。時々、そのような情報を流さないと、新しい人は、例えばアサガオの測定のことなどは知らないし、そのような測定活動をもう忘れている人がいます。時々そのような情報を流すという意味では、私は西友の嵩さんのお話を伺って、すばらしいなと思いました。大沢さんにもそれを再度お願いしたいと思いました。これはちょっとした要望です。

(安井)   ありがとうございました。今の皆様の御指摘は、なかなか難しいことで、恐らく回答はないと思います。振り返ってみれば、オキシダントがひどかった時代から、しばらくよくなったのですが、現在はNOx(注、nitrogen oxide;窒素酸化物)の濃度もハイドロカーボン(注、HC;炭化水素)の濃度も下がっているのにオキシダントだけが増えているという状況になっております。はっきりいえば、環境をよくしたらオキシダントだけ増えてしまった、そういう非常に難しい状況にありますから、かなり難しい環境問題の今の取組のようなことをまたいつか議論したいと思います。
   崎田さん、どうぞ。

(崎田)   今の関連ですが、こういう地域のいろいろな民間の環境測定は、非常に精度は高くはないけれども、大きく広げることでかなり傾向が見えてくることがあると思います。環境省で今、ExTEND2005で、例えば環境ホルモンの将来的な傾向を見るために全国の子供達で生物調査をしましょうと呼びかけていると思います。そのような全国の呼びかけで情報を共有する。何かそのようなポイントを絞ってやっていくようなことが日本の中でも少しずつ増えてくると、子供達のいろいろな活動の関心の幅も広がって、その後の情報集約・共有というのもできるのではないかと思います。いろいろなところでやっているそのような話とうまくつなげていけるような情報共有ができるといいなと思いました。

(安井)   豊田さん、どうぞ。

(豊田)   先ほど安井先生がおっしゃった「NOxやハイドロカーボンを削減してきたにも拘わらずオキシダントが増えてきた」ことに関連して述べたいと思います。一説によりますと、関東地域において、NOxの方が下がり過ぎて、ハイドロカーボンとNOxの比率が逆転したためではないかという説もあり、いろいろなことが言われています。よって、このオキシダント発生メカニズムは、単純にNOxやハイドロカーボンが増えてオキシダント発生増加につながったという単純なものではないので、そういったことも理解しながら、関係者でいろいろな情報を共有しながら進めていくということが重要ではないかと思います。

(安井)   なかなか難しいことですね。そろそろ次の話題に移りたいと思います。角田さん、どうぞ。

(角田)   石田先生の御発表に対するコメントと質問を2つほどしたいと思います。まず、コメントからですが、最後の方でバナナの話をされて、農薬の被害のことについて話されました。実は私がこのような環境問題とか市民団体にかかわったそもそものきっかけが、1980年代のフィリピン・バナナの問題だったので、非常に興味深く聞きました。というのは、大人にフィリピン・バナナの農薬の問題や、そこの生態系破壊の問題を伝えると、まず、「もう食べなきゃいい」という反応が出てきてしまいます。特に、農薬に汚染されたバナナを子供にあげたくないというお母さんたちの声が非常に高くて、なかなか人権問題とか生態系の問題につながっていかない。それに比べると、石田先生の教えられた小学生は、「農薬を使わないバナナもたまには買おう」とか「安全な服装で作業してもらおう」という発想が出てくる。ひょっとして子供の方が大人よりも柔軟なのかなというところで、可能性を感じました。
   次に、質問ですが、5ページの「小学生のカドミウム使用に関する理解」のアンケートのプレゼンテーションを非常に興味深く拝見しました。実際に多かった答えが「危険性があれば、使わなければいい」などの感情的なコメント、あるいは無関心なコメントが多かったけれども、先生としては、実際は注意して使うとか、きちんと使うとか、違うものを使うとかというふうになってほしいなと思ったときに、どのような投げかけを子供に対してされていたのか、あるいはそういったような議論が子供達の間であったのか、ということを聞かせていただきたいと思いました。また、自分の目指すような回答に誘導するのがよいのかどうか賛否両論あると思うのですが、自分が出した答えを世界全体の目で、本当にそれでいいのかなということに気づいてもらうといったような投げ返しをする先生のスキルの方が問われてくるかと思うのですが、そのようなスキルをどのように向上させているのか、例えば研修があるのか、あるいは研修に関する課題みたいなものにはどんなことがあるのか。そのようなことを教えていただければと思います。

(石田)   かなり難しい質問なんですが、まずアンケートの件からお答えします。これは私の受け持ちの学年ではなく、プリントを作成して、6年生の担任の方に協力していただいて実施したものですから、そのときの直接の反応というのは私は見ておりません。ですから、この回答に関して指導しておりません。申し訳ありません。どういう形で私の考えている方向に子供達の考えを向けていくかというあたりですが、やはり小学生の場合、体験が非常に重要だと思います。データとして、これだけ危険ですよというような話をしても、ピンとこない。百分率も分からない子供達ですから、そこで、危険性の認識であるとか、逆にいうと、メリットみたいなものについて理解するというのは難しい。先ほどのバナナの件が象徴的だと思うのですが、私もここまで子供達が考えられるというのは非常に驚きました。3年生で行うに当たって注意したのは、人との関わりです。データは分からないですから、最前線で問題と顔を突き合わせて一生懸命努力している方と子供がコミュニケーションとれるか、というあたりがこの学習効果を高めるかどうかにかかっていると思います。実はフィリピン・バナナ以外にも木材の勉強もしたのですが、実際にソロモンの方に来ていただいて、森林伐採のことについてコメントしてもらったりしました。そういう人と出会うことが子供達を育てるのだと考えていまして、それが重要だと思います。
   教員の研修の件ですが、非常に欠けているのは、子供達にどのような議論をさせるか、話し合いの教育です。その、指導法は、私もよく分かっていません。最近になってやっと子供達にパネルディスカッションをさせるためにはどんな指導が必要かというのが少しずつ見えてきたところです。議論をさせる教育方法についてもっと研修の機会を高めていただくことがこのリスクコミュニケーションをさらに発展させる助けになるのかなと考えています。お答えになっているでしょうか。

(有田)   ケミストリーカードゲームは最近はバージョンアップしていますと石田先生はおっしゃったのですが、小学校でカードを使って何かそういう教育をされた結果というのはありませんか。御報告の中にはなかったのですが、もしあれば教えてください。

(石田)   今、学力の問題がかなり厳しくて、授業時間をきちっと確保するというのが学校の一番の命題となっております。余分なことになかなか時間が費やせない状況で、「カードを使って、ほら、遊んでごらんよ」となかなかできません。ただ、休み時間等に子供達にそのカードを使って楽しんでもらっているのですが、数回以上やった子供というのは、そこに登場する化学物質の名前を自然に覚えていきます。「先生、化学物質って、よいところもあるし、悪いところもあるんだね」というのも、そのゲームをやりながら感じ取っているようです。ですから、複数回やると必ず効果があるのだろうなと思っております。もし機会があれば、授業でしっかり取り上げて実践してみたいと思っております。

(有田)   関連してなんですが、実は、3ページの「小学生の化学物質に対する認知度」というところで、PCB(注、Polychlorinated Biphenyl;ポリ塩化ビフェニル)を「聞いたことがある」だけではなくて、「どんなことに使われているか知っている」という子も結構いるので、ちょっとびっくりしているんです。実は最近、若い方、20代の方ですがPCBとかDDT(注、Dichloro-diphenyl-trichloroethane;ジクロロジフェニルトリクロロエタン)を「知らない」とおっしゃった場面に遭遇して、ショックでした。そんな時代が来ているのかと思いました。詳しくは説明できなくても、せめて名前ぐらいは聞いたことがあるというのが普通なのかと思っていたのですが。小学生がPCBを「知っている」理由は何でしょうか。小学校の蛍光管などとの関連でしょうか。

(石田)   この次に、追跡調査をしてみたいと思いますが、きっと本人は知っていると思っても、実際には余り知らないのではないかと私はとらえています。ただ、本校の場合、実は国際理解教育を研究している学校で、かなり熱心に取り組んでおります。その中で子供の人権みたいなこともかなりの時間数をかけてやっています。このあたりで環境の問題を取り上げている子供達がいて、その中で学んだことがある可能性もあります。

(原科)   先ほど議論ということがありましたが、議論というのでちょっと気になることは、小学生は結構一生懸命手を挙げて発言すると思います。中・高になるとだんだん発言しなくなって、大学生は結構静かですね。本当にがっかりするぐらい静かなので、余り議論する社会にならない。なぜ小学校から変わってしまうのか、いつも不思議に思っています。その辺、ヒントがあったら教えてください。

(石田)   日本人の気質だと思いますが、「沈黙は美徳」、黙っていた方がよいという文化があるような気がします。あとは、異質のものをなかなか受け入れない部分がありまして、発言したことによって、他の人と自分は違うというのを見せるのがいやなのではないかと思います。ですから、中学年程度の間にしっかり発言ができるような指導をしておかないと、5・6年生になるとほとんど発言しなくなってしまいます。発言はするのですが、議論はできません。一番思うのは、二者択一はできるんです。どっちがいいか、といった議論はできるのですが、ある条件の下だったら、どの部分でオーケーを出すか、たぶんリスクコミュニケーションに関わる部分だと思うのですが、そのような議論はできません。これは我々の教員の世代がそういう指導を受けてない、授業を受けてないから、どうしてよいのか分からないのだと思います。ぜひそういう研修の機会を設けてほしいと思います。

(原科)   余りしゃべらないのは日本人の特性みたいに思われますが、必ずしもそれが日本の伝統かどうか私は疑問があります。昔は議論する人も結構いたように思います。私は戦後間もない、人数が多い世代で、結構話す方だったので、そうではないと考えたい。日本人の性格だと思っている方は、難しいと思って諦めてしまいますが、そんなことはないですから、ぜひ議論できる子供達を育てていただきたいと思います。

(安井)   私も国際会議等に出ますと、「日本人をしゃべらせるのは、インド人を黙らせるより難しい」と言われますね。
   後藤さん、どうぞ。

(後藤)   意見ですが、学校教育の問題が随分たくさん出ていますが、石田先生のような熱心な先生がいることは事実ですが、それは一握りで、プレゼンテーションの中にもありましたように、ほとんどの先生はだめです。私は、環境省の「環境カウンセラー制度」を作るときの委員をやりまして、その後、環境カウンセラーをどのように活用するかという委員会の座長をやって、やはり教育の問題に取り組まねばならない、学校の先生を教育しようというカリキュラムも作って、全国ベースでやろうとしました。端的にいうと、教育委員会がガンです。これは前にもこの会合でも言いました。今、国会でその議論をされていますので、ここでその議論をするつもりは全くありませんけれども、一握りの熱心な先生がいるときだけがよいわけで、期待はしたいのですが、現状はそのように理解しています。
   次に、環境教育、あるいは、化学物質の教育に関しての意見ですが、農薬、化学物質、温暖化、生物多様性など様々な問題があります。これらの問題を、みんな縦に掘り下げていくのですが、これらは基本的に全部エコロジーの問題です。もちろんここは化学物質と環境円卓会議ですから、化学物質のことを中心に議論しているわけで、そのことを別に否定するわけではないのですが、教育の場合には、縦のものだけをずっとやっていては全然だめで、やはりもっとエコロジーの問題の中の位置づけという形をちゃんと認識した上でやらないと、ほとんど断片的な知識にとどまってしまいます。いろいろな問題が出されていますけれども、プレゼンテーションの中には、例えばアスベストは子供の話しの中にも全然ありませんでした。ということも含めてそのとき、マスコミ的に話題のある物質は取り上げられても、本当の意味での化学物質の問題をどういうふうにとらえるのか、というあたりは、すごく薄いと思います。そのようなことを教育の中では考えていく必要があるのではないでしょうか。
   埼玉県の取組もすばらしいですし、ダイオキシンの松葉の調査など、いろいろな取組みがあり、それらについて私は非常によいと思うのです。例えば埼玉県でいうと、ある建設会社の環境部の人たちで研究会をやっているのですが、先週、埼玉県の春日部近辺の農家の出身の人の話をききました。放棄農地が多くて、雑草がめちゃくちゃ茂るために、耕作しているところでは大量の農薬を使っているから、今年はついにカエルの声が1回も聞こえなかったと仰っていました。確かにオキシダントも重要ですが、もっとトータルで考える必要があるのではないかと思っております。
   この円卓会議で前回、SAICM(注、Strategic Approach to International Chemicals Management;国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチ)が議論になりました。SAICMは国際的なケミカルマネジメントですが、地球環境問題全体、エコロジーで考えていく場合には、そういったSAICMでの考え方、企業、行政、市民というようなパートナーシップの中での環境教育をどう考えていくのか。そういう意味では、嵩さんの話はすごいと思います。今、特にスーパーではサプライチェーンマネジメントの問題が3~4年前とは全然違った反応で感触があります。そのあたりが子供の環境教育だけでなく、社会全体の環境教育にすごく影響していると思いますので、もう少しトータルで、ここは化学物質と環境円卓会議ですが、やはりエコロジーという観点でものを考えていかないといけない時代になってきているのではないかというふうに感じています。

(安井)   今の後藤さんのお話は、まさにそのとおりだと思います。ただ、小学校でそういった総合的にエコロジーというものをどうやって考えるか、あるいは環境問題全般をどの辺からスタート、どこを入り口にして、どうやってやるか、これは結構重大な問題だと思っています。先ほどちょっと石田さんとお話をしていたのですが、私は、小学校における環境教育というのは、先ほどの石田さんのお話、そのとおりで、ライフスタイルに影響を与えるという視点がよいと思っています。そのためにはたぶん3つの観点がいいのではないかと思います。その1が省資源・省エネルギーで、省資源・省エネルギーをプラスチックを中心に始める。プラスチックとは一体何かということを、例えば50年前にテレビはどのようにできていたのか、レジ袋は今はあるけれども、50年後にもあるのか、必要なのか、といった話をするのがよいのかなと思います。
   2番目はごみ問題で、ごみ問題は、子供達は分別に関心がありますから、その話と同時に、日本の食糧需給率はどういうものが正しいのか、一体どういうものを今我々は食べているのか、食育という点を絡めてやるとよいと思います。この辺に有害物質が少し出てきてもよいかもしれません。
   3番目は、自然保護的な意識がやはり必要ということで、省資源・省エネルギー、ごみと食糧、自然保護、そこら辺を入り口にして、全体観を与えるようなカリキュラムをつくればよいのではないかというのが提案です。要するに小学校での環境教育において、化学物質のリスクについて、たまたま出てきた「ダイオキシン」という物質名だけを覚え込ませるような教育では、しょうがないような気がいたします。

(石田)   環境教育全体の話になると非常に難しいと思うのですが、今のお話は、結構内容面での分析のような気がします。環境教育をやっていく上で、いろいろな可能性を探り、自分はどういう生き方をしていくのかというのを考えて、実際に行動するという部分が非常に大切だと思います。小学生なりの情報を与えて、小学生なりに考えて、自分たちで一体何ができるか、というのを考えていくべきだと思います。
    先ほど、農家の方の話を聞いた話を少ししたのですが、農家の人の話を聞いたら、その途端、子供達はご飯の食べ残しがなくなりました。よく農業体験すると給食の食べ残しがなくなるという話は伺っていたのですが、本当に見事に変わりました。ですから、そういった経験を積んで、自分たちで考えて、行動させるところが大切だと思います。そういう意味で、「エコ・ニコ学習会」のようなものがあると、学校現場としては、行動させるのにはぴったりの場なのかなと考えます。

(安井)   中下さん、どうぞ。

(中下)   大変一生懸命頑張って教えていただいているので、感銘を受けました。先生がアンケート調査の結果、意図的・計画的に学ぶ機会を設定する必要があるのではないか、という御意見を出されておりましたが、本当にそうだと思いました。例えばドイツだったら、『みみずのカーロ』という本を読んだことがあります。これはミミズにものを食べさせてみて、プラスチックだと分解しないというのを見て、低学年の子供達にも天然のものとの違いを分からせ、それをどういうふうに自分たちが使っていくのか、を考えさせるという内容のものです。低学年は低学年なりに、小学校高学年は高学年なりに、あるいは中学校はどのように教えるか。そして社会に出たときには、西友でおやりになっておられるような、特にコンシューマー、ロイヤルカスタマーになるというような視点を持って、学校教育の場で取り上げていかなくてはいけないのではないかと思います。先ほど石田さんが「環境教育推進法は役に立ちません」とおっしゃっていましたが、確かにそうだと思います。だから、その問題点を明らかにしていただきたい。愛国心を学ばせるとか、「国を愛する心」といっても、抽象的です。やはり生態系に感謝し、自分が生かされているということが分かって初めて「愛する心」というのも育つのではないかと思います。まずは環境を教えないで愛国心は教えられないと思います。そういう意味で、学校教育の現場で、後藤さんがおっしゃったように、トータルでエコロジーで考えていくだけではなく、その中で化学物質も必要な知識を発達の段階に合った知識の提供の仕方できちっと教えていくということを計画的・戦略的にやっていかなければいけないのではないかと思います。その点について、リスクコミュニケーションに関わっておられる、各省庁の方が参加しておられますので、各省庁の御苦労と、文科省に対する意見、他の省庁さんだから言いにくいかもしれませんが、ここは何でも言ってもいい場ですし、この問題は本当に一人一人の国民の自立にとってとても大切なことですから、皆さんにコメントを頂きたいと思います。また、石田さんには、「環境教育推進法ができても、学校現場では環境教育が全く進んでいない」とおっしゃっているのは、一体どの辺が問題だとお考えかというところをお伺いしたいと思います。

(崎田)   お答えいただく前に、私も一言だけ言わせていただきたいと思います。私自身も今日、化学物質に関する環境教育のお話と考えると、学校の中でも体系的な情報をどのように伝えるかということが余りにも確立されていないとつくづく思います。そういうものをこのような場できちんと提案していくことは、大変重要だと思います。ただ、1つだけ皆さんに誤解しないでいただきたいと思うのは、教育委員会の体制の話など、いろいろありましたが、今、地域の中では、地域の中の住民の団体や企業の方々などにより、環境教育を広げていこうという動きがあり、全国のいろいろな都道府県の中で大変増えてきています。ただ、それがもっと有機的に学校教育としっかりうまく連携できるような状況づくりのところが今非常に弱い。そのような地域の企業や団体ができるだけ行政などと連携して、信用していただきながら、教育に入り込んでいくといったところに、今非常に時間のかかる状況があります。そのような中で、国のような大きなところで方向性をきちんと強く示すことが大変重要だと思います。今までのお話で、そういう現実がほとんど動いていないという認識をお持ちだとちょっと困るので、一言言わせていただきました。そのような意味では、地域社会の中では今、パートナーシップという精神で、どういうふうに情報をきちんと子供達に伝えていくか、ということをいろいろなグループや団体あるいは環境教育機関などが、企業と連携しながら考え、そして、様々な情報を出しているという状況です。よろしくお願いいたします。

(安井)   先ほどの中下さんの御発言について、どなたかコメントございますか。

(小澤)   では、一言。環境教育ということで、今、会議の中では、どちらかというと、小学生あるいは中学生、その辺についての教育というのがメインになっているのですが、先ほど、20歳ぐらいの人については、化学物質に関する認識が非常に少ないというお話がありました。化学物質による影響ということを考えますと、今、小学生低学年の学生を教育することは将来的には非常に有効だと思います。ただし、過去を考えてみますと、化学物質が大きな問題になってきたのはたぶんここ30年ぐらいだと思います。今の小学生が大人になっていくには、例えば10年あるいは20年、いろいろな世の中での活動が出てくるわけです。それまでに過去を振り返ったときに、この20年間ぐらいの間に化学物質がどれだけ変わっていくか、そういうことを考えますと、やはり子供だけの教育ではなくて、大人の教育をどうやっていくかというのは、非常に大きな問題ではないか。それが子供への影響も少なくすることもできますし、これからの課題かなと認識をしていますが、その辺について何かお考えがあったら、お聞きしたいと思います。

(安井)   それでは、豊田さん、それから、できましたら省庁の方々からもお話しいただきたいと思います。

(豊田)   産業界の方からお話ししたいと思います。今日、石田先生のお話を非常に興味深く聞かせていただきました。その中で、先ほどもありましたが、カドミに対するアンケートの中で、石田先生からも最終的には子供達が「注意して使う」「きちんと使う」「違うものを使う」、そのような判断ができるような人に育ってほしいなという発言があったと思うのですが、私も同感です。化学物質に関する教育の最終の目標というのは、そのあたりにあるのではないかと思います。ただ、いきなりそういう目標からはいって、いろいろ教えても、たぶん効果はあがらないと思います。私自身、現在、化学に携わっていますが、自分が化学に興味を覚えたのはいつ頃かなと振り返ってみますと、中学時代に水の電気分解実験を見て、水が酸素と水素に分かれるというのを目の当たりにしたあたりからではないかという記憶があります。そういう観点からも、子供への科学に関する教育というのは、見る、ふれる、楽しむ、そして興味を持つ、そして考える、そういった5段階を踏む必要があるのかなと思います。今日そう思いながら電車に乗ってここに参りました。そう思いながら、この建屋内にはいりましたら、「サイエンスワールド」なるものがあり、その入り口のところに横断幕がかかっておりまして、「見て、ふれて、試して、考えよう」と書いてあるのを見て、我が意を得たりと思いました。したがって、まず入門編は、そういったところから入って、まずは楽しんで興味を持ってもらうことが最も重要と思っています。
   そのような意味で、手前みそになって恐縮でございますが、今日、そのような趣旨に沿った弊協会が行っている種々の教育支援活動関連のパンフレットをいろいろご用意させて戴いておりますので、ご紹介させて戴きます。まず、日本化学会及び化学工学会、新化学発展協会と弊協会(注、(社)日本化学工業協会)の4協会合同で「夢・化学-21」という委員会を1993年からスタートさせています。お手元の豊田資料3にその紹介がございますが、ここで具体的にどういうことをやっているのか、その中身を見ていただきたいのですが、夏休みなどに「子ども化学実験ショー」というのをやっています。まさに先ほど申しましたとおり、見て、ふれて、まずは楽しんでいただこうというところから始めています。これは毎年やっておりまして、平成18年は8月18日~20日の3日間、延べ1万7,000人の子供さん及びお父さん、お母さんに参加していただきました。
   そのほかに「出前実験教室」、これも要請がございましたら、幣協会を主体に、いろいろなところに行って、出向いて、出前の実験教室を行っております。これも最近、聞いて驚いたのですが、現在、学校現場では、理科の実験が少なくなっているようです。事故が起こるのが心配で、昔に比べますと、理科の実験にふれる機会が少なくなっていると聞いております。そういうこともございまして、出前実験等に力を入れています。
   それから、御覧になった方がおられるかもしれませんが、昨日、日経に旭化成さんの「出前授業」が掲載されていました。これは地域への1つの貢献ということで、旭化成さんが出前の授業をやっている事例紹介でした。
   それから、これはもっとアドバンストなコースになりますが、将来、国際的に通用する化学者を育成していこうということで、全国高校化学グランプリ、ひいては国際化学オリンピックに現在、日本化学会などと協力しまして、支援活動を行っております。幸いに出ました学生さんたちは、ほとんど全員がメダルを獲得しております。実は2010年には日本で国際化学オリンピックが決定しています。そのときにはまた、ここにおられる皆様方の御支援を仰ぐことになるかと思いますが、ひとつよろしくお願いしたいと存じます。
   一方で、先ほどから話題になっていますが、科学の先生方向けにも何かご支援できないかということもございまして、例えば豊田資料1(日本化学工業協会HP)資料2は、教員の方に集まっていただいて、本資料で生徒さん、子供さんに教育してほしいというような研修セミナー等にも力を入れています。これも始めて2年半ぐらい経っておりまして、延べ16カ所、延べ2,500人の先生方に、研修を受講して頂いております。
   その他、豊田資料56には、私どもの関連団体のプラスチック処理促進協会の作った資料でございます。特に資料5は非常に好評でして、日常使っている製品がどういうルートでつくられているかということが分かりやすく解説してありまして、ライフスタイルのフローというのですか、それを理解するのに非常に役立っております。
   日化協といたしましては、こういった機会をとらえて、まずは見て、さわって、楽しんでいただいて、そして興味を持って、最終的には上手な化学物質との付き合い方を考えていただくことを念頭に支援させて頂いております。また、将来等のことにつきましては、先ほどより出ております教育委員会等とも連携し、話し合いを進めていければよいのではないかと思っております。以上でございます。

(瀬田)   官の方のお話が出る前に一言申し上げたいと思います。先ほどの石田さんの御説明で、ライフスタイルが確立する前に考える機会を作りたいという、これは本当に現場にいないと出てこないようなご発言で、大変感銘を受けた次第でございます。難しい点として、教材がないことと、教員の熱意次第という感じ、それから時間の確保、環境教育推進法は無力であるとか、あるいは先ほど嵩さんのお話では、ゆとり教育からの転換が起きると折角沸きあがってきた環境教育にマイナスの影響を与えるのではないかとか、いったようなお話が出ました。こういったことから、子供達に何をどういう形で教えるべきかということを私も日ごろ考えているところなのですが、小学校あるいは中学校それぞれの教育に、産業界や、教育の場にいない我々がどういう協力をすることができるか、ということをぜひアドバイスしていただきたいと思います。
   環境問題の難しさというのは、先ほど後藤さんから、トータルのエコ志向という問題がありましたけれども、それ以外にも、環境の知識というのは変わる。昨日事実だと思ったことが、今日変わっている。たった3年前新聞を賑わした大問題を、今の若い人は全く知らないし関心もない、そういうこともあるわけです。一方で、トレードオフのような問題もあります。私は塩の仕事をしていたことがあるのですが、減塩、減塩ということでどんどん使用する塩を減らしていく。例えば、ある地域の漬物屋で漬物に使う塩も減らしている。その結果どうなるかというと、腐りやすくなる。腐りやすくなる分だけ別の防腐剤でカバーするという、信じられないようなことまで起こっている。では、防腐剤が悪いかというと、塩ももともと良い防腐剤です。そのような知識は、先ほどのように、農薬を使っているから食べない、或いは無農薬とか有機栽培とありますけれども、それで全世界が食べていけるわけでもない。ぜひここで考えていただきたいのは、その間に、農薬なら農薬において大きな改善が行われているということです。その改善の議論が今日は余りなかったような気がいたします。こういうことも含めて、官庁の方々の御意見を賜りたいと思います。

(八谷)   自動車産業の方から少し話をさせていただきたいと思います。昨今、自動車だけではないのですが、化学物質に関しての規制、例えば、欧州で化学物質の管理法が強化されるとか、日本も化審法(注、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)の見直しがあるとか、いろいろと動きがあります。それらは、我々製造側に対して、「リスク管理をきちっとしなさい」という内容です。自動車は、ご存知のように、2万からの部品を組み立てている訳ですから、いろいろなものを使っています。実際に自動車を設計している人間がどういう物質を使っているか全部知っているかと言われると、まだまだ心もとない部分がございます。専門の部署はございますが、全員が知っているわけではないので、社内の教育もきちっとしないといけないのかなと考えております。環境問題全般を含めてなんですが、4月の入社式に始まって1週間ぐらいオリエンテーションがある中で、企業の環境への取組みたいな教育の中に、化学物質についても入れていこうということを考えています。
   教育の話なので、我々、最近の経験で申し上げますと、最初のうちに叩き込まれたことというのは、非常に年数がたってもしっかり身についている、あるいは頭で覚えている、むしろ体で覚えているというのでしょうか、いろいろなケースで実感しています。先ほどからいろいろ論議がありますけれども、私どもの経験としては、例えば自動車のリサイクル工場などに地域の小学校の工場見学等々で小学生が5年生、6年生を中心として来られるのですが、そういったところで、実際に現場を見て考えてもらうというのは、効果があると思います。このような子供達が家に帰って、ごみの分別は必要だということを家庭で話すという話が先ほどありましたが、そういったことにつながっていくので、我々自動車産業として協力できるところはどんどんやっていきたいと思っております。
   ただ、小学生が環境問題に関心を持つきっかけは、大体恐らくテレビのニュースとか新聞の報道を親の口から聞いて入ってくるというようなところが多いと思います。そこには一旦メディアのフィルターが入っている部分がかなりあるのだろうと思います。アスベストにしても、カドミウムにしても、水銀にしても、「もう何が何でも使っちゃだめだ」みたいな、非常に悪いものというメディアの伝え方があります。しかし、それは今、瀬田さんがおっしゃられたように、過去には非常にすばらしいものであったという有益性の部分もまだまだあるわけです。水銀がいまだに置き換えられないものがあるわけです。そういったものを何が何でもだめだというような形で子供に教えるというのは、いかがなものかなと思います。それは教えるというのではなくて、メディアの影響を受けてしまうといったところだと思いますが、先ほどの先生のお話のように、有益性とリスクということをバランスをとって教えていくというのは、非常に重要なことかと思います。

(安井)   では、吉田さん、どうぞ。

(吉田)   農林水産省でございます。今日、大変興味深く拝聴いたしました。3点ほど興味深い理由があります。1つには、光化学スモッグの一番発生の高い埼玉県春日部市に住んでおります。また、息子が小学校4年生の先生でございまして、まさに今日のこういう環境問題を教える立場にいる者の父親でございます。さらに所管物質の農薬など周辺のものがたくさん出てまいりました。リスクコミュニケーションとの関係でございますが、確かに自分自身の経験からしましても、遺伝子組換えあるいはBSE(注、Bovine Spongiform Encephalopathy;牛海綿状脳症)、今日話題になっています農薬、こういったものの一般の方々へのリスクコミュニケーションというのは非常に難しい問題があります。どうしてもゼロリスクを求められる傾向が非常に強い。そういった点から、先ほどの石田先生のアンケートを見ますと、むしろ小学校、白紙の段階でケミストリーカードで教えたといいますが、知識を与えた後でのアンケートで、農薬に対する知識、例えば農薬のいろいろ改善されているとか、そんな情報は当然入れるすべもありませんが、そういう白紙の段階で受けている理解の方が、率直にいいますと、一般の方々よりもまだまともな理解をしてくれているなと思います。一般の方にアンケートをとると、恐らくもう少し悪い反応があるのではないかと思っております。これからさらに先ほどのメリット、デメリット、その辺を十分教えていっていただければいいのではないかと思います。
   ただ、小学生にリスクコミュニケーションというのを直接的に教えるのは難しいでしょうから、私どもの所管の観点からいいますと、今、小学校の先生方に御協力をお願いしていますのは、先ほどちょっと話が出ました「食育」の観点から、さらに最近では「地産地消」、我々は食の安全、特に安心、こういった部分になりますと、自分たちで実感できる、普段食べているものの背景が身近に感じられるもの、そういったものを食習慣といいますか、できるだけそういうものに近づけていく。それによって食を身近なものに感じる。関心も高まってくる。ひいては自給率も上がるのではないかということで、食育と地産地消を絡めて、教育現場の方とも相談しながら進めているところです。

(安井)   ありがとうございました。照井さん、どうぞ。

(照井)   経済産業省の照井です。本日、3人の方のお話を伺わせていただいて非常に感銘を受けました。特に石田先生のお話の中で、カドミウムについて子供達の考えはどうかと小学生に質問したというのがありましたが、同じ質問を大人にしたらこういうふうな形になるのかどうか。特に「注意して使う」とか「きちんと使う」と、まさに化学物質をきちんと管理して使うということが大事だと思います。小学校の先生でありながら、最後の11ページに有益性とリスクについて子供たちに教えようという姿勢というのは、非常にすばらしいことだと思っております。経済産業省は産業を所管する立場からいうと、産業の人たちがこれがきちんとできているかどうか、理解しているかどうかというところが非常に課題があると思っています。有益性とリスクについて事業者の方が深く理解する。それをきちんとBtoBあるいはBtoCのところで理解していただくということがまず非常に大事なのではないかと思っているところです。そのために、経済産業省としても様々なパンフレット等を作っています。小学校の部分も作っているのですが、分かりづらいということで直したりというような形でこれまで対応してきております。
   それから、今日は「化学物質と環境教育」というテーマだったわけですが、後藤さんの言われるように、化学物質という縦割りのところだけで環境教育を議論すると、非常に無理がある、したがって、エコロジー全体の中で議論しなければいけないのではないかとありました。これはたぶん学問的にもそういうことだろうと思います。「環境学」そのものについて、個別の問題というよりは、環境は総合学問だと思うわけです。そういう意味で、学問的な、あるいは研究レベルでいっても、かなり高度で広範な知識がその研究のために要求される。アメリカでは環境スクールというのは、大学院レベルで実施されていると聞きます。そういう意味で、日本の環境問題についての研究あるいは教育というのは、1つは公教育の部分でどうしていくのか。それは小学校から大学、大学院レベルまでの話と、もう1つは、西友の嵩さんのお話の中で、非常にすばらしいことは、「店舗が総合学習の場である」というコンセンプトがありましたけれども、公教育以外の場での教育、これは生涯教育あるいは社会人教育まで含めた部分での教育の場をどういうふうにやっていくのかというのが、非常に大事なんだなと思いました。
   さらに、エコロジー全体の中で化学物質問題を考えていくという面とはもう1つ別に、化学物質そのものの管理の問題は、環境以外の面もあると思います。化学物質の管理をどうしていくかという要素と、リスクをきちっと踏まえながらどのように使っていくかという部分は、化学物質固有の問題としてあるのではないか。環境問題以外も含めた形の検討が重要なのだろうと思いました。

(安井)   ありがとうございました。それでは、上田さん。

(上田)   環境省の上田でございます。今日は「化学物質と環境教育」というテーマでございました。そのことに入る前に、かなり個人的な私見になってしまうのですが、教育全般ということを考えてみると、最近、子殺しとか親殺しとか、かなり地位のある方がモラルに反したことを起こすとか、飲酒運転とか、本当に社会的規範が緩んでいるのではないかという感じがしております。私の個人的な意見では、100人のうち4~5人がそういうことをするのであれば、世の中は安泰なんですが、それが10人となり、30人となれば、これは本当に社会的規範が緩んでいるのだろうと思います。そういう中で環境教育というものを考えますと、先ほどよりいろいろなお話がございましたが、本当に現場で苦労して環境教育をやっておられる。まして小学生がそれを身につけようとしていると。知識として分かっても、結局、それが身について、いわゆる行動規範となる、行動変異を起こす、そういうものになっていかなければいけないわけですが、そういうプロセスの中で、それをスポイルするもの、断念させるものがいっぱいあるのではないか。それは社会であったり、親であったりするわけですが、そういうものを受け入れていく、持続させていくというものが育っていかない限り、本当に現場でいろいろ苦労されても、それは身についていかない、社会的規範となっていかないということだと思っています。そういう点では、先ほどちょっと逆の言い方をしましたけれども、世の中で100人のうち1人、2人ではなくて、10人あるいは30人とそういうことに対しての理解が深まれば、それは加速度的に進んでいくのだろうと思います。こういう観点から、我々としては、あらゆる機会をとらえて、環境の問題を、もちろん先ほどから化学物質の点では有益性とか、いろいろな議論がございましたけれども、こういうものを理解していただく機会を持って、未来を背負う子供達を育てていくということをしていかなければならないと考えております。

(安井)   最後の発言になると思いますが、岩渕さん、どうぞ。

(岩渕)   現場で行政をやっている者から少しお話させていただきます。今日、教育ということで、小学生を含め学生を中心とした議論になっておりますけれども、私どもがやっている中で一番思うのは、子供達はまだましだと言うとおかしいのですが、大きな意味で大人が無関心であるということです。今回のリスクコミュニケーションの話の中でもたくさんありましたが、基本的には、大人がどう考えて、どう行動していくか、というのが子供に対してその影響が一番出ているのかなという感じがします。私ども、環境教育という意味で、子供達を対象に環境読本、先ほど少し聞かせていただきましたが、小学生4年を対象に副読本を設けまして、それを教えていただくように教育委員会の方にお渡ししております。その中には、確かに大気汚染、水質汚濁、廃棄物、地球環境問題、ダイオキシン、フロンぐらいはでてまいります。そのような副読本を、愛知県内のすべての小学4年生に渡していただいて、教えていただくようにしております。
   それがあるからいいかというと、それだけでは不足している。そのために、2年前からリスクコミュニケーションということで、企業の側、つまり化学物質を扱う側とその周辺住民を対象にリスクコミュニケーションの場を設けて、実際に来ていただいたのです。その中で、その工場が使っている化学物質はどんなものがあるのか、それがどういうふうに使われているのか、それがどういうふうに影響しているのか、ということを、工場を見てもらったり、意見交換をしたりということを今年で3年目になるのですが、延べ7事業所周辺で行っております。その中で一番思うのは、化学物質というものがあるということ自身、モノ自身を聞いて恐れを抱いて、悪いものだというふうに認識している人が非常に多い。それをどうやって教育していくのか、あるいは正しく認識してもらうのか、ということに一番苦労します。カウンセラーの方に来ていただいて、今日、崎田先生もお見えになっていますけれども、一番最初にいろいろお話をしていただいたり、あるいはいかに分かりやすく、話しかけて理解してもらうかという技術論みたいなことを、我々行政もそうですし、住民の方々もそうですが、身につけるよう努力しなければいけないと思っております。ただ、化学物質というのは、非常に難しい言葉で表されることが多いことと、存在だけが悪いわけではなくて、いかに、人からいえば、取り込むような機会があるか、というようなことをしっかり解説できるかというのが一番ポイントになろうかと思います。いかに情報を提供するか、その機会づくりに腐心しているということだけお話をさせていただきました。

(安井)   ありがとうございました。今のお話が本日のまとめにちょうどふさわしかったのではないかと思いますので、ここで切らせていただきたいと思います。
   今日、いろいろと教育の話をしていただき、また、いろいろな御発言をいただき、ありがとうございました。環境の話と教育の話はみんなまとめて1つの共通点でございますので、非常に熱心な話を伺ってよかったと思います。環境問題というのは、基本的に人の命と生態系の命のリスクを削減するのが目標というか、それが問題となっているわけです。化学物質のリスクは削減しなければいけないというのは、当然のことですが、環境問題は、先ほどどなたがおっしゃったように、日々変質していて、大体10年間で大きく変わるという性格を持っています。それを考えてみると、この円卓会議も既に5年ぐらいやっていますから、そろそろこの会議のやり方を変えないと、次の5年間に対応できないのかなどと思いながら、今日は話を聞かせていただきました。世の中は本当に今変わってきていまして、先ほど環境教育の話で、環境教育法(注、環境の保全のための意欲の増進及び環境教育の推進に関する法律)の話がありました。ヨハネスブルグのサミットで日本が提案して、去年から国連の世界では「持続可能な教育10年」というのが始まったのです。日本が提案した。ですから、文科省に責任があるのですが、環境教育に「持続可能な教育10年」というのが加わって始まってしまったために、それこそ教育界はわけ分からない状況になっているというのが現実かと思っております。いずれにしても、本日の議論はなかなか興味深いものがございましたし、かなり本質的なお話ができたように思います。
   時間が足りませんで、御発言の機会がなかった方もしくは十分でなかった方にはおわびを申し上げたいと思う次第でございます。
   それでは、そろそろ終了でございますが、第19回、次回の内容、どんなことを議論するかということに関しては、本日これから開催するビューロー会合において協議して決めさせていただきたいと思います。
   皆様ありがとうございました。
   事務局の方から何かございますか。

(青木)   本日は長時間にわたりましてありがとうございました。
   傍聴の皆様には、アンケート用紙をお手元にお配りしてございますので、本日の円卓会議についての御意見・御感想を御自由にお書きいただきまして、フロア入り口の両脇に置いております質問受付箱にお入れいただければと思います。
   また、メンバーの方におかれましては、先ほど御紹介ありました、次回の検討課題等について相談いたしたいと思いますので、4階の会議室401・402に移動のほどよろしくお願い申し上げます。
   それでは、本日の会議を終了させていただきます。どうもありがとうございました。

第18回化学物質と環境円卓会議のアンケート結果