里海ネット

全国の里海活動状況

7.課題と解決策

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アマモ場造成

日生町漁業協同組合ほか(岡山県日生町)

漁業者の問題意識からうまれた漁村型の活動であり、学校を含めた地域全体の活動、具体的な成果の獲得に至った事例。

目標(キーワード:アマモ場、生育場、漁獲、造成)

日生では、アマモ場の縁に沿って移動する魚介類を小型定置網により漁獲する漁が営まれている。以前は広域に分布していたアマモ場が大きく衰退(590ha(1940年代)→12ha(1985年))し、同時に漁獲量が減少した。漁業者は、これまで操船の阻害、網の汚れの原因と邪魔者扱いしていたアマモ場が魚介類の住処となっていたことに気付き、その重要性を認識した。そこで当初は少しでもアマモ場を回復し、漁獲量の増加を目標として、アマモ場造成がスタートした。

実施(キーワード:研究機関の指導、アマモの播種、地盤の嵩上げ、消波、カキ殻散布)

日生町漁業協同組合の組合員らが中心となり、岡山県の水産課や水産試験場の指導、協力のもと、以下の活動を実施している。

  • 過去の分布情報を参考にアマモの種を播種。
  • 透明度の低下に対して、海底地盤の嵩上げとともに、増加する波力の緩和のため消波施設を設置。
  • カキ殻のアマモの着床・活着を促進する効果を見出し、カキ殻散布を実施。
アマモの繁茂

効果(キーワード:藻場の拡大、多様性の向上、漁獲増、活動の拡大、ふれあいの促進)

  • アマモ場の分布範囲の拡大。
  • クマエビの漁獲が増加、絶滅したと思われていたモエビも漁獲。
  • 豊凶のあったカキ養殖の生産量は、2008年頃から安定して生産。
  • 2011年からはNPO共存の森ネットワークやコープ岡山、2013年には地元中学生も加わり、播種等の再生・保全活動を共に実施。
  • ミニシンポジウムの開催、有識者等によるアマモ場の役割等の講演、地域を支える漁業者や地域住民らと意見交換により、里海の重要性を全国に発信(2012年)。
  • 日生には、直販施設を備えた「五味の市」がある。年間50万人の観光客が訪れる。
アマモ場は昭和60年の6倍以上に回復しています

出典:環境・生態系保全活動支援制度検討会資料(2008)

実施体制

日生町における活動は漁業協同組合を中心に、以下のような活動組織の連携に及んでいる。

市民・NPO 里海づくり研究会議、(財)おかやま環境ネットワーク、共存の森ネットワーク、地元中学校 ほか
漁業関係者 日生町漁業協同組合
行 政 岡山県農林水産部水産課、岡山県農林水産総合センター水産研究所、備前市
企 業 生活協同組合コープおかやま ほか
大学・教育機関 京都大学、九州大学、岡山大学、広島大学ほか