かつての日本沿岸域には、多くの藻場・干潟が存在しました。 藻場は、コンブ、ワカメなどの海藻、アマモなどの海草が繁茂する場所です。水質・底質の浄化や、魚介類などの産卵・生息場、幼稚仔魚の隠れ場などの重要な役割を果たします。
干潟は、潮の干満により、出現と水没を繰り返す砂泥地のことです。干潟に棲む二枚貝や底生生物などが陸から流れ込む物質を分解するため水質浄化機能が高く、干潟に棲む生物を餌とする魚類や水鳥などが数多く集まるため、生態系や物質循環においても重要な場となっています。
また、藻場や干潟などの浅場は、人と海が接することのできる貴重な場であり、かつては魚介類の採取や、肥料・燃料としてのアマモ採取などが行われていました。
高度経済成長期、多くの藻場や干潟が、沿岸域の開発に伴う埋立で姿を消しました。
瀬戸内海
では、アマモ場は1960年から1990年頃までに約7割、干潟は1900年頃から2006年までに約5割消失しました。
干潟、藻場の減少や水質汚濁などの要因により、瀬戸内海での漁獲量は1980年頃のピークから減少を続けています。
特に、干潟に生息するアサリは、瀬戸内海を始め全国で著しく減少しています。
また、広島県呉市周辺での浅海動物種類数も1960年頃から減少しています。
これらのような生態系の劣化を防ぎ、生物生産性や生物多様性を高めるため、各地で様々な取り組みが行われています。
過去には、有明海、沖縄、韓国などにおいて、石干見(いしひみ)と呼ばれる漁法がありました。これは、干潟やサンゴ礁など、遠浅で潮汐の干満差が大きい海に、岩やサンゴなどで石垣を作り、満潮時に沖からやってきた魚が干潮時に逃げられなくなる仕掛けを用いた漁獲方法です。この石垣の隙間を、様々な生物が隠れ場や生育基盤として利用し、さらにそれらを捕食する魚が集まるために、生物の多様性が高まります。
また、都市部などでは、埋立や開発によって人工化された運河や護岸部に、人工的に干潟や浅場を創出する取り組み、アマモ場を造成する取り組みなどが行われています。
オニヒトデが大繁殖すると、サンゴが食べられてサンゴ礁が死んでしまいます。沖縄や和歌山では、ダイバーによってオニヒトデを駆除し、サンゴ礁を保全する活動が行われています。近年、「磯焼け」と呼ばれる藻場が枯れる現象が各地で見られています。磯焼けの対策として、カジメなどの藻類を植える試みが行われていますが、このときアイゴという藻食魚やウニによる食害を避けるために、アイゴやウニの駆除を行う活動が行われています。
また、漁業者が独自に禁漁区や禁漁期を設けて生物資源を保護する取り組みや、広島県の厳島神社のように鳥居の内側を禁漁区として位置付けることなど、人の管理によって、自然、生物を守ることも大切な里海づくりの一つです。
各地での取り組みについては、実践事例の紹介をご覧下さい。