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人工干潟とは

干潟は、遠浅の地形であるために、高度経済成長期において多くの干潟が工業用地等として埋立てられました。一方で、干潟の重要性、機能や役割については、様々な研究を通して分かってきました。

また、これまで説明してきたようにかつての干潟には多くの生物がすみ、それらの生物による浄化という重要な機能がありました。そのほかに、私たちと海とのふれあいの場所でもありました。

こうした中で、人の力で干潟を造り、干潟に生息する多くの生物を呼び戻す試みが続けられています。このように、人の手により造られる干潟を人工干潟と呼びます。人工干潟の造成は、主に海浜公園等の親水空間、漁場・潮干狩り場、野鳥公園等の整備、埋立てにより消失する干潟の代償措置といった目的で行われています。

コンクリート製等の護岸で海と陸を垂直に仕切られている場所に対して、沖側に潜堤を造り、その間に砂や泥を入れてなだらかな場所を造成します。その際に山砂、海砂等を用いるのみならず、航路や港湾の浚渫工事によって発生する浚渫土等を利用する場合もあります。


断面図:人工干潟造成前

断面図:人工干潟造成前

断面図:潜堤と護岸の間に山砂・海砂などをいれる

断面図:潜堤と護岸の間に山砂・海砂などをいれる

瀬戸内海における人工干潟の例としては、広島県五日市人工干潟や尾道糸崎港人工干潟等が挙げられます。五日市人口干潟は、埋立て事業により消滅する八幡川河口干潟の代償措置として、尾道糸崎港人工干潟はアサリ漁場造成を目的として造成されました。どちらの人工干潟も造成後、様々な生物が生息するようになりました。その一方で、地盤沈下による干潟面積の減少や台風による侵食等の課題も残されています。

干潟とは、本来、河川によって陸域からの土砂の供給と、海流で流失する干潟の土砂とがバランスを取り合って形成されているものです。人工的に土砂を投入して造成した干潟においても、砂の供給と流出のバランス、地盤沈下を防ぎ干潟形状を維持することが必要です。現在、これらの問題に対して、様々な研究機関、研究者が実験・研究を行い、干潟造成技術の確立を目指しています。

このような課題を抱えながらも、開発による埋立て等で自然海岸が減少する中、人の力で干潟を造成し、干潟に生息する多くの生物を呼び戻す試みが続けられています。これからは、残された自然の保全と消えてしまった自然の再生を考えていくことが重要ではないでしょうか。

人工干潟造成の例 -尾道糸崎港-

尾道糸崎港及び海老地区、灘地区、百島地区の位置図

国土交通省 中国地方整備局 広島港湾・空港整備事務所では、昭和59年度から平成8年度において、尾道糸崎港における航路浚渫土砂を用いて、国内最大規模の約60ヘクタールの干潟造成を行いました。造成方法としては、まず沖合約200mの場所に雑石を用いて潜堤を築きました。そして、その内側に浚渫土砂を投入し、さらにその上を海砂で覆いました。

造成に用いた土砂は、尾道糸崎港松永港区の航路整備の際に浚渫した土砂を海老地区、灘地区、百島地区に運んで干潟を造りました。造成した干潟の地形は造成後数年間、沈下が見られたものの、その後はほぼ安定した干潟が維持されています。

平成12~14年度の調査において、周辺の自然干潟での底生生物は165種、造成された干潟のうち、海老地区で118種、百島地区で116種が発現し、周辺の自然干潟での7割の生物種が確認されています。

また、地盤高 D.L.+0.5~-0.5mの場所を中心に、約8ヘクタールのアマモ場群落が再生されています。


海老地区人工干潟の断面図と平面図

海老地区人工干潟の断面図と平面図(浚渫土砂の上に海砂厚さ50cm)

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