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干潟とは

多くの人が、潮の引いた砂泥地に出かけ、潮干狩りを楽しんだことがあるでしょう。また、潮干狩りをする場所は、再び潮が満ちると海水に覆われることを知っているでしょう。このように、1日に2回、干出と水没を繰り返す平らな砂泥地のことを「干潟」と呼びます。

干潟は、波浪の影響を受けにくい穏やかな入り江や湾内で、砂泥を供給する河川が流入する場所に多く発達します。

干潟は、地形的な特色により次の3タイプに分類されます。河川の放流路の両側に形成され、砂浜の前面に位置する「前浜干潟」、河川の河口部に形成される「河口干潟」、河口や海から湾状に入り込んだ湖沼の岸に沿って形成される「潟湖干潟(かたこひがた)」です。瀬戸内海の干潟は、大部分が前浜干潟と河口干潟です。


3つの干潟の形態

前浜干潟の図 河口干潟の図 潟湖干潟の図

干潟は海のレストラン


干潟の食物連鎖

図:干潟の食物連鎖

前述したように干潟の多くは、河口付近に広がり、そして1日2回の潮汐の干満があります。

そのおかげで陸上からは河川によって栄養塩や有機物が、海からは潮汐によってプランクトンが供給されます。つまり干潟には、陸と海から定期的に栄養が届くのです。

栄養塩は付着藻類や植物プランクトンの餌となり、有機物はバクテリアの餌になります。豊富な栄養で増殖した付着藻類や植物プランクトン、バクテリアは、動物プランクトン、ゴカイ類、二枚貝等多くの底生性小動物の良い餌となります。そして小動物は、魚や鳥の餌となるのです。

このように、干潟は餌を生み出し、生物の餌場として重要な役割を果たしています。

干潟は巨大な浄化槽


干潟で見られる生物

図:干潟で見られる生物

海には、河川水が毎日大量に流れ込んで来ます。この河川水には、生活廃水等の汚れ-つまり大量の栄養塩や有機物-が含まれています。

そのうちの栄養塩は、砂泥表面に付着する付着藻類や植物プランクトンによって消費されます。残りの有機物は、潮の満ち引きによって砂泥中に堆積し、砂泥中のバクテリアによって分解されます。

干潟での潮汐による干出と水没の繰り返しは、海水中に大量の酸素を供給し、バクテリアを活性化させ、有機物の分解を促進します。このように干潟の砂泥は、海に流れ込む大量の汚れを浄化しているのです。

また、干潟に生息する底生性小動物(ゴカイ類、貝類、カニ類等)の多くは、バクテリアの付着した有機物を好んで食べます。そして有機物を食べた底生性小動物を、魚や鳥が食べます。このような生物の食う食われるという一連の流れの中で、有機物は生物へとその姿を変えて行くのです。そして、貝に姿を変えた有機物は、人間に採集されることで海から取り除かれます。鳥に姿を変えた有機物は、干潟の外へ飛び立って行くことで海から取り除かれます。このように干潟に生息する生物の働きも、海の浄化に役立っているのです。

ある干潟では、海に一日に流入する窒素2.4トンのうちの1.3トンが干潟で取り除かれているという報告があります。つまり、海に流入する汚れの約半分をこの干潟が浄化していることになります。 以上のように干潟は、海を浄化する様々な機能を持ち、海の浄化を担っています。すなわち、干潟は「巨大な浄化槽」と言えるのです。

干潟で見られる生物1

干潟には、背後に広がるアシ原、河川水や海水が流れるみお筋、砂地、泥地、潮だまり等、様々な環境が存在します。そして、それらの環境に適応した様々な生物が生息しています。干潟ではどんな生物が見られるのか、陸側から沖に向かいながらその一部をご紹介します。

まず、干潟に近づくにつれ、満潮時でも海中に没しない高さの場所にアシ原が広がっています。アシ原の地面には直径5cmほどのアシハラガニの巣穴が開いています。このカニは、一見大きくてこわそうに見えますが、普段はアシの葉や土中の有機物等を食べているおとなしいカニです。ほかにも真っ赤なハサミが特徴的な アカテガニなどがいます。

アシ原を越えて干潟に近づくにつれ、だんだんと地面の水分が多くなってきます。満潮時には海水がここまできます。足元に広がる泥っぽい地面には、黒くて細長い巻貝がたくさんいます。 ウミニナフトヘナタリガイです。この巻貝は干潮時に砂の上をはい回って砂の中の有機物を食べています。付近の潮だまりでは、水面に2本の目がまるで潜望鏡のように飛び出しています。

ヤマトオサガニの目です。このカニは淡水の影響のある泥っぽい干潟が好きなようです。また、干潟に転がる流木や岩石には、 フジツボの仲間やマガキが付着しています。

干潟で見られる生物2

さらに沖に向かうと、泥っぽい地面はだんだんと砂混じりの地面に変化します。地面にはたくさんの小さな穴が開いており、穴の中からゴソゴソと1cmくらいの小さなカニがたくさん出てきます。コメツキガニやチゴガニです。ハサミを使って砂を口に運び、口の中にあるブラシ状の毛を使い、砂中の有機物だけをこしとって食べます。
 付近には、大きな白いハサミを振りながらダンスをするハクセンシオマネキがいます。このカニはオスだけが大きなハサミを持ちます。ハサミをリズミカルに動かす行動は、ウェービングと呼ばれ、メスに対する求愛行動や縄張りを守るための威嚇行動と言われています。

泥っぽい砂の中には白く柔らかな殻を持つエビのような生物がすんでいます。英名でゴーストシュリンプ(幽霊エビ)と呼ばれるニホンスナモグリです。よく似た種類のアナジャコもいます。どちらも砂泥中に巣穴を掘って暮らします。ほかにも砂泥の中からはゴカイの仲間が数多く出てきます。

波打ち際に近づくにつれ地面はさらに砂っぽくなります。所々にある潮だまりにはハゼの仲間がいます。
 また、死んだ魚の肉を好んで食べるアラムシロガイが、餌を求めてはい回っています。貝殻や砂粒がくっついた太さ1cmほどの砂から顔を出しているパイプは、ゴカイの仲間であるスゴカイイソメのすみかです。

丸い甲羅が特徴的なマメコブシガニ、貝殻を背負ったユビナガホンヤドカリ等いろいろな生物がいます。

砂の中には、アサリやシオフキガイ等の二枚貝が生息しています。

減少する「藻場」、「干潟」

藻場や干潟は、遠浅で波浪から遮断された穏やかな場所であることが多いため、人間の開発によって埋立てられやすいのです。瀬戸内海においても、藻場や干潟は年々減少しています。

藻場や干潟は、海をきれいにし、多くの生物のすみかや餌場となり、生物を育て豊かな海を作ります。また、潮干狩りやバードウオッチング等の人が自然とふれあう場所を与えてくれます。そんな重要な役割を果たしている藻場や干潟、あるいはその生態系をいつまでも保全していかなければなりません。このことが結果的に、私たちの豊かな生活にも結び付くのです。

「藻場造成」、「人工干潟」

これまで説明したように、海水を浄化する機能も持つ藻場や干潟は、海の生態系において大変重要な役割を果たしています。藻場はサザエ、アワビ等の好漁場となり、干潟は潮干狩りを楽しむ場所として、人々にも海の幸をもたらしてくれます。

瀬戸内海に数多く存在していた藻場や干潟は、護岸整備・港湾整備・臨海工業用地造成・リゾート用地造成といった海岸整備、埋立てにより以前と比べてずいぶん減ってしまっています。藻場や干潟は、海岸近くの浅い海域に広がることが多いため、埋立ての対象域になることが多いのです。瀬戸内海における藻場消失原因の約半数が、埋立て等の人為的原因によるものという調査結果もあります。

このように、藻場や干潟が年々減少していく中で、人の力で藻場や干潟を創り出そうという動きがあります。それらが、これから説明する『藻場造成』や『人工干潟』です。


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