INITIATIVE OVERVIEW
第4回グッドライフアワード
株式会社宇和島プロジェクト
活動拠点:愛媛県宇和島市
「みかん魚」とは、柑橘の絞りかすをエサにして育った養殖魚のことです。ほのかに柑橘の香りがして、さっぱりとして食べやすいと評判です。実はこの柑橘の絞りかす、ジュース加工時に大量に出るもので、かつてはお金を払って産廃処理していたものでした。
日本屈指の柑橘類の特産地であり、海面養殖魚の盛んな地域だからこそ生まれた「みかん魚」。この地域性を活かし、品質の高いものが大量にでるジュースの絞りかすを、有効活用することで、養殖魚の品質もアップする、まさに地域資源を循環させる仕組みが出来上がったのが、この「みかん魚」開発プロジェクトです。愛媛県宇和島市周辺の主要産業は農業と漁業。この二大産業の盛衰が、地域の盛衰に直結します。近年漁業では消費減少や魚価低迷で厳しい状況が続いています。
「どうしたら魚が売れるか」を模索するなか、消費低迷の原因に養殖魚特有の魚臭さがあると考えました。また同時に、血合いの色変化という漁業の長年の課題を解決するため、これまで大量に捨てていた柑橘の絞りかすに着目し、地域ぐるみでのプロジェクトがスタートしました。
まず、愛媛県水産研究センターが試験を繰り返し、「養殖ブリの魚臭さと褐変防止には柑橘の絞りかすが有効」ということを証明しました。地元の養殖業者さんには飼育を依頼し、試行錯誤の末、実際の養殖の現場で使えるエサに改良していきました。同時に弊社では各所と連携をとりながら、市場調査を行い、確実な販路を開拓していきました。みかんブリの初回出荷時には、企業様や県市の協力のもと、大々的にPRすることができました。
地域にある資源を有効活用し、ブランディングに成功できたこと
地域のみなさんと、それぞれが得意な分野で商品が開発できたこと
消費者の方にとっても、価値のある商品が提供できたこと
「みかん魚」は魚離れに歯止めをかけられる商品として期待され、出荷量は年々増え続けています。「みかんブリ」を皮切りに、県魚である真鯛の「みかん鯛」、そして昨年からは県内初養殖サーモンである「みかんサーモン」の販売を開始しました。今後はこのみかんサーモンを取っ掛りに本格的に海外進出し、宇和海から世界へと、誇れる地元の海産物を地域ぐるみで発展させ、地域活性に貢献したいと考えています。
2001年漁協青年部有志で活動開始。2003年漁協下部組織「宇和島漁協プロジェクト」発足。2009年本格事業化、2012年株式化。自社工場にて最新の技術で加工し、市場を通さない直接販売にて売り上げを伸ばす。現在の売上は約27億円、従業員90名程。食品を通じた当社のビジネスに関わる人々との出会いを大切にし、そこに関わり合う全ての人々の気持ちや生活を豊かにすることで、地域・産業・社会の発展に貢献する。
”みかんと魚”という異なる地域特性を組み合わせ、資源循環を高いレベルで成立させた好事例と言えるでしょう。一見、解決が難しいと思われる課題へ根気強く取り組んできた地域の一体感が、成功の秘訣だと思います。