INITIATIVE OVERVIEW
第2回グッドライフアワード
水府コイノボリプロジェクト
茨城県常陸太田市水府地区の竜神大吊橋で、毎年開催されている「鯉のぼりまつり」では、全国から寄付された約1000匹の鯉のぼりが空を舞う。その中で、ボロボロになったり色落ちをしたりして処分されるものが、毎年100匹ほどある。お役目を果たし処分されてしまうコイノボリを活用し、シッポから頭までアートしよう!と現代美術家のミヤタユキにより始まったのが、水府コイノボリプリジェクト『SCOI-スコイ-』である。
2013年10月より開始された「常陸太田アーティスト・イン・レジデンス」で水府地区に移住したディレクター兼アーティストのミヤタが、素材に選んだのが廃棄されるコイノボリであった。鯉のぼりとしては使用できないが、日本特有の文化が詰まったそれは、切りとっても美しく独特の雰囲気を持つ。地域には魅力的で豊かな素材があるが、物事が繰り返される事により風化してしまう。地域と共に、新たな価値を見出そうとしている。
地域とアートの関係は、生活の根源に繋がっている。過疎問題や経済的な部分も含め、様々な問題に作用する可能性に満ちている。地域が主体となる仕組みをつくりだすことが重要である。地域や社会システムに作用するために、目に見えるものを共創することはもちろん、地域の素材や想いを汲み取り、地域と共に、地域が主役の新しく柔軟な関係性や場、空間をつくっている。また、世界や全国に発信すべく商品開発も開始している。
新たなコミュニティや関係性が生まれ始めた
コイノボリをきっかけに、様々な廃棄物や地域特有の素材に興味関心が向きつつある
地域の皆さんから、本当に多くの企画やアイディアが届くようになった
発想や創造のきっかけ、地域の皆さんの発表の場として、幅広く多様な関係性が生まれる仕組みを創り続けたい。アートプロジェクトとして、地域の皆さんと創り上げた作品を発表しながら、派生したイベントや企画、商品開発等で、コイノボリという日本文化や常陸太田市(地方の特性)の美しさや生活の本質を少しでも伝えていきたい。創造し、外へ発信することで、地域の選択肢や生活の幅を広げ、他の地域や多世代が交流できる場が増え、過疎化を緩やかにするひとつの仕組みとなればと思う。
1985年茨城県水戸市生まれ。現代美術家、ディレクター等として活動。現在、常陸太田AIRディレクター兼アーティストを務めている。2008年多摩美術大学情報デザイン学科メディア芸術卒業。森美術館ミュージアムショップ勤務、茨城県観光事業ディレクターを経て、2013年東京藝術大学大学院先端芸術表現専攻入学、日比野克彦研究室在籍、2015年3月修了予定。様々な立場から、芸術に関するプロジェクトに関わる。
これまでは廃棄されていた地元の祭で使用された鯉のぼりを活用して、オシャレな作品を製作するという、環境・地域・アートの複数分野を掛け合わせたアイデアは、非常に斬新です。鯉のぼり以外にも応用できる可能性が高いと思いますので、今後も様々なアイデアで地域活性化を図ってください。