環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書令和8年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第4章>第5節 大気環境の保全

第5節 大気環境の保全

1 大気環境の現状

(1)光化学オキシダント
ア 環境基準の達成状況

2024年度の光化学オキシダントの環境基準達成率は、一般環境大気測定局(以下「一般局」という。)が0%(測定局数1,129局)、自動車排出ガス測定局(以下「自排局」という。)が0%(測定局数31局)であり、依然として極めて低い水準です。一方、昼間の測定時間を濃度レベル別の割合で見ると、1時間値が0.06ppm以下の割合は94.0%(一般局)でした。

光化学オキシダント濃度の長期的な改善傾向を評価するために、中央環境審議会大気・騒音振動部会微小粒子状物質等専門委員会が提言した新たな指標(8時間値の日最高値の年間99パーセンタイル値の3年平均値)によれば、2022~2024年度の結果は、2021~2023年度と比べて関東地域、東海地域、阪神地域が上昇、福岡・山口地域が横ばいでした。

イ 光化学オキシダント注意報等の発令状況等

2025年の光化学オキシダント注意報等の発令延日数(都道府県を一つの単位として注意報等の発令日数を集計したもの)は47日(16都府県)であり、月別に見ると、8月が最も多く19日、次いで7月が14日でした。また、光化学大気汚染によると思われる被害届出人数(自覚症状による自主的な届出による)は1人でした。

ウ 非メタン炭化水素の測定結果

2024年度の非メタン炭化水素の午前6時~午前9時の3時間平均値の年平均値は、一般局0.10ppmC、自排局0.11ppmCであり、近年、一般局、自排局共に緩やかな低下傾向にあります。

(2)微小粒子状物質
ア 環境基準の達成状況

2024年度の微小粒子状物質(PM2.5)の環境基準達成率は、一般局99.5%(有効測定局数874局)、自排局100%(有効測定局数232局)でした。また、年平均値は、一般局8.4μg/m3、自排局8.9μg/m3でした。

イ PM2.5注意喚起の実施状況

2013年2月に環境基準とは別に策定された「注意喚起のための暫定的な指針」に基づき、日平均値が70μg/m3を超えると予想される場合に都道府県等が注意喚起を実施しています。2025年度の注意喚起実施件数は0件でした。

(3)その他の大気汚染

2024年度の二酸化窒素(NO2)、浮遊粒子状物質(SPM)、一酸化炭素(CO)の環境基準達成率はいずれも、一般局、自排局共に100%、二酸化硫黄(SO2)の環境基準達成率は、一般局99.6%、自排局100%でした。

酸性雨について、2024年度のモニタリング結果によると、我が国の降水はpHの上昇(酸の低下)の兆候が見られました。また、生態系への影響については、大気汚染等が原因とみられる森林の衰退は確認されませんでした。

黄砂については、過放牧や耕地の拡大等の人為的な要因も影響していると指摘されています。年により変動が大きく、長期的な傾向は明瞭ではありません。

(4)有害大気汚染物質

環境基準が設定されている4物質に係る測定結果(2024年度)は、ベンゼンは1地点で環境基準を超過しましたが、その他の3物質は全ての地点で環境基準を達成しています(ダイオキシン類に係る測定結果については、第5章第1節3(1)を参照)。

指針値(環境中の有害大気汚染物質による健康リスクの低減を図るための指針となる数値)が設定されている物質のうち、ヒ素及びその化合物は4地点、1,2-ジクロロエタンは3地点、塩化ビニルモノマーは1地点、マンガン及びその化合物は3地点で指針値を超過しており、アクリロニトリル、アセトアルデヒド、塩化メチル、クロロホルム、水銀及びその化合物、ニッケル化合物、1,3-ブタジエンは全ての地点で指針値を達成しています。

(5)放射性物質

2024年度の大気における放射性物質の常時監視結果として、全国10地点における空間放射線量率の測定結果は、過去の調査結果と比べて特段の変化は見られませんでした。

(6)アスベスト(石綿)

石綿による大気汚染の現状を把握し、今後の対策の検討に当たっての基礎資料とするとともに、国民に対し情報提供していくため、建築物の解体工事等の作業現場周辺等で、大気中の石綿濃度の測定を実施しました(2024年度の対象地点は全国44地点)。2024年度の調査結果では、発生源周辺地域(解体現場は施工区域周辺)及びバックグラウンド地域の地点において、石綿以外の繊維を含む総繊維について特に高い濃度は見られませんでした。また、2025年度も引き続き大気中のアスベスト濃度調査を行いました。

2 窒素酸化物・光化学オキシダント・PM2.5等に係る対策

大気汚染防止法(昭和43年法律第97号)に基づく固定発生源対策及び移動発生源対策を適切に実施するとともに、光化学オキシダント及びPM2.5の生成の原因となり得る窒素酸化物(NOx)、揮発性有機化合物(VOC)等の排出対策を進めています。また、大気保全施策の推進等に必要な基礎資料となる常時監視体制を整備しています。

光化学オキシダントは呼吸器等への影響が懸念され、その主成分であるオゾンは、それ自体が温室効果ガスであると同時に、植物の光合成を阻害し二酸化炭素吸収を減少するとして、気候変動への影響も懸念されています。このため、2022年1月に「気候変動対策・大気環境改善のための光化学オキシダント総合対策について〈光化学オキシダント対策ワーキングプラン〉」を策定しました。これに基づき、2022年3月より科学的知見の取りまとめを開始し、2025年5月から中央環境審議会大気・騒音振動部会大気汚染物質小委員会において、検討を行い、2025年12月に答申を得て、大気の環境基準の告示を2026年1月に改正しました。また、新たに「微小粒子状物質・光化学オキシダント対策ワーキングプラン」を策定し、引き続き排出削減対策を進めることとしました。

(1)ばい煙に係る固定発生源対策

大気汚染防止法に基づき、ばい煙(NOx、硫黄酸化物(SOx)、ばいじん等)を排出する施設(ばい煙発生施設)について排出基準を定めて規制等を行うとともに、施設単位の排出基準では良好な大気環境の確保が困難な地域においては、工場又は事業場の単位でNOx及びSOxの総量規制を行っています。

(2)移動発生源対策

運輸・交通分野における環境保全対策については、自動車一台ごとの排出ガス規制の強化を着実に実施しました。また、自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法(平成4年法律第70号。以下「自動車NOx・PM法」という。)に基づき、自動車からのNOx及び粒子状物質(PM)の排出量の削減に向けた施策を実施しました。

ア 自動車単体対策と燃料対策

自動車の排出ガス及び燃料については、大気汚染防止法等に基づき規制を逐次強化してきています。「今後の自動車排出ガス低減対策のあり方について(第十五次答申)」(2024年9月中央環境審議会)を踏まえ、今後の自動車排出ガスの低減対策について審議を行っています。

イ 大都市地域における自動車排出ガス対策

自動車交通が集中する大都市地域の大気汚染状況に対応するため、自動車NOx・PM法の総量削減基本方針に基づき、自動車からのNOx及びPMの排出量の削減に向けた施策を計画的に進めています。同基本方針に規定される目標年度については、中央環境審議会の「今後の自動車排出ガス総合対策の在り方について(答申)」(2022年4月)を踏まえ、2026年度までに対策地域の全常時監視測定局において、安定的かつ継続的な環境基準の達成を目指していくこととなりました。

ウ 電動車の普及促進

乗用車は、2035年までに、新車販売に占める電動車の割合を100%にする、商用車は、8t以下の車については、2030年までに、新車販売に占める電動車の割合を20~30%、2040年までに電動車と合成燃料等の脱炭素燃料車で100%にする、8t超の車については、2030年までに電動車を5,000台先行導入するとの目標に基づき、電動車の普及のための各種施策に取り組みました。

電動車の普及を促す施策として、車両導入に対する各種補助、自動車税・軽自動車税の軽減措置及び自動車重量税の免除・軽減措置等の税制上の特例措置を講じました。

エ 船舶・航空機・建設機械の排出ガス対策

船舶からの排出ガスについては、IMOの基準を踏まえ、海洋汚染等防止法により、NOx、燃料油中硫黄分濃度(SOx、PM)について規制されています。

航空機からの排出ガスについては、国際民間航空機関(ICAO)の排出物基準を踏まえ、航空法(昭和27年法律第231号)により、炭化水素(HC)、CO、NOx、不揮発性粒子状物質(nvPM)等について規制されています。

建設機械からの排出ガスについては、特定特殊自動車排出ガスの規制等に関する法律(平成17年法律第51号。以下、「オフロード法」という。)に基づき2006年10月から順次使用規制を開始し、2011年、2014年及び2024年に規制を順次強化するとともに、「建設業に係る特定特殊自動車排出ガスの排出の抑制を図るための指針」に基づきNOx、PMなど大気汚染物質の排出抑制に取り組みました。

オフロード法の対象外機種(可搬型発動発電機や小型の建設機械等)についても、「排出ガス対策型建設機械の普及促進に関する規程」等により、排出ガス対策型建設機械の普及を図りました。さらに、融資制度により、これらの建設機械を取得しようとする中小企業等を支援しました。

オ 普及啓発施策等

警察庁、経済産業省、国土交通省及び環境省で構成するエコドライブ普及連絡会の枠組みを活用し、CO2削減につながる環境負荷の軽減に配慮した自動車利用の取組「エコドライブ」を推進し、環境に優しく、安全運転にもつながることを呼び掛けました。

(3)VOC対策

VOCは光化学オキシダント及びPM2.5の生成原因の一つであるため、その排出削減により、大気汚染の改善が期待されます。

VOCの排出抑制対策は、法規制と自主的取組のベストミックスにより実施しており、2024年度の総排出量は基準の2000年度に比べ、約6割削減されました。

VOCの一種である燃料蒸発ガスを回収する機能を有する給油機(Stage2)の普及促進のため、当該給油機を導入している給油所を大気環境配慮型SS(e→AS【イーアス】)として認定する制度を2018年2月に創設し、2026年3月末までに737件の給油所を認定しました。

(4)監視・観測、調査研究
ア 大気汚染物質等の監視体制

大気汚染の状況を全国的な視野で把握するとともに、大気保全施策の推進等に必要な基礎資料を得るため、国設大気環境測定所(9か所)、国設自動車交通環境測定所(9か所)、大気汚染防止法に基づき都道府県等が設置する一般局及び自排局において、大気の汚染状況の常時監視を実施しています。測定データ(速報値)、都道府県等が発令した光化学オキシダント注意報等やPM2.5注意喚起の情報について、環境省では「大気汚染物質広域監視システム(そらまめくん)」によりリアルタイムに収集し、インターネットで情報提供しています。

国及び都道府県等では季節ごとのPM2.5成分の測定を行っています。また、国において、全国10か所でPM2.5成分の連続測定、全国3か所でPM2.5の原因物質であるVOCの連続測定を行っています。これらの測定データを基に、国内の発生源寄与割合や大陸からの越境汚染による影響等、PM2.5による汚染の原因解明や効果的な対策の実施に向けた検討を進めています。

国内における越境大気汚染の状況を把握するため、国内の湿性・乾性沈着モニタリング、湖沼等を対象とした陸水モニタリング、土壌・植生モニタリング等を、離島など遠隔地域を中心に実施しています。また、国立研究開発法人国立環境研究所と協力して、高度な黄砂観測装置(ライダー装置)によるモニタリングネットワークを整備し、「環境省黄砂飛来情報(ライダー黄砂観測データ提供ページ)」において観測データをリアルタイムで提供しています。

イ 放射性物質の監視体制

関係機関が実施している放射性物質モニタリングを含めて、全国308地点で空間放射線量率の測定を行うなど、放射性物質による大気の汚染の状況を監視しており、2024年度の大気における放射性物質の常時監視結果を専門家による評価を経て公表しています。

東京電力福島第一原子力発電所事故により環境中に放出された放射性物質のモニタリングについては、政府が定めた「総合モニタリング計画」に基づき、関係府省、地方公共団体、原子力事業者等が連携して実施しています。また、放射線モニタリング情報のポータルサイトにおいて、モニタリングの結果を一元的に情報提供しています。

航空機モニタリングによる2024年12月時点の東京電力福島第一原子力発電所から80km圏内の地表面から1mの高さの空間線量率は、引き続き減少傾向にあります。

より強靱(じん)で機動的な環境放射線モニタリングシステムを構築するため、先進的モニタリングシステム構想を推進しています。具体的には、モニタリングポストで行われている通信回線の多重化の選択肢として、低消費電力で広域のネットワークを構築できる通信回線であるLPWA(Low Power Wide Area)の実証試験の実施や、LPWAと組み合わせて使用する小型モニタリング機器の開発、無人航空機等を用いた航空機モニタリングの運用、ドローン型モニタリングポストの開発等を進めました。

3 多様な有害物質による健康影響の防止

(1)石綿飛散防止対策

大気汚染防止法では、全ての建築物及びその他の工作物の解体等工事について、吹付け石綿や石綿を含有する断熱材、保温材、耐火被覆材、仕上塗材及び成形板等の使用の有無を事前調査で確認し、当該建材が使用されている場合には作業基準を遵守することなどを求めており、地方公共団体と連携して、石綿の大気環境への飛散防止対策に取り組んできました。

2020年6月に大気汚染防止法の一部を改正する法律(令和2年法律第39号)等が公布され、2021年4月から順次施行されており、全ての石綿含有建材が規制対象となるなど、解体等工事に伴うアスベストの飛散防止対策が強化されました。改正後の大気汚染防止法の円滑な運用がなされるように対応の徹底を図りました。

(2)水銀大気排出対策

水銀に関する水俣条約の的確かつ円滑な施行を確保するため、改正大気汚染防止法が2018年4月に施行されました。同法に基づく水銀大気排出対策の着実な実施を図るため、水銀排出施設の届出情報及び水銀濃度の測定結果の把握や、要排出抑制施設における自主的取組のフォローアップ、水銀大気排出インベントリーの作成等を行いました。また、2023年4月に、水銀に係る改正大気汚染防止法施行後5年が経過したことから、制度の点検・見直しを行い、2024年9月の中央環境審議会答申「水銀に関する水俣条約を踏まえた水銀大気排出対策の実施について(第三次答申)」に即して、所要の省令改正を行いました。

(3)有害大気汚染物質対策等

有害大気汚染物質による大気汚染の状況を把握するため、大気汚染防止法に基づき、地方公共団体と連携して有害大気汚染物質モニタリング調査を実施しました。特に酸化エチレンについては、2022年10月に策定した「事業者による酸化エチレンの自主管理促進のための指針」により排出抑制対策を推進しており、同指針に基づき事業者団体等が策定した自主管理計画の2024年度の取組状況を、2026年1月に開催した中央環境審議会大気・騒音振動部会有害大気汚染物質排出抑制対策等専門委員会において報告しました。

有害大気汚染物質から選定された優先取組物質のうち、環境目標値が設定されていない物質については、迅速な値の設定を目指すこととされており、科学的知見の充実のため、有害性情報等の収集を行いました。

4 地域の生活環境保全に関する取組

(1)騒音・振動対策

騒音に係る環境基準は、地域の類型及び時間の区分ごとに設定されており、類型指定は、2024年度末時点で765市、415町、38村、23特別区において行われています。また、環境基準達成状況の評価は、「個別の住居等が影響を受ける騒音レベルによることを基本」とされ、一般地域(地点)と道路に面する地域(住居等)別に行うこととされています。

一般地域における騒音の環境基準の達成状況は、2024年度において、2,315地点の測定地点のうち2,091地点(90.3%)で環境基準を達成しました。

騒音苦情の件数は2024年度には前年度より4件減少し、1万9,886件でした。発生源別に見ると、建設作業に係る苦情の割合が41.1%を占め、次いで工場・事業場に係る苦情の割合が23.8%を占めています。

振動の苦情件数は、2024年度は前年度より241件増加し、4,508件でした。発生源別に見ると、建設作業に対する苦情件数が72.5%を占め、次いで工場・事業場に係るものが15.9%を占めています。

ア 自動車、新幹線鉄道、航空機等の騒音・振動対策

自動車単体の構造の改善による騒音の低減等の発生源対策、道路構造対策、交通流対策、沿道対策等の諸施策を総合的に推進しました。また、「今後の自動車単体騒音低減対策のあり方について(第四次答申)」(2022年6月中央環境審議会)を踏まえ、四輪車及び二輪車走行騒音規制の見直し等について検討を行っています。

道路に面する地域における騒音の環境基準の達成状況については、2024年度において、全国約962万7,900戸の住居等を対象に行った評価では、昼間・夜間のいずれか又は両方で環境基準を超過したのは約42万5,000戸(4.4%)でした。このうち、幹線交通を担う道路に近接する空間にある約415万9,200戸のうち昼間・夜間のいずれか又は両方で環境基準を超過した住居等は約27万5,200戸(6.6%)でした。

要請限度制度の運用状況については、自動車騒音に関して、2024年度に地方公共団体が苦情を受け測定を実施した22地点のうち要請限度値を超過したのは2地点でした。また同様に、道路交通振動に関して、測定を実施した42地点のうち要請限度値を超過したのは2地点でした。なお、要請限度制度とは、自動車からの騒音や振動が環境省令で定める限度を超えていることにより道路の周辺の生活環境が著しく損なわれると認められる場合に、市町村長が都道府県公安委員会に対して道路交通法(昭和35年法律第105号)の規定による措置等を要請することができる制度です。

新幹線鉄道騒音に係る環境基準の達成状況は、2024年度において、492地点の測定地点のうち215地点(43.7%)で環境基準を達成しました。なお、新幹線鉄道の軌道中心から25m以内に住居がない地域数の割合は、2024年度において17.7%であり、近年ほとんど変動がありません。また、整備新幹線開業時における障害防止対策及び新幹線鉄道振動に係る指針値は、おおむね達成されています。

新幹線鉄道騒音対策としては、従来の音源対策である75デシベル対策に加え、新幹線鉄道沿線の地方公共団体に対し、新幹線鉄道騒音による著しい騒音が及ぶ地域については、沿線の土地利用計画の決定又は変更に際し、新たな市街化を極力抑制するとともに、具体的な土地利用において騒音により機能を害されるおそれの少ない公共施設等を配置するなど、騒音防止可能な措置を講じるよう指導しているところです。また、新幹線鉄道騒音の測定・評価に関する標準的な方法を示した「新幹線鉄道騒音測定・評価マニュアル」に基づく測定・評価等を行い、現状の把握に努めています。

航空機騒音については、測定・評価に関する標準的な方法を示した「航空機騒音測定・評価マニュアル」に基づく測定・評価等を行い、現状の把握に努めています。

公共用飛行場周辺における航空機騒音対策としては、耐空証明(旧騒音基準適合証明)制度による騒音基準に適合しない航空機の運航を禁止するとともに、緊急時等を除き、成田国際空港では夜間の航空機の発着を禁止し、大阪国際空港等では発着数の制限を行っています。

航空機騒音対策を実施してもなお航空機騒音の影響が及ぶ地域については、公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律(昭和42年法律第110号)等に基づき空港周辺対策を行っています。同法に基づく対策を実施する特定飛行場は、東京国際空港、大阪国際空港、福岡空港など14空港であり、これらの空港周辺において、学校、病院、住宅等の防音工事及び共同利用施設整備の助成、移転補償、緩衝緑地帯の整備等を行っています。また、大阪国際空港及び福岡空港については、周辺地域が市街化されているため、同法により計画的周辺整備が必要である周辺整備空港に指定されており、大阪国際空港周辺の事業は関西国際空港及び大阪国際空港の一体的かつ効率的な設置及び管理に関する法律(平成23年法律第54号)等に基づき新関西国際空港株式会社より空港運営権者に選定された関西エアポート株式会社が、福岡空港周辺の事業は国及び関係地方公共団体の共同出資で設立された独立行政法人空港周辺整備機構が関係府県知事の策定した空港周辺整備計画に基づき、上記施策に加えて、再開発整備事業等を実施しています。

自衛隊等の使用する飛行場等に係る周辺対策としては、防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律(昭和49年法律第101号)等に基づき、学校、病院、住宅等の防音工事の助成、移転措置、緑地帯等の整備、テレビ受信料の助成等の各種施策を行っています。

航空機騒音に係る環境基準の達成状況は、2024年度において、588地点の測定地点のうち、506地点(86.1%)で達成しました。

イ 工場・事業場及び建設作業の騒音・振動対策

騒音規制法(昭和43年法律第98号)及び振動規制法(昭和51年法律第64号)では、騒音・振動を防止することにより生活環境を保全すべき地域内における法で定める工場・事業場及び建設作業の騒音・振動を規制しています。

振動規制法に基づく特定施設であるコンプレッサーについて、「一定の限度を超える大きさの振動を発生しないものとして環境大臣が指定する圧縮機を定める告示」及び「低振動型圧縮機の指定に関する規程」を2022年5月に公布し、同年12月に施行されました。2025年度末時点で、低振動型圧縮機として1万2,892型式を指定しました。

ウ 低周波その他の対策

2024年度には全国の地方公共団体で、低周波に関する苦情が291件受け付けられました。低周波音問題への対応に資するため、地方公共団体職員を対象として低周波音の測定評価方法等に係る講習を行っています。

また、新しい騒音問題として、風力発電施設については「風力発電施設から発生する騒音に関する指針」及び「風力発電施設から発生する騒音等測定マニュアル」、省エネ型温水器等については「地方公共団体担当者のための省エネ型温水器等から発生する騒音対応に関するガイドブック」の周知徹底に努めています。

近年、営業騒音、拡声機騒音、生活騒音等のいわゆる近隣騒音は、騒音に係る苦情全体の約18.9%を占めており、普及啓発活動を行っています。各地方公共団体では2024年度末時点で、深夜営業騒音は41の都道府県及び106の市町村で、拡声機騒音は43の都道府県及び135の市町村で条例を制定しています。

(2)悪臭対策

悪臭苦情の件数は2018年度からは増加していましたが、2021年度からは減少傾向になり、2024年度の悪臭苦情件数は1万1,076件と、前年度に比べ659件減少しました。

悪臭防止法(昭和46年法律第91号)に基づき、工場・事業場から排出される悪臭の規制等を実施しています。2025年度には、嗅覚測定法における現告示法の見直しの検討、臭気指数算出方法の検討等を行いました。また、臭気指数等の測定を行う臭気測定業務従事者についての国家資格を認定する臭気判定士試験を毎年1回実施しています。

(3)光害(ひかりがい)対策等

不適切な屋外照明等の使用から生じる光は、人間の諸活動や動植物の生息・生育に悪影響を及ぼすとともに、過度な明るさはエネルギーの浪費であり、地球温暖化の原因にもなります。

このため、良好な光環境の形成に向けて、近年のLED照明の普及など照明技術を取り巻く環境の変化も踏まえて2020年度に改定した光害(ひかりがい)対策ガイドライン等を活用し、普及啓発を図りました。また、星空観察を通じて光害(ひかりがい)に気づき、環境保全の重要性を認識してもらうことを目的として、夏と冬の2回、肉眼観察とデジタルカメラによる夜空の明るさ調査を呼び掛けました。

5 アジアにおける大気汚染対策

アジア地域における大気環境の改善に向け、様々な二国間・多国間協力を通じて、政策・技術に関する情報共有、モデル的な技術の導入、共同研究等を進めています。

(1)二国間協力

第6章第4節1(2)イを参照。

(2)日中韓三カ国環境大臣会合(TEMM)の枠組みの下の協力

TEMMの枠組みの下で、大気汚染に関する政策対話、黄砂に関する共同研究等を実施しました。

(3)多国間協力
ア アジアEST地域フォーラム

2024年12月にフィリピン共和国・マニラにおいて第16回アジアEST(環境的に持続可能な交通)地域フォーラムを開催し、アジア地域各国のESTに関する政策の共有を図るなどとともに、第14回フォーラムで採択された「愛知宣言2030」の目標に対する各国の取組状況についてフォローアップが実施されました。

イ 東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(EANET)

東アジア地域において、酸性雨問題に関する地域の協力体制を確立することを目的として、我が国のイニシアティブにより、2001年に東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(EANET)を設立し、現在、東アジア地域の13か国が参加しています。EANETは、2020年の政府間会合で酸性雨から広範な大気環境問題へ活動範囲を拡大し、2021年の会合で対象物質や活動を明確化し、プロジェクト単位で予算を執行する新制度とガイドラインを採択しました。さらに、2025年11月の第27回政府間会合では、新たな5か年計画「EANET中期計画(2026-2030)」が採択されました。

ウ コベネフィット・アプローチの推進

アジア太平洋地域の大気環境改善に向けた活動を促進するため、2014年に国連環境計画(UNEP)と連携して立ち上げたアジア太平洋クリーン・エア・パートナーシップ(APCAP)の活動の推進、クリーン・エア・アジア(CAA)と連携した国際会議等における情報発信や、我が国の技術の普及拡大等、多国間の連携や二国間の協力等を通じて、大気環境改善と温室効果ガス排出削減に同時に資するコベネフィット・アプローチを推進しました。