環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書令和8年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第3章>第6節 適正な国際資源循環体制の構築と循環産業の海外展開の推進

第6節 適正な国際資源循環体制の構築と循環産業の海外展開の推進

1 国際的な循環政策形成及び国内外一体的な循環政策の推進

ここ数年、欧州を中心に様々なバリューチェーンに関する規制や企業の情報開示ルールが導入または提案されており、グローバル企業を中心にバリューチェーンレベルでの循環性向上に関する取組も進んでいます。環境省は、G7サミットで承認された「循環経済及び資源効率性原則(CEREP)」に基づき、国際機関や民間企業とも連携し、資源循環分野の国際ルール形成を進めています。2024年11月には「資源循環に関する企業レベルの情報開示スキームの開発に係る検討会」を立ち上げ、2026年度も同検討会を継続しています。検討会における議論の成果は、持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)等が開発する企業の循環性に関する国際的な情報開示の枠組みであるGCP(グローバル循環プロトコル)の検討にインプットし、議論を主導しました。GCP初版は、2025年11月にブラジル・ベレンで開催されたCOP30の日本パビリオンにおいて、公表され、2026年も継続的な改定に向けた検討が進んでいます。資源効率性の高い国際社会の実現に向け、ISO/TC323(サーキュラーエコノミーに関する専門委員会)、ISO/TC297(廃棄物の収集及び輸送管理に関する専門委員会)やISO/TC300(廃棄物固形燃料を含む廃棄物固形マテリアルに関する専門委員会)等でのサーキュラーエコノミーに関連する国際標準化の取組等を、日本発提案等によりイニシアティブを発揮しつつ、諸外国とも協力して進めています。

2 適正な国際資源循環体制の構築

地球規模での循環型社会形成と、我が国の循環産業の海外展開を通じた活性化を図るためには、国、地方公共団体、民間レベル、市民レベル等の多様な主体同士での連携に基づく重層的なネットワークを形成する必要があります。アジア太平洋諸国における循環型社会の形成に向けては、3R・循環経済に関するハイレベルの政策対話の促進、3R・循環経済推進に役立つ制度や技術の情報共有等を目的として、2025年3月に「アジア太平洋3R・循環経済推進フォーラム」第12回会合をインド・ジャイプールにて開催し、2025-2035年の3R・循環経済の共通ビジョンと13のゴールを定めたジャイプール宣言の採択が行われました。また、アフリカにおいては、都市廃棄物管理に関するアフリカ各国の知見・経験の共有と、人材・組織の能力向上等により、官民の投資を促進し、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献するため、アフリカ24か国と環境省、国際協力機構(JICA)等が中心となって、2017年4月に「アフリカのきれいな街プラットフォーム(ACCP)」を設立しました(2026年4月時点で、ACCPメンバーは48か国・239都市に拡大。)。2025年8月には、横浜で行われた第9回アフリカ開発会議(TICAD9)のパートナー事業として、ACCP第4回会合を開催いたしました。本会合では、アフリカ諸国が直面する廃棄物管理の課題に関する発表・意見交換するとともに、今後3年間の活動を示す「新・横浜行動指針」を発表いたしました。また、アフリカにおける公衆衛生の改善に向け、世界銀行等国際開発機関等への廃棄物インフラプロジェクト要請を促進すべく、新たに設立した「アフリカ向け廃棄物管理のための事業形成ファンド」について、同会合中の設立記念レセプションにおいて発表いたしました。ACCPの枠組みの下、廃棄物に関する知見やデータの収集・整備や、我が国の廃棄物管理制度や技術に関する研修等の活動を実施しており、SDGsの目標年である2030年に「きれいな街と健康な暮らし」がアフリカで実現することを目指しています。アジア各国に適合した廃棄物・リサイクル制度や有害廃棄物等の環境上適正な管理(ESM)の定着のため、JICAでは、アジア太平洋諸国のうち、ベトナム、インドネシア、マレーシア、スリランカ、カンボジア、タイ、大洋州等について、技術協力等により廃棄物管理や循環型社会の形成を支援しました。また、政府開発援助(ODA)対象国からの研修員受入れを実施しました。

国際的な活動に積極的に参画し、貢献することも重要です。2025年11月にブラジル連邦共和国で開催された国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP30)では、「グローバル循環プロトコル(GCP)」をテーマとしたサイドイベントを持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)等と共同で開催し、循環性を評価する共通の枠組みの必要性とそのためのGCPの意義などについて議論を深め、GCP初版を公表しました。

外務省及び環境省は、我が国に誘致したUNEP国際環境技術センター(UNEP/IETC)の運営経費を拠出しています。UNEP/IETCは、2016年の国連環境総会決議(UNEA2/7)で廃棄物管理の世界的な拠点として位置付けられ、主に廃棄物管理を対象に、開発途上国等に対し、研修及びコンサルティング業務の提供、調査、関連情報の蓄積及び普及等を実施しています。

バーゼル条約については、2019年のバーゼル条約第14回締約国会議(COP14)にて規制対象物に廃プラスチックを加える附属書改正が決議され、2021年1月1日より改正附属書が発効しています。本改正について、我が国では2020年10月にプラスチックの輸出に係るバーゼル法該非判断基準を公表し、規制対象となるプラスチックの範囲を明確化することで、改正附属書の着実な実施を行っています。

2022年6月に開催されたバーゼル条約第15回締約国会議(COP15)においては、同条約の附属書を改正し、非有害な電気及び電子機器廃棄物についても条約の規制対象とすることなどが決定され、2025年1月1日より改正附属書が発効しています。本改正についても、我が国では2024年10月に電気及び電子機器廃棄物の輸出入に係るバーゼル法該非判断基準を公表し、規制対象となる電気及び電子機器廃棄物の範囲を明確化することで、改正附属書の着実な実施を行っています。加えてCOP15では我が国がリード国を務めた有害廃棄物の陸上焼却に関するガイドライン、水銀に関する水俣条約において考慮することとされている水銀廃棄物の環境上適正な管理に関する技術ガイドラインが採択に至りました。

2023年5月に開催されたバーゼル条約第16回締約国会議(COP16)においては、我が国が英国、中国と共にリード国を務めたプラスチック廃棄物の適正処理に関するガイドラインや、POPs廃棄物の環境上適正な管理に関する総合技術ガイドライン等が採択に至りました。

また、バーゼル条約の円滑な運用のための国際的な連携強化を図るため、我が国主催の「有害廃棄物の不法輸出入防止に関するアジアネットワーク」ワークショップを2025年12月にインドネシアにおいて開催し、アジア太平洋地域の12の国と地域及び関係国際機関が参加しました。

国、国際機関、NGO、民間企業等が連携して自主的に水銀対策を進める「世界水銀パートナーシップ」において廃棄物管理分野の運営を担当し、技術情報やプロジェクト成果の共有を進めました。また、同分野内のパートナーを集い、水銀廃棄物の処理技術や各国の課題等に関する情報交換等を行い、水銀廃棄物対策技術の普及促進に取り組みました。

我が国は、2019年3月に2009年の船舶の安全かつ環境上適正な再資源化のための香港国際条約(以下「シップ・リサイクル条約」という。)への加入書を国際海事機関に寄託し、締約国となりました。我が国は、このシップ・リサイクル条約の策定をリードしてきた国として、同条約の早期発効に向けて、各国に対する働きかけを行ってきました。2023年6月にバングラデシュ及びリベリアが条約を締結したことにより、実施要件を充足し、2025年6月にシップ・リサイクル条約が発効されました。国土交通省は円滑な条約の実施に向けた国際協力を推進するため、JICAを通じてバングラデシュへの技術協力(専門家派遣)等を実施しています。日本国内においては、シップ・リサイクル条約を適切に実行するため、船舶の再資源化解体の適正な実施に関する法律(平成30年法律第61号)が施行されました。

そのほか、港湾における循環資源の取扱いにおいては、リサイクルポートが活用されました。

近年、世界各国において自然災害が頻発化・激甚化しています。災害大国である我が国が蓄積してきた災害対応のノウハウや経験の供与は、アジア太平洋地域のような災害が頻発する地域においても有効です。そこで、環境省では、我が国の過去の災害による経験、知見を活かした国際支援の一環として、2018年に策定したアジア太平洋地域向けの災害廃棄物管理ガイドラインの周知活動を実施しています。また、2026年3月に、タイで開催された3RINCs(The 3R International Scientific Conference on Material Cycles and Waste Management)と連携し、アジア・太平洋地域における災害廃棄物の発生量推計の精緻化と現地における同推計方法活用の促進についてのワークショップを開催しました。

3 我が国の循環産業の国際展開の推進と途上国の循環インフラ整備の促進

我が国の廃棄物分野の経験や技術を活かした、廃棄物発電ガイドラインの策定等アジア各国の廃棄物関連制度整備と、我が国循環産業の海外展開を戦略的にパッケージとして推進しています。我が国循環産業の戦略的国際展開・育成事業等では、海外展開を行う事業者の支援を2025年度に8件実施しました。2011年度から2023年度までの支援の結果、2025年3月時点で、事業化を開始し、既に収入を得ている件数が6件、事業化のめどが立っており、最終的な準備を進めている件数が2件、事業化に向けて、具体的な検討をしている件数が9件、事業化に向けて、引き続き調査をしている件数が17件となっています。

また、我が国企業によるアジア等でのリサイクルビジネス展開支援については、2018年度から継続して実施している国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による技術実証と併せて、相手国政府との政策対話を実施し、我が国企業の海外展開促進と相手国における適切な資源循環システム構築のためのリサイクルシステム・制度構築を支援しています。

各国別でも様々な取組を行っています。インドネシア、ガーナ、エチオピア、ウガンダ、タイ、フィリピン、ベトナム、マレーシア、バングラデシュ等に対し、政策対話や合同ワークショップの開催、研修等を通じて、制度設計支援や、人材育成を行いました。

アジア地域等の途上国における公衆衛生の向上、水環境の保全に向けては、浄化槽等の我が国発の優れた分散型生活排水処理システムの国際展開を実施しています。2025年11月には、第13回アジアにおける分散型汚水処理に関するワークショップを開催しました。高性能な分散型汚水処理施設の維持管理と人材育成をテーマとして知見の共有や、各国に共通する課題及び固有の課題の整理を行い、その解決に向けた方策を議論することで、今後のアジアにおける高性能な分散型排水処理施設の強力かつ健全な普及を促進しました。

また、2025年9月にはフィリピン、12月にはラオスにおいて、分散型生活排水管理の推進に向けたセミナーを開催し、我が国における浄化槽の法体制等について知見を提供し、分散型汚水管理に関する今後の課題や取組について議論を重ねることで、我が国の浄化槽の海外展開の促進を図りました。

2025年8月には、インド共和国ジャル・シャクティ省との間で2022年に締結した「分散型生活排水管理分野における協力覚書」の更新を行いました。今後も分散型生活排水管理分野における技術や経験等を活用し、インド共和国の水環境保全と公衆衛生の向上に貢献します。

事例:アジアで広がる循環経済・社会のネットワーク

我が国における消費と生産は、バリューチェーンを通じASEANを含むアジア諸国と不可分に結びついています。そのため、環境負荷削減に向けた対策も地域全体の政策対応が進むことが重要です。

アジア地域では、国や自治体の政策決定者や大学、シンクタンク等の研究者が、都市間の政策フォーラムやネットワークを作っています。こうした場での相互学習と協力を通じて政策の理念や課題・目標・対策に関する共通認識を持つことが、各国や自治体の政策推進を支えています。このため、アジア地域の持続可能な資源利用に、こうしたネットワークの重要性が高まっています。例えば、日本政府が2009年に創設したアジア太平洋3R・循環経済推進フォーラムは、3R及び循環経済の政府間の対話・情報共有の場として機能してきました。また、同フォーラムに基づくC-3(Cities Coalition for Circularity)や、イクレイ日本が創設し、横浜市が第一号都市として宣言に署名した「アジア循環型都市宣言制度」など、自治体・都市レベルの連携の枠組みも構築されつつあります。また、持続可能性に関する政策理念・手法が主流化する一方で、重要資源をアジア地域各国と共有しつつ、持続的に利用することが大切になります。そのため今後は産官学連携による重要資源の有効利用を見据えた循環型のビジネスモデルやサービスモデルの社会実装が重要となります。

アジアで広がる循環経済・社会のネットワーク