環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書令和7年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第6章>第9節 公害紛争処理等及び環境犯罪対策

第9節 公害紛争処理等及び環境犯罪対策

1 公害紛争処理等

(1)公害紛争処理

公害紛争については、公害等調整委員会及び都道府県に置かれている都道府県公害審査会等が公害紛争処理法(昭和45年法律第108号)の定めるところにより処理することとされています。公害紛争処理手続には、あっせん、調停、仲裁及び裁定の4つがあります。

公害等調整委員会は、裁定を専属的に行うほか、重大事件(水俣病やイタイイタイ病のような事件)、広域処理事件(航空機騒音や新幹線騒音)等について、あっせん、調停及び仲裁を行い、都道府県公害審査会等は、それ以外の紛争について、あっせん、調停及び仲裁を行っています。

ア 公害等調整委員会に係属した事件

2024年中に公害等調整委員会が受け付けた公害紛争事件は28件で、これに前年から繰り越された49件を加えた計77件(責任裁定事件41件、原因裁定事件32件、調停事件2件、義務履行勧告事件2件)が2024年中に係属しました。その内訳は、表6-9-1のとおりです。このうち2024年中に終結した事件は40件で、残り37件が2025年に繰り越されました。

表6-9-1 2024年中に公害等調整委員会に係属した公害紛争事件

終結した主な事件としては、「東海市における工場からの粉じん・悪臭等による財産被害・健康被害責任裁定申請事件」があります。この事件は、愛知県東海市の申請人らが、隣接する自動車部品塗装工場(被申請人)からの粉じん、悪臭等によって、財産被害及び健康被害を受けたとして、損害賠償を求めたものです。公害等調整委員会は、本件について、直ちに裁定委員会を設け、1回の現地期日を開催するとともに、専門委員による現地調査等を実施するなど、手続を進めた結果、当事者間の合意による解決が相当であると判断し、職権で調停に付し、2024年2月、第2回調停期日において、裁定委員会が提示した調停案に基づき当事者双方が合意して調停が成立し、本件申請については取り下げられたものとみなされ、本事件は終結しました。

イ 都道府県公害審査会等に係属した事件

2024年中に都道府県の公害審査会等が受け付けた公害紛争事件は31件で、これに前年から繰り越された42件を加えた計73件(調停事件70件、義務履行勧告事件2件、あっせん事件1件)が2024年中に係属しました。このうち2024年中に終結した事件は35件で、残り38件が2025年に繰り越されました。

ウ 公害紛争処理に関する連絡協議

公害紛争処理制度の利用の促進を図るため、都道府県・市区町村、裁判所及び弁護士会に向けて制度周知のための広報を行いました。また、公害紛争処理連絡協議会、公害紛争処理関係ブロック会議等を開催し、都道府県公害審査会等との相互の情報交換、連絡協議に努めました。

(2)公害苦情処理
ア 公害苦情処理制度

公害紛争処理法においては、地方公共団体は、関係行政機関と協力して公害に関する苦情の適切な処理に努めるものと規定され、公害等調整委員会は、地方公共団体の長に対し、公害に関する苦情の処理状況について報告を求めるとともに、地方公共団体が行う公害苦情の適切な処理のための指導及び情報の提供を行っています。

イ 公害苦情の受付状況

2023年度に全国の地方公共団体の公害苦情相談窓口で受け付けた苦情件数は6万9,153件で、前年度に比べ2,437件減少しました(対前年度比3.4%減)。

このうち、典型7公害(環境基本法(平成5年法律第91号)第2条第3項において定義されている「大気汚染」「水質汚濁」「土壌汚染」「騒音」「振動」「地盤沈下」及び「悪臭」)の苦情件数は4万8,969件で、前年度に比べ大気汚染が529件減少するなど、全体でも1,754件減少しました(対前年度比3.5%減)。

また、典型7公害以外の苦情件数は2万184件で、前年度に比べ廃棄物投棄が642件減少するなど、全体でも683件減少しました(対前年度比3.3%減)。

ウ 公害苦情の処理状況

2023年度の典型7公害の直接処理件数(苦情が解消したと認められる状況に至るまで地方公共団体において措置を講じた件数)4万4,653件のうち、2万9,289件(65.6%)が、苦情を受け付けた地方公共団体により、1週間以内に処理されました。

エ 公害苦情処理に関する指導等

地方公共団体が行う公害苦情の処理に関する指導等を行うため、公害苦情の処理に当たる地方公共団体の担当者を対象とした公害苦情相談員等ブロック会議等を実施しました。

2 環境犯罪対策

(1)環境事犯の取締り

環境事犯について、特に産業廃棄物の不法投棄事犯、暴力団が関与する悪質な事犯等に重点を置いた取締りを推進しました。2024年中に検挙した環境事犯の検挙事件数は5,443事件(2023年中は5,832事件)で、過去5年間における環境事犯の法令別検挙事件数の推移は、表6-9-2のとおりです。

表6-9-2 環境事犯の法令別検挙事件数の推移(2020年~2024年)
(2)廃棄物事犯の取締り

2024年中に廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号。以下「廃棄物処理法」という。)違反で検挙された4,719事件(2023年中は5,054事件)の態様別検挙件数は、表6-9-3のとおりです。このうち不法投棄事犯が51.4%(2023年中は52.1%)、また、産業廃棄物事犯が13.5%(2023年中は12.9%)を占めています。

表6-9-3 廃棄物処理法違反の態様別検挙事件数(2024年)
(3)水質汚濁事犯の取締り

2024年中の水質汚濁防止法(昭和45年法律第138号)違反に係る水質汚濁事犯の検挙事件はありませんでした(2023年中は2事件)。

(4)検察庁における環境関係法令違反事件の受理・処理状況

2024年中における主な罪名別環境関係法令違反事件の通常受理・処理人員は、表6-9-4のとおりで、受理人員は、廃棄物処理法違反(6,000人)が最も多く、表全体の約90.3%を占めています。次いで、海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律違反(267人)となっています。処理人員は、起訴が3,298人、不起訴が3,220人であり、起訴率は約50.6%です。起訴人員のうち公判請求は173人、略式命令請求は3,125人です。

表6-9-4 罪名別環境関係法令違反事件通常受理・処理人員(2024年)