農林水産業は、人間の生存に必要な食料や生活資材等を供給する必要不可欠な活動である一方、我が国では、昔から農林水産業の営みが、身近な自然環境を形成し、多様な生物種の生育・生息に重要な役割を果たしてきました。今後、安全な食料や木材等の安定供給への期待に応えつつ、環境と調和のとれた持続可能な食料システムの構築とそれを支える農山漁村の活性化が必要です。そのため、食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現させるために、2021年5月に策定された「みどりの食料システム戦略」やその実現に向けて2022年7月に施行された環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律(令和4年法律第37号)に基づき温室効果ガス削減や化学農薬・化学肥料の使用低減等の環境負荷低減の取組を促進します。また、持続可能な森林経営等を積極的に進めるとともに、生態系に配慮した再生可能エネルギー等の利用を促進します。さらに、農業生産現場において、環境保全に配慮した農業生産工程管理(GAP)の普及・推進を図るとともに、農業者が有機農業に積極的に取り組むことができるよう環境整備を図ります。
食料・農林水産業の持続可能な生産・消費を後押しするため、消費者庁、農林水産省、環境省の3省庁連携の下、官民協働のプラットフォームである「あふの環(わ)2030プロジェクト~食と農林水産業のサステナビリティを考える~」において、参加メンバーが一斉に情報発信を実施するサステナウィークや全国各地のサステナブルな取組動画を募集・表彰するサステナアワード等を実施します。
「みどりの食料システム戦略」に基づき、農産物の生産段階における環境負荷低減の努力を星の数で表示し、消費者に分かりやすく伝える「見える化」の取組を推進します。また、温室効果ガスの削減・吸収量をクレジットとして国が認証し、民間資金を呼びこむ、J-クレジット制度の農林水産分野での活用を促進します。さらに、農林水産省の全ての補助事業等を対象に、最低限行うべき環境負荷低減の取組を要件化する環境負荷低減のクロスコンプライアンスを令和6年度から試行実施しています。こうした取組を通じて、「みどりの食料システム戦略」を強力に推進します。我が国における「みどりの食料システム戦略」に基づく取組は、気象条件や農業生産構造の類似するアジアモンスーン地域の持続的な食料システムのモデルとなり得るものであり、2023年10月の日ASEAN農林大臣会合において採択された「日ASEANみどり協力プラン」に基づき、ASEAN各国のニーズに応じながら、我が国の技術や経験を活かした協力プロジェクトを推進します。
自然資源の保全活用により持続的な地域振興に取り組む地域への支援、エコツーリズムの基本的な考え方や各地の取組状況のホームページ等による発信、ガイド等人材の育成、情報の収集・整理、戦略的な広報活動、他施策との連携等を推進します。