2017年12月に取りまとめられた「風評払拭・リスクコミュニケーション強化戦略」(復興庁事務局)に基づき、福島県いわき市に設置した「放射線リスクコミュニケーション相談員支援センター」が中心となり、福島県内における放射線不安対策として、住民からの相談に対応する相談員、地方公共団体職員等への研修や専門家派遣等の技術支援を行っています。加えて、帰還した又は帰還を検討している住民を対象に、帰還後の生活の中で生じる放射線への不安・疑問について、車座意見交換会等を通じたリスクコミュニケーションを実施しています。また、福島県外においても、企業や学校、地域住民の要望に応じた研修会やセミナーを開催しています。
東京電力福島第一原子力発電所の事故後の健康影響について、原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)では「放射線被ばくが直接の原因となるような将来的な健康影響は見られそうにない」と評価しています。また福島県「県民健康調査」検討委員会甲状腺検査評価部会においては、「先行検査から検査4回目までにおいて、甲状腺がんと放射線被ばくの間の関連は認められない」とまとめています。(甲状腺検査は各対象者に原則2年に1回実施しており、先行検査から本格検査(検査4回目)は2019年度までに実施された検査です。)
このように放射線の健康影響に係る科学的根拠に基づく知見は日々更新されていますが、適時に情報が届かないことで、不安や風評につながっていくおそれがあります。そのため最新の科学的知見を学びながら今の福島を知ることや、様々な情報にまどわされずに適正な判断力で情報を読み解く力を養うことを目的とした「ぐぐるプロジェクト」を2021年7月に立ち上げ、放射線の健康影響に関する正確な情報を全国に分かりやすく発信することで、不安や風評をなくしていく取組を推進しています(図4-5-1)。
ぐぐるプロジェクトでは、全国各地でセミナーを開催するほか、学んだことを発信する場として作品コンテストも行っています。学んだ人が自ら発信することで、周りの人に伝わっていくこと、公募による新しい発想からよりよい情報発信につなげていくことを目指しています(図4-5-2)。
除染や中間貯蔵施設の整備、特定廃棄物の処理、帰還困難区域における特定復興再生拠点区域の整備等の復興・再生に向けた事業を進めると同時に、放射線や地域の環境再生への取組等について分かりやすく情報を提供しています。また、環境再生プラザやリプルンふくしま、中間貯蔵工事情報センターを主な拠点とし、環境再生事業に関連する放射線リスクコミュニケーションに係る取組を実施しています。さらに、高い専門性や豊富な経験を持つ専門家の、市町村や町内会、学校等への派遣、Web等を活用した除染・放射線学習をサポートする教材の配布を実施しています。
2023年度は、放射線に係るリスクコミュニケーションとして、専門家派遣を83回実施しました。
ALPS(アルプス)処理水に係る風評対策のために、原子力災害による風評被害を含む影響への対策タスクフォース(復興庁事務局)において「ALPS(アルプス)処理水に係る理解醸成に向けた情報発信等施策パッケージ」を取りまとめ、政府一丸となった取組を進めています。
この一環として、風評影響の抑制のため、環境省及び関係機関が実施する海域モニタリングの結果について分かりやすく一元的に掲載したウェブサイトを日本語及び英語で立ち上げています。さらに、2023年12月には、中国語及び韓国語によるウェブサイトの更新を開始しました。このほか、モニタリング結果公表時の国内外の報道機関への発信やX(旧Twitter)による発信も実施するなど、国内外に広く情報を発信しています。
また、放射線に関する科学的知見や関係省庁等の取組等を横断的に集約した統一的な基礎資料に、ALPS(アルプス)処理水に関する情報を記載しています。
さらに、福島県内・外の車座意見交換会やセミナー等の場において、ALPS(アルプス)処理水に関する説明を行っています。