環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書令和6年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第1部第4章>第4節 ALPS(アルプス)処理水に係る海域モニタリング

第4節 ALPS(アルプス)処理水に係る海域モニタリング

2023年8月に、多核種除去設備等処理水(以下「ALPS(アルプス)処理水」という。)の海洋放出が開始されました。ALPS処理水の海洋放出に当たっては、トリチウム以外の放射性物質について、安全基準を確実に下回るまで浄化されていることを確認し、取り除くことが困難なトリチウムの濃度については、安全基準を十分に満たす濃度(1,500ベクレル/ℓ未満)まで海水で大幅に希釈した上で、処分を行うこととしています。

環境省では、環境中の状況を把握するため、「総合モニタリング計画」(2011年8月モニタリング調整会議決定、2024年3月改定)に基づき、海水や魚類、海藻類についてトリチウム等の放射性核種の濃度を測定しています(写真4-4-1)。特に放出開始後はモニタリングを強化・拡充し、以前から実施している時間をかけて精密な結果を得る分析(精密分析)に加えて、結果を1週間程度の短時間で得る分析(迅速分析)を高い頻度で実施しています。これらの分析の結果、人や環境への影響がないことを確認しています。

写真4-4-1 海域モニタリングの様子

これらのモニタリング手法の検討や結果に関する評価に当たっては、「ALPS(アルプス)処理水に係る海域モニタリング専門家会議」において専門家による確認・助言を受けることにより、科学的な妥当性を確認しています。

さらに、我が国の分析能力の信頼性を確認するため、2023年10月には分析機関間比較の一環として国際原子力機関(IAEA)及び第三国の専門家が来日し、共同での試料採取等を行いました(写真4-4-2)。今後、IAEAにより、我が国、IAEA及び第三国における分析結果の比較・評価が行われます。なお、2022年に実施した分析機関間比較の結果では、IAEAにより、日本の分析機関の試料採取方法は適切であり、海洋環境中の放射性核種の分析に参加した日本の分析機関が、高い正確性と能力を有していると評価されています。

写真4-4-2 採取した試料をIAEA及び第三国の専門家が確認する様子

引き続き、客観性・透明性・信頼性の高い海域モニタリングを徹底し、その結果を国内外に分かりやすく発信していきます。