環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書令和3年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第1部第2章>第3節 分散型社会への移行

第3節 分散型社会への移行

1 分散型社会、レジリエントな地域づくりに向けて

近年の気象災害等の頻発により、気候変動による影響の拡大に備える必要性が増しています。気温上昇を抑え、気候変動による影響を緩和していくため、これまで徹底した省エネの実施や再生可能エネルギーの導入など、温室効果ガスの排出の抑制等の取組を進めてきましたが、同時に既に現れている影響や長期的に避けられない影響による被害を回避・軽減する適応対策を進めることが求められています。

このような災害発生時のレジリエンス強化の要請に加え、2019年からのゼロカーボンシティの急速な拡大により、地域における再生可能エネルギー等の自立・分散型エネルギーの導入ニーズが高まっています。また、気候変動への適応においては、人口減少や高齢化が進む中、社会資本の老朽化が懸念されており、この対応として防災対策と生物多様性の保全が調和した持続可能な社会を形成する取組も注目されています。

新型コロナウイルス感染症の拡大は、都市への一極集中のリスクを顕在化した一方で、テレワーク等の普及拡大により働く場所の選択肢は多様化しています。さらに、自然・健康志向の高まる中、国立公園への誘客を進め、地域経済を活性化させる必要があります。

本節では、このような経済社会やニーズを捉え、再生可能エネルギーや自然・生物多様性等の地域資源を活かす「分散型社会への移行」について紹介します。

2 気候変動×防災と適応復興の視点に立った取組の推進

(1)気候変動×防災、適応復興の推進

災害が多いと言われる我が国の防災ノウハウは、国連防災世界会議等での発信等を通して、各国から注目されています。想定を超える気象災害が各地で頻発し、気候変動はもはや「気候危機」とも言われる状況の中、このような時代の災害に対応するためには、気候変動リスクを踏まえた抜本的な防災・減災対策が必要となることから、2020年6月に、気候変動対策と防災・減災対策を効果的に連携して取り組む戦略(気候危機時代の「気候変動×防災」戦略:小泉進次郎環境大臣・武田良太内閣府特命担当大臣(防災担当)(当時)共同メッセージ)を公表しました。このメッセージでは、災害からの復興に当たっては、単に地域を元の姿に戻すという原形復旧の発想に捉われず、土地利用のコントロールを含めた弾力的な対応により気候変動への適応を進める「適応復興」の発想について明記しました。

さらに、水鳥真美国連事務総長特別代表(防災担当)兼国連防災機関(UNDRR)ヘッドほか有識者らを招き「気候変動×防災」国際シンポジウムを開催しました。同シンポジウムにおいては、生態系を活用した防災・減災(Eco-DRR:Ecosystem-based Disaster Risk Reduction)や科学技術といった日本の知見・技術を、国際協力に使いやすい形で提供することが重要であるとのコメントが出されたほか、日本の優れた気候変動への知見や技術協力で、SDGs目標達成に貢献するため、環境省、内閣府、独立行政法人国際協力機構(JICA)、日本の学術界は、より密接に協力していくことが重要と指摘がされました。

(2)グリーンインフラ、Eco-DRRの推進

古来、水害に苦しんできた我が国では、地域の特性、自然の性質を活かし、森林による保水力の活用、河川と農地の一体性を確保する伝統的な治水技術(霞堤)、計画的に洪水を貯留する遊水地等も活用しながら川を治めてきました。このような自然の性質を活かして整備された森林や遊水地などは、その地域の生物の生息地確保にも貢献しました。気候変動による災害の激甚化といった環境の変化と同時に、人口減少や高齢化、社会資本の老朽化といった社会状況の変化が進んでいる我が国において、このような災害を回避する土地利用の見直しと地域づくりに関する古来の知恵に学び、自然が持つ多様な機能を活用して災害リスクの低減等を図る「グリーンインフラ」や「Eco-DRR」の取組を進めることは急務となっています(写真2-3-1)。グリーンインフラやEco-DRRは人工構造物による防災対策と相反するものではありません。地域の特性や土地利用の状況、また、地域の人々のニーズに応じて、自然環境の持つ多様な機能と人工構造物を最適な組合せで用いることが重要です。

写真2-3-1 大雨の際に釧路川の流量低減に貢献している釧路湿原

環境省では、グリーンインフラやEco-DRRに関して基本的な考え方を整理したハンドブックや事例集を作成して地方公共団体等に普及を図るとともに、生態系の機能評価に関する研究の支援等を行ってきました。2020年度からは、グリーンインフラやEco-DRRによる災害に強く自然と調和した地域作りを更に促進するため、流域全体での遊水機能の強化に向け、かつての湿地・氾濫原等を再生した場合の、流域全体での保水力や生物多様性保全効果を示す「生態系機能ポテンシャルマップ」の作成方法の検討や、技術的な知見の取りまとめを行っています。

(3)災害廃棄物の処理と災害発生時における防衛省との連携

令和元年東日本台風や令和2年7月豪雨のような大規模な災害によって発生した災害廃棄物を適正かつ円滑・迅速に処理するため、環境省は、災害時に職員を現地に派遣するほか、専門家や支援自治体、民間団体の協力による支援体制を構築しています。さらに、防衛省・自衛隊と連携した災害廃棄物の撤去活動を円滑に実施できるよう「災害廃棄物の撤去等に係る連携対応マニュアル」を2020年8月に策定しました。

写真2-3-2 熊本県球磨村における自衛隊による災害廃棄物の撤去支援

また、大量の災害廃棄物が発生するとともに、廃棄物処理施設が被災により稼働停止し、市民の生活環境や公衆衛生への悪影響が懸念される事態となりました。環境省では、このような災害発生時の事故リスクに備えるため、災害廃棄物処理の中核を担い、廃棄物発電により、地域のエネルギーセンターとして災害対応拠点ともなる一般廃棄物処理施設の更新や耐水対策など施設の強靱化に係る支援を行っています。

図2-3-1 災害廃棄物の処理フロー

3 自立・分散型エネルギーシステムの構築

(1)自立・分散型エネルギーシステムの必要性

東日本大震災以降、電力の安定供給に対する懸念から節電への取組が定着し、災害時対応力を高める観点から分散型エネルギーシステムに対する関心が深まり、脱炭素化やエネルギーの自立化に向けた再生可能エネルギーへの期待が高まってきています。自然災害等の激甚化により大規模停電が発生したことを踏まえ、地域に賦存するエネルギー資源を有効に活用し、自立・分散型のエネルギーシステムを構築することは、生活に必要なライフラインの維持による国土強靱化に資するとともに、エネルギーの地産地消は地域経済の活性化にもつながります。

災害時においては、地域の再生可能エネルギー等の自立的な電源の活用を可能にするよう、蓄電池、燃料電池、コージェネレーション、デジタル技術等を活用した地域のエネルギー供給網の構築を進めつつ、分散型エネルギーシステムの構築に向けて、システム全体としてのコスト、安定性等を考慮しつつ、取組を進める必要があります。

環境省では、地域防災計画に災害時の避難施設等として位置付けられた施設に停電発生時でもエネルギー供給が可能な地域づくりを進めるため、再生可能エネルギー設備、蓄電設備、自営線等を組み合わせたエネルギーシステム構築に係る支援等を行っています。

経済産業省と環境省による連携チームでは、分散型エネルギーシステムに関係する多様なプレイヤーが一堂に会し、取組事例の共有や課題についての議論等を通して互いに共創する場として、「分散型エネルギープラットフォーム」を開催しました。2020年度は全4回開催し、「家庭」、「企業/公的機関」、「地域」の需要地ごとに、分散型エネルギーモデルを普及させるに当たっての課題等について、ディスカッションを実施しました。本プラットフォームは、分散型エネルギーに関係する多様なプレイヤーの共創の場を継続して提供するため、参加者のニーズも収集しながら、2021年度も継続して実施することとしています。

図2-3-2 分散型エネルギーモデルの構成要素

事例:山間地域のマイクログリッド構築(群馬県上野村)

山間地域にある人口約1,150人の群馬県上野村には、約数十~百世帯の集落が点在しています。

災害等による大規模停電時に、周辺電力系統から独立したグリッド(電力供給網)により電力供給が可能な自立分散型の電力システムを構築するため、2020年8月にマスタープランの作成を開始しました。これは、村内に設置した木質バイオマス発電設備や太陽光発電設備などの再生可能エネルギーを最大限に活用した自立分散型エネルギーシステム「上野村モデル」の構築を目指すものです。

住宅及び村有施設、避難所等への再生可能エネルギー発電設備・蓄電システム・電気自動車(EV)・省エネ設備等の導入を進めるとともに、マスタープランに基づき、既存の再生可能エネルギー設備に加え、木質バイオマス発電設備新設の検討や蓄電池の導入等を実施します。今後は、これらの取組を段階的に村全域に展開する予定です。

また、上野村は、2020年8月7日にゼロカーボン宣言を含む「Ueno 5つのゼロ宣言」を表明しました。これは、2019年12月の群馬県による「ぐんま5つのゼロ宣言」を受けて、上野村においてもこれを未来に向けて推進し、幸せな暮らしのある、持続可能な社会の構築を目指すものです。

上野村地域マイクログリッド事業の概要
(2)離島のレジリエンス強化

離島など隔絶した環境においては、台風等の有事の際にも必要な設備が稼働できるよう、メンテナンスフリー化・レジリエンス強化に資する分散型エネルギーシステムの構築の重要性が増しています。そのため、防衛省と連携しながら、過酷な環境下にある離島等において、太陽光発電等の再生可能エネルギー、エネルギーマネジメントシステムなどあらゆる技術を組み合わせた自己完結型の分散型エネルギーシステム構築を目指した実証事業を行います。

図2-3-3 防衛省との連携による南鳥島への再生可能エネルギー導入イメージ

4 国立公園の保護と利用の好循環の実現に向けて

(1)国立公園満喫プロジェクトの全国展開と深化

我が国の代表的な自然を対象に全国に34か所の国立公園が指定されています。火山活動等で形成された多様な地形、南北に長い国土、多様な気候帯等により、多様な景観や動植物を見ることができるほか、自然と共生した人の暮らしや文化を見ることができるという特徴もあります。

2016年3月に「明日の日本を支える観光ビジョン」が策定され、地方創生の切り札として観光を基幹産業に育てるべく、訪日外国人旅行者数や旅行消費額に係る目標が掲げられ、この取組の柱の一つとして国立公園が位置づけられたことを受け、「国立公園満喫プロジェクト」が開始され、保護すべきところは保護しつつ、利用の拡大を図るための取組を推進することにより、国立公園のブランド力を高め、国内外の誘客を促進する取組を進めています。これまで、先行的、集中的に取組を進める8つの国立公園を中心に、利用拠点の多言語化、体験型コンテンツの充実、ビジターセンターへのカフェ設置等公共施設の官民連携によるサービス向上、公園の魅力を損なう廃屋撤去等の景観改善等の受入環境整備やプロモーション等の取組を進めてきました(図2-3-4、写真2-3-3)。2021年以降、これらの取組を34公園へ拡大するとともに、これまでの実績を伸ばして更に磨き上げを行い、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた国立公園の観光地を始めとした地域経済の活性化と自然環境保全へとつなげていきます。

図2-3-4 官民連携で景観改善のための廃屋撤去の様子(阿寒摩周国立公園)
写真2-3-3 川湯エコミュージアムセンターにオープンした民間カフェ(阿寒摩周国立公園)
写真2-3-4 宮崎勝環境大臣政務官による雲仙天草国立公園の取組の視察
(2)ワーケーションなどの新たな価値の創造

環境省では、国立公園等で「遊び、働く」という新たなライフスタイルを示し、長期滞在の実現による地域経済の下支えや観光地の活性化に寄与するため、2020年4月の緊急経済対策において、国立公園等でのワーケーションの実施や受入環境の整備に対する補助制度を創設しました。各地の事業者や関係団体が行うWi-Fi等の整備やモデルツアーの実施等、ワーケーション参加者向けに提供する自然体験型のツアー・イベントの企画実施の取組を合計270件程度支援しています。

ワーケーションは、国立公園等の豊かな自然の中でリモートワークができることで、感染予防・健康増進のみならず、新たなアイディアを促すなど、働く人にとってもプラスとなる取組であり、また、観光地での長期滞在により地域にとってもプラスとなります。ワーケーションの推進には、地域も大きな関心を寄せており、2019年11月にはワーケーションの全国的な普及促進を目的とするワーケーション自治体協議会が設立されています。

また、地域社会や観光に対するニーズの変化、新型コロナウイルス感染症による自然・健康への関心や前述のワーケーションへの期待の高まりなどを背景に、自然公園制度を取り巻く状況が大きな転換期を迎えています。そのため、国や都道府県が管理を行う国立公園・国定公園において地方公共団体や関係事業者等の主体的な取組を促す仕組みを新たに設け、保護に加え利用面での施策を強化することで「保護と利用の好循環」(自然を保護しつつ活用することで地域の資源としての価値を向上)を実現し、地域活性化にも寄与していくため、「自然公園法の一部を改正する法律案」を第204回国会に提出しました。

また、登山道整備や安全確保等の様々な公益的機能を担っている山小屋の事業継続や支援のため、環境配慮型トイレ等の整備支援拡充や、2020年12月の総合経済対策による登山道補修やツアー準備等の支援を行ったほか、同法律案による公園管理団体の指定要件緩和等により、公的役割の更なる明確化を進めます。

さらに、国立公園の脱炭素化に向けて「ゼロカーボンパーク」を推進していきます。2021年3月には、ゼロカーボンパークの第1号として、中部山岳国立公園内の松本市の乗鞍高原が登録されました。ゼロカーボンパークにより、持続可能な観光地づくりを推進するとともに、国立公園の利用者に脱炭素・プラスチックゴミ削減の取組を体験してもらうことで、持続可能なライフスタイルを発信していきます。

事例:磐梯朝日国立公園のキャンプ場におけるワーケーション(一般財団法人休暇村協会、スペースキー)

磐梯朝日国立公園の休暇村裏磐梯キャンプ場では、2020年度より環境省の補助事業も活用し、一般財団法人休暇村協会とスペースキーの連携により、キャンプ場を活用したワーケーションの取組が行われています。

一般財団法人休暇村協会は、「スーツを脱いで仕事をしよう」をキャッチコピーとしたワーケーションキャンプに取り組んでおり、キャンプ道具一式やテーブル、Wi-Fi等の貸し出し、テント等のセッティングのサポート、ワーケーション専用エリアの設定等により、快適なワークスペースの確保と仕事の効率を高めてもらえるような工夫を行っています。また、スペースキーでは、ワーケーションキャンプの参加者に向け、地域事業者(4社)と連携し子供向けも含めた国立公園を満喫するためのアクティビティ(アウトドアサウナ、カヌー、SUP(サップ)等)を開発し、長期滞在の実現や滞在中の観光消費額、誘客数の増加につなげています。

2020年度は試験的な受入れやアクティビティのモニターツアーの実施を行いました。周知期間が短く、実施期間も1か月間という中でワーケーションキャンプ・モニターツアーには合計20名の参加がありました。2021年度以降もワーケーションを推進することで、キャンプ場や裏磐梯地域の活性化につながることが期待されます。

ワーケーションキャンプ、アクティビティ

5 新たな里地里山及び里海の創造

都市から地方への移住・多拠点居住等の新しい暮らし方や地産地消型でリスク軽減型の社会構造への転換に大きな役割を果たす可能性があると考えられるのは、里地里山や里海です。このような地域では、人が生産活動として自然に適切に働きかけることにより、日本の美しい景観や豊かな生態系が育まれてきました。

しかし、里地里山の多くは過疎化等の影響で人の手が入らなくなったこともあり、かつて身近な存在で本来は里地里山に生息・生育していた動植物が減少しています。里地里山及び里海の豊かな自然資源を持続的に活用しながら、生物多様性の保全と、これらの地域における社会経済的な課題解決を統合的に進めていくことが必要です。

(1)自立分散型・循環型社会づくりに向けた取組

人間が動力源や生活に必要な資材を化石燃料やプラスチックに依存するようになって、里地里山や里海の自然資源は、徐々にその経済的な価値を失ってきました。農林水産業の担い手不足やエコトーンと呼ばれる陸域と水域の移行帯等における人工構造物の設置等もあいまって、土地の管理がなされず、場所によっては、堆積、集積してしまったごみの収集、解消もままならないといった状況も起き、メダカや秋の七草、アサリやシジミなど私たちが親しんできた身近な動植物の生息・生育環境が失われてきました。このような中、例えばススキやカヤを刈り取り、それを有機肥料として育てた野菜に、草原の生物多様性保全への貢献という付加価値をつけて差別化を図るといった、地域の生物多様性の保全と社会経済的な課題解決を統合的に進める取組が、各地で実施されています。このような里地里山や里海での持続可能な活動の支援・普及を通じて自立分散型・循環型社会の拠点づくりを推進します。

(2)里地里山の保全管理

民間等の取組により保全が図られている地域や保全を目的としない管理が結果として自然環境を守ることにも貢献している地域(OECM)については、民間等の取組を促進するとともに、保護地域を核として連結性を強化することにより、広域的で強靱な生態系のネットワーク化を図り、生物多様性の保全を推進します(図2-3-5)。その際、条例に基づき指定されている自然海浜保全地区等の地域の保護制度との連携・活用も検討します。

図2-3-5 保護区以外の生物多様性の長期的な域内保全に貢献する地域(OECM)

一方で、全国的にニホンジカやイノシシ等の生息域が拡大しており、これらの鳥獣による農作物や森林などの生態系への被害が発生し、里地里山でも問題となっていることから、これらの鳥獣の保護管理を一層進めていくことも必要です。近年、狩猟免許所持者は約20万人前後で推移していますが、全体の6割が60歳以上となっており、高齢化が進んでいるなど、鳥獣保護管理を担う次世代の人材を育成・確保していくことが課題となっています(図2-3-6)。このため、野生動物管理の専門人材を大学等で育成するためのカリキュラムの検討や専門性を備えた人材が活躍する場の確保、熟練狩猟者等から狩猟の技術等を学び、実践的な狩猟者を育成するプログラムの検討、鳥獣保護管理を通じた里地里山における就業環境の改善に向けた検討を進めていきます。また、ICTやドローン等の新技術や鳥獣の生態を踏まえた忌避技術を活用した鳥獣保護管理の省力化に向けた技術の検討を進めることにより、人口減少社会においても実施可能な鳥獣保護管理技術の導入・普及を推進します。

図2-3-6 全国の年齢別狩猟免許所持者数
(3)豊かな海の再生

自然と調和した形で人が手を加えることにより、水質が保全され、生物の多様性・生産性が確保されたきれいで豊かな海は「里海」と呼ばれており、人の生活の場に近い内海や内湾において里海づくりを推進することは重要です。環境省では瀬戸内海において、中央環境審議会による2020年3月の「瀬戸内海における今後の環境保全の方策の在り方について(答申)」、2021年1月の「瀬戸内海における特定の海域の環境保全に係る制度の見直しの方向性(意見具申)」を踏まえ、従来からの水質改善や自然海浜保全の取組に加え、きめ細やかな栄養塩類の管理や藻場・干潟の保全・再生・創出等を組み合わせた施策を進めます。

政府としては、関係府県による栄養塩類管理計画の策定、再生された藻場を指定可能にする自然海浜保全地区の指定要件の拡充、海洋プラスチックごみを含む漂流ごみ等の発生抑制等に関する国と地方間の連携等の措置を講ずる「瀬戸内海環境保全特別措置法の一部を改正する法律案」を第204回国会に提出しました。

図2-3-7 瀬戸内海環境保全特別措置法による対象区域
写真2-3-5 神谷昇環境大臣政務官による宝伝自然海浜保全地区の視察