環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書令和3年版 環境・循環型社会・生物多様性白書>令和2年度 環境の状況 令和2年度 循環型社会の形成の状況 令和2年度 生物の多様性の状況>第1部 総合的な施策等に関する報告>はじめに

令和2年度 環境の状況
令和2年度 循環型社会の形成の状況
令和2年度 生物の多様性の状況
第1部 総合的な施策等に関する報告

はじめに

私たちは皆、10年後の未来を決める重大な局面に立たされています。

2020年の新型コロナウイルス感染症の拡大によるパンデミック(以下「パンデミック」という。)は、地球規模の課題であり、各国・地域の経済や社会に大きな影響を与えています。

2015年9月、国連持続可能な開発サミットにおいて「持続可能な開発のための2030 アジェンダ」の中で2030年までの達成を目指す持続可能な開発目標(SDGs)が策定されました。同年12月に国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)で、途上国を含む全ての締約国が各自の削減目標の達成に向けて取り組むこと、長期的には工業化以前より温度上昇を2℃より十分低い、1.5℃に抑える努力を継続することを記したパリ協定が採択され、2020年から本格的な運用が始まりました。また、2018年に気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は「1.5℃特別報告書」で、世界の平均気温が産業革命前より人間活動によって約1℃上昇し、現在の度合いで増加し続けると2030年から2052年までの間に気温上昇が1.5℃に達する可能性が高いこと、現在と1.5℃上昇との間、及び1.5℃と2℃上昇との間には、生じる影響に有意な違いがあることを示しました。

こうした予測や国際的な開発目標や条約の目的を達成し、持続可能な社会となるために、地球温暖化への対応を、経済成長の制約やコストではなく、成長の機会と捉えるような従来の発想を転換する、新たな様式の活動を起こすことが重要です。

パンデミックは、気候変動問題や生物多様性の損失を始めとした多くの環境問題やグローバル化した社会問題と密接に関連していると言えます。ポストコロナ時代の世界は、単に以前の状態に戻すのではなく、環境問題の解決を図りながら、傷ついた経済を立て直してより良くすること、いわゆるより良い復興(Build Back Better)が必要です。そこで欧州などの各国は、新型コロナウイルス感染症の拡大による経済危機からの復興と、気候変動政策等を融合させる「グリーンリカバリー」政策を打ち出しました。

環境省は、2020年6月12日、令和2年版環境白書の閣議決定日に「気候危機」を宣言し、9月3日に小泉進次郎環境大臣を議長としたオンライン・プラットフォーム閣僚級会合を開催しました。

そして、我が国は、10月26日には菅義偉内閣総理大臣が第203回国会の所信表明演説において、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわちカーボンニュートラルを目指すことを宣言しました。それに伴い、12月25日には「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」の策定とともに、国・地方脱炭素実現会議が開催され、2050年脱炭素社会実現に向けたロードマップ作り等の検討が始まりました。

また、地方自治体も2019年9月以降、2050年に温室効果ガス又はCO2の排出量を実質ゼロにすることを目指す旨を首長自ら又は地方自治体として公表する「ゼロカーボンシティ」が増え続けています。

このようにバックキャスティング型のような従来の延長線上にない取組を行うことは、政府や地方自治体だけに限りません。私たち自身が、大量生産・大量消費・大量廃棄のライフスタイルを変えることが必要です。私たちが変わることにより、気候変動を始めとする環境や社会、経済の問題を緩和ないし解決に導き、持続可能なより良い未来の選択につながるのではないでしょうか。本白書の第1部では、経済社会のリデザイン(再設計)、持続可能で強靭な地域、未来につながるライフスタイルについて考えます。

第1章では、「コロナ危機と気候危機」とも言われている状況が環境・経済・社会面に及ぼしている影響と、これらにより如実となった生物多様性の危機に対する国際的な動向について紹介します。

第2章では、2050年カーボンニュートラル・脱炭素社会の実現のための、「脱炭素社会」・「循環経済」・「分散型社会」への移行について、政府の取組と地方自治体や企業との連携を紹介します。

第3章では、ポストコロナ時代に在るべき持続可能な社会像について、地域循環共生圏の創造と深化から論じます。さらに、コロナ危機の渦中にいる私たち一人一人が、持続可能な社会を創る当事者として実践できるワークスタイル・ライフスタイルの変革について論じます。

東日本大震災は、2021年3月で発生から10年を迎えました。第4章では、我が国の重要課題の一つである東日本大震災からの復興に向けた取組について概説します。