2018年6月、経協インフラ戦略会議で決定された「インフラシステム輸出戦略」に基づき、環境分野及びリサイクル分野の海外展開戦略を策定しました。本戦略では、大気等の新たな分野を加えたほか、「ジャパン環境ウィーク」を含むトップセールス、ソフトインフラ支援及び資金支援等を組み合わせ、途上国とのコ・イノベーションの促進していくとしています。
独立行政法人国際協力機構(JICA)を通じた研修員の受入れ、専門家の派遣、技術協力プロジェクトなど、我が国の技術・知識・経験を活かし、開発途上国の人材育成や、課題解決能力の向上を図りました。
例えば、JICA課題別研修「生物多様性保全のためのGIS・リモートセンシングを利用した情報システム及び住民参加型保全」等をはじめ、環境管理に関する講義等の協力を行いました。
地球環境問題に対処するため、[1]国際機関の活動への支援、[2]条約・議定書の国際交渉への積極的参加、[3]諸外国との協力、[4]開発途上地域への支援を積極的に行っています。
(ア)国連や国際機関を通じた取組
○SDGs等における取組
2015年9月の国連サミットにおいてSDGsを核とする「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択されました。SDGsは、エネルギー、持続可能な消費と生産、気候変動、生物多様性等の多くの環境関連の目標を含む、17の目標と169のターゲットで構成され、毎年開催される「国連持続可能な開発に関するハイレベル政治フォーラム(HLPF)」において、SDGsの達成状況についてフォローアップとレビューが行われます。
2018年7月に開催されたHLPF2018では、日本政府としてアジア太平洋諸国及び国際機関と共催し、二つの公式サイドイベント「持続可能な都市の実現に向けたアジア太平洋地域のイニシアティブ」及び「SDGsの早期実現のためのアジア太平洋地域における持続可能な消費と生産」を開催し、それぞれHLPF2018のレビュー対象ゴールである「持続可能な都市」及び「持続可能な消費と生産(SCP)」に焦点を当て、当該分野における日本の施策や取組を海外へ発信すると共に、SDGsに取り組むアジアの一体感を醸成する機会となりました。
○UNEPにおける活動
我が国は、UNEPの環境基金に対して継続的に資金を拠出するとともに、我が国の環境分野での多くの経験と豊富な知見を活かし、多大な貢献を行っています。2019年3月には、第4回国連環境総会(UNEA4)が開催され、環境に関する様々な決議が採択されました。
大阪に事務所を置くUNEP国際環境技術センター(UNEP/IETC)に対しても、継続的に財政的な支援を実施するとともに、UNEP/IETC及び国内外の様々なステークホルダーと連携するために設置されたコラボレーティングセンターが実施する開発途上国等への環境上適正な技術の移転に関する支援、環境保全技術に関する情報の収集・整備・発信、廃棄物管理に関するグローバル・パートナーシップ等への協力を行いました。更に関係府市等と協力して、同センターの円滑な業務の遂行を支援しました。
持続可能な消費と生産パターンの国際的定着に向け、国や地方レベルの政策、民間・NGO等を含む各種事業、人材育成、技術移転、研究等を促進するために、リオ+20で合意された「持続可能な消費と生産10年計画枠組み」が2014年から本格的に始まり、本枠組みの6つのプログラムのうち、環境省は「持続可能なライフスタイル及び教育」プログラムの共同リード国として、アジアをはじめとする新興国・途上国における低炭素・持続可能な消費行動・ライフスタイルへの移行に向けた取組を実施しています。
UNEPが、気候変動適応の知見共有を図るために2009年に構築した「世界適応ネットワーク(GAN)」及びアジア太平洋地域の活動を担う「アジア太平洋適応ネットワーク(APAN)」への拠出金等により、各地域の適応行動を関係者で共有するためのフォーラム、脆(ぜい)弱性削減に向けたパートナーシップの強化、能力強化活動を支援しました。
○経済協力開発機構(OECD)における取組
我が国は、2012年1月から経済協力開発機構(OECD)環境政策委員会の副議長を務めるなど、OECD環境政策委員会及び関連作業部会の活動に積極的に参加してきました。OECDは、昨年の議長国であるアルゼンチンのG20への貢献として「気候変動に向けた強靱なインフラ」と題する報告書を公表し、異常気象及び災害リスクを踏まえた強靱なインフラへの投資が重要であるという考えを打ち込みました。
○国際再生可能エネルギー機関(IRENA)における取組
我が国は、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の設立当初から連続して理事国を務めています。具体的には、IRENAに対して分担金を拠出するとともに、特に島嶼(しょ)国における人材育成及び再生可能エネルギー普及の観点から、IRENAとの共催により、国際ワークショップを実施しました。
(イ)アジア太平洋地域における取組
○日中韓三カ国環境大臣会合(TEMM)
2018年6月に中国の蘇州において第20回日中韓三カ国環境大臣会合(TEMM20)が開催され、本会合では、過去20年における三カ国の環境協力を振り返り、三カ国の環境協力における最近の進展を確認するとともに、来年日本で開催されるG20 持続可能な成長のためのエネルギー転換と地球環境に関する関係閣僚会合に向けた協力や、脱炭素都市の構築のための共同研究、ヒアリ等を含む外来種対策、海洋ごみ対策、大気汚染、SDGsについて率直な意見交換を行い、共同コミュニケを採択しました。
個別分野においては、脱炭素化に関する共同研究を、2018年に開始することに三カ国で合意し、10月に中国の北京において第1回のワークショップを開催しました。
○日ASEAN環境協力イニシアティブ
2017年11月に提唱した「日ASEAN環境協力イニシアティブ」に基づき、ASEAN地域でのSDGs促進のため、廃棄物・リサイクル、持続可能な都市、排水処理、気候変動における環境インフラへの支援や、海洋汚染、化学物質、生物多様性の分野における協力が進んでいます。気候変動に関しては、2018年11月の日ASEAN首脳会議において、「日ASEAN気候変動アクション・アジェンダ」として、透明性、適応及び緩和の3分野で、我が国とASEAN諸国の協力強化を進めることが確認されました。
(ウ)アジア太平洋地域における分野別の協力
自然と共生しつつ経済発展を図り、低炭素社会、循環型社会の構築を目指すクリーンアジア・イニシアティブの理念の下、2008年から様々な環境協力を戦略的に展開してきました。2016年以降は特に、SDGsの実現にも注力し、アジア地域を中心に低炭素技術移転及び技術政策分野における人材育成に係る取組等を推進しています。
気候変動については第1章第1節7、資源循環・3Rについては第3章第7節1、汚水処理については第3章第7節2、水分野については第4章第3節、大気については第4章第7節3(3)を参照。
(ア)先進国との連携
○米国
2018年9月のG7ハリファクス環境・海洋・エネルギー大臣会合の際に、大臣級で会談を行い、気候変動対策、海洋プラスチックごみ問題及び大気汚染防止対策等の分野で日米が連携して取り組むことを再確認しました。
○フランス
2015年12月に両国大臣間で、両国間の友好関係の強化と、国際及び国内レベルにおける低炭素社会の構築を目指した環境協力の覚書への署名が行われました。2016年12月に、上記覚書に基づき第1回年次会合を、2018年3月には、第2回年次会合を開催し、気候変動対策、低炭素シナリオに関する共同研究、SDGs、循環経済、地方公共団体の連携等について、両国の政策や課題、二国間連携の進捗状況について意見交換を行い、今後の更なる連携協力について合意しました。
(イ)開発途上国との連携
○中国
日中環境ハイレベル円卓ダイアログ等を開催するなど、これまで様々な機会を捉えて、環境政策及び大気汚染、海洋汚染、気候変動対応、廃棄物、生物多様性等における環境協力を推進しました。2018年5月には、両国間で「トキ保護協力の継続実施に関する覚書」を結び、10月には、中国側が2羽のトキを提供しました。
気候変動については、2017年9月に、気候変動対策に関する研究面からの知見について両国の研究者が意見交換を行うため、環境省が、中国エネルギー研究所(能源研)と協力して「気候変動に係る日中政策研究ワークショップ」を北京で開催しました。日本及び中国の気候変動政策の現況、長期戦略の検討状況、2020年以降の透明性枠組みやグローバルストックテイクの在り方、低炭素都市構築に向けた日中韓共同研究等について、活発な意見交換を行いました。
大気分野については、2018年6月に大気汚染対策のための「大気環境改善のための研究とモデル事業の協力実施に関する覚書」に署名するとともに、日中間の政府間及び都市間連携において、PM2.5発生源対策としてモデル的なVOC削減技術の導入等に関する協力を進めました。
○インド
2018年10月、環境省とインド環境・森林・気候変動省の間の環境協力分野での協力覚書に署名しました。
○インドネシア
環境省とインドネシア共和国環境林業省の間の協力覚書に基づき、2018年8月には、第3回日本・インドネシア環境政策対話を行い、チタルム川水質改善、水銀モニタリング、海洋プラスチックごみ、廃棄物等に関する協力事項等を盛り込んだ共同声明を発表しました。
○イラン
2017年11月から2018年5月まで砂塵嵐モニタリングを実施し、2019年2月には、同モニタリングの結果を踏まえたテクニカルセミナーをテヘランで開催しました。
○韓国
日韓環境保護協力協定に基づき、「日韓環境保護協力合同委員会」を開催しており、2018年7月には同合同委員会の第20回目を韓国で開催し、両国間での環境協力に関して幅広い意見交換等を行いました。第21回は2019年に日本で開催することで合意しました。
○モンゴル
2011年の締結及び2015年の更新に続き、2018年12月に安倍晋三内閣総理大臣とオフナー・フレルスフ首相の立会いの下、環境省とモンゴル自然環境・観光省間で「環境協力に関する協力覚書」を署名しました。また、「第12回日本・モンゴル環境政策対話」を2018年12月にウランバートルで開催し、気候変動(適応)、大気汚染対策、水銀管理、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき2号」等に関して意見交換を行い、モンゴルでの環境改善のために両省間での協力事業を推進していくことに合意しました。「いぶき2号」に関しては、観測データを用いて温室効果ガスのインベントリから算出した排出量を国単位で比較評価するため、国外初の実証の場としてモンゴルと協力することに合意しました。
○フィリピン
2017年1月に、安倍晋三内閣総理大臣とロドリゴ・ドゥテルテ大統領の立会いの下で二国間クレジット制度(JCM)に関する二国間文書への署名が行われたことを踏まえ、2018年2月にJCMに関する日・フィリピン間の第1回合同委員会が開催され、各種規程・ガイドライン類の採択等が行われ、JCM実施のための基盤が整いました。2019年2月、マニラで、廃棄物管理に関する環境対話を開催し、フィリピンが抱える廃棄物管理の課題解決に向け、今後の協力について協議しました。
○シンガポール
2017年6月に更新した両国間の「環境協力に関する協力覚書」に基づき、シンガポールとは、ASEAN関連会議等の様々な場において、気候変動や海洋プラスチックごみ問題等に関する連携を強化しています。
○ベトナム
2019年1月、環境省とベトナム天然資源環境省は、「日本・ベトナム環境ウィーク」を開催し、ベトナム政府との政策対話、環境インフラ技術セミナー等を通じて、環境技術を広くベトナム国の政府、地方公共団体、民間企業に紹介しました。
○ミャンマー
2018年8月、環境省とミャンマー天然資源・環境保全省は、環境分野での協力覚書に署名し、包括的な協力を推進していくことに合意しました。2019年3月、覚書に基づき、「第2回日本・ミャンマー環境政策対話」を東京で開催し、廃棄物管理、浄化槽、JCM、環境アセス評価等について意見交換を行いました。
海外に向けた情報発信の充実を図り、報道発表の英語概要を逐次掲載しました。また、英語版広報誌や環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書の英語抄訳版の刊行など、海外広報資料の作成・配布やインターネットを通じた海外広報を行いました。
我が国は政府開発援助(ODA)による開発協力を積極的に行っています。環境問題については、2015年2月に改定された「開発協力大綱」において地球規模課題への取組を通じた持続可能で強靱(じん)な国際社会の構築を重点課題の一つとして位置付けるとともに、開発に伴う環境への影響に配慮することが明記されています。また、特に小島嶼(しょ)開発途上国については、気候変動による海面上昇など、地球規模の環境問題への対応を課題として取り上げ、ニーズに即した支援を行うこととしています。
(ア)無償資金協力
無償資金協力は、居住環境改善(都市の廃棄物処理、上水道整備、地下水開発、洪水対策等)、地球温暖化対策関連(森林保全、クリーン・エネルギー導入)等の各分野において実施されています。
草の根・人間の安全保障無償資金協力についても貧困対策に関連した環境分野の案件を積極的に実施しています。
(イ)有償資金協力
有償資金協力(円借款・海外投融資)は経済・社会インフラへの援助等を通じ、開発途上国が持続可能な開発を進める上で大きな効果を発揮します。環境関連分野でも同様であり、上下水道整備、大気汚染対策、地球温暖化対策等の事業に対しても、JICAを通じて、積極的に円借款・海外投融資を供与しています。
(ウ)国際機関を通じた協力
我が国は、UNEPの環境基金、UNEP/IETC技術協力信託基金等に対し拠出を行っています。また、我が国が主要拠出国及び出資国となっているUNDP、世界銀行、アジア開発銀行等の国際機関も環境分野の取組を強化しており、これら各種国際機関を通じた協力も重要になってきています。
地球環境ファシリティ(GEF)は、開発途上国等が地球環境問題に取り組むためのプロジェクトに対して、主に無償資金を提供する多国間基金です。2018年6月のGEF総会において、GEF第7次増資(GEF-7)が決定され、我が国は6億3,700万ドルの資金貢献を表明し引き続きトップドナーとなりました。我が国はGEFの主要ドナー国として、意思決定機関である評議会の場等を通じ、GEFの活動に積極的に参画しています。
開発途上国の温室効果ガス削減と気候変動の影響への適応を支援する緑の気候基金(GCF)については、2015年5月、我が国において、GCFへの拠出を可能にするための法律が成立し、15億ドルの拠出取決めに署名しました。これにより、GCFは途上国支援を開始するために必要な条件が充足されたことから稼働しました。同年11月には、GCF理事会において最初の支援案件となる8件が採択され、2018年12月までに93件の支援案件がGCF理事会で承認されました。我が国はGCF理事国として、支援案件の選定を含む基金の運営に積極的に貢献しています。また、我が国は、途上国の要請に基づき技術移転に関する能力開発やニーズの評価を支援する「気候技術センター・ネットワーク(CTCN)」に対して2018年度に約190万ドルを拠出し、積極的に貢献しました。
低炭素社会形成に関するノウハウや経験を有する日本の地方公共団体等の協力の下、アジア各国の都市との間で、都市間連携を活用し、低炭素社会実現に向けて基盤制度の策定支援や、優れた低炭素技術の普及支援を実施しました。2017年度は、福島市、富山市、川崎市、横浜市、大阪市、北九州市による14件の取組を支援しました。
独立行政法人環境再生保全機構が運営する地球環境基金では、プラットフォーム助成制度に基づいて、国内の環境NGO・NPOが国内又は開発途上地域において他のNGO・NPO等との横断的な協働・連携の下で実施する環境保全活動に対する支援を行いました。
2018年6月、カナダを議長国としてG7シャルルボワサミットが開催されました。G7シャルルボワ首脳コミュニケでは、気候変動や海洋ごみが取り上げられました。気候変動関連では、G7全ての国が低排出な未来を実現するための道は各国がそれぞれ描くことができることを認識し、米国以外の国が今世紀後半に世界的な炭素中立的経済を実現するために、大気汚染、水質汚濁及び温室効果ガス排出を低減させるとのコミットメントを再確認するとともに、パリ協定を野心的な行動を通じて実施するとの強固なコミットメントを再確認するものとなりました。海洋関連では、G7全ての国が海洋環境の保全に関する「健全な海洋及び強靱な沿岸部コミュニティのためのシャルルボワ・ブループリント」を承認し、海洋の知識を向上し、持続可能な海洋と漁業を促進し、強靱な沿岸及び沿岸コミュニティを支援し、海洋のプラスチック廃棄物や海洋ごみに対処するとしました。また、カナダ及び欧州各国が「海洋プラスチック憲章」を承認するものとなりました。
加えて、2018年9月にカナダを議長国として行われた、G7ハリファックス環境・海洋・エネルギー大臣会合においては、気候変動、循環経済及び自然保護等の地球規模の環境問題について議論を行い、その概要が議長国カナダにより、議長総括として発出されました。また、G7の海洋プラスチックごみ問題に対する今後の取組をまとめた「海洋プラスチックごみに対処するためのG7イノベーションチャレジ」を採択しました。
さらに、これらの成果を踏まえ、2019年に我が国が議長を務めるG20での取組について検討を進めるとともに、関係各国との調整を行いました。
2018年3月にチリのサンティアゴにおいて環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(TPP11協定)が署名され、2018年12月に発効しました。同協定においては、「環境」章を設け、貿易・投資促進のために環境基準を緩和しないこと、環境規制を貿易・投資障壁として利用しないことなどを盛り込んでいます。また、2017年12月には欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)交渉が妥結し、2018年7月に署名、2019年2月に発効しました。この協定においては、「貿易と持続可能な開発」章を設け、TPP協定同様、貿易・投資促進のために環境基準を緩和しないことなどに加え、パリ協定や生物多様性条約等の多国間環境協定等国際約束の重要性の確認等についても規定しています。また、同協定に基づく市民との政策対話の実現に向け、関係省庁との協議を進めました。そのほか、中国・韓国、イギリス等とのEPA/自由貿易協定(FTA)交渉において、適切かつ戦略的な環境配慮を確保すべく交渉を進めました。
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