環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書令和元年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第3章>第7節 適正な国際資源循環体制の構築と循環産業の海外展開の推進

第7節 適正な国際資源循環体制の構築と循環産業の海外展開の推進

1 適正な国際資源循環体制の構築

地球規模での循環型社会形成と、我が国の循環産業の海外展開を通じた活性化を図るためには、国、地方公共団体、民間レベル、市民レベル等の多様な主体同士での連携に基づく重層的なネットワークを形成する必要があります。アジア太平洋諸国における循環型社会の形成に向けては、3Rに関する情報共有や合意形成の推進等を目的として、2018年4月にはインドのインドールで「アジア太平洋3R推進フォーラム」第8回会合を、2019年3月にはタイのバンコクで第9回会合を開催しました。第8回会合では、アジア太平洋地域の3Rに関する情報を取りまとめた「アジア大平洋3R白書」の発表も行いました。アフリカの廃棄物に関する知見共有とSDGs達成促進等を目的とし、2017年4月に独立行政法人国際協力機構(JICA)等とともに設立した「アフリカのきれいな街プラットフォーム」においては、2018年6月にモロッコのラバトで第1回年次会合を開催しました。2018年10月には横浜市で、フィンランド・イノベーション基金とともに世界循環経済フォーラム2018を主催し、64か国、1,000名以上の方々が参加する中、循環経済の実現に向けた議論が行われました。アジア各国に適合した廃棄物・リサイクル制度や有害廃棄物等の環境上適正な管理(ESM)の定着のため、JICAでは、アジア太平洋諸国のうち、ベトナム、インドネシア、マレーシア、スリランカ、大洋州について、技術協力等により廃棄物管理や循環型社会の形成を支援しました。また、政府開発援助(ODA)対象国からの研修員受入れを実施しました。

写真3-7-1 アジア太平洋3R推進フォーラムでスピーチを行うあきもと環境副大臣

国際的な活動に積極的に参画し、貢献することも重要です。G20各国の資源効率性の向上を目指し情報交換を行う「G20資源効率性対話」は、2018年は8月にアルゼンチンで開催され、我が国からも参加しました。我が国が拠出を行っている国連環境計画(UNEP)国際資源パネルは、複数の報告書を公表するなど、活動が着実に進捗しています。

外務省及び環境省は、我が国に誘致したUNEP国際環境技術センター(IETC)の運営経費を拠出しています。IETCは、2016年の国連環境総会決議(UNEA2/7)で廃棄物管理の世界的な拠点として位置付けられ、主に廃棄物管理を対象に、開発途上国等に対し、研修及びコンサルティング業務の提供、調査、関連情報の蓄積及び普及等を実施しています。

2018年10月に横浜市で開催された経済協力開発機構(OECD)資源生産性・廃棄物作業部会第11回会合へ参加し、我が国の経験や取組の発信等により、循環経済への移行等に関する国際的議論に貢献しました。

バーゼル条約等に関わる取組も、各省連携の下で行っています。環境省は、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)において考慮することとされているPOPs廃棄物の環境上適正な管理に関する技術ガイドラインのうち、ポリ塩化ナフタレン(PCN)廃棄物に関するガイドラインの策定作業を主導するとともに、我が国のPCN廃棄物等の処理技術等に関する知見を適切に反映、他のPOPs廃棄物ガイドラインの策定又は改訂作業も含め、国際的な議論の進展に貢献しました。また、プラスチックごみによる海洋汚染の深刻化に対してもバーゼル条約の枠組みにおいて積極的に寄与するため、バーゼル条約の規制対象物に汚染されたプラスチックを加える附属書の修正の共同提案を行いました。

国、国際機関、NGO、民間企業等が連携して自主的に水銀対策を進める「世界水銀パートナーシップ」において、廃棄物管理分野の運営を担当し、技術情報やプロジェクト成果の共有を進めました。また、国連工業開発機関(UNIDO)等と連携し、水銀廃棄物対策技術の普及促進に取り組みました。

2009年の船舶の安全かつ環境上適正な再生利用のための香港国際条約(シップ・リサイクル条約)の早期締結に向け、2018年6月に船舶の再資源化解体の適正な実施に関する法律(平成30年法律第61号)が成立・公布されました。

地方環境事務所において廃棄物等の不法輸出入の監視強化のための取組を関係省庁と連携して行うなど、廃棄物等の不法輸出入防止に関する水際対策に積極的に取り組むとともに、このための国際的な連携強化を図るため、2018年11月に、秋田県でアジア太平洋地域の12の国と地域及び関係国際機関の参加を得て、有害廃棄物の不法輸出入防止に関するアジアネットワークワークショップを開催しました。さらに、循環資源の越境移動をめぐり近年生じている課題に対応し、適正な資源循環の実現に向けた今後の取組の在り方等について検討を行い、特定有害廃棄物等の輸出規制の適正化を図るため、雑品スクラップ等の規制対象物の範囲を明確化すること、輸出先国において条約上の有害廃棄物とされている物を規制対象とすること、輸出先の環境汚染防止措置について環境大臣が確認する事項を明確化すること、再生利用等事業者の認定制度の創設により、特定有害廃棄物等の輸入に係る手続の簡素化することなどを内容とする特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律の一部を改正する法律(平成29年法律第62号)が第193回国会において成立し、2018年10月から施行されました。

そのほか、港湾における循環資源の取扱いにおいては、循環資源の積替・保管施設等が活用されました。

近年、世界各国において自然災害が頻発化・激甚化しています。災害大国である日本が蓄積してきた災害対応のノウハウや経験の供与は、アジア太平洋地域のような災害が頻発する地域においても有効です。そこで、環境省では、日本の過去の災害による経験、知見を活かした国際支援の一環として、2015年に大地震が発生したネパール国に対して、環境省職員や専門家を派遣し、倒壊した家屋等により発生した大量の災害廃棄物の適正かつ迅速な処理を行うための技術支援を実施してきました。さらに、環境省ではこうした国際的な支援の一環として、アジア太平洋地域において災害廃棄物が適正かつ迅速に処理が行われるよう、同地域向けの災害廃棄物管理ガイドラインの策定や周知を実施し、アジア太平洋地域における災害廃棄物対策の強化を支援しました。

2 循環産業の海外展開の推進

我が国の廃棄物分野の経験や技術を活かした、廃棄物発電ガイドラインの策定などアジア各国の廃棄物関連制度整備と、我が国循環産業の海外展開を戦略的にパッケージとして推進しています。我が国循環産業の戦略的国際展開・育成事業等では、海外展開を行う事業者の支援を2018年度に14件実施しました。2011年度から2017年度までの支援の結果、2019年2月時点で商用運転が開始した件数が3件、契約、特別目的会社(SPC)・合弁企業設立、MOU(覚書)締結、入札まで至っている(準備中含む)件数が10件、二国間オフセット・クレジット制度(JCM)や他省庁支援事業等の他事業に発展した件数が4件という成果を上げています。また、我が国企業によるアジア等でのリサイクルビジネスについては、3件の実施可能性調査を新たに実施しました。さらに、現地ニーズに合致したリサイクル技術・システムの確立に係る研究開発・実証事業として、2012年度からの継続案件1件、2013年度からの継続案件1件を実施しました。また、2018年度は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)で実施中の省エネ型資源循環システムのアジア展開に向けた実証事業において、海外案件を2件継続しました。

各国別でも様々な取組を行っています。

ミャンマーにおいては、2018年8月に廃棄物管理ワークショップを開催しました。2018年11月には第1回、2019年1月には第2回日・ヤンゴン廃棄物管理合同委員会をそれぞれ開催し、廃棄物管理の改善に向けた議論を行いました。

フィリピンにおいては、2019年2月に、廃棄物分野における第4回日比環境政策対話を実施するとともに、廃棄物管理ワークショップを開催しました。また、フィリピン政府が進めるごみ質分析ガイドブック更新及びPPPによる廃棄物処理事業実施のためのガイドブック策定への支援を行いました。

アジア地域等の途上国における公衆衛生の向上、水環境の保全に向けては、浄化槽等の日本発の優れた分散型生活排水処理システムの国際展開を実施しています。2018年度は、第6回アジアにおける分散型汚水処理に関するワークショップを2018年9月に東京で開催し、分散型汚水処理システムの適正な普及に関する課題の解決に向けて議論を行い、各国分散型汚水処理関係者とのネットワーク構築や連携強化を図りました。また、SDGs目標6.3の達成に貢献し、浄化槽関連企業の海外展開の後押しを目的とした、汚水処理技術に関するセミナーを3か国で開催しました。